小さなグループホームでは、スプリンクラー設備の代わりにパッケージ型自動消火設備(Ⅱ型)を付けることがあります。
このとき悩ましいのが、居室に付いた押入やクローゼットです。
押入の床面積を足すとⅡ型1台で守れる広さを超え、Ⅱ型が2台になることがあるからです。
堺市では、堺市消防局の審査基準が、条件を満たす押入に住宅用下方放出型自動消火装置を付けてよい取扱いを定めています。
この記事では、国の基準と堺市の運用を分けて読み、大阪市の書き方との違いまで順にたどります。
堺市で小さなグループホームを計画しています。
居室ごとに押入があって、パッケージ型の台数が増えそうです。
堺市の審査基準には、押入(収納設備)に住宅用の自動消火装置を使える取扱いがあります。
使える場面と条件が決まっています。
押入だけ別の装置で守ってよいのですね。
はい、ただし押入の広さと点検に条件があります。
国の基準と堺市の運用を分けて見ていきましょう。
- 国の告示では、パッケージ型自動消火設備のⅡ型は防護面積13平方メートルの区分だけで、同時放射区域は区画された居室ごとに設定します
- 13平方メートル以下の居室に押入を足して13平方メートルを超えると、国の質疑応答はⅡ型を2台以上が求められる場面だとしています
- 堺市の審査基準は、その場面で押入(収納設備)に住宅用下方放出型自動消火装置を設置することができるとしています(◆=消防庁の通知を参考にした指導基準)
- 条件は、一つの押入が3平方メートル以下、技術基準どおりの性能で性能評定品を使うこと、Ⅱ型の点検基準に準じた定期点検の3つです
- 大阪市は同じ趣旨を特例基準(無印=法令基準)に置き、「13平方メートルを超える場合」などの場面の限定を書いていません。東大阪市の公開資料には該当する項目がありません
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目次
国の基準ではグループホームの押入はどう守るのか

高齢者のグループホームなど、消防法施行令別表第一(6)項ロの施設は、施行令第12条第1項第1号でスプリンクラー設備の対象になります。
そのスプリンクラー設備に代えて使えるのが、パッケージ型自動消火設備です。
告示の第三は、Ⅱ型を置ける建物を次のように定めています。
二 壁、床、天井、戸等で区画されている居室等の面積が十三平方メートルを超えている場合においては、同時放射区域を二以上に分割して、設定することができること。
三 パッケージ型自動消火設備は、当該設備の防護面積(二以上のパッケージ型自動消火設備を組み合せて使用する場合にあっては、当該設備の防護面積の合計)が各同時放射区域の面積以上であるものを設置すること。
つまり、Ⅱ型1台が守れる広さは13平方メートルで、同時放射区域がそれより広ければ、台数を足して防護面積を合わせることになります。
ふすまは区画に数えないので、ふすまで仕切った押入は居室と同じ区域に入ると読めます。
国の基準を順番に並べます。
- 施行令第12条第1項第1号が、グループホームなどにスプリンクラー設備を求めます
- 省令第2条が、スプリンクラー設備に代えてパッケージ型自動消火設備を使えるとします
- 告示第13号 第三第二号が、Ⅱ型を置ける建物を延べ面積275平方メートル未満などに限ります
- 告示第四が、同時放射区域を区画された居室ごとに設定し、防護面積がその面積以上のものを設置するよう求めます
- 告示第十八の表で、Ⅱ型は防護面積13平方メートルの区分だけです
Ⅱ型は1台で13平方メートルまで、ということですね。
はい、居室と押入を合わせて13平方メートルを超えると、1台では足りなくなります。
そこで国の質疑応答が出ています。
押入を足すと13平方メートルを超えるとき国はどう答えているのか

