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自動車車庫はなぜ外壁を耐火構造にしなければならないのか|建築基準法施行令が定める準耐火建築物の基準を解説

点検員が自動車車庫の外壁を確認している様子

自動車車庫は消防法だけでなく建築基準法施行令の規制も受けます。
床面積の合計が150平方メートル以上になると、耐火建築物か準耐火建築物にしなければなりません。
ところが「主要構造部を不燃材料にすれば準耐火建築物になる」という理解のままでは、自動車車庫等では通用しないことがあります。
自動車車庫等の用途では、準耐火建築物として認められる外壁の仕様が政令で絞り込まれています。

うちの車庫、床面積が150平方メートルを超えそうなんです。
これって構造から変わってきますか。

はい、床面積の合計が150平方メートル以上になると建築基準法第27条第3項で構造の格上げが必要になります。
まずは用途と規模を一緒に確認しましょう。

不燃材料で主要構造部を作れば準耐火建築物になると思っていました。
それだけでは足りないんですか。

自動車車庫等では外壁を耐火構造にする仕様でなければ認められません。
条文を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 床面積の合計が150平方メートル以上の自動車車庫等は、耐火建築物か準耐火建築物にしなければなりません
  • 準耐火建築物には主要構造部を準耐火構造にするイ型と、政令の基準に適合させるロ型の2種類があります。
  • 自動車車庫等((6)項用途)では、ロ型のうち施行令第109条の3第2号の仕様は使えません
  • 認められるのは外壁を耐火構造にし屋根も遮炎性能を満たす第1号の仕様だけです。
  • 主要構造部を不燃材料にしただけでは、自動車車庫等の準耐火建築物として認められません

自動車車庫の準耐火建築物は外壁を耐火構造にする基準を示した図解

自動車車庫はなぜ耐火建築物や準耐火建築物にしなければならないのか

自動車車庫の建物と駐車している車
自動車車庫は建築基準法上「特殊建築物」に区分され、一定の規模を超えると構造の格上げが必要になります。
どのような建物が対象になるのか、条文から確認します。
(建築基準法別表第一(い)欄(6)項)自動車車庫、自動車修理工場その他これらに類するもので政令で定めるもの
(建築基準法第27条第3項柱書・第1号)次の各号のいずれかに該当する特殊建築物は、耐火建築物又は準耐火建築物(略)としなければならない。別表第一(い)欄(五)項又は(六)項に掲げる用途に供するもので、その用途に供する部分の床面積の合計が同表(に)欄の当該各項に該当するもの((六)項は150平方メートル以上)
床面積150平方メートルが分かれ目になります。
自動車車庫として使う部分の床面積は、区画をまたいでいても合計して判定します。
150平方メートル以上になると、法第27条第3項により耐火建築物か準耐火建築物のいずれかにしなければなりません。
この基準を満たすかどうかで、以降の構造計画がすべて変わってきます。

150平方メートルって、車庫だけで超えることもあるんですね。
うちは2区画あるので少し不安です。

はい、複数区画をまとめて自動車車庫として使う場合は床面積を合算して判定します。
まずは図面で床面積を出してみましょう。

自動車車庫の準耐火建築物はなぜ選び方が制限されるのか

自動車車庫の建物と設計図
準耐火建築物には主要構造部を準耐火構造にする「イ型」と、政令の技術的基準に適合させる「ロ型」の2種類があります。
自動車車庫等では、このうちロ型の一部が使えません。
(建築基準法第27条第3項柱書)次の各号のいずれかに該当する特殊建築物は、耐火建築物又は準耐火建築物(別表第一(い)欄(6)項に掲げる用途に供するものにあつては、第2条第9号の3ロに該当する準耐火建築物のうち政令で定めるものを除く。)としなければならない。
ロ型準耐火建築物の一部が、政令であらかじめ除外されています。
イ型(主要構造部を準耐火構造にしたもの)にはこの除外は掛かりません。
除外されるのがロ型のうちのどの仕様かは、次の条文で決まります。
自動車車庫等((6)項用途)だけに掛かる限定である点に注意してください。

準耐火建築物にも種類があるって知りませんでした。
うちはどちらのタイプになるんでしょう。

主要構造部を準耐火構造にするイ型と、政令の基準に適合させるロ型の2種類があります。
自動車車庫等ではロ型の一部が使えない点に注意が必要です。

施行令第109条の3のどちらの基準なら認められるのか

外壁が厚い建物と薄い建物の比較
政令が具体的にどちらの基準を除外しているのか、条文で確認します。
号ごとにまったく違う仕様が並んでいます。
(建築基準法施行令第115条の4)法第27条第3項の規定により政令で定める準耐火建築物は、第109条の3第1号に掲げる技術的基準に適合するもの(同条第2号に掲げる技術的基準に適合するものを除く。)とする。
自動車車庫等で認められるのは第109条の3第1号の仕様だけです。
第1号は外壁を耐火構造にし、屋根も延焼を防ぐ性能を求める仕様です。
第2号は柱やはりを不燃材料に、外壁を防火構造程度にとどめる仕様で、こちらは対象外になります。
「主要構造部を不燃材料にすれば足りる」という理解は、自動車車庫等では通用しません。

