スプリンクラー設備には、ヘッドから水が出たことを知らせる流水検知装置(アラーム弁)が、階や区域ごとに付いています。
国の消防法施行規則は「各階又は放水区域ごと」に設けるとだけ書いていて、1つの装置が何平方メートルまで受け持てるかは決めていません。
津市消防本部の予防事務審査検査基準は、この広さを3,000平方メートル以下とし、原則として2つ以上の階にまたがらないと書いています。
広さの上限はどの本部もそろっていますが、ヘッドの少ない階を上下の階とまとめてよい条件は、消防本部ごとに違います。
津市でスプリンクラーのある建物を計画していて、流水検知装置をいくつ付けるかで迷っています。
屋上の塔屋にヘッドが数個だけあるのですが、下の階とまとめてもよいのでしょうか。
津市の基準は1つの流水検知装置の受け持ちを3,000平方メートル以下とし、原則として階をまたがないとしています。
例外の条件までは書かれていないので、ほかの本部の書き方も見ておくと相談しやすくなります。
ほかの市では、ヘッドが少ない階ならまとめてよいと書いてあるのですか。
鈴鹿市などはヘッドが10個未満の上下の階、四日市市は30未満の階や塔屋なら認めています。
国の決まりから順に見ていきましょう。
- 消防法施行規則第14条は流水検知装置などの発信部を各階又は放水区域ごとに設けるとし、受け持つ広さの上限は書いていない
- 津市は1つの流水検知装置が受け持つ区域を3,000平方メートル以下とし、原則として2以上の階にわたらないとしている
- 鈴鹿市・埼玉県央広域・四日市市は、内部を見通せる工場や作業所なら12,000平方メートルまで広げてよいと書いている
- 階をまたいでよい条件は、ヘッド10個未満・10個以下・30未満と本部ごとに数字が違う
- 津市は例外の条件を書いていないので、階をまたぐ計画は所轄の消防署に図面で相談する
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目次
国の決まりでは流水検知装置をどの単位で付けるのか

流水検知装置は、この自動警報装置の「発信部」に使う機器として出てきます。
四 自動警報装置は、次に定めるところによること。ただし、特定施設水道連結型スプリンクラー設備にあつては自動警報装置を、自動火災報知設備により警報が発せられる場合は音響警報装置を、それぞれ設けないことができる。
(略)
ロ 発信部は、各階(ラック式倉庫にあつては、配管の系統)又は放水区域ごとに設けるものとし、当該発信部には、流水検知装置又は圧力検知装置を用いること。
施行規則は発信部を各階又は放水区域ごとに設けるとしていますが、1つの流水検知装置が何平方メートルまで受け持てるかは書いていません。
そのため、広さの上限や「階をまたいでよい場合」は、各消防本部が審査基準で決めています。
また、受け持つ区域の広さを数えるときは、施行規則第13条第3項第1号の浴室や便所のように、ヘッドを設けなくてよい部分をどう扱うかも問題になります。
このあと、津市・鈴鹿市・埼玉県央広域(鴻巣市など)・四日市市・大阪市・堺市の6つの消防本部の書き方を並べます。
東大阪市は、手元の公開資料にスプリンクラー設備の節がなかったため比べていません。
国の規則に広さの上限が無いとは知りませんでした。
はい、だから建物のある市の基準で確かめる必要があります。
次は津市の書き方です。
津市では1つの流水検知装置が何平方メートルまで受け持てるのか

