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スプリンクラー設備の省略はどこまで認められたのか|昭和53年と54年の質疑応答5問を現行の規則と照らして解説

スプリンクラー設備の省略と特例を解説する記事のアイキャッチ画像。木の床と高い天井を持つ大きな体育館の内部

スプリンクラー設備は、基準に当たる建物では、原則として決められた部分すべてに設けます。
ただ、使っていない階、天井の高い体育館、非常電源の配線、渡り廊下でつながった旅館、階段の防火戸など、条文どおりに当てはめにくい場面があります。
消防庁は昭和53年と54年に、こうした場面について都道府県からの質疑に回答を示しました。
当時の号番号や名称は改正で変わっていますが、省略や緩和が認められた条件の考え方は、今の条文にも通じています。5つの質疑を現行の条文と照らして読みます。

スプリンクラー設備って、省略できる場合がありますよね。

はい。
昭和53年と54年の質疑応答5問を、順に見ていきます。

昔の回答が、今も役に立つんでしょうか。

考え方は役に立ちます。
現行の条文で確かめながら読みます。

この記事の結論
  • 地階を除く階数が11以上の特定防火対象物で、11階以上の階がすべて空室のときは、出火危険も延焼危険もまったくない状態なら、令第32条で基準を適用しない扱いが認められました
  • 主として体育館として使う部分は、天井を不燃材料か準不燃材料で仕上げ、多量の可燃物を置かないなら、高さ8メートル以上の箇所のヘッドを省略してさしつかえないとされました
  • 非常電源回路のバスダクトは、周囲の状況から延焼のおそれがないと認められる場所なら、耐火バスダクトでなくてもさしつかえないとされました
  • 渡り廊下でつながった木造棟と耐火棟が別棟に区画できないという事情は、令第32条を適用して設備を免除する理由にならないとされました
  • 手動で閉める防火戸の階段は、避難階段等と認められず、既存の防火対象物に限って令第32条の2つの方法が示されました

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スプリンクラー設備の省略と特例の質疑応答5問として、空室の階、高い天井の体育館、配線、渡り廊下、階段の防火戸を並べた図解

11階以上の階が使われていないときスプリンクラー設備は免除できるのか

背の高いオフィスビルの上層階が空っぽで、下の階だけ机が置かれ、右側に低い建物が並ぶイメージ
地階を除く階数が11以上の特定防火対象物は、スプリンクラー設備の設置が求められます。
階が丸ごと空室になっているとき、それでも設備が要るのかが問われました。
問(要旨) 地階を除く階数が11以上の特定防火対象物で、11階以上が空室の場合、または中間階が空室の場合、令第12条第1項第2号は適用されるか。第9号はどうか。
答 中間階が空室の場合は、令第12条第1項第2号及び第9号の規定が適用される。なお、この場合空室部分の実状に応じて令第32条の規定を適用し、設備の設置の緩和を行うことはさしつかえない。
また、11階以上のすべての階が空室の場合、当該空室部分において、構造及び設備の管理上等出火危険及び延焼の危険がまったくない状態にされている場合においては、令第32条の規定を適用し、令第12条第1項第2号及び第9号の規定を適用しないものと取り扱ってさしつかえない。
中間階が空室でも基準は適用されるが、11階以上がすべて空室で出火危険も延焼危険もまったくないなら、適用しない扱いが認められるという答えでした。
現行の令第12条第1項は、第3号で地階を除く階数が11以上の特定防火対象物などを、第12号でそれ以外の防火対象物の11階以上の階を、対象にしています。質疑にある当時の号番号は、改正で変わりました。
令第32条は、消防長または消防署長が、基準によらなくても火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと認めるときの規定です。回答は、11階以上の階がすべて空室で、出火危険と延焼危険がまったくない状態ことを条件にしました。
単に今は使っていないというだけでは足りないと読めます。空室の階を持つ管理権原者は、免除を前提にせず、消防機関へ早めに相談します。

