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増築しても敷地内の通路までやり直さなくてよいのはなぜか|建築基準法施行令第137条の6の3が定める緩和の範囲を解説

増築と敷地内通路の緩和のイメージ

建物を増築するとき、敷地内の通路まで最新の基準に合わせなければならないと思っていませんか。
建築基準法施行令第137条の6の3は、増築や改築をする部分の規模が一定の範囲に収まれば、敷地内の避難上及び消火上必要な通路までやり直さなくてよいという緩和を定めています。
ただし、この緩和はどんな増築でも無条件に使えるわけではなく、対象となる面積の割合や、居室かどうかによって扱いが変わります。
この記事では、緩和の対象・要件・見落としやすい点までを条文に沿って解説します。

今度、建物の一部を増築する予定です。
敷地内の通路まで今の基準に合わせないといけないんでしょうか。

増築や改築の規模が一定の範囲に収まれば、敷地内の通路までやり直す必要はありません。
建築基準法施行令第137条の6の3という緩和の規定があります。

それは助かります。
でも、どんな増築でも使える緩和なんでしょうか。

いいえ、増築部分の床面積の割合や居室かどうかなど、いくつかの条件を満たす必要があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 増築や改築が一定の範囲に収まれば、敷地内の避難上及び消火上必要な通路までやり直す必要はありません(建築基準法施行令第137条の6の3)。
  • 対象となる技術的基準は第五章第六節(敷地内の通路等)で、地下街に関する第128条の3は除かれます。
  • 緩和を受けるには、増築部分の対象床面積の合計を基準時における延べ面積の20分の1以内に収める必要があります。
  • 居室の部分に係る増築は、そもそもこの緩和の対象になりません。
  • 増築や改築が、それ以外の部分の避難及び消火の安全上支障とならないことも条件です。

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増築と敷地内通路の緩和の仕組みを示す図解

増築するとなぜ敷地内の通路まで確認が必要になるのか

増築中の建物と敷地をめぐる通路のイラスト
既存不適格建築物が増築や改築をするとき、建物全体の敷地内通路を現行基準に合わせ直すのは負担が大きすぎます。
そこで建築基準法は、増築の規模が一定の範囲に収まる場合を対象にした緩和の仕組みを用意しています。
建築基準法第八十六条の七第一項(抜粋) 第三条第二項の規定により(略)第三十五条((略)第三十五条の敷地内の避難上及び消火上必要な通路に関する技術的基準のうち政令で定めるものに係る部分に限る。)(略)の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合においては、第三条第三項の規定にかかわらず、これらの規定は、適用しない。
敷地内通路も緩和の対象に含まれています。
建築基準法第35条は、廊下や階段などの避難施設と並んで、敷地内の避難上及び消火上必要な通路についても技術的基準に従うよう定めています。
既存不適格建築物であっても、増築や改築をきっかけに敷地内通路まで現行基準へ合わせ直す必要は必ずしもなく、第86条の7が定める一定の範囲内であれば従来のままで足ります。
今回はそのうち、敷地内の避難上及び消火上必要な通路に関する部分を見ていきます。

通路のことまで考えていませんでした。
敷地の隅の話だと思っていたので意外です。

消防車が近づく通路や避難する人の通り道なので、法律上は避難施設と同じ扱いです。
次に対象と要件を見ていきましょう。

どんな増築や改築がこの緩和の対象になるのか

法令の書物と敷地を巡る通路のイラスト
緩和の対象になる技術的基準の範囲を、まず確認しておきましょう。
この範囲が、次の章で説明する要件の前提になります。
建築基準法施行令第百三十七条の六の三第一項 法第八十六条の七第一項の政令で定める敷地内の避難上及び消火上必要な通路に関する技術的基準は、第五章第六節(第百二十八条の三を除く。)に規定する技術的基準とする。
対象になるのは第五章第六節が定める技術的基準です。
具体的には、敷地内の通路の幅員を定める第128条や、大規模な木造建築物の周囲に通路を求める第128条の2が含まれます。
ただし、地下街の各構えに関する第128条の3は、そもそもこの緩和の対象から除かれています。
自分の建物がどの通路の基準に関わるかを、まず確認する必要があります。

うちは延べ面積が千平方メートルを超える木造の建物なんですが。
それでも対象になりますか。

大規模な木造建築物の敷地内通路(第128条の2)も第五章第六節に含まれるので対象になります。
次の章で具体的な要件を説明します。

緩和を受けるにはどんな要件を満たす必要があるのか

増築部分と建物全体の床面積を比べるゲージのイラスト
前の章で見た技術的基準について、法第35条の適用を受けない建物が増築や改築をする場合の要件を見ていきます。
ここでの床面積の考え方が、緩和を受けられるかどうかの分かれ目になります。
建築基準法施行令第百三十七条の六の三第二項(抜粋) 法第三条第二項の規定により法第三十五条(前項に規定する技術的基準に係る部分に限る。)の規定の適用を受けない建築物についての法第八十六条の七第一項の政令で定める範囲は、増築(居室の部分に係るものを除く。以下この項において同じ。)及び改築については、増築又は改築に係る部分の対象床面積の合計が基準時における延べ面積の二十分の一を超えず、かつ、当該増築又は改築が当該増築又は改築に係る部分以外の部分における避難及び消火の安全上支障とならないものである増築又は改築に係る部分とする。
要件は面積と安全性の2点です。
まず、増築や改築に係る部分の対象床面積の合計が、基準時における延べ面積の20分の1を超えないことが条件になります。
そのうえで、その増築や改築が、それ以外の部分における避難及び消火の安全上支障とならないことも同時に満たす必要があります。
この2つをどちらも満たして初めて、敷地内通路の基準をやり直さずに済みます。

