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水道連結型スプリンクラーは火災を感知したのになぜ放水しなかったのか|硬質塩化ビニル管の接着施工と消防庁の留意事項を解説

ヘッドが火災を感知しても水が出なかった特定施設水道連結型スプリンクラー設備の配管の施工を解説する記事のアイキャッチ画像。天井のスプリンクラーヘッドと点検口の白い配管が写る写真

特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、水道の水を水源にする小規模施設向けのスプリンクラーです。
平成27年、鹿児島市内の火災で、そのヘッドが火災を感知したのに放水しなかった事案が起きました。
消防庁は、原因を配管に使う硬質塩化ビニル管の施工上の不具合と推定し、留意事項を通知しました。
この記事では、その通知の中身と、施工や検査で確認したい点を整理します。

火災でヘッドが感知したのに水が出なかったなんて、怖い話ですね。

通知は、原因を配管の接着施工の不具合と推定しています。
通知の中身を順に見ていきましょう。

水道につなぐスプリンクラーの配管は、どんな材料でできているのですか。

通知が挙げているのは硬質塩化ビニル管です。
どこが問題になったのかを確認します。

この記事の結論
  • 消防庁の通知は、特定施設水道連結型スプリンクラー設備のヘッドが火災を感知しても放水しなかった事案を受けて出されました。
  • 原因は、硬質塩化ビニル管の接着施工の不具合と推定されています。
  • 通知は、先に配管と給水栓用ソケットを接合し、接着剤が十分に乾燥したことを確認してからヘッドをねじ込むよう示しています。
  • 接着剤の塗布量や養生時間、管の面取りについても、通知に留意点が書かれています。
  • 検査で接合部を確認する方法や時期は、施工業者と事前に調整する必要があるとされています。

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硬質塩化ビニル管の配管を先に接合し、接着剤を十分に乾燥させてから、スプリンクラーヘッドをねじ込む手順を示した図解

スプリンクラーのヘッドが火災を感知したのになぜ水が出なかったのか

天井の配管の先にあるスプリンクラーヘッドから水が出ず、下の床に小さな炎が上がるイラスト
通知は、冒頭で鹿児島市内の火災で起きた事案を述べています。
まずは、その部分を原文で確認します。
(特定施設水道連結型スプリンクラー設備の配管における適切な施工について(通知) 平成27年9月4日消防予第351号 消防庁予防課長)先般、鹿児島市内で発生した火災において、特定施設水道連結型スプリンクラー設備(以下「スプリンクラー設備」という。)のヘッドが火災を感知したにもかかわらず、放水しなかった事案が発生しました。当該事案は、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第14条第1項第10号ハの規定に基づく「特定施設水道連結型スプリンクラー設備に係る配管、管継手及びバルブ類の基準」(平成20年消防庁告示第27号)第4号による配管(硬質塩化ビニル管)の施工上の不具合(別紙)が原因であったと推定されます。
通知は、水が出なかった原因を配管の施工上の不具合と推定しています。
鹿児島市内の火災で、ヘッドは火災を感知していたのに放水しなかったと冒頭に書かれています。
原因は、告示第4号による配管、つまり硬質塩化ビニル管の施工上の不具合だったと推定されています。
ここで大事なのは、原因が「推定」とされている点で、通知は原因を確定したとは書いていません。
そのため、通知は火災の詳細ではなく、再発を防ぐための施工上の留意事項に重心を置いています。