同じ8には、装置を置く場所や表示窓の決まりも並んでいます。
⑵ 流水検知装置は、階段又は非常用エレベーター乗降ロビー等の直近で点検に際し、人が容易に出入りできる場所に設けること。
(略)
⑺ 表示装置の表示窓は、流水検知装置ごとに設けること。
⑻ 一の流水検知装置が受け持つことができる警戒区域は、3,000㎡以下とし、原則として二以上の階にわたらないこと。
⑼ 流水検知装置が設けられている場所には、非常用照明装置を設けること。
津市は1つの流水検知装置の受け持ちを3,000平方メートル以下とし、2つ以上の階にまたがらないことを原則にしています。
ただし「原則として」とあるだけで、どんな階なら例外になるのかは書かれていません。
津市の基準は大阪市や鈴鹿市のように記号で義務と指導を分けていないため、どこまでが指導かも文面からは読み取れません。
あわせて、装置は階段や非常用エレベーターの乗降ロビーの近くで人が出入りしやすい場所に置き、その場所に非常用照明を付けることも求めています。
設計の段階で、各階の床面積が3千平方メートルを超えないか、装置を置く場所が階段の近くにとれるかを図面で確かめておきます。
広い階なら、同じ階に装置を2つ付けることもあるのですね。
はい、1つの階が3,000平方メートルを超えれば区域を分けることになります。
工場のように見通しのよい建物は、市によって扱いが変わります。
工場や作業所なら12,000平方メートルまで広げられるのか

鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準の書き方を見てみます。
一の発信部(流水検知装置又は圧力検知装置(この項において「流水検知装置等」という。)が受け持つ区域は、3,000㎡以下(工場、作業所等で主要な出入口から内部を見とおすことができる場合には、12,000㎡以下)とする。▲ この場合において、一の流水検知装置等が受け持つ区域は、省令第13条第3項の規定によりスプリンクラーヘッドを設けない部分の床面積を含めること。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、工場や作業所で主要な出入口から内部を見通せる場合に限り、受け持ちを12,000平方メートル以下としています(どちらも▲=行政指導)。
四日市市消防同意事務審査基準も同じ12,000平方メートルの例外を書いていて、この部分は下線=本市の行政指導です。
一方、津市・大阪市・堺市の基準には工場の例外がなく、3,000平方メートルだけが書かれています。
また鈴鹿市・埼玉県央広域・大阪市は、受け持つ広さに便所や浴室などヘッドを設けない部分の床面積も含めると書いています。
ヘッドのある部分だけを足して3,000平方メートルに収めるのではない点に注意してください。
便所や浴室の広さも足すのは見落としそうです。
はい、区域の面積はヘッドの無い部分も含めて数えます。
次は、いちばん差が出る階をまたぐ例外です。
ヘッドが少ない階は上下の階の流水検知装置にまとめてよいのか

