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維持保全計画には具体的に何を書けばよいのか|昭和60年建設省告示が定める10項目と用途別の上乗せを解説

維持保全計画に何を書くかは指針が決めることを示すアイキャッチ画像

劇場や病院、事務所ビルなど、維持保全計画の対象になる建物では「準則又は計画を作成しなければならない」という条文だけが先に頭に入りがちです。
ところが建築基準法第8条第2項の条文自体は、作成義務を課すだけで、計画の中に何を書けばよいかまでは定めていません。
その中身の手がかりは、同条第3項が国土交通大臣に委ねた指針、具体的には昭和60年建設省告示第606号に定められています。
指針が示す10項目と、用途によって上乗せされる留意事項を正しく理解することが、実効性のある計画づくりの土台になります。

維持保全計画を作らないといけないのは分かったんですが、白紙の状態から何を書けばいいのか見当がつきません。

それは当然です。
条文は「作成せよ」としか書いておらず、中身は別の指針に委ねられているからです。

指針というのは、どこかに具体的な項目が書いてあるんですか。

はい、昭和60年の建設省告示に定められています。
今日はその中身と、用途ごとの上乗せ部分を一緒に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法第8条第2項は準則又は計画の作成を義務付けるだけで、中身の様式までは定めていません。
  • 中身の手がかりは同条第3項に基づき国土交通大臣が定める指針、昭和60年建設省告示第606号に置かれています。
  • 指針は計画に定めるべき事項として10の項目を掲げています。
  • 延べ面積200平方メートル未満の学校等特殊建築物と倉庫には、指針自体に追加の留意事項があります。
  • 指針で足りない部分は特定行政庁が規則で付加できるため、所在地の規則も確認が必要です。

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維持保全計画に何を書けばよいかを示す図解

「準則又は計画を作成しなければならない」は何を書けと言っているのか

建物と中身が空白の準則・計画書類のイラスト
条文を読んだだけでは、計画に何を書けばよいかは出てきません。
実はその判断そのものが、別の条項に委ねられた構造になっています。
次の各号のいずれかに該当する建築物の所有者又は管理者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、必要に応じ、その建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない(建築基準法第8条第2項)。国土交通大臣は、前項各号のいずれかに該当する建築物の所有者又は管理者による同項の準則又は計画の適確な作成に資するため、必要な指針を定めることができる(同条第3項)。
第2項は「作成せよ」と定めるだけで、記載事項そのものは条文に書かれていません。
その具体化を担うのが第3項で、国土交通大臣が「必要な指針を定めることができる」という授権規定になっています。
実際にこの指針として定められているのが、昭和60年建設省告示第606号です。
つまり計画の中身を知るには、法律ではなく告示のほうを読む必要があります。
次の章で、その告示が具体的に何を求めているかを見ていきます。

条文には「作成しなければならない」しか書いていないのに、中身は別のところにあるんですね。

そうなんです。
次はその告示が定める10項目を具体的に見ていきましょう。

指針は計画に何を書けと定めているのか

見出しタグが並ぶ維持保全計画書のイラスト
告示は計画の項目立てまで具体的に示しています。
まずは10項目の全体像をつかみます。
計画には、おおむね次の各号に掲げる項目につき、それぞれ当該各号に掲げる事項を定めるものとする。一 建築物の利用計画 二 維持保全の実施体制 三 維持保全の責任範囲 四 占有者に対する指導等 五 点検 六 修繕 七 図書の作成、保管等 八 資金計画 九 計画の変更 十 その他(昭和60年建設省告示第606号 第3 1)
10項目は「誰が」「何を」「どう記録するか」という実務の骨格をそのまま並べたものです。
用途(一)や実施体制(二)で計画の枠組みを決め、点検(五)と修繕(六)で日常の維持管理を定め、図書の保管(七)と資金計画(八)で記録と費用の裏付けを持たせます。
占有者への指導(四)が独立項目になっているのは、破損時の通報や使用制限の遵守を、所有者・管理者だけでなく建物を使う側にも徹底させる趣旨です。
「おおむね」という書き方から、10項目すべてを同じ厚みで書く必要はなく、建物の実情に応じて記載の濃淡をつけてよいことが読み取れます。
ただし、この後見るとおり一部の用途には、指針自体が上乗せの留意事項を定めています。

点検や修繕だけじゃなくて、占有者への指導や資金計画まで項目になっているんですね。

はい、10項目は建物ごとの実情に合わせて濃淡をつけられます。
ただし用途によっては、この上に追加の留意事項があります。

すべての建築物が同じ書き方でよいのか

学校のような建物と防火シャッター付き倉庫を並べたイラスト
10項目は共通の骨格ですが、用途によっては指針自体が具体的な下限を追加しています。
代表例が、延べ面積の小さい学校等特殊建築物と、倉庫です。
少なくとも、建築基準法施行令第13条の3第1項第一号に規定する特殊建築物のうち、三階を同号に規定する用途に供するもので、延べ面積が二百平方メートル未満のもの(法第27条第1項の規定に適合するものを除く。)についての計画の作成に当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。前項第五号に規定する点検時期に関する事項として、次号イ及びロに掲げる点検項目に係る点検は、原則として毎日実施することを定めること(昭和60年建設省告示第606号 第3 2)。少なくとも、同令第13条の3第1項第二号に規定する特殊建築物のうち、倉庫の用途に供するものについての計画の作成に当たっては、防火シャッターの点検及びコンベヤーその他の固定された設備の点検に関する責任者を定めること等に留意するものとする(同告示 第3 3)。
延べ面積200平方メートル未満で三階を教室等の用途に使う学校等特殊建築物は、廊下・階段の物品放置や防火設備の固定状況について、原則毎日の点検を計画に書き込むことまで指針が求めています。
一方倉庫では、防火シャッターとコンベヤー等の点検責任者を明確にし、コンベヤー等を新設・変更する際は一級建築士による確認まで計画に位置づけることが求められます。
どちらも、10項目のうち「点検」「実施体制」の部分を、より具体的な内容まで踏み込んで書く、という形で上乗せされている点が共通しています。
自分の建物がこの2つの類型に当てはまらないか、用途と規模から確認しておく必要があります。