空室というだけでは、免除にならないんですね。

そうです。
管理の状態まで含めて、消防機関が判断します。

天井の高い体育館はスプリンクラーヘッドを省略できるのか

広い体育館の断面で、木の床とバスケットゴール、とても高い天井、壁ぎわに高さを示す紺色の棒があるイメージ
体育館のような大きな空間は、天井がとても高くなります。
使い方が主として体育館の建物で、取付け面の高さが8メートル以上になる箇所のヘッドを省略できるかが問われました。
問(要旨) 令別表第1(1)項及び同表(16)項イに掲げる防火対象物のうち、(1)項の用途に供される部分(舞台及びスクリーンの部分を除く。)でその使用実態が主として体育館として使用されるものについて、スプリンクラーヘッドの取付け面の高さが8メートル以上となる箇所では、スプリンクラーヘッドの設置を省略してさしつかえないか。
答 設問の天井面の仕上げを不燃材料又は準不燃材料とし、当該防火対象物において多量の可燃物を貯蔵し又は取り扱ったりするおそれのない場合にあっては、令第32条の規定を適用し、スプリンクラーヘッドの取付け面の高さが8メートル以上となる箇所のスプリンクラーヘッドの設置は省略してさしつかえない。
天井の仕上げを不燃材料か準不燃材料とし、多量の可燃物を置かないなら、高さ8メートル以上の箇所のヘッドを省略してよいという答えでした。
現行の規則第13条第3項第9号は、これに近い定めを規則に書いています。令別表第1(1)項の用途の部分のうち、固定式のいす席を設ける部分について、取付け面の高さが8メートル以上の場所には、ヘッドを設けなくてよいとしています。
取付け面とは、ヘッドを取り付ける天井の室内に面する部分、または上階の床もしくは屋根の下面をいいます。規則は天井の仕上げや可燃物の量を条件に挙げていません。当時の回答は特例として示された条件で、現行の規則の号とは対象の書き方が違います。
固定席のない体育館の使い方は、この号だけでは読み取れません。自分の施設が当てはまるかは、消防機関に確認して決めます。

省略するには、天井の仕上げも見られるんですね。

はい。
天井の材料と、置いているものを確かめます。

非常電源の配線は耐火バスダクトでなくても認められるのか

灰色の発電設備の建物と小さなベージュの受電室が、広い砂利の空地の上で高い位置の長い灰色のダクトでつながるイメージ
スプリンクラー設備の非常電源は、停電のときにも設備を動かす電源です。
自家発電設備の建物から隣の配電室の建物へ、高い場所を通す幹線に耐火バスダクトを使わなくてよいかが問われました。
問(要旨) スプリンクラー設備等の非常電源回路は耐火配線としなければならないが、別添図のとおり、自家発電設備を設置した専用建物(耐火構造)から隣接の配電室専用建物(不燃構造)へ、地上約3.5メートルの高所を、6,600ボルト、600アンペアのバスダクト(耐火バスダクトではない)で配線している。周囲は広い空地であり、延焼のおそれもないと認められる場所でもあるので、このまま支障ないとしてよろしいか。なお、バスダクトの上面には、数か所点検口が設けられており、ガラスウール等で保護することはできない。
答 設問の場合、周囲の状況から判断して延焼のおそれがないと認められるので、耐火バスダクトでなくてもさしつかえない。
周囲が広い空地で延焼のおそれがないと認められる場所では、耐火バスダクトでなくてもさしつかえないという答えでした。
現行の規則第14条第1項第6号の2は、スプリンクラー設備の非常電源を、屋内消火栓設備と同じ規則第12条第1項第4号の規定の例によると定めています。同号ホは、配線に600ボルト2種ビニル絶縁電線またはこれと同等以上の耐熱性を持つ電線を使い、耐火構造とした主要構造部への埋設などで保護すると定めています。MIケーブルなどを使う場合は、この保護が求められません。
同号ホには、周囲に延焼のおそれがなければ保護しなくてよいという定めは見当たりません。回答は根拠条文を示していませんが、点検口があってガラスウール等で覆えないという事情と、広い空地で延焼のおそれがないという場所の状況を見た個別の判断と読めます。
同じ配線材を使いたいときは、設計者に耐熱の確認を求め、緩和を前提にせず消防機関へ相談します。