20分の1というと、かなり小規模な増築でないと厳しそうですね。
基準時の延べ面積はどうやって確認すればいいんでしょうか。

確認済証や台帳記載事項証明書などの記録から確認できます。
次は見落としやすい落とし穴を紹介します。

実務で見落としやすいのはどこか

通路をふさぐ増築部分に付いた禁止マークのイラスト
前の章で見た要件には、条文の書き方を読み飛ばすと見落としやすい落とし穴が2つあります。
どちらも「床面積さえ収まれば大丈夫」と思い込むと気づきにくい点です。
建築基準法施行令第百三十七条の六の三第二項(再掲・抜粋) 増築(居室の部分に係るものを除く。以下この項において同じ。)及び改築については、(略)当該増築又は改築が当該増築又は改築に係る部分以外の部分における避難及び消火の安全上支障とならないものである増築又は改築に係る部分とする。
2つの見落としに注意してください。
1つ目は、居室の部分に係る増築は、この緩和の対象からあらかじめ除かれていることです。
床面積が20分の1に収まっていても、増築する部分が居室であれば、この条文の対象にはなりません。
2つ目は、床面積の条件を満たしていても、その増築や改築が他の部分の避難や消火の安全を妨げるものであれば、緩和は受けられないことです。
「面積が小さいから大丈夫」と思い込んで通路をふさぐ配置にしてしまうと、この分岐を見落としがちです。

倉庫を増築するつもりでしたが、通路をふさぐ位置になりそうで心配です。
どうやって確認すればいいんでしょうか。

配置図で通路の幅員が確保できているかを確認し、判断に迷う場合は専門家に相談するのが確実です。
最後に実務での確認手順をまとめます。

明日からなにを確認すればよいのか

チェックリストと警告表示のイラスト
増築や改築を計画する際は、次の点を順番に確認してください。
判断に迷う部分があれば、早めに専門家へ相談するのが安全です。
  • 増築・改築する部分が居室に当たるかどうかを確認する
  • 基準時における延べ面積を確認済証や台帳記載事項証明書などで確認する
  • 増築や改築に係る部分の対象床面積の合計が延べ面積の20分の1以内に収まるかを計算する
  • 配置図で、敷地内の通路をふさぐ位置になっていないかを確認する
  • 判断に迷う場合は、特定行政庁または建築士に事前に相談する
計画の早い段階で確認しておくことが大切です。
増築の設計が固まってから条件を満たさないと分かると、設計変更の手戻りが発生します。

手順が分かれば、うちの増築でも通路の扱いを事前に判断できそうです。
ありがとうございます。

計画の早い段階で確認しておけば、設計変更の手戻りも防げます。
次によくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q増築する部分に居室が含まれる場合はどうなりますか?
Aこの緩和の対象になりません。施行令第137条の6の3第2項は、居室の部分に係る増築をあらかじめ除いています。居室を含む増築の場合は、敷地内通路の基準への適合を別途検討する必要があります。
Q基準時における延べ面積とはどの時点の面積ですか?
Aその建築物が現在の規定の適用を受けないこととなった時点の延べ面積を指します。確認済証や台帳記載事項証明書などの記録から確認するのが確実です。
Q地下街の通路にもこの緩和は使えますか?
A使えません。施行令第137条の6の3第1項は、対象となる技術的基準から地下街に関する第128条の3を明確に除いています。
Q床面積が20分の1を超えたらどうなりますか?
Aこの条文による緩和は受けられません。建物全体で敷地内の避難上及び消火上必要な通路の基準に適合させる必要がないか、特定行政庁に確認することになります。

まとめ

✔増築や改築が一定の範囲に収まれば、敷地内の避難上及び消火上必要な通路までやり直す必要はありません。
✔対象となる技術的基準は第五章第六節(敷地内の通路等)で、地下街に関する第128条の3は除かれます。
✔緩和を受けるには、増築や改築に係る部分の対象床面積の合計が基準時における延べ面積の20分の1を超えないことが条件です。
✔同時に、その増築や改築が他の部分の避難及び消火の安全上支障とならないことも条件です。
✔居室の部分に係る増築は、そもそもこの緩和の対象になりません。
✔基準時の延べ面積は確認済証や台帳記載事項証明書などの記録から確認します。
✔判断に迷う場合は、早めに特定行政庁や建築士に相談することが大切です。

増築の計画を立てるときは、今日の内容を確認しながら進めます!

増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第35条・第86条の7
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第127条・第128条・第128条の2・第137条の6の3

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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