四日市市消防本部の「四日市市消防同意事務審査基準」には、地下街などに置く無線通信補助設備の節があります。
その最初の項目は、設備を自動中継器を設けた方式とするという指導です。
同じ設備でも、電波が届かなくてよい部屋や地上の接続端子、保護箱に入れる接続用ケーブルの長さは、消防本部ごとに書き方が違います。
この記事では四日市市の基準を原文でたどり、国の条文と鈴鹿市・津市・埼玉県央広域・大阪市・堺市の基準とも比べます。
四日市市で地下の売り場がある建物を管理しています。
無線通信補助設備の改修を相談されて、何を基準に見ればよいか迷っています。
四日市市の基準は、まず設備の方式から指定しています。
国の規則には無い項目なので、先に押さえておきましょう。
国の規則だけを見ていては足りないのですね。
はい、ほかの本部と並べると違いがよく見えます。
国の条文から順にたどっていきましょう。
- 国の基準(消防法施行令第29条の3・消防法施行規則第31条の2の2)は、地下街で延べ面積1,000㎡以上に設置を求め、端子の場所と高さ、保護箱の色と表示までを定めています
- 四日市市の基準は、自動中継器を設けた方式とし、通話は単信方式、出力は地上側10W・地下側1Wとしています(全文に下線=市の行政指導)
- 電波が届かなくてよい室は、四日市市・埼玉県央広域・大阪市・堺市が歩行距離20m以下の室とするのに対し、津市は10m以下の室としています
- 地上の接続端子は、出入口の間の歩行距離が300m以上なら2か所以上という線が、四日市市・津市・埼玉県央広域・大阪市・堺市に共通しています
- 保護箱に入れる接続用ケーブルは、四日市市と埼玉県央広域が2m以上、津市・大阪市・堺市が5m以上で、津市は増幅器の非常電源を2時間以上としています
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目次
無線通信補助設備の基準は国と消防本部でどう分かれているのか

まず国の条文が何を決めていて、どこを消防本部の判断に任せているかを確かめます。
無線通信補助設備は、別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のものに設置するものとする。
2 (略)
二 無線通信補助設備は、前項に規定する防火対象物における消防隊相互の無線連絡が容易に行われるように設けること。
一 (略)当該漏洩同軸ケーブル等は、消防隊相互の無線連絡が容易に行われるものとして消防長又は消防署長が指定する周波数帯における電波の伝送又は輻射に適するものとすること。
八 (略)
イ 端子は、地上で消防隊が有効に活動できる場所及び防災センター等に設けること。
ハ 端子は、床面又は地盤面からの高さが〇・八メートル以上一・五メートル以下の位置に設けること。
ニ (略)(ロ)保護箱の表面は、赤色に塗色し、「無線機接続端子」と表示すること。
令の(十六の二)項は地下街で、規則は漏洩同軸ケーブル等で電波を伝えることや、端子を地上と防災センター等に置くこと、高さ0.8m以上1.5m以下、赤い保護箱といった線を引いています。
周波数帯は消防長又は消防署長が指定するとしていて、四日市市は平成28年3月1日の消防本部告示第1号で260メガヘルツ帯と400メガヘルツ帯を指定しています。
一方で、どんな方式で組むか、電波をどこまで届かせるか、地上の端子をいくつ置くかは条文に数字が無く、各本部の基準が書き足していて、鈴鹿市と堺市の基準は国の通知「無線通信補助設備の性能及び設置の基準の細目について」(昭和53年1月5日 消防予第1号)を引いています。
地下街を持つ建物では、まず管轄の消防本部の基準のどの節が当たるかを確かめるのが出発点です。
地下街なので、規則を見れば足りると思っていました。
規則が決めているのは大枠までです。
細かな組み方は消防本部の基準で確かめましょう。
四日市市が指導する自動中継器方式とはどんな組み方なのか

