工場の2階から1階の乾燥機へ、トルエンを含む液体をシュートで流し込んでいた作業中に、突然の爆発が起きました。
死傷者は出ませんでしたが、建物の1階と2階が破損するほどの被害になりました。
原因は、シュートに蓄積した静電気の火花でした。
消防庁がまとめた事故事例から、静電気除去装置がなぜ法律で義務付けられているのかを解説します
シュートで液体を流す作業なんて、うちの工場でも毎日やっています。
これも静電気で火がつくことがあるんでしょうか。
はい、トルエンのような第四類危険物を流すシュートは、まさに今回の事故の原因そのものです。
導電布シュートと接地装置の仕組みから見ていきましょう。
正直、シュートに静電気が溜まるなんて今まで考えたことがなかったです。
見た目はただの布の筒ですよね。
見た目は布でも、内部に金属の線を巻いて接地する構造になっているんです。
まずは平成29年に実際に起きた事故から見ていきましょう。
- トルエンを投入するシュートは、静電気が発生するおそれのある設備として政令第9条第18号の規制対象になります
- 導電布シュートは接地線で電気を地面へ逃がす構造になっていないと機能しません
- 平成29年には岡山県の工場で、トルエン投入中の静電気火花による爆発が実際に発生しました
- 同じ年には岩手県でも、経年劣化で導電性が落ちた布製シュートが原因の爆発が起きています
- シュートの導通は目視では分からず、定期的な導通測定で確認する必要があります
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目次
岡山県の工場でなぜ乾燥機への投入作業が爆発を起こしたのか

どんな作業のどの瞬間に火花が生じたのかを見ていきます。
トルエンは第四類危険物(第一石油類)に分類される引火性の液体で、蒸気は空気より重く低い場所に溜まりやすい性質があります。
シュートの中を液体や粉体が流れると摩擦で静電気が発生し、金属部分や液面に電気が蓄積していきます。
除去されずに溜まった静電気が放電火花となり、周囲に漏れていたトルエンの蒸気に引火したと推定されています。
被害は損害見積額3,693万円、建物の1階と2階が破損するという大きなものでした。
まさか布の筒を流れるだけで、そんなに電気が溜まるとは思いませんでした。
うちの設備も同じ仕組みです。
液体や粉体が速く流れるほど、静電気は大きくなりやすいんです。
次は、どんな設備が対象になるのかを見てみましょう。
導電布シュートはどんな設備が対象になるのか

今回の事故でも、金属のシュートと布のシュートがつながれた状態で使われていました。 シュートは金属部分と布部分の両方に静電気が溜まります。
今回のステンレスシュートは金属なので導通があり、静電気は流れやすい構造です。
一方、下につながる導電布シュートは、生地そのものに導電性を持たせた特殊な布でできています。
どちらの部分も、静電気が発生するおそれのある設備として同じ規制の対象になります。
トルエンのように蒸気が空気より重い液体を扱う設備ほど、この対策の重要性が高くなります。
ステンレスのシュートと布のシュートをつないでいるのは、見たことがあります。
あれ、ただの繋ぎ目じゃなかったんですね。
金属部分と布部分の両方に静電気がたまるので、どちらも対策が必要なんです。
では、法律が実際に何を求めているのか見ていきましょう。
政令は静電気除去装置に何を求めているのか

危険物の規制に関する政令に、はっきりと条文があります。
「有効に除去する」とは、たまった静電気を実際に地面へ逃がせる状態を指します。
具体的には、シュートに巻いた金属の線を接地極につなぎ、電気の通り道を作る方法が一般的です。
装置を取り付けただけでは条文の要求を満たしたとはいえず、実際に機能していることが重要です。
この「機能しているかどうか」を見落とした結果、別の事故も起きています。
除去装置って、具体的にどんな物を付ければいいんでしょうか。
うちの設備には何も付いていない気がします。
接地線を巻いて地面に逃がす仕組みが基本で、特別に複雑な装置ではありません。
ただ、落とし穴があるので次で説明します。
導電布シュートがあっても安心できないのはなぜか

同じ平成29年に、別の工場で起きた事故がそれを示しています。
岩手県の事故では、経年劣化によって導電性が低下した布製シュートが、そのまま使われ続けていました。
外から見ても、布が破れていない限り劣化には気づきにくいという落とし穴があります。
接地線の導通が切れていれば、導電布であっても静電気は蓄積したままになります。
設置したときに基準を満たしていても、使い続ける中での確認が欠かせません。
装置が付いていれば、もう安心だと思っていました。
そうとは限らないんですね。
布も金属の線も、年月が経てば劣化していきます。
岩手県の事故も、まさにこの劣化が原因でした。
明日から現場で何を確認すればよいのか

特別な工事ではなく、日常の点検でできることです。
次に、導通テスターや接地抵抗計で、実際に電気が流れることを数値で確認します。
布の表面にすり切れや破れがないかも、定期的な点検項目に加えます。
トルエンのような可燃性蒸気が滞留しやすい場所では、換気の状態も合わせて確認しましょう。
測定の結果は記録に残し、劣化の進み方を追えるようにしておくことが、次の事故を防ぐ一番の近道です。
つまり、見た目では劣化がわからないから、測定で確認するしかないんですね。
うちでも点検の予定を見直します。
はい、導通テスターでの測定を定期点検に組み込むことが、一番確実な方法です。
記録を残しておけば、劣化の進み方も追いやすくなります。
よくある質問
まとめ
静電気って見えないから、つい後回しにしてしまいがちでした。
これからは点検をしっかり続けます!
静電気は小さな火花でも大きな事故につながります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防危第101号「平成29年中の危険物に係る事故に関する執務資料の送付について」(平成30年5月29日、消防庁危険物保安室長発出)別添「平成29年中の主な事故事例【火災・爆発】」
- 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第9条第1項第18号・第24条第13号
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