場所の状況を見て認めた答えなんですね。

そうです。
条文に書かれた保護の方法が、基本になります。

渡り廊下でつながった旅館は令第32条でスプリンクラー設備を免除できるのか

茶色い木造の旅館の建物と背の高い灰色のコンクリートの建物が、上階の渡り廊下でつながっているイメージ
木造の建物と耐火構造の建物が渡り廊下でつながった旅館で、延べ面積が6,685.6平方メートルあります。
別棟として区画するのが難しいため、令第32条で設備を免除できないかが長野県から問われました。
問(要旨) 令別表第1(5)項イに該当する、別添図の木造1,882.7平方メートルと、耐火構造4,802.9平方メートルが、耐火構造建築物の2階及び3階からの渡り廊下で接続しており、その延面積は6,685.6平方メートルの既存防火対象物がある。この渡り廊下の改造により別棟区画することが、地形上と構造上から至難と思われるので、耐火構造棟を施行規則第13条第1項各号に定める区画をして、6,000平方メートル未満となるようにすることによって、スプリンクラー設備を施行令第32条を適用し免除できないか。
答 消防法施行令第32条を適用することは適当でない。
なお、スプリンクラーヘッドを設置しないことができるものとして、「消防法、同施行令及び同施行規則に関する執務資料について」(昭和53年2月21日消防予第32号)問7に対する回答があるので念のため申し添える。
別棟に区画するのが難しいという事情だけでは、令第32条を適用して免除することは適当でないという答えでした。
現行の令第12条第1項第4号は、旅館などの(5)項イについて、平屋建以外で、総務省令で定める部分以外の部分の床面積の合計が6,000平方メートル以上のものに、スプリンクラー設備を求めています。この旅館の延べ面積は、木造と耐火構造の合計で6,685.6平方メートルです。
面積から除く部分は、規則第13条第2項が定めています。特定主要構造部を耐火構造とした防火対象物の階の部分で、耐火構造の壁と床で区画され、開口部の面積や床面積などの条件に合うものです。延べ面積が近い旅館は、渡り廊下の増築や改造で面積の合計がどうなるかを確かめます。
回答は、区画を新たに設けられない事情があっても、それを理由に令第32条で免除する扱いを認めませんでした。理由までは書かれていません。