ほかの本部が方式を並べるだけなのと比べると、ここがいちばん大きな違いです。
1 無線通信補助設備の方式
自動中継器を設けた方式とすること。(別図参照)
7 自動中継器
自動中継器は、前6(1)、(6)アを準用するほか、次によること。
(1)通話方式は、単信方式とすること。
(2)電力増幅部の出力は、地上側では10W、地下側では1Wとすること。
1と7はどちらも全文に下線が引かれていて、凡例では下線は市の行政指導を示し、総則で行政指導は関係者に義務を課すものではないとしています。
別図は、漏洩同軸ケーブル(LCX)方式・空中線方式・その併用の3つを描いたうえで、地上の空中線を防災センターの横の自動中継器につなぐ形を示し、地上の空中線には「地下街に限る」と注記しています。
準用している6(1)は「ほこり、湿気等によって機能に異常を生じないこと」、6(6)アは防災センター・中央管理室・電気室等で不燃材料で造られた室内に置くという設置場所の項目です。
鈴鹿市・津市・埼玉県央広域は漏洩同軸ケーブル方式・漏洩同軸ケーブル及び空中線方式・空中線方式の3つを並べ、大阪市と堺市は「いずれか」とするだけで、自動中継器を指定する本部はほかにありません。
なお津市は、増幅器の非常電源を規則の30分間以上より長い2時間以上としています。
方式が違うと、改修のときに機器の選び方から変わりそうですね。
はい、自動中継器の有無は設計の最初に確かめる点です。
見積りを取る前に四日市市消防本部へ相談しましょう。
電波が届かなくてよい部屋は市によってどう違うのか

どこまで電波を届かせるかは、各本部が「この限りでない」部分を並べて決めています。
接続端子に無線機を接続し、防火対象物内を移動する無線機と通信を行った場合、全区域にわたり無線連絡ができること。ただし、次に掲げる部分については、この限りでない。
ア 耐火構造の壁又は床若しくは特定防火設備で区画された床面積の合計が100㎡以下の倉庫、機械室、電気室その他これらに類する部分。
イ 室内の各部分から一の出入口までの歩行距離が20m以下の室で、各出入口のシャッター及び扉が閉じられた状態における当該室内の部分。
ウ 柱、壁、金属物等のある場所のうち、電波が著しく遮へいされる僅かな部分で、床面積が100㎡以下の部分。
例外の3つは、埼玉県央広域・大阪市・堺市もほぼ同じ言葉で書いていて、大阪市は◆(市の行政指導基準)、堺市は国の通知を示す◆①を付けています。
目立つ違いの1つ目は津市で、室の例外を「1の出入口から室内の最も遠距離にある部分までの歩行距離が10m以下となる室」としていて、ほかの本部の20mの半分です。
2つ目は例外の追加で、埼玉県央広域は「有効に通信が行える直通階段の部分」を、津市は所有者の異なる地下街がつながる場合に接続点から150mを超える部分のうち消防長が認める部分を加えています。
四日市市はウの遮へい部分に「床面積が100㎡以下」と面積の線を足していて、この部分にだけ下線があります。
| 本部 | 電波が届かなくてよい室 | ほかに足している例外 |
|---|---|---|
| 四日市市消防本部 | 各部分から出入口まで歩行距離20m以下の室 | 遮へい部分は床面積100㎡以下に限る(下線) |
| 津市消防本部 | 出入口から最も遠い部分まで歩行距離10m以下の室 | 所有者の異なる地下街の接続点から150mを超える部分で消防長が認める部分 |
| 埼玉県央広域消防本部 | 各部分から出入口まで歩行距離20m以下の室 | 有効に通信が行える直通階段の部分 |
| 大阪市消防局 | 各部分から出入口まで歩行距離20m以下の室(◆) | ― |
| 堺市消防局 | 各部分から出入口まで歩行距離20m以下の室(◆①) | ― |
| 鈴鹿市消防本部 | 例外の項目は見当たらない | ― |
津市は設置届に付ける設備図に「設計上の受信不能箇所」を明記するよう求めているので、図面の段階で例外の部屋を洗い出しておくと手戻りが減ります。
倉庫の奥まで電波を届かせないといけないのか心配でした。
区画された100㎡以下の倉庫などは例外です。
ただ津市の室の線は10mなので、図面で測っておきましょう。
地上の接続端子はどこにいくつ置くのか

