建築基準法第8条第2項の維持保全計画には、建物の種類ごとに国土交通大臣の指針が上乗せの内容を定めています。
その中でも倉庫だけは、防火シャッターとコンベヤーという設備名がそのまま告示の条文に書き込まれています。
なぜ倉庫にだけ、これほど具体的な点検基準と一級建築士の確認義務が課されているのでしょうか。
本記事では昭和60年建設省告示第606号が倉庫に求める内容を、条文に沿って解説します。
うちは倉庫を持っているんですが、点検責任者なんて考えたこともなかったです。
倉庫は指針の中でも個別に条文が割かれている用途です。
防火シャッターとコンベヤーという言葉がそのまま出てきます。
条文にそこまで具体的に書いてあるものなんですか。
はい、点検の判断基準まで四つ挙げられています。
一級建築士の確認が必要な場面もあります。
- 倉庫は建築基準法施行令第13条の3第1項第二号に該当する特殊建築物です
- 床面積の合計が三千平方メートルを超える倉庫が維持保全計画の作成義務の対象になります
- 計画には防火シャッターとコンベヤー等の点検責任者を定めることが最低限求められます
- 点検の判断基準は四つの項目に分けて具体的に定められています
- コンベヤー等を新設・変更するときは一級建築士による建築基準関係規定への適合確認が必要です
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目次
倉庫の維持保全計画になぜ防火シャッターとコンベヤーが出てくるのか

その中でも倉庫は、設備の名前まで条文に書き込まれている数少ない用途です。
理由は、コンベヤーが防火シャッターの閉鎖を物理的に妨げる恐れがあるからです。
シャッターが降りる位置にコンベヤーが通っていると、火災時に区画が完成しない事態が起こり得ます。
そのため指針は、この二つの設備をセットで管理する責任者を置くことを求めています。
責任者を定める作業が、計画作成の最初の一歩になります。
シャッターとコンベヤーが同じ条文に出てくるなんて知りませんでした。
コンベヤーがシャッターの妨げになるという視点は、倉庫特有の注意点です。
どんな倉庫がこの上乗せ規定の対象になるのか

まずは自分の倉庫が対象に入るかどうかを確認します。
別表第一(い)欄(五)項は倉庫、(六)項は自動車車庫等を指し、倉庫はこの(五)項に当たります。
面積は建物全体ではなく、倉庫の用途に供する部分の合計で数えます。
複数の棟に分かれていても、倉庫として使っている部分を合算して判定します。
三千平方メートルに満たない小規模な倉庫は、この上乗せ規定の対象外です。
うちの倉庫、いくつかの棟に分かれてるんですが、それでも合算するんですね。
はい、倉庫として使っている部分の合計で判定します。
面積を一度洗い出しておくと安心です。
計画には具体的に何を定めなければならないのか

判断基準は四つの項目に分けて示されています。
イは物品の放置、ロは感知器が煙や熱を検知できているかという機能面です。
ハはシャッターが感知器と連動して床面まで確実に降下するかを、ニはコンベヤー側の安全装置が作動するかを確認します。
四つとも、点検の合格・不合格を担当者の主観に任せない仕組みです。
自社の点検表に、この四つの観点がすべて入っているかを見直しておく必要があります。
感知器の検知だけじゃなくて、シャッターがちゃんと降りるかまで見るんですね。
はい、感知から降下まで一連の動きを確認する基準になっています。
一級建築士の確認を見落としていないか

コンベヤー等を新設・変更するときの確認義務です。
新設等のあとに、建物が建築基準関係規定に適合しているかを一級建築士が確認する手順まで、計画に定めておく必要があります。
現場の判断だけで設備を追加し、この確認を省いてしまう例が見落とされがちです。
さらに、新設等を行った場合には点検責任者への報告体制を整えておくことも同じ条文で求められています。
設備を触ったら「報告」と「確認」の二段階が動く仕組みを、あらかじめ計画に書き込んでおくことが大切です。
建築士さんに確認してもらう場面があるとは思ってもみませんでした。
設備をいじったら、報告と確認の両方が動く、と覚えておいてください。
明日から何を確認すればよいのか

五つの確認事項に整理しました。
点検責任者を定めるだけでなく、記録の保管期限まで計画に明記しておくことが条文上の要件です。
新設等が起きたときの報告と確認の流れも、事前に書面化しておくと迷いません。
下の五つを、自社の計画書と照らし合わせて確認してください。
- 倉庫の床面積が三千平方メートルを超えるかを確認する
- 防火シャッターとコンベヤー等の点検責任者を定める
- 四つの判断基準で点検を行い、結果を責任者に報告する体制を作る
- コンベヤー等の新設・変更時は、点検責任者への報告と一級建築士による確認の両方を計画に書き込む
- 点検結果を記録した図書の保管期限を明確に定めておく
五つに整理してもらえると、何から手を付ければいいか分かります。
まずは点検責任者を決めることから始めてください。
そこが計画全体の起点になります。
よくある質問
まとめ
点検の中身から一級建築士の確認まで、やるべきことが整理できました。
さっそく計画書を見直してみます。
倉庫の維持保全計画の作成でお困りの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第8条(維持保全)
- 建築基準法施行令第13条の3(維持保全計画の対象となる特殊建築物等の指定)
- 昭和60年建設省告示第606号(建築物の維持保全に関する準則又は計画の作成に関し必要な指針)
※この記事は建築基準法・建築基準法施行令・昭和60年建設省告示第606号(令和元年国土交通省告示第199号による改正後のもの)に基づき作成しています。個別の建物への当てはめや、特定行政庁の規則による付加事項の有無は、所在地の特定行政庁にご確認ください。





