カウンター越しに調理が見えるオープンキッチンの飲食店は、堺市内でも増えています。
建築基準法では、こんろなど火を使う設備を設けた調理室の壁と天井に、燃えにくい仕上げを求めています。
では、厨房と客席が一つの部屋になっているとき、客席の壁や天井まで内装制限の対象になるのでしょうか。
堺市消防局の「消防同意・消防用設備等審査基準」は、この点を垂れ壁50cmを目安に整理し、ストーブや暖炉、IHの扱いまで書いています。
この記事では、国の基準と堺市の審査基準を分けて読み、読む順番をたどったうえで、大阪市・東大阪市の基準と比べます。
堺市で、厨房と客席がひと続きのお店を開く予定です。
客席の壁や天井も燃えにくい材料にしないといけませんか?
堺市の審査基準では、垂れ壁などで区画しない限り、部屋のすべてが内装制限の対象になります。
まず国の基準から確かめましょう。
厨房だけでなく、部屋全体が対象になることがあるのですね。
はい、国の基準と堺市の取扱いを分けて読むと整理できます。
順にたどっていきましょう。
- 建築基準法施行令第128条の5第6項は、内装の制限を受ける調理室等の壁と天井を準不燃材料などで仕上げることを求めています
- 堺市の審査基準は、火を使う部分とほかの部分が一体の室は、天井から概ね50cm以上の不燃の垂れ壁などで区画しない限り、室のすべてが対象としています
- 季節的にストーブを使う室や臨時にコンロを使う室は対象にならない一方、暖炉や炉を建物の一部として設けた室は季節的な使用でも対象です
- IH(電磁誘導加熱式調理器)は内装制限の対象外ですが、火災予防条例の規制は火気使用設備・器具として適用されます
- 大阪市・東大阪市の公開されている運用基準には、同じ調理室の取扱いは見当たりません
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目次
国の基準では火を使う調理室にどんな内装が求められるのか

二 次のイ又はロに掲げる仕上げ
イ 準不燃材料でしたもの
ロ イに掲げる仕上げに準ずるものとして国土交通大臣が定める方法により国土交通大臣が定める材料の組合せによつてしたもの
- 建築基準法第35条の2で、かまど・こんろなど火を使用する設備や器具を設けた室が対象に挙がっていると確かめる
- 施行令第128条の4第4項で、建物の種類を確かめる(住宅は階数2以上の最上階以外の階、住宅以外の建物は階を問わない)
- 同じ項のかっこ書きで、特定主要構造部を耐火構造とした建物は除かれると確かめる
- 当たれば「内装の制限を受ける調理室等」になり、第128条の5第6項で壁と天井を準不燃材料などで仕上げる
| 別表の区分 | 耐火建築物 | 準耐火建築物・その他 | 内装箇所と材料 |
|---|---|---|---|
| ⑨ 住宅及び併用住宅の調理室、浴室等 | 斜線(対象外) | 階数2以上の建築物の最上階以外の階 | 調理室等の天井と壁を不燃材料か準不燃材料 |
| ⑩ 住宅以外の調理室、浴室、乾燥室、ボイラー室等 | 斜線(対象外) | 全部 | 調理室等の天井と壁を不燃材料か準不燃材料 |
第7項には、国土交通大臣が定める建築物の部分に前各項を適用しない規定もあります。内装制限の全体像は内装制限と防炎物品の違いを解説した記事で解説しています。
耐火構造の建物なら、調理室の内装制限はかからないのですね。
はい、施行令のかっこ書きで除かれています。
ただし用途や規模による内装制限は別にかかることがあります。
堺市で厨房とひと続きの客席はどこまで内装制限の対象になるのか

ア 火気使用部分とその他の部分とが一体である室については、天井から概ね50cm以上下方に突出した不燃材料で造り又は覆われた垂れ壁、その他これに類するもので当該部分が相互に区画された場合を除き、その室のすべてを内装制限の対象とするものであること。
- 施行令第128条の4第4項で、こんろなどを設けた室が「内装の制限を受ける調理室等」になる
- 堺市の審査基準3(2)の柱書で、この項の「火を使用する場所」の取扱いだと確かめる
- 3(2)アで、火気使用部分とその他の部分が一体の室かを確かめる
- 一体の室なら、天井から概ね50cm以上下に突き出た不燃材料の垂れ壁など、区画するものがあるかを確かめる
- 区画するものが無ければ、その室のすべて(客席側の壁と天井も)を内装制限の対象とし、3(1)で準不燃材料などで仕上げる
反対に、境に垂れ壁を設けて区画すれば、内装制限の対象を火を使う側に絞れることになります。垂れ壁の材料と寸法は、「不燃材料で造り又は覆われた」「概ね50cm以上」の両方を確かめましょう。
垂れ壁があるかどうかで、客席の内装の材料まで変わるのですね。
はい、垂れ壁は不燃材料で概ね50cm以上が目安です。
内装工事の前に、図面で区画の線を確かめておきましょう。
堺市で季節のストーブや暖炉がある部屋は内装制限の対象になるのか