規則は「地上で消防隊が有効に活動できる場所及び防災センター等」とだけ書いています。
(1)地上で消防隊が指揮本部等として有効に活動できる場所、及び守衛室等常時人がいる場所(防災センター又は中央管理室が設けられている場合は、当該場所)に設けることとし(略)
(2)省令第31条の2の2第1項第8号イにより、地上に設けなければならない接続端子の数は、一の出入口までの歩行距離が300m以上となる場合、2ケ所以上とすること。
(3)地上に設ける接続端子は、次によること。
前2(3)の用途に供する接続端子から5m以上隔離して設けること。
規則第31条の2の2は現在は項に分かれておらず、原文の「第1項第8号イ」は第8号イのことです。
300mで2か所以上という線は、津市・埼玉県央広域・堺市が「一の出入口から他の最も離れた出入口までの歩行距離」として書き、大阪市は地下街の場合として書いています。
(3)の「前2(3)の用途」は警察用・防災管理用などの共用の無線通信のことで、その端子から5m以上離すという線は埼玉県央広域と堺市も同じです。
地上の端子の場所は、ポンプ車や無線車が近づけて車載無線で基地局と通信できることも留意点に挙がっているので、外構を変える工事のときにも影響します。
| 本部 | 地上の端子の数 | 共用の端子との関係 | 1つの保護箱に入れる端子 |
|---|---|---|---|
| 四日市市消防本部 | 出入口までの歩行距離300m以上で2ケ所以上 | 5m以上離す | 記載なし |
| 津市消防本部 | 最遠の出入口まで300m以上で2箇所以上 | 消防用の端子と別にする | 260と400の専用端子を収納 |
| 埼玉県央広域消防本部 | 最も離れた出入口まで300m以上で2箇所以上 | 5m以上離す | 記載なし |
| 大阪市消防局 | 地下街で300m以上なら2箇所以上(◆) | 記載なし | 400用1個と260用1個(◆) |
| 堺市消防局 | 最も離れた出入口まで300m以上で2箇所以上(◆①) | 5m以上離す(◆①) | 260用1個と400用1個(★) |
| 鈴鹿市消防本部 | 記載なし | 記載なし | 記載なし |
出入口が建物の両端にある地下街では、出入口の間の歩行距離を図面で測って、地上の端子が足りているかを確かめます。
入口が両端にあると、端子が2か所要ることもあるのですね。
はい、300mが目安の線です。
出入口の間の歩行距離を図面で測っておきましょう。
保護箱と接続用ケーブルは明日からどこを確かめればよいのか

中に入れておく接続用ケーブルの長さや鍵は、各本部の基準が書き足しています。
(3)地上に設けるものは、施錠できる構造(統一鍵使用とする。)であること。
(6)(略)保護箱の前面に「消防隊専用無線機接続端子」とし、1字につき2cm以上とすること。
(7)保護箱の表面の塗装は、赤色とすること。
5(1)可とう性のある長さ2m以上のものであること。
四日市市と埼玉県央広域は接続用ケーブルを2m以上とし、津市・大阪市・堺市は5m以上で、大阪市と堺市は周波数ごとに設けるとし、津市は消防長が認めれば5m未満にできるとしています。
保護箱の色は、鈴鹿市と埼玉県央広域が「赤色又は朱色」とし、前面に直径10cm以上の消防章を設けたものは除くとしています。
鍵は、四日市市が統一鍵(この部分だけ下線)、鈴鹿市と埼玉県央広域が消火栓の鍵などの形を図で示し、津市は有機ガラス等を破壊して解錠できる構造としています。
確かめる順番は次のとおりです。
- 管轄が四日市市なら、改修の前に自動中継器を設けた方式になっているかを確かめる
- 受信できない室があれば、区画・面積・出入口までの歩行距離が管轄の基準の例外に当たるかを照らす
- 出入口の間が300m以上の建物で、地上の端子が2か所以上あるかを確かめる
- 保護箱の色・表示・鍵と、中の接続用ケーブルの長さを管轄の基準と見比べる
- 増幅器や自動中継器がある場合は、非常電源の容量を確かめる(津市は2時間以上)
つまりケーブルの長さひとつでも、本部ごとに答えが違うのですね。
そうなんです、点検の記録と基準を並べて見るのが近道です。
合わない点は改修の計画に入れておきましょう。
よくある質問
まとめ
まず四日市市消防本部に方式を相談してから見積りを取ります!
端子の位置と保護箱の中身も一緒に確かめると話が早いです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第29条の3、消防法施行規則 第31条の2の2(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第2章 第22 無線通信補助設備 消火活動上必要な施設のPDF
- 四日市市消防本部告示第1号(平成28年3月1日)無線通信補助設備の周波数帯の指定 告示のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第22 無線通信補助設備
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-23 無線通信補助設備
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第4章 第22 無線通信補助設備
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第5章 第5節 無線通信補助設備
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第24 無線通信補助設備
※本記事は各消防本部が公開している審査基準・運用基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。





