危険物施設の点検記録を見ていて、去年より事故が減ったはずなのに
なぜかヒヤリとする話が減った気がしない、と感じたことはありませんか。
消防庁は毎年、危険物施設で起きた事故の件数と原因を通知としてまとめて公表しています。
この記事では令和7年の最新データから、事故の起きやすい場所と防ぎ方を条文にそって解説します。
うちは危険物を扱う一般取扱所ですが、事故なんてめったに起きないですよね。
実は一般取扱所は、危険物施設の事故の中でも一番件数が多い施設です。
え、そうなんですか。
うちも人ごとじゃないかもしれません。
はい、だからこそ出火原因の傾向を先に知っておくと対策が立てやすくなります。
- 令和7年の危険物施設の事故は火災261件・流出448件でいずれも前年より減少しました。
- 火災事故の出火原因で最も多いのは静電気火花で、全体の20.3%を占めます。
- 火災事故の65.1%は一般取扱所で発生しており、施設の種類に偏りがあります。
- 流出事故は物的要因が50.7%を占め、その主因は腐食疲労等の経年劣化です。
- 静電気除去装置の設置義務は一般取扱所にも及ぶため、点検の徹底が事故防止の鍵になります。
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目次
危険物施設の事故はなぜ毎年通知としてまとめられるのか

消防庁はその実態を毎年集計し、通知として現場に知らせています。
毎年同じ時期に同じ形式で集計されるからこそ、増減の傾向や原因の偏りが見えてきます。
この通知は消防庁が全国の消防機関から報告を集めて作成しており、危険物保安室が発出元です。
件数だけを見て安心するのではなく、どこでどんな原因の事故が多いのかを次の項目から具体的に見ていきます。
自分の施設がどの分類に当てはまるかを意識しながら読み進めると、対策につながります。
うちの施設は毎年ちゃんと点検しているので大丈夫だと思っていました。
点検していても、原因の傾向を知らないと見落としが残ることがあります。
事故はどんな施設のどんな危険物で起きているのか

まずは火災事故がどの施設で多いのかを見てみましょう。
一般取扱所は施設数そのものが多く、扱う危険物の種類や作業の工程も幅広いため、件数が積み上がりやすい面があります。
出火原因になった物質の約半数は第4類危険物で、中でも第1石油類が突出しています。
ガソリンや灯油に近い性質の油類を日常的に扱う施設ほど、火災のリスクと向き合う場面が多いということです。
自分の施設が一般取扱所にあたるかどうかは、許可証の区分で確認できます。
うちはまさに一般取扱所です。
数の多さで狙われてる気がして怖いですね。
施設が多いから危ないのではなく、扱う危険物の種類を意識することが対策の第一歩です。
出火原因はなぜ静電気が一番多いのか

消防庁の集計は、着火の原因までさかのぼって分類しています。
危険物を取り扱うに当たつて静電気が発生するおそれのある設備には、当該設備に蓄積される静電気を有効に除去する装置を設けること。
静電気は液体の危険物が配管やホースの中を流れるときの摩擦などで自然に発生し、目に見えないまま蓄積します。
政令はこの危険性を踏まえ、静電気を有効に除去する装置の設置を製造所の基準として義務付けています。
人的要因の内訳を見ても、操作や点検の確認不足が原因の上位にあり、日々の作業手順そのものが事故を左右しています。
静電気は「たまたま起きた」のではなく、条文が想定していた対策を怠ったときに火花として現れるものです。
うちのタンクにも接地線はついてますけど、これだけで十分なんでしょうか。
接地線が有効に機能しているかを定期的に点検することが、条文が求める対策の実質的な中身です。
流出事故はなぜ経年劣化が主な原因なのか

流出事故の原因は、火災とは違う顔を見せています。
配管やタンクは地中や屋外に長期間さらされるため、目に見えないところで腐食や疲労が進みます。
腐食疲労等の劣化は物的要因の中でも突出して多く、施設の古さそのものがリスクになり得ることを示しています。
一方で人的要因も4割超あり、操作確認さえ徹底できていれば防げた事故も含まれています。
静電気対策だけでは流出事故は防げず、配管の経年劣化点検という別の視点が欠かせません。
配管なんて埋まっていて、見えないところはどう点検すればいいんですか。
肉厚測定や埋設図面の確認など、目視できない部分こそ定期点検の記録が頼りになります。
明日から現場は何を確認すればよいのか

最後に、明日から確認できる具体的なポイントをまとめます。
政令で定める製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者は、これらの製造所、貯蔵所又は取扱所について、総務省令で定めるところにより、定期に点検し、その点検記録を作成し、これを保存しなければならない。
- 静電気除去装置の接地線・接地端子が外れていないかを日常点検の項目に入れる
- 危険物を注入・移送する作業の操作確認を手順書どおりに実施したかを記録に残す
- 埋設配管やタンクの経年劣化を前提に、肉厚測定や図面照合を定期点検の計画に組み込む
- 維持管理の不十分が事故原因になりやすいことを踏まえ、清掃・整理の頻度を見直す
静電気と経年劣化という2つの視点を、点検表の項目としてそのまま反映させることが実務的な対策になります。
一般取扱所であれば、まず政令第9条第1項第18号の趣旨に沿った点検から始めるのが近道です。
数字を知っているだけでは事故は防げず、点検の記録として残すところまでが対策の一部です。
点検表に静電気と配管の劣化を足せばいいんですね。
点検記録として残すところまでが、法律が求める定期点検の実質です。
よくある質問
まとめ
統計を見て、うちの点検表に静電気と配管の劣化をちゃんと入れます!
点検表の見直しから点検の実施まで、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 令和7年中の危険物施設に係る事故の概要について(通知)(令和8年5月29日 消防危第111号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第9条第1項第18号・第19条
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第14条の3の2
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





