建物を増築するとき、既存部分にも防火壁や防火床の基準を今の基準まで合わせなければならないと思っていませんか。
建築基準法施行令第137条の3は、増築や改築をする部分が一定の要件を満たせば、既存部分の防火壁や防火床までやり直さなくてよいという緩和を定めています。
ただし、この緩和はどんな増築でも無条件に使えるわけではなく、区画の方法や面積の規模によって扱いが変わります。
この記事では、緩和の対象・要件・見落としやすい点までを条文に沿って解説します。
今度、延べ面積が千平方メートルを超える建物の一部を増築する予定です。
既存の部分にも防火壁を今から設けないといけないんでしょうか。
増築や改築が一定の要件を満たせば、既存部分の防火壁までやり直す必要はありません。
建築基準法施行令第137条の3という緩和の規定があります。
それは助かります。
でも、どんな増築でも使える緩和なんでしょうか。
いいえ、区画の方法や増築する部分の面積など、いくつかの条件を満たす必要があります。
順番に見ていきましょう。
- 増築や改築が一定の要件を満たせば、既存部分の防火壁や防火床までやり直す必要はありません(建築基準法施行令第137条の3)。
- 対象となるのは、法第3条第2項の規定により法第26条(防火壁等)の適用を受けない既存不適格建築物です。
- 緩和を受ける方法は2つあり、火熱遮断壁等で区画したうえで防火壁または防火床で有効に区画する方法と、増築・改築部分の床面積が小さい方法があります。
- 床面積による方法では、工事着手が基準時以後の増築・改築部分の対象床面積の合計が50平方メートルを超えないことが条件です。
- この2つの方法はどちらかを満たせばよく、両方を満たす必要はありません。
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目次
増築すると既存部分にも防火壁の基準がかかるのはなぜか

そこで建築基準法は、増築の規模や区画の方法が一定の要件を満たす場合を対象にした緩和の仕組みを用意しています。
建築基準法第26条は、延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物について、防火上有効な構造の防火壁または防火床によって有効に区画し、各区画の床面積を1,000平方メートル以内にするよう定めています。
既存不適格建築物であっても、増築や改築をきっかけに防火壁や防火床の基準まで現行基準へ合わせ直す必要は必ずしもなく、第86条の7が定める一定の要件を満たせば従来のままで足ります。
今回はそのうち、防火壁及び防火床に関する部分を見ていきます。
防火壁のことまで考えていませんでした。
延べ面積が千平方メートルを超えているとは知りませんでした。
延べ面積の合計が千平方メートルを超えると、原則として防火壁や防火床での区画が必要になります。
次に対象と要件を見ていきましょう。
どんな増築や改築がこの緩和の対象になるのか

この範囲が、次の章で説明する要件の前提になります。
対象となる建物は、法第3条第2項の規定により法第26条の適用を受けない、既存不適格建築物に限られます。
「各号のいずれか」とされているとおり、次の章で説明する2つの方法はどちらか一方を満たせば足ります。
自分の建物がこの既存不適格に当たるかどうかを、まず確認する必要があります。
うちは古くからある工場で、防火壁が無いまま今まで使ってきました。
それでも対象になりますか。
法第26条の規定の適用を受けない既存不適格建築物であれば対象になります。
次の章で具体的な要件を説明します。
緩和を受けるにはどんな要件を満たす必要があるのか

要件は大きく分けて2つの方法があります。
1つ目は、増築や改築に係る部分を火熱遮断壁等で区画したうえで、防火上有効な構造の防火壁または防火床によって有効に区画する方法です。
2つ目は、工事の着手が基準時以後である増築・改築部分の対象床面積の合計が50平方メートルを超えない方法です。
どちらの方法も満たせない場合は、この緩和を受けることはできません。
増築する部分は30平方メートルほどなので、床面積の方法で足りそうですね。
火熱遮断壁は必要ないということでしょうか。
50平方メートルを超えなければ、火熱遮断壁等による区画をしなくても緩和を受けられます。
次は見落としやすい落とし穴を紹介します。
実務で見落としやすいのはどこか

どちらも「今回の増築だけ」で判断すると気づきにくい点です。
1つ目は、50平方メートルという上限が今回の増築だけの面積ではなく、基準時以後に行った増築・改築の対象床面積の合計で判定されることです。
過去に一度増築していれば、その面積も合算して50平方メートルを超えていないかを確認する必要があります。
2つ目は、床面積の要件と区画の要件は別の号で定められているため、50平方メートルを超える増築では火熱遮断壁等による区画が必須になることです。
「面積が小さいから大丈夫」と思い込んで過去の増築分を数え忘れると、この判定を見落としがちです。
実は5年前にも倉庫を増築していました。
その面積も足して数えないといけないんですね。
はい、基準時以後の増築・改築分は合計して判定します。
最後に実務での確認手順をまとめます。
増改築を計画するときは何を確認すればよいのか

判断に迷う部分があれば、早めに専門家へ相談するのが安全です。
- 自分の建物が法第26条の適用を受けない既存不適格建築物に当たるかを確認する
- 基準時以後に行った増築・改築の対象床面積を過去分まで含めて合算する
- 合計が50平方メートルを超えないかを計算する
- 50平方メートルを超える場合は、火熱遮断壁等による区画と防火壁または防火床の設計を検討する
- 判断に迷う場合は、特定行政庁または建築士に事前に相談する
増築の設計が固まってから条件を満たさないと分かると、設計変更の手戻りが発生します。
手順が分かれば、うちの増築でも防火壁の扱いを事前に判断できそうです。
ありがとうございます。
計画の早い段階で確認しておけば、設計変更の手戻りも防げます。
次によくある質問もあわせてご確認ください。
よくある質問
まとめ
増築の計画を立てるときは、今日の内容を確認しながら進めます!
増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第26条・第86条の7
- 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の3
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。