大阪市消防局の運用基準は、次の3つがそろえば上下の階と同じ区域にできると書いています。
1の流水検知装置により警戒する区域は、その面積を3,000平方メートル以下とし、かつ、2以上の階にわたらないものとする。ただし、次に該当する階にあっては、その直下階又は直上階と同一の警戒区域とすることができるものとする。(略)
(1) 1の階のヘッドの設置個数(補助散水栓はヘッド1個とみなす。)が10個以下であること
(2) (1)の階の自動火災報知設備の警戒区域は、単独で設定されていること
(3) スプリンクラー設備の受信部と自動火災報知設備の受信機は、同一の場所に設置されていること
大阪市と堺市はヘッド10個以下(補助散水栓は1個と数える)に、自動火災報知設備の警戒区域が単独であること、受信部と受信機が同じ場所にあることを足した3つの条件です(大阪市は節の見出しに◆=市の行政指導、堺市は★=市独自)。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、ヘッドが10個未満で、流水検知装置のある階の直上階か直下階であり、その階が自動火災報知設備で有効に警戒されていれば認めています。
四日市市は「階又は塔屋」のヘッドが30未満で、自動火災報知設備で有効に警戒されていれば2以上の階を受け持てるとしていて、上下の階という限定は書かれていません。
津市は例外の条件を書いていないため、塔屋などをまとめたいときは、ヘッドの数と自動火災報知設備の警戒区域を図面に書いて所轄の消防署に相談します。
| 消防本部 | 1つの装置の受け持ち | 階をまたいでよい条件 | 基準上の位置づけ |
|---|---|---|---|
| 津市 | 3,000㎡以下 | 「原則として」とあるだけで条件の記載なし | 記号なし(義務と指導の区別なし) |
| 鈴鹿市 | 3,000㎡以下(見通せる工場等は12,000㎡以下) | ヘッド10個未満・直上階か直下階・自動火災報知設備で有効に警戒 | 広さは▲、例外は無印 |
| 埼玉県央広域(鴻巣市など) | 3,000㎡以下(見通せる工場等は12,000㎡以下) | ヘッド10個未満・直上階か直下階・自動火災報知設備で有効に警戒 | 広さは▲、階の原則は● |
| 四日市市 | 3,000㎡以下(見通せる工場等は12,000㎡以下) | 階又は塔屋のヘッド30未満・自動火災報知設備で有効に警戒 | 下線=行政指導 |
| 大阪市 | 3,000㎡以下 | ヘッド10個以下・自動火災報知設備の警戒区域が単独・受信部と受信機が同じ場所 | 節の見出しに◆=行政指導 |
| 堺市 | 3,000㎡以下 | ヘッド10個以下・自動火災報知設備の警戒区域が単独・受信部と受信機が同じ場所 | ★=市独自 |
ヘッドが12個の塔屋なら、四日市市ではまとめられる余地があって、鈴鹿市では難しいのですね。
はい、どちらも自動火災報知設備の警戒が条件なので、ヘッドの個数と一緒に確かめます。
最後に、設計の前に確かめることを整理します。
設計の前に何を確かめておけばよいのか

各本部の基準には、区域を分けたあとの表示についての決まりもあります。
また、一の階に2以上の受け持ち区域を有する防火対象物は、原則として(略)防火区画をまたがらないように設定し、当該流水検知装置等を設ける箇所の付近に受け持ち区域一覧図を備えておくこと。▲
⑷ 階段室にヘッドを設置する場合、当該ヘッドに接続する配管は、いずれの階に設けられた発信部(流水検知装置等)からの配管と接続して差し支えない。
1つの階を2つ以上の区域に分けるときは、鈴鹿市と埼玉県央広域は防火区画をまたがないように分け、装置の近くに受け持ち区域一覧図を備えるよう指導しています。
堺市も、制御弁の近くに警戒区域図を備えるなどして、その弁が受け持つ系統を表示するよう求めています(★)。
階段室のヘッドは、鈴鹿市と埼玉県央広域ではどの階の流水検知装置からの配管につないでもよいとされています。
津市では表示装置の表示窓を流水検知装置ごとに設け、装置の場所に非常用照明を付けることも求めているので、配置図と電気設備図の両方で確かめます。
明日やることは、階ごとの床面積とヘッドの個数を表にし、3,000平方メートルと例外の線にかからないかを確かめることです。
つまり階ごとの面積とヘッドの数を表にしておけば、どの市でも相談しやすいのですね。
そうです、自動火災報知設備の警戒区域も一緒に書いておくと話が早いです。
建物のある市の基準と照らし合わせてみてください。
よくある質問
まとめ
まずは階ごとのヘッドの個数を数えて表にしてみます!
建物のある市の審査基準で区域の分け方を確かめましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第13条・第14条(e-Gov法令検索)
- 津市予防事務審査検査基準 5-3 スプリンクラー設備(津市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第3 スプリンクラー設備(鈴鹿市消防本部)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第3章 第3 スプリンクラー設備(埼玉県央広域消防本部)
- 四日市市消防同意事務審査基準 スプリンクラー設備 6 流水検知装置及び自動警報装置(四日市市消防本部)
- 大阪市消防局 消防用設備等の設置に係る運用基準 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備 第7 自動警報装置(大阪市消防局)
- 堺市消防同意・消防用設備等審査基準 スプリンクラー設備(堺市消防局)
※本記事は各消防本部が公表している審査基準と消防法施行規則に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





