高層ビルの屋上には、冷房用の冷却塔が設置されていることがあります。
このうち11階建て以上の建築物になると、屋上の冷却塔だけに特別な防火基準が課されます。
建築基準法施行令は、冷却塔の材質・建物との距離・認定の3つの方法のいずれかを満たすよう定めています。
条文をたどるとどれか1つを満たせばよい仕組みになっていることが見えてきます。
うちのビルは14階建てで、屋上に冷房用の冷却塔があります。
これも消防や建築の基準の対象になるのでしょうか。
11階建て以上の建物なら、屋上の冷却塔は建築基準法施行令の対象です。
火災時に燃え広がらないよう、材質や距離などの基準が定められています。
うちの冷却塔は古いタイプなのですが、大丈夫でしょうか。
設置時の基準を満たしていれば、それ自体は問題ありません。
ただし更新や改修のときは基準の再確認が必要です。
- 地階を除く11階建て以上の建築物は、屋上に設ける冷房用の冷却塔設備に防火基準がかかります
- 不燃材料で造る・建物までの距離を確保する・国土交通大臣の認定を受けるのいずれか1つを満たせば足ります
- 対象になるのは冷房のための冷却塔設備で、暖房専用の設備とは扱いが異なります
- 設置時の基準を満たしていても、更新や改修のたびに基準を満たしているかを確かめる必要があります
- 離隔距離や認定の範囲は国土交通大臣が個別に定める基準によって決まります
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目次
11階建て以上の屋上に置く冷却塔設備はなぜ特別な基準があるのか

建築基準法施行令は、そうした建物の屋上設備にも独自の基準を置いています。
これは非常用エレベーターの設置義務などと同じく、消防隊の活動が難しくなる高さの建物に共通してみられる線引きです。
屋上に冷房用の冷却塔を置く建物では、冷却塔の外装に使われるFRP(繊維強化プラスチック)などの材料が燃えやすい性質を持つことがあります。
屋上という目の届きにくい場所にあるだけに、火災が起きても発見が遅れやすいという事情もあります。
まずは自分の建物が階数の対象に入るかどうかを、地階を除いて数え直すところから確認してください。
うちのビルは14階建てです。屋上の冷却塔も対象になりますね。
はい、対象になります。
まずは階数を地階を除いて数え直してみてください。
どんな建築物のどんな冷却塔がこの規制の対象になるのか

対象になる冷却塔の使いみちも条文で絞られています。
地下に駐車場や機械室があっても、その階数は11階のカウントに含めません。地上部分だけを数えてください。
対象になる冷却塔も限定されていて、冷房のために使うものに限られます。暖房専用の熱源設備や、給湯だけに使う設備は条文の対象外です。
複合用途のビルで一部だけ冷房を止めている場合でも、冷却塔として設置されている設備であれば対象から外れるわけではありません。
自分の建物の階数と、屋上の設備が冷房用かどうかを、設備台帳や設計図書で確かめておいてください。
地階の機械室も数えるのかと思っていました。
地階は数えません。
地上部分の階数だけで11階以上かどうかを判断してください。
冷却塔設備はどの基準を満たせば設置できるのか

3つの選択肢のうち、どれか1つを満たせば足ります。
同条第二号 冷却塔の構造に応じ、建築物の他の部分までの距離を国土交通大臣が定める距離以上としたものとすること。
同条第三号 冷却塔設備の内部が燃焼した場合においても建築物の他の部分を国土交通大臣が定める温度以上に上昇させないものとして国土交通大臣の認定を受けたものとすること。
一号は冷却塔本体の主要な部分を不燃材料で造る方法、二号は建物本体までの離隔距離を確保する方法、三号は国土交通大臣の認定を受けた製品を使う方法です。
FRP製の冷却塔は燃えやすい材質のため、一号を選ぶ場合は不燃材料で覆う、または金属製など不燃性の高い製品に替える必要があります。
二号の離隔距離や三号の認定条件は、冷却塔の構造ごとに国土交通大臣が個別に定めています。カタログや性能評価書に記載がないか、まず確認してください。
どの方法を選んでいるかは新築時の設計図書に記録されているはずなので、更新のときにも同じ図書を参照できるようにしておくと安心です。
うちの冷却塔、古いFRP製なので少し心配です。
不燃材料への交換だけでなく、離隔距離や認定品への切り替えでも対応できます。
まずはメーカーに仕様書があるか確認してみてください。
冷却塔の更新や改修で見落としやすいのはどこか

入れ替えで見落としやすい点を整理します。
建築基準法は、建築設備を常時適法な状態に保つ努力義務を建物の所有者・管理者に課しています。
冷却塔を更新や改修するとき、新しい製品が三号の認定を受けたものかどうかを確かめずに、見た目が似ているからと同等品として入れ替えてしまう例があります。
一号を選んで不燃材料で覆っていた冷却塔を撤去し、認定を受けていない普及品に取り替えると、その時点で基準を満たさなくなるおそれがあります。
工事の発注前に、いま設置されている冷却塔がどの号の基準で設置されているかを、設計図書や設備台帳で確認してください。
今度、冷却塔を新しいものに交換する予定です。同じ形なら問題ないですよね。
形が似ていても認定の有無は別です。
交換前に工事業者へ基準を満たす製品かどうか確認してください。
明日からなにを確認すればよいのか

日常の維持管理としてできることを整理します。
- 建築物の階数が地階を除いて11階以上かどうか
- 屋上の冷却塔が一号・二号・三号のどの基準で設置されているか、設計図書に記録が残っているか
- 冷却塔の主要な部分が不燃材料のままか、後年の補修で可燃性の部材に替わっていないか
- 更新や改修の計画があるとき、新しい製品が三号の認定を受けているか
地階を除いた階数が11以上であれば、屋上の冷却塔は今回の基準の対象です。
設計図書が残っていれば、一号・二号・三号のどれで設置されているかがそこに書かれています。
図書が見当たらない場合は、冷却塔の外装材質や建物までの離隔距離を写真と巻尺で記録しておくと、後日の確認がしやすくなります。
更新や改修の計画があるときは、契約前に建築士や施工業者へ認定の有無を確認するよう依頼してください。
まずは設計図書を引っ張り出して確認してみます。
それが一番確実です。
図書が無ければ、巻尺で距離を測って記録しておいてください。
よくある質問
まとめ
うちのビルが11階建てだと分かって、まず階数の数え方を確認します。
設計図書も探してみます。
まずは階数と冷却塔の設置状況を確かめることから始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第129条の2の6
- 建築基準法第8条第1項
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