問いの前半は、Ⅱ型が2台以上になる場面を次のように書いています。
2 設置する住宅用下方放出型自動消火装置は、収納設備を防護できる性能を有していること。
3 Ⅱ型の点検時には住宅用下方放出型自動消火装置についてもⅡ型の点検基準に準じた点検が定期的に実施され適切に維持管理されていること。
差し支えない。
また、問いの中には次のなお書きがあります。
そのため、実際に使えるかは建物のある市の消防本部の判断になり、各市の基準にどう書かれているかが大事になります。
この質疑応答の全文の読み方は令第32条とパッケージ型消火設備の実例で取り上げています。
国の質疑応答では「差し支えない」とされているのですね。
はい、ただ第32条は消防長や消防署長が認める仕組みです。
次に堺市の書き方を見ましょう。
堺市は押入の住宅用自動消火装置をどう定めているのか

イ 居室や収納設備の形状等の理由から1台のⅡ型では防護し難い場合
イ 設置する住宅用下方放出型自動消火装置は、収納設備を防護でき、かつ「住宅用下方放出型自動消火装置の性能及び設置の基準について」(平成6年3月9日消防予第53号)の別添「住宅用下方放出型自動消火装置の技術基準」による性能等を有するものであること。なお、性能評定品を使用すること。
ウ 設置する住宅用下方放出型自動消火装置は、Ⅱ型の点検基準に準じた点検が定期的に実施され適切に維持管理されていること。
設置状況のアとイは、国の質疑応答の問いの前半をそのまま場面として書き出したものです。
添えられた第3-9図は居室12.5平方メートルに押入2.5平方メートル(合計15平方メートル)、第3-10図は居室10平方メートルに押入2.1平方メートルで形がいびつな例を描いています。
条件のイは、国の質疑応答の「防護できる性能」を、平成6年消防予第53号の技術基準による性能と性能評定品という形で具体的に書いています。 柱書の末尾の◆③は、通知一覧で平成28年消防予第278号を指しています。
堺市の凡例では、◆は「指導基準のうち、消防庁の通知等を参考に定めたもの」です。
つまり、この取扱いは国の質疑応答を参考にした堺市の指導基準として位置付けられています。
なお、国の質疑応答にあった「Ⅱ型との連動は必ずしも要さない」というなお書きは、堺市の4には書かれていません。
連動をどうするかは、計画の段階で所轄の消防署に確かめておくと安心です。
堺市の基準は、国の質疑応答を場面と条件に分けて書き直しているのですね。
はい、さらに技術基準と性能評定品まで書いてあります。
装置を選ぶときの目安になります。
堺市で押入に住宅用自動消火装置を計画するときはどう確かめるのか

計画の前提になる項目を並べます。
ア 座面(正面幅が概ね800mm以上あるもの)及び背面からなるもの
イ 表面が合成皮革、クッション材が主にポリウレタンで構成されているもの
このほか、Ⅱ 1は機器に認定品を使うこと(★)、Ⅱ 3(5)イは受信装置が常時人のいる場所にないとき自動火災報知設備の受信機等に火災表示と作動表示を出すこと(★)を求めています。
★は、堺市消防局が防火安全性の向上のために独自に定めた指導基準です。 堺市の基準に沿って、押入の扱いを確かめる順番をまとめます。
- 建物がⅡ型を置ける延べ面積275平方メートル未満の施設か、合成皮革のソファー等がないかを確かめます
- 居室ごとに、ふすま等で仕切った押入を含めた同時放射区域の面積を出します
- 13平方メートルを超えるか、形のせいで1台で守りにくいかを確かめます(4(1)のア・イ)
- 押入一つずつの床面積が3平方メートル以下かを測ります
- 住宅用下方放出型自動消火装置は消防予第53号の技術基準による性能を持つ性能評定品を選びます
- Ⅱ型の点検にあわせて、装置もⅡ型の点検基準に準じて定期的に点検する体制を決めます
- 連動の有無も含め、図面を持って所轄の消防署に相談します
押入が3平方メートルを超えていたら、この取扱いは使えないのですね。
はい、条件のアに当たりません。
その場合はⅡ型の台数で防護面積を合わせる計画になります。
大阪市の書き方は堺市とどこが違うのか

