「古い消火器が破裂して手にケガをした」――そんな事故が起きたとき、責任を負うのは設置した建物なのかメーカーなのか、迷ったことはありませんか。
消防用設備等も工場で作られた「製造物」である以上、欠陥があれば民法とは別の法律で損害賠償のルールが定められています。
それが平成6年に制定された製造物責任法(PL法)で、被害者は製造業者の過失を証明しなくても、欠陥さえ立証すれば賠償を求められる仕組みです。
この記事では、消防用設備等の欠陥をめぐる責任の所在と、防火管理者が明日から備えておくべき記録の残し方を解説します。
古い消火器が破裂して手にケガをしたという話を聞いたんですが、こういうときって誰の責任になるんですか。
それは製造物責任法が扱う話です。
欠陥さえ証明できれば、過失の証明なしに製造業者へ賠償を求められます。
過失を証明しなくていいんですね。
それはずいぶん被害者に有利な仕組みですね。
はい。
今日はこの法律が消防用設備等にどう関わるのか、一緒に確認していきましょう。
- 消火器や感知器などの欠陥による事故は、製造業者の過失を証明しなくても賠償を求められます。
- 法律の対象になるのは製造又は加工された動産そのもので、設置工事や点検というサービスは対象に含まれません。
- 欠陥には設計上・製造上・指示警告上の3種類があります。
- 製造業者は引き渡し時点の科学技術で欠陥を認識できなかったことを証明すれば責任を免れます。
- 賠償請求権は知った時から3年、引き渡しから10年で時効消滅します。
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目次
消火器が壊れてケガをしたらだれの責任になるのか

このとき責任の所在を決めるのが、民法とは別に用意された製造物責任法です。
通常の損害賠償なら民法第709条に基づき、被害者が製造業者の過失を立証しなければなりません。
ところが製造物責任法では、製品の設計や製造工程にまで踏み込んで過失を立証する必要がなく、欠陥という結果だけを示せば足ります。
消火器やスプリンクラーヘッドのような専門的な工業製品では、被害者が内部構造の過失を立証するのは極めて困難なため、この仕組みが被害者の救済を後押しします。
ただし責任を負うのは引き渡した設備そのものに欠陥があった場合に限られ、設置工事のミスは別の話です。
うちの建物にある古い消火器も、もし破裂したらメーカーの責任を問えるということですね。
ただし欠陥があったことは証明する必要があります。
次は法律が対象にする範囲を確認しましょう。
消防用設備等のどこまでがこの法律の対象になるのか

法律が対象にするのは「製造物」という言葉が指す範囲だけです。
消火器、火災感知器、スプリンクラーヘッドといった動産として引き渡された設備は対象になりますが、これらを取り付ける設置工事そのものは「動産」ではなく役務(サービス)にあたるため対象外です。
不動産である建物も対象になりません。
つまり工事の施工不良が原因で事故が起きた場合は、この法律ではなく民法上の請負契約や不法行為の責任として扱われます。
「壊れた原因が設備自体にあるのか、取り付け方にあるのか」を最初に見極める必要があります。
取り付け業者のミスで壊れた場合も、この法律で製造業者に請求できるんですか。
いいえ、それは対象外です。
設置工事の不備は別の責任として争うことになります。
欠陥はどう判断されだれが製造業者等にあたるのか

条文の定義を確認しましょう。
たとえば製品の設計自体に安全上の問題がある「設計上の欠陥」、設計どおりに作られなかった「製造上の欠陥」、正しい使用方法や危険性の警告が不十分な「指示・警告上の欠陥」の3類型です。
責任を負う製造業者等も、実際に製造・加工・輸入した者だけでなく、自社の製造物として名前や商標を表示した者や、実質的に製造業者と認められる表示をした者まで含まれます。
消火器に貼られた型式番号や製造年のラベルは、まさにこの「表示」にあたります。
壊れた設備を見つけたら、まずラベルに書かれた製造者名を確認することが最初の一歩になります。
うちの倉庫にある消火器、ラベルが古くて製造者名が読みにくいものがあります。
それは早めに確認しておくべきです。
次は責任を免れる条件を見ていきましょう。
製造業者はどんなときに責任を免れるのか

法律は免責が認められる場合と、請求できる期限も定めています。
これは「開発危険の抗弁」と呼ばれ、当時の科学技術のレベルでは避けようがなかった欠陥にまで責任を広げすぎないための仕組みです。
もう1つの免責事由は、部品や原材料の欠陥が完成品メーカーの設計指示に従った結果生じ、かつ部品メーカー側に過失がなかった場合です。
さらに賠償を求める権利にも期限があり、被害と賠償義務者を知った時から3年(人の生命・身体の被害は5年)、製造業者が引き渡した時から10年で時効消滅します。
古い設備ほど、この10年の壁に注意する必要があります。
うちにある設備、もう20年以上前のものもあります。
今からでは請求できないのか気になります。
引き渡しから10年を過ぎると、原則として請求できません。
次は明日から確認すべきことをまとめます。
明日からなにを確認しておけばよいのか

特別な手続きは要りませんが、記録を残しておくことが最大の備えになります。
消火器や感知器のラベルに書かれた製造年月・型式番号・製造業者名を消防計画や設備台帳に控えておけば、10年の時効や免責事由を検討する材料になります。
点検の記録も同時に保管し、いつ・どの業者が・どんな状態を確認したかを追えるようにしておきましょう。
万一設備が破損して人が負傷した場合は、現物を廃棄せずに保管し、製造業者と消防署の両方へ連絡することが欠陥の有無を判断する第一歩になります。
設備任せにせず、記録を残す習慣が防火管理者自身を守ることにもつながります。
型式番号を控えておくだけなら、今日からでもできそうです。
はい。
台帳に記録を残す習慣が、いざというときの備えになります。
よくある質問
まとめ
誰の責任になるのか曖昧なままだった話が、条文で整理できました。
記録の残し方で迷ったらいつでもご連絡ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 製造物責任法(平成6年7月1日法律第85号)第2条・第3条・第4条・第5条・第6条
- 民法(明治二十九年法律第八十九号)第709条(不法行為による損害賠償)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の事案における欠陥の有無や賠償責任の判断は、弁護士等の専門家にご確認ください。消防用設備等の点検や維持管理については所轄消防署にもご確認ください。