火災のときに水が出ないなんて、設備が付いていても安心できませんね。

通知は、原因を配管の施工の問題と推定しています。
次は、どの設備が対象なのかを確認しましょう。

この通知はどのスプリンクラー設備の配管が対象なのか

水道管と水道メーターが小さな二階建ての施設につながり、貯水槽が無いイラスト
通知が扱うのは、水道の水を水源にする特定施設水道連結型スプリンクラー設備です。
設備の定義と、配管の基準を定める規則の条文を確認します。
(消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条第2項第3号の2)三の二 特定施設水道連結型スプリンクラー設備(スプリンクラー設備のうち、その水源として、水道の用に供する水管を当該スプリンクラー設備に連結したものであつて、次号に規定する水量を貯留するための施設を有しないものをいう。以下この項において同じ。)は、前項第一号及び第九号に掲げる防火対象物又はその部分のうち、防火上有効な措置が講じられた構造を有するものとして総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が千平方メートル未満のものに限り、設置することができること。
(消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第14条第1項第10号ハ)特定施設水道連結型スプリンクラー設備に係る配管、管継手及びバルブ類にあつては、消防庁長官が定める基準に適合するものを使用すること。
対象は、水道の水をそのまま水源にする小規模なスプリンクラー設備です。
令は、この設備を水道の用に供する水管を連結して水源とし、水量を貯めるための施設を持たないものと定義しています。
設置できるのは、令第12条第1項第1号・第9号の防火対象物などのうち、一定の部分を除いた床面積の合計が1,000平方メートル未満のものに限られます。
配管や管継手、バルブ類は、規則が消防庁長官が定める基準に適合するものを使うよう求めています。
通知が挙げる平成20年消防庁告示第27号の第4号による配管が、硬質塩化ビニル管を用いたものです。

うちのスプリンクラー設備にも、この通知は関係するのでしょうか。

まずは、自分の設備が水道連結型かどうかを確認しましょう。
貯水槽を持たず、水道の水管に連結した設備が該当します。

通知は硬質塩化ビニル管の施工で何を求めているのか

作業台の上に面取りされた白い樹脂管と接着剤の容器、丸い時計が並ぶイラスト
通知は、接着剤を使う工法の施工上の留意事項を5項目に分けて示しています。
前半の2項目と、後半の3項目を原文で確認します。
(特定施設水道連結型スプリンクラー設備の配管における適切な施工について(通知) 平成27年9月4日消防予第351号 消防庁予防課長)(1)作業手順 硬質塩化ビニル管に接着剤を用いる工法においてヘッドを取り付ける際は、先に配管と給水栓用ソケットを接合し、その接合部に用いた接着剤が十分に乾燥していることを確認した後に、給水栓用ソケットにヘッドをねじ込み接合すること。(2)接合における接着剤の塗布量 接着剤は、種類により塗布に必要な分量が異なるため、それぞれの製品に応じて適量を薄く均一に塗布すること。
(特定施設水道連結型スプリンクラー設備の配管における適切な施工について(通知) 平成27年9月4日消防予第351号 消防庁予防課長)(3)十分な乾燥 接着剤の種類によって固着するまでの時間が異なるため、それぞれ製品に応じた養生時間を確保し、十分に乾燥させること。(4)管の面取り 接着接合に使用する管について面取りをしない場合は、接着剤塗布面の接着剤が管や継手内に掻き出され、膜張り現象による閉塞や接着不良が発生することがあるため、所定の面取りを行うこと。(5)その他 透明な給水栓用ソケット等を用いるなど、外側から接合部の接着剤の状況が目視できる方法があること。
ポイントは、接着剤の使い方と施工の順序に集約されます。
先に配管と給水栓用ソケットを接合し、接着剤が十分に乾燥したのを確認してから、ヘッドをねじ込みます。
接着剤は、製品ごとに適量が違うため、それぞれの製品に応じて薄く均一に塗布します。
固着するまでの時間も種類で異なるので、製品に応じた養生時間を確保します。
管の面取りをしないと、接着剤が管や継手の内側に掻き出され、閉塞や接着不良が発生することがあると通知は述べています。

接着剤が乾く前にヘッドを付けてしまうと、何が起きるのでしょうか。

通知の別紙には、接着剤がヘッド側へ流れ込んで固まった様子の図(推定)が付いています。
だから乾燥の確認が順序の要になります。

検査や事前打合せで見落としやすいのはどこか

天井板の穴からスプリンクラーヘッドが出ていて、脇に脚立とスパナが置かれたイラスト
通知は、施工の留意事項とは別に、消防機関の側の対応も示しています。
事前打合せと、施工状況の確認についての部分を原文で確認します。
(特定施設水道連結型スプリンクラー設備の配管における適切な施工について(通知) 平成27年9月4日消防予第351号 消防庁予防課長)(1)事前打合せ時等の注意喚起 事前打合せや着工届の受理の際等に、スプリンクラー設備の配管に硬質塩化ビニル管を用いることが把握できた時点で、施工業者に対し上記1の施工上の留意事項を周知されたいこと。
(特定施設水道連結型スプリンクラー設備の配管における適切な施工について(通知) 平成27年9月4日消防予第351号 消防庁予防課長)(2)配管及び管継手の施工状況の確認 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の2に規定する検査等において、ヘッドの取付け部付近の配管及び管継手の施工が適切に行われていることを確認する際には、その方法や時期について施工業者と事前に調整する必要があること。また、確認に当たっては、次のアからウに留意すること。ア 施工状況により天井板を取り付けた後は、ヘッドの脱着が困難となる場合があること。
落とし穴は、天井板を取り付けたあとに確認が難しくなる点です。
通知は、施工状況によっては天井板を付けたあとにヘッドの脱着が困難になると注意しています。
そのため、消防法第17条の3の2に規定する検査等では、確認の方法や時期を施工業者と事前に調整する必要があるとされています。
ヘッドを外し直すときは、給水栓用ソケットを確実に保持し、接合部に過度な力が加わらないようにすることも示されています。
液状シール剤を使う場合は、固着するとヘッドが外しにくくなるため、塗布する前に接合状況の確認が必要だと述べています。