堺市の審査基準は、3(2)のイとウで、使い方と設け方による線引きを書いています。
ウ 暖炉、炉等を壁等の建築物の部分として設けた室については、その使用が季節的なものであっても内装制限の対象とするものであること。(昭和46年1月29日建設省住指発第44号)
| 部屋の例 | 堺市の審査基準の読み方 |
|---|---|
| 冬だけ持ち運べるストーブを置く事務室 | 季節的にストーブを用いる室なので、内装制限の対象にならない(3(2)イ) |
| 催しの日だけ卓上コンロを使う会議室 | 臨時的にコンロ等を用いる室なので、内装制限の対象にならない(3(2)イ) |
| 壁に造り付けた暖炉のあるラウンジ | 暖炉を建築物の部分として設けた室なので、冬しか使わなくても対象(3(2)ウ) |
| 毎日ガスこんろで調理する厨房 | 国の施行令第128条の4第4項のこんろを設けた室として対象(建物の種類と耐火構造の除外は別に確かめる) |
持ち運べるストーブは内装制限の対象にならなくても、火災予防条例の取扱いの基準は別にかかります。可燃物からの距離などは火気使用設備の離隔距離の記事で解説しています。
冬だけ置くストーブなら、部屋の内装は変えなくてよいのですね。
はい、季節的なストーブは対象外です。
ただし造り付けの暖炉は、冬だけの使用でも対象になります。
堺市でIHだけの厨房なら内装制限はかからないのか

- 建築基準法第35条の2の「その他火を使用する設備若しくは器具」にIHが当たるかを確かめる
- 堺市の審査基準3(2)エで、IHは火気を使用しないので当たらず、内装制限が適用されないと確かめる
- 同じエのただし書で、条例等の規制は電気を熱源とする火気使用設備・器具として適用されると確かめる
- 堺市火災予防条例 第1条の【解説及び運用】1(1)イで、IHは使用に際し火災の発生のおそれのある設備に挙がっていると確かめ、条例の位置や構造の基準を当てる
ガスこんろとIHを同じ厨房に並べる場合は、ガスこんろがある以上、3(2)アの考え方で内装制限の範囲を確かめることになります。
IHに替えれば、厨房の内装は自由に選べるのですね。
内装制限の上ではそうなります。
ただし火災予防条例の規制は残るので、設置の前に確かめましょう。
大阪市や東大阪市では調理室の内装制限の扱いは違うのか

大阪市消防局の「消防用設備等の設置に係る運用基準」と、東大阪市消防局が公開している運用基準のPDFを確かめたところ、調理室の垂れ壁・ストーブ・暖炉・IHの取扱いの記載は見当たりませんでした。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 火を使う調理室等の壁と天井を準不燃材料などにする | 建築基準法施行令第128条の5第6項(国の基準) | 同じ | 同じ |
| 一体の室は垂れ壁(不燃・概ね50cm以上)で区画しない限り全体が対象 | 審査基準 第10 3(2)ア | 公開されている運用基準に記載は見当たらない | 公開されている運用基準に記載は見当たらない |
| 季節的なストーブ・臨時のコンロの室は対象外 | 3(2)イ | 記載は見当たらない | 記載は見当たらない |
| 暖炉・炉を建物の一部に設けた室は季節的な使用でも対象 | 3(2)ウ | 記載は見当たらない | 記載は見当たらない |
| IHは内装制限の対象外だが条例の規制は適用 | 3(2)エ | 記載は見当たらない | 記載は見当たらない |
内装制限は建築基準法の規定なので、建築確認を審査する窓口と、所轄の消防署の両方で確かめておくと安心です。消防法令側の内装(屋内消火栓設備の緩和などで問われる仕上げ)の扱いは、鈴鹿市と堺市などを比べた消防法の内装制限の記事で解説しています。
取扱いを細かく書いているのは、3市の中では堺市なのですね。
はい、垂れ壁やIHまで明文で書いているのは堺市です。
ほかの市では、設計の段階で確かめておきましょう。
よくある質問
まとめ
厨房と客席の境に不燃の垂れ壁を入れるか、図面で確かめます。
IHにする場合も、条例の基準は確認します!
堺市では、垂れ壁で区画しない一体の室は全体が内装制限の対象になるのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第2章 第1節 第10 内装制限・防火材料 2 内装制限を受ける建築物等(別表⑨⑩)、3 調理室等の火を使用する場所の取扱い https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/setubikijun.html
- 堺市火災予防条例 第1条【解説及び運用】1 (1) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 公開の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 建築基準法 第35条の2、建築基準法施行令 第128条の4・第128条の5
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の内装制限は、建築確認の窓口と所轄の消防署にご確認ください。





