消防法上の点検というと、まず思い浮かぶのは屋根や底板の点検かもしれません。
しかし特定屋外貯蔵タンクの側板は外部から点検しづらいこともあり、腐食による危険物の流出事故が今も後を絶ちません。
このため消防庁は平成25年、タンクの所有者等が自主的に取り組むべき側板の詳細点検のガイドラインを取りまとめました。
この記事では、詳細点検の対象になるタンクの条件から点検の方法、見落としやすい内面腐食の注意点、明日からできる準備までを消防庁のガイドラインにもとづいて整理します。
うちのタンクも古くなってきたので、そろそろ側板の点検も気になっています。
実は底板中心の点検だけでは見落とす部分があるんです。
まずは側板だけの点検が必要になった理由から見ていきましょう。
側板だけ特別扱いされるのには、何か理由があるんでしょうか。
はい、流出事故が今も多いことが背景にあります。
順を追って見ていきましょう。
- 特定屋外貯蔵タンクの側板からの流出事故が今も多いことを受け、平成25年に消防危第49号として所有者等が自主的に取り組む側板の詳細点検のガイドラインが策定されました。
- 対象は指定数量の倍数が大きい特定屋外タンク貯蔵所(液体危険物の最大数量1,000キロリットル以上)に設置された屋外貯蔵タンクです。
- 過去に実績がないタンクは設置後25年を経過した後の最初の保安検査または内部点検で実施し、以後の間隔も25年を超えないようにします。
- 点検の重点はウインドガーダーや階段等の付属物取付部と、保温材のあるタンクの外面腐食です。
- ガイドラインの対象は外面腐食が中心ですが、側板内面からの腐食事例もあり、法令上の義務ではなく自主的な取組みという位置づけも理解しておく必要があります。
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目次
なぜ側板だけの自主点検ガイドラインが作られたのか

一方で側板の腐食による流出事故は、依然として多く発生している状況が続いています。
側板は外部からの点検が難しく、目視点検だけでは腐食の進行を見落としやすい部位です。
その結果、側板の腐食等による危険物の流出事故は依然として多く発生している状況が続きました。
これを受け平成25年、学識経験者や業界団体、消防庁が参加する検討会で効果的な点検方法が検討され、消防危第49号としてガイドラインが取りまとめられました。
まずはどのタンクが対象になるのかを見ていきましょう。
底板は開放したときに見ていましたが、側板はそこまで意識していませんでした。
そこに気づいて検討会が設置されたんです。
次は対象になるタンクの条件を見ていきましょう。
どんなタンクがいつ詳細点検の対象になるのか

タンクの規模と設置からの経過年数で、対象になるタイミングが決まります。
消防法施行令が定める特定屋外タンク貯蔵所、つまり貯蔵し又は取り扱う液体の危険物の最大数量が1,000キロリットル以上の屋外タンク貯蔵所に設置されたタンクが対象になります。
過去に側板の詳細点検を行ったことがないタンクは、設置後25年を経過した後の最初の保安検査または内部点検の機会に実施します。
すでに実施済みのタンクも、前回確認された残存板厚や腐食率をふまえて次回の適切な時期を決め、最大間隔は25年を超えないようにします。
自社のタンクがいつ設置され、いつ保安検査や内部点検を受ける予定かを、まず確認しておく必要があります。
うちのタンクは規模からすると対象になりそうですが、いつ受ければいいのか分かりません。
設置年と点検履歴を確認すれば、次の実施時期が見えてきますよ。
次は実際に何を点検するのかを見ていきましょう。
詳細点検では側板のどこをどう確認するのか

事故の多い部位にしぼって、いずれかの方法で確認します。
事故事例の多くがこれらの部位に集中しているため、側板全体を一律に点検するのではなく重点をしぼります。
方法は大きく2つあり、足場やゴンドラを設置して目視で確認し著しい腐食があれば肉厚測定を行う方法と、タンク内面から超音波探傷法などで連続的に板厚を測定する方法のいずれかを選べます。
保温材のあるタンクは、保温材を全面撤去したうえで同じ手順を踏む必要があります。
どちらの方法でも、腐食の範囲と深さ、または板厚を記録として残すことが求められます。
点検の方法が選べるのは助かりますが、うちのタンクは保温材が巻いてあるので少し手間がかかりそうです。
保温材の全面撤去が必要になる分、計画的な準備が大切です。
次は見落としやすい注意点を確認しましょう。
側板の詳細点検で見落としやすいのはどこか

しかし実際には見落とせない別の腐食も報告されています。
別紙に示された事例では、浮き蓋付きタンクの特別通気口から入り込んだ潮風の影響や、内面塗装の劣化部から腐食が進み貫通孔が生じた例が報告されています。
外面がきれいに保たれていても、内面の状況までは分からないという点に注意が必要です。
また、このガイドライン自体はあくまで所有者等が自主的に取り組むべき点検という位置づけで、法令が直接義務づける点検ではありません。
保安検査や内部点検といった法定の機会を活かして取り組む仕組みだと理解しておく必要があります。
外面さえ見ておけば大丈夫だと思っていましたが、内面からの腐食もあるんですね。
はい、あくまで自主的な取組みという位置づけも含めて理解しておくと安心です。
次は明日からの確認事項をまとめます。
側板の詳細点検に向けて明日からなにを確認すればよいのか

ガイドラインが用意しているチェックリストとフロー図を活用しましょう。
別紙のチェックリストは、ウインドガーダーや階段の取付部、配管貫通部など滞水しやすい箇所ごとに確認項目を整理したもので、日々の点検にそのまま使えます。
詳細点検で得られた残存板厚と腐食率の記録は、その場限りで終わらせず、補修の要否や次回の点検時期を判断するための資料として残しておきます。
自社のタンクの設置年月日と、過去に詳細点検等を実施した記録があるかどうかを、まず台帳で確認するところから始めましょう。
記録が見当たらない場合は、次の保安検査または内部点検のタイミングで側板の詳細点検をあわせて依頼することを検討してください。
つまり、日々のチェックリストと記録の積み重ねが次の詳細点検にもつながるということですね。
そのとおりです。
まずは自社のタンクの設置年と点検記録を確認してみてください。
よくある質問
まとめ
側板の点検も計画的に備えられそうで安心しました!
㈱防災屋でもご相談を承っております。
まずは自社のタンクの設置年と点検記録を確認してみてください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第14条の3の2
- 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第8条の2の3第3項
- 総務省消防庁「特定屋外貯蔵タンクの側板の詳細点検に係るガイドラインについて」(消防危第49号、平成25年3月29日)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