天井が仕上がってからでは、配管の接合部は確認しにくいのですね。

通知もその点に注意を促しています。
検査の時期は、施工業者と事前に調整しておきましょう。

施工と検査の担当者は明日から何を確認すればよいのか

空欄のチェック欄がある白紙のクリップボードと、透明な配管継手にヘッドが付いた台のイラスト
通知は消防組織法に基づく助言で、事業所に義務を課すものではありません。
ただ、工事の発注や検査に関わる立場なら、次の3点を確認しておきたいところです。
(特定施設水道連結型スプリンクラー設備の配管における適切な施工について(通知) 平成27年9月4日消防予第351号 消防庁予防課長)なお、本通知は、消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条の規定に基づく助言として発出するものであること、また、本通知の内容について、厚生労働省健康局水道課を通じて水道事業者等に対して周知されるよう依頼していることを申し添えます。
確認したいのは、設備の方式・施工業者への周知・検査の段取りの3点です。
1点目は、自分の建物のスプリンクラー設備が水道連結型か、配管に硬質塩化ビニル管が使われているかです。
2点目は、新設や改修の工事で、施工業者が通知の施工上の留意事項を把握しているかどうかです。
3点目は、検査の際にヘッド付近の接合部を確認できる時期と方法を、事前打合せで施工業者と決めておくことです。
設備の方式や配管の材料が分からないときは、設置工事の図面や施工業者に問い合わせるところから始めます。

結局、私は何から確かめればよいのでしょうか。

まずは、自分の建物が水道連結型かどうかを確認しましょう。
工事の予定があれば、施工業者へ通知の内容も伝えておきます。

よくある質問

Q水道連結型ではないスプリンクラー設備にも、この通知は関係しますか?
A通知の題名も本文も、特定施設水道連結型スプリンクラー設備を対象にしています。ほかの方式の配管については、この通知には書かれていません。
Qこの通知が出たことで、法令上の義務や罰則が新しく加わったのですか?
A通知は、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出されたと本文に書かれています。新たな義務や罰則を定めるとは書かれていません。
Q使う接着剤の種類や銘柄は指定されていますか?
A通知は接着剤の銘柄を指定していません。書かれているのは、製品に応じた適量と養生時間で施工することです。
Qこの通知が厚生労働省にも周知されたのはなぜですか?
A本文には、通知の内容を厚生労働省健康局水道課を通じて水道事業者等に周知するよう依頼していると書かれています。理由までは書かれていません。

まとめ

✔水道連結型スプリンクラーのヘッドが火災を感知しても放水しなかった事案を受けて出された通知
✔原因は、硬質塩化ビニル管の接着施工の不具合と推定されている
✔配管と給水栓用ソケットを先に接合し、乾燥を確認してからヘッドをねじ込む
✔接着剤は製品に応じて薄く均一に塗布し、養生時間を確保して、管の面取りを行う
✔天井板を付けたあとはヘッドの脱着が困難になるため、検査の方法と時期を施工業者と事前に調整する
✔通知は消防組織法第37条に基づく助言として発出された
✔自分の建物が水道連結型かどうかを確認するところから始める

水道連結型かどうかの確認から始めます!

配管の施工と検査の段取りも、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 特定施設水道連結型スプリンクラー設備の配管における適切な施工について(通知)(平成27年9月4日 消防予第351号 消防庁予防課長)
  • 特定施設水道連結型スプリンクラー設備に係る配管、管継手及びバルブ類の基準(平成20年消防庁告示第27号)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の2
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第12条第2項第3号の2
  • 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第14条第1項第10号ハ
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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