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用途地域が指定されていない土地でもなぜ大型店舗は建てられないのか|建築基準法別表第二(か)項の規制を解説

郊外の道路沿いに建つ大型店舗の建物の外観写真

郊外の道路を車で走っていると、住宅と小さな作業場、それに空き地のような畑が特に区切りもなく並んでいる光景を見かけることがあります。
そこには用途地域の看板も境界線も見当たらず、まるで何の規制も無いように感じるかもしれません。
しかし建築基準法別表第二(か)項は、こうした用途地域が指定されていない土地にも建築の制限を及ぼしています。
この記事では条文を確認しながら、指定なし区域にどんな建築規制がかかるのかを整理します

うちの近くに用途地域の看板が無い土地があるんですが、あそこは何を建てても自由なんでしょうか。

いいえ、別表第二(か)項という条文で規制がかかっています。
まず条文を確認しましょう。

指定が無いだけで、他の用途地域と同じくらい厳しいんですか。

実は床面積の基準だけがかかる、少し変わった規制です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • (か)項は用途地域が指定されていない区域にも建築規制を及ぼしています
  • 対象は床面積の合計が10,000平方メートルを超える店舗・劇場等の大規模施設です
  • 市街化調整区域は都市計画法ですでに市街化が抑制されているため、対象から除かれています
  • 劇場や映画館は第二種住居地域では規模を問わず禁止されますが、指定なし区域では10,000平方メートルまで建てられます
  • 根拠は建築基準法第48条第14項と施行令第百三十条の八の二第2項です

用途地域の指定がない区域にも床面積10,000平方メートルの上限がかかることを示す図解

用途地域が指定されていない土地でも建築の規制はあるのか

住宅と作業場と畑が境界線もなく並ぶ用途地域指定のない土地のイラスト
用途地域は、全国のすべての土地に指定されているわけではありません。
都市計画区域の中にも、あえて用途地域を定めていない土地があります。
建築基準法第48条第14項(抜粋) (略)用途地域の指定のない区域(都市計画法第七条第一項に規定する市街化調整区域を除く。)内においては、別表第二(か)項に掲げる建築物は、建築してはならない。
用途地域が指定されていない区域にも、建築基準法は別表第二(か)項という専用の規制を用意しています
「用途地域が無い=何を建てても自由」というわけではありません。
根拠は建築基準法第48条第14項で、他の用途地域と同じ第48条の中に置かれています。
ただし書きにより、特定行政庁が土地利用や環境保全上支障がないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合は例外的に認められます。
次は、具体的にどんな建築物が対象になるのかを見ていきます。

看板が無い土地でも、条文はちゃんと用意されているんですね。

はい、(か)項という専用の号があります。
次は対象になる建築物を見てみましょう。

どんな建築物が10,000平方メートルを境に建築禁止になるのか

巻尺を掛けられた大きな店舗建物に禁止マークが付き隣に小さな店舗建物に許可マークが付いたイラスト
(か)項が実際に定めている建築物の内容を確認します。
建築基準法別表第二(か)項 劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場、ナイトクラブその他これに類する用途で政令で定めるもの又は店舗、飲食店、展示場、遊技場、勝馬投票券発売所、場外車券売場その他これらに類する用途で政令で定めるものに供する建築物でその用途に供する部分(劇場、映画館、演芸場又は観覧場の用途に供する部分にあつては、客席の部分に限る。)の床面積の合計が一万平方メートルを超えるもの
(か)項が禁止しているのは、床面積の合計が10,000平方メートルを超える大規模な店舗・劇場等だけです
10,000平方メートル以下であれば、この号による建築禁止の対象にはなりません。
根拠となる施行令第百三十条の八の二第2項は、この号にあたる用途として場内車券売場及び勝舟投票券発売所を追加で定めています。
次は、この規制がなぜ市街化調整区域には及ばないのかを見ていきます。

10,000平方メートルを超えなければ、何を建ててもいいんですか。

この号については、はい10,000平方メートルが基準です。
次は市街化調整区域との関係を見てみましょう。

なぜ市街化調整区域は建築禁止の対象から除かれるのか

破線の境界で密集した町並みと何もない農地が分かれている様子のイラスト
条文をよく見ると、(か)項の対象から一つだけ明確に除かれている区域があります。
建築基準法第48条第14項(抜粋) (略)用途地域の指定のない区域(都市計画法第七条第一項に規定する市街化調整区域を除く。)内においては、(略)
都市計画法第七条第3項 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。
市街化調整区域は、そもそも市街化そのものを抑制する区域として都市計画法で位置づけられています
建築物を建てること自体が別の仕組みで厳しく制限されているため、(か)項のような床面積の規制を重ねてかける必要がありません。
一方で「用途地域の指定のない区域」は市街化調整区域ではない土地、つまり将来的に建物が増えていく可能性がある土地を指しています。
根拠は都市計画法第七条第1項・第3項です。
次は、この指定なし区域における劇場や映画館の扱いを見ていきます。