うちは主要構造部を不燃材料にする案で進んでいました。
これだと自動車車庫では駄目なんですか。

残念ながら第109条の3第2号にあたる仕様は、自動車車庫等では除外されています。
外壁を耐火構造にする第1号の仕様に変更する必要があります。

なぜ外壁を耐火構造にする仕様だけが残るのか

薄い外壁と車や燃料缶
条文はこの使い分けの理由までは書かれていませんが、実務で見落としやすいポイントを整理します。
落とし穴は「不燃材料にした」で安心してしまうことです。
(建築基準法施行令第109条の3第2号)主要構造部である柱及びはりが不燃材料で、その他の主要構造部が準不燃材料で造られ、外壁の延焼のおそれのある部分、屋根及び床が次に掲げる構造であること(イ 外壁の延焼のおそれのある部分にあつては、防火構造としたもの (略))
第109条の3第2号は、自動車車庫等以外の用途では通常に使える仕様です。
主要構造部を不燃材料でそろえ、外壁は防火構造でよいという組み合わせです。
ところが自動車車庫等((6)項用途)に限っては、第115条の4がこの第2号を名指しで除外しています。
他用途の実績や感覚のまま外壁を防火構造にとどめると、自動車車庫等では基準を満たしません。

他の建物では不燃材料の仕様で通っていたので、てっきり同じだと思っていました。
用途によって違うんですね。

第115条の4が自動車車庫等だけを名指しで除外しています。
他用途の実績をそのまま持ち込まないよう注意してください。

自動車車庫を計画するとき明日から何を確認すればよいのか

点検員が自動車車庫を見上げている様子
実務では設計の早い段階で用途と規模を突き合わせておくことが大切です。
確認する順番を整理します。
  • 建物の用途が別表第一(6)項(自動車車庫、自動車修理工場その他これらに類するもの)に該当するか確認する
  • その用途に供する部分の床面積の合計が150平方メートル以上か確認する
  • 該当する場合は耐火建築物か準耐火建築物のどちらで計画するかを決める
  • 準耐火建築物を選ぶ場合は、外壁を耐火構造とし屋根も遮炎性能を満たす第109条の3第1号の仕様で計画する
  • 設計担当者や確認申請の窓口と、この仕様であることを早い段階ですり合わせる
手順は用途の該当性確認から始めます。
規模基準を満たせば、外壁を耐火構造にする仕様を最初から前提に計画すると手戻りがありません。
確認申請の前に窓口へ相談しておくと安心です。

早めに用途と規模を確認しておけば、設計の手戻りも防げそうです。
まず何から着手すればいいですか。

まず用途が(6)項に該当するかと床面積を確認し、該当すれば外壁を耐火構造にする仕様を前提に計画してください。
確認申請の窓口にも早めに相談しておくと安心です。

よくある質問

Q自動車車庫は必ず耐火建築物にしなければならないのか?
Aいいえ。床面積の合計が150平方メートル未満であれば、建築基準法第27条第3項第1号の対象外です。ただし規模基準を超える場合は、耐火建築物または準耐火建築物のいずれかを選ぶことになります。
Q準耐火建築物のイ型なら自動車車庫等でも問題ないのか?
A問題ありません。イ型(主要構造部を準耐火構造にしたもの)は施行令第115条の4の除外規定の対象外で、自動車車庫等でも使えます。制限を受けるのはロ型の一部だけです。
Q自動車修理工場も同じ扱いになるのか?
Aはい。別表第一(6)項は自動車車庫と自動車修理工場その他これらに類するものを合わせて規定しており、どちらも同じ規模基準・同じ準耐火建築物の制限を受けます。
Q屋根の遮炎性能とはどのくらいの時間か?
A施行令第109条の3第1号では、加熱開始後20分間屋外に火炎を出す原因となるき裂その他の損傷を生じないことが求められています。国土交通大臣が定めた構造方法か認定を受けたものを用いる必要があります。

まとめ

自動車車庫等は建築基準法上の特殊建築物で、別表第一(6)項に区分されます。
床面積の合計が150平方メートル以上になると、耐火建築物か準耐火建築物にしなければなりません
準耐火建築物にはイ型(主要構造部を準耐火構造)とロ型(政令の技術的基準)の2種類があります。
自動車車庫等では、ロ型のうち施行令第109条の3第2号の仕様が政令で除外されています
認められるのは外壁を耐火構造にし、屋根も遮炎性能を満たす第1号の仕様だけです。
主要構造部を不燃材料にするだけの計画は、自動車車庫等では基準を満たしません
計画の早い段階で用途と規模を確認し、外壁の仕様を確定させておくことが大切です。

自動車車庫の構造基準、条文の根拠までよく分かりました。
ありがとうございました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第2条第9号の3・第27条第3項・別表第一
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条の3・第115条の4

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や特定行政庁の運用は異なる場合があります。個別の判断は建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。

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