うちは倉庫も持っているんですが、防火シャッターの点検責任者なんて考えたことがなかったです。

倉庫は指針の中でも個別に留意事項が書かれている用途なので、計画を見直す際に確認しておきたい部分です。

指針で足りない部分を自治体が追加することもあるのか

市役所の建物から追加の規則書類が渡されるイラスト
国が定める指針だけがすべてではありません。
条文はもう一段、自治体による上乗せの余地を残しています。
特定行政庁は、第1項に規定する計画に定めるべき事項について、規則で、必要な事項を付加することができる(昭和60年建設省告示第606号 第3 4)。
指針の10項目は全国一律の下限であり、上限ではありません。
特定行政庁、つまり建築主事を置く市町村の長又は都道府県知事は、地域の実情に応じて規則でさらに必要な事項を付け加えることができます。
これは第8条第2項第2号(特定行政庁が指定する建築物)だけでなく、指針そのものの記載事項にも及ぶ授権です。
そのため、指針の10項目を満たしただけで安心せず、所在地の特定行政庁の規則に独自の付加事項がないかを確認する必要があります。
確認先が分からないときは、建築確認を受けた特定行政庁の建築指導窓口に問い合わせるのが確実です。

国の指針どおりに作っておけば、それだけで十分だと思っていました。

指針は下限ですので、念のため所在地の特定行政庁にも確認しておくと安心です。

明日から何を確認すればよいのか

書類棚とチェックリストのイラスト
指針の中身が分かれば、あとは自分の建物に当てはめていくだけです。
次の順番で棚卸しをすると整理しやすくなります。
  • 既存の点検記録・修繕履歴を10項目(利用計画・実施体制・責任範囲・占有者への指導等・点検・修繕・図書の作成保管等・資金計画・計画の変更・その他)に仕分けし、抜けている項目を洗い出す
  • 自分の建物が延べ面積200平方メートル未満の学校等特殊建築物、または倉庫に当たらないかを確認する
  • 当たる場合は、毎日点検や防火シャッター・コンベヤー等の点検責任者といった上乗せの留意事項を計画に書き込む
  • 所在地の特定行政庁に、規則による付加事項の有無を確認する
10項目という共通の物差しがあれば、今ある記録を仕分けるだけで計画の骨格が見えてきます。
学校等特殊建築物や倉庫に当たる場合は、上乗せの留意事項を見落とさないことが特に重要です。
最後に所在地の特定行政庁の上乗せの有無を確認すれば、指針と規則の両方に対応した計画になります。
一度整理した計画は保管しておき、特定行政庁からの照会にすぐ応じられるようにしておきましょう。

10項目に仕分けてみるだけで、今ある記録の抜けが見えてきそうです。

はい、迷うところがあれば特定行政庁や私どもにもご相談ください。

よくある質問

Q準則と計画はどう違うのですか?
A計画は所有者又は管理者が個々の建物について作成するもの、準則は計画を作成する権限を持つ者が複数いる場合に、それらの者の合意で作る全体調整のルールです。
Q10項目は必ず全部書かなければならないのですか?
A指針は「おおむね」次の項目につき定めるものとしており、建物の実情に応じた濃淡は認められます。ただし学校等特殊建築物や倉庫の上乗せ部分は省略できません。
Q延べ面積200平方メートル未満の学校等とは具体的にどんな建物ですか?
A建築基準法施行令第13条の3第1項第一号の特殊建築物のうち、三階を同号の用途(学校・体育館等)に供し、延べ面積が200平方メートル未満のもの(法第27条第1項に適合するものを除く)を指します。
Q特定行政庁が規則で付加した事項はどこで確認できますか?
A所在地の特定行政庁、つまり建築主事を置く市町村長又は都道府県知事の建築指導担当窓口で確認できます。建築確認を受けた窓口に問い合わせるのが確実です。

まとめ

✔建築基準法第8条第2項は準則又は計画の作成義務までしか定めておらず、様式は条文に書かれていません。
✔中身の手がかりは同条第3項の指針、昭和60年建設省告示第606号にあります。
✔計画に定めるべき事項は10項目に整理されています。
✔延べ面積200平方メートル未満の学校等特殊建築物には、原則毎日点検などの上乗せがあります。
✔倉庫には、防火シャッターとコンベヤー等の点検体制に関する上乗せがあります。
✔指針で足りない部分は特定行政庁が規則で付加できます。
✔まずは既存の点検記録を10項目に仕分けし、所在地の特定行政庁にも上乗せの有無を確認しましょう。

計画に何を書けばいいのか、具体的なイメージが持てました。
さっそく手元の記録を仕分けしてみます。

維持保全計画の作成でお困りの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第8条(維持保全)
  • 建築基準法施行令第13条の3(維持保全計画の対象となる特殊建築物等の指定)
  • 昭和60年建設省告示第606号(建築物の維持保全に関する準則又は計画の作成に関し必要な指針)

※この記事は建築基準法・建築基準法施行令・昭和60年建設省告示第606号(令和元年国土交通省告示第199号による改正後のもの)に基づき作成しています。個別の建物への当てはめや、特定行政庁の規則による付加事項の有無は、所在地の特定行政庁にご確認ください。

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