(1) 一の収納設備の床面積が3平方メートル以下であること
(2) 収納設備を防護できる性能を有している住宅用下方放出型自動消火装置が設置されていること
(3) (2)の住宅用下方放出型自動消火装置は、パッケージ型自動消火設備Ⅱ型の点検基準(該当する点検項目に限る。)に準じた点検が定期的に実施され、適切に維持管理されていること
堺市の「住宅用下方放出型を設置することができる」と向きは逆ですが、押入を住宅用下方放出型で守るという中身は同じです。
大阪市の第4には◆が付いていません。
大阪市の凡例では、無印は法令基準(消防庁予防課長通知等で示されている法令解釈基準を含む)で、◆が行政指導基準です。
同じ国の質疑応答をもとにしながら、堺市は◆(指導基準)、大阪市は無印(法令基準)と、位置付けの印が分かれています。
また、大阪市の2は「13平方メートルを超える場合」「1台では守りにくい場合」という場面の限定を書いていません。
第4 1には、スプリンクラー設備の特例基準(第14)を5・9・10・11を除いて借りる項目もありますが、この記事では押入の2だけを扱います。
東大阪市は、公開している消防用設備等の運用基準(6分野)にパッケージ型自動消火設備の項目がありません。
3市の書き方を表にします。
| 項目 | 堺市 | 大阪市 | 東大阪市 |
|---|---|---|---|
| 置き場所 | 第3 Ⅱ 4 特例適用基準 | 第8章 第2節 第4 特例基準 2 | 公開資料に項目なし |
| 根拠の書き方 | 政令第32条を適用 | 令第32条又は条例第47条を適用 | ― |
| 印 | ◆③(消防予第278号を参考にした指導基準) | 無印(法令基準) | ― |
| 使える場面 | 13平方メートルを超える場合・1台で防護し難い場合 | 場面の限定なし(告示第3第2号の防火対象物の収納設備) | ― |
| 押入の広さ | 一つ3平方メートル以下 | 一つ3平方メートル以下 | ― |
| 装置の性能 | 消防予第53号の技術基準による性能+性能評定品 | 収納設備を防護できる性能 | ― |
| 点検 | Ⅱ型の点検基準に準じ定期的に | Ⅱ型の点検基準(該当する点検項目に限る)に準じ定期的に | ― |
| Ⅱ型との連動 | 記載なし | 記載なし | ― |
違いは、使える場面を書くかどうか、装置の性能の書き方、印の位置付けです。
同じ国の質疑応答から、市によって書き方が少しずつ違うのですね。
はい、堺市は場面と性能評定品まで書いています。
建物のある市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず、居室ごとに押入を含めた面積と、押入一つずつの床面積を一覧にします。
3平方メートルと13平方メートルの線を図面で確かめます!
装置の評定と点検の体制まで決めておけば、パッケージ型の台数が早く固まります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第3 パッケージ型自動消火設備 Ⅱ 細目 1 機器・2 設置要件(2)・3(5)イ・4 特例適用基準(1)(2)・第3-9図・第3-10図・通知一覧、第1章 総則 4 凡例 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第8章 第2節 パッケージ型自動消火設備 第4 特例基準、凡例 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の運用基準 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行令 第12条第1項第1号・第32条
- 必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令 第2条
- パッケージ型自動消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成16年消防庁告示第13号)第三第二号・第四第一号〜第三号・第十八第二号 https://www.fdma.go.jp/laws/kokuji/assets/h16_kokuji13.pdf
- 消防庁予防課長「消防用設備等に係る執務資料の送付について」(平成28年9月13日 消防予第278号) https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/280913_yo278.pdf
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。個々の建物の扱いは、所轄の消防署にご確認ください。