調整区域は最初から別の規制で守られているから、重ねる必要が無いんですね。

はい、都市計画法の方で市街化そのものが抑えられています。
次は劇場や映画館の扱いを見てみましょう。

なぜ劇場や映画館は無指定区域だと10,000平方メートルまで建てられるのか

許可マークが付いた小さな劇場建物と中高層マンションに囲まれ禁止マークが付いた同じ劇場建物を並べたイラスト
劇場や映画館は、住居系の用途地域では規模にかかわらず厳しく制限されています。第二種住居地域の規定と比較します。
建築基準法別表第二(へ)項第三号 劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場又はナイトクラブその他これに類する政令で定めるもの
第二種住居地域(へ項)では、劇場や映画館は面積を問わず建築が認められていません
三号には床面積の条件が一切無く、該当すれば規模にかかわらず禁止されます。
一方、用途地域の指定のない区域(か項)では、劇場や映画館も床面積の合計が10,000平方メートルを超えない限り建築できます。
つまりこの用途に限っては、指定なし区域のほうが第二種住居地域より緩やかな扱いになっているという、意外な逆転が起きています。
次は、この違いを踏まえて実務で何を確認すべきかを整理します。

指定なし区域のほうが、劇場には逆に緩いことがあるんですね。

はい、10,000平方メートルまでという上限付きで建てられます。
次は確認の手順を整理しましょう。

明日から何を確認すればよいのか

製図机の図面と用途地域図を照らし合わせて確認する様子のイラスト
用途地域が指定されていない土地で店舗や劇場等の建築相談を受けたときは、次の点を確認します。
  • 敷地が市街化調整区域かどうかを都市計画図で確認する(調整区域なら(か)項の対象外だが、別途開発許可の確認が必要)
  • 建築予定の店舗・劇場等の床面積の合計が10,000平方メートルを超えるかどうかを確認する
  • 劇場・映画館・演芸場・観覧場の部分は客席の部分の床面積だけで合計を計算する
  • 場内車券売場・勝舟投票券発売所に該当しないかを施行令第百三十条の八の二第2項で確認する
  • 10,000平方メートルを超える計画の場合は、特定行政庁の許可が必要になることを説明する

指定が無い土地でも、面積だけはちゃんと計算しないといけないんですね。

はい、床面積の合計が一番のポイントです。
迷ったらよくある質問も参考にしてください。

よくある質問

Q用途地域が指定されていない土地なら、何を建てても自由ではないのですか?
A自由ではありません。建築基準法別表第二(か)項により、床面積の合計が10,000平方メートルを超える店舗・劇場等は建築が禁止されています。
Q市街化調整区域も同じ規制を受けますか?
A受けません。都市計画法第七条第3項で市街化を抑制すべき区域と位置づけられているため、(か)項の対象から明確に除かれています。
Q劇場や映画館は、指定なし区域ではどこまで建てられますか?
A床面積の合計が10,000平方メートルを超えない範囲であれば建築できます。同じ劇場でも第二種住居地域では規模を問わず禁止される点と対照的です。
Q10,000平方メートルを超える計画がある場合はどうすればよいですか?
A特定行政庁が土地利用や環境保全上支障がないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可すれば、例外的に建築できる場合があります。

まとめ

(か)項は用途地域が指定されていない区域にも建築規制を及ぼしています
対象は床面積の合計が10,000平方メートルを超える店舗・劇場等です
根拠は建築基準法第48条第14項です
市街化調整区域は都市計画法上すでに市街化が抑制されているため対象から除かれます
施行令第百三十条の八の二第2項により場内車券売場・勝舟投票券発売所も対象に追加されています
劇場・映画館は第二種住居地域では規模を問わず禁止されますが、指定なし区域では10,000平方メートルまで建てられます
例外は建築基準法第48条第14項ただし書きによる特定行政庁の許可です

指定なし区域にも規制があることがよく分かりました。
次の相談でも迷わず判断できそうです。

用途地域の判断に迷ったら、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第14項
  • 建築基準法別表第二(か)項・(へ)項第三号
  • 建築基準法施行令第百三十条の八の二第2項
  • 都市計画法第七条第1項・第3項

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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