区画できないから免除、とはならないんですね。

はい。
免除の理由を、区画の難しさに求められません。

防火戸を手動で閉める階段はスプリンクラーヘッドを省略できるのか

階段室の断面で各階の出入口に紺色の防火戸があり、戸の上に橙色のノズルが並び、右に低い建物が接続しているイメージ
階段の出入口の防火戸には、火災のとき自動で閉まるものと、人が手で閉めるものがあります。
閉まり方の違いで、階段部分のヘッドの扱いがどう変わるのかが示されました。
問(要旨) 「消防法、同施行令及び同施行規則に関する執務資料について」(昭和52年1月27日消防予第12号)3消火設備 問3に、防火戸の閉鎖機構に関する規定が従前の規定に適合する場合、令第32条の規定を適用しスプリンクラーヘッドの設置を免除してさしつかえない場合があるとされているが、熱感知器連動、温度ヒューズ連動のもの及び手動で閉鎖するものについてはどうか。
答 熱感知器連動又は温度ヒューズ連動のものについてはお見込みのとおり。なお、手動で防火戸を閉鎖するものについては避難階段等と認められないため、当該階段部分にスプリンクラーヘッドを設置しなければならないが、既存の防火対象物に限り、令第32条の規定を適用し、次のいずれかによることができるものとする。
(1) 階段室の出入口の部分に令第12条第2項第3号及び規則第15条の規定に準じてスプリンクラー設備又はドレンチャー設備を延焼防止上有効に設けた場合にあっては、階段部分のスプリンクラーヘッドの設置を省略できるものとする。なお、この場合ドレンチャー設備のドレンチャーヘッドを閉鎖型のものとする場合に限り、スプリンクラー設備の配管と接続してもさしつかえない。
(2) 階段室にスプリンクラーヘッドを設置する場合、当該スプリンクラーヘッドを接続する配管は、いずれの階の配管と接続してもさしつかえないものとする。
自動で閉まる防火戸の階段は従前の扱いのままですが、手動で閉める防火戸の階段は避難階段等と認められず、既存の防火対象物に限って2つの方法が示されました。
現行の規則第13条第3項第1号は、階段をヘッドを設ける部分から外しています。ただし、令別表第1(2)項、(4)項、(16の2)項などは、建築基準法施行令第123条の避難階段または特別避難階段に限られます。
令第12条第2項第3号は、開口部の上枠にヘッドを設けると定め、ただし書で防火設備がある10階以下の開口部を除いています。規則第15条は、その防火設備を防火戸またはドレンチャー設備としています。
階段の防火戸が自動で閉まるのか手で閉めるのかを、まず現地で確かめます。

防火戸が手動かどうかで、扱いが分かれるんですね。

そうです。
階段の防火戸の閉まり方を、点検のときにも確かめます。

よくある質問

Q令第32条の特例は、誰がどんなときに認めるのですか?
A令第32条は、消防長または消防署長が、防火対象物の位置、構造または設備の状況から判断して、基準によらなくても火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときに、基準を適用しないと定めています。
Q昭和の回答は、今もそのまま使えるのですか?
A当時の号番号や名称は改正で変わっているので、そのままは使えません。回答の考え方を参考にしつつ、現行の条文で対象と数値を確かめ、個別の建物は消防機関に確認します。
Qスプリンクラーヘッドの取付け面とは、どの部分のことですか?
A規則第13条第3項第9号は、ヘッドを取り付ける天井の室内に面する部分、または上階の床もしくは屋根の下面をいうと定めています。
Q階段にはスプリンクラーヘッドを設けなくてよいのですか?
A規則第13条第3項第1号は階段をヘッドを設ける部分から外していますが、令別表第1(2)項、(4)項、(16の2)項などは避難階段または特別避難階段に限られます。

まとめ

✔11階以上の階の空室は、出火危険と延焼危険がまったくない状態のとき、令第32条で基準を適用しない扱いが認められた
✔令第32条の特例は、消防長または消防署長が、延焼のおそれが著しく少ないと認めるときに使える
✔体育館の高い天井は、天井を不燃材料か準不燃材料で仕上げ、多量の可燃物を置かないなら、ヘッドの省略が認められた
✔非常電源回路のバスダクトは、周囲の状況から延焼のおそれがないと認められる場所で、耐火でなくてもよいとされた
✔渡り廊下でつながった旅館は、別棟に区画できないことを理由に、設備の免除は認められなかった
✔手動で閉める防火戸の階段は、避難階段等と認められず、既存の防火対象物に限って2つの方法が示された
✔昭和53年と54年の回答は、現行の条文で号番号や数値を確かめて使う

スプリンクラー設備の省略の考え方が、条文とつながりました。
うちの建物も確かめてみます!

昔の回答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第12条・第32条
  • 消防法施行規則第12条・第13条・第14条・第15条
  • 消防法、同施行令及び同施行規則に関する執務資料について(昭和53年2月21日 消防予第32号 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて)
  • 消防法施行規則第13条のスプリンクラー設備について(昭和54年4月3日 消防予第61号 消防庁予防救急課長から長野県生活環境部長あて回答)
  • 防火戸の閉鎖機構について(昭和54年6月22日 消防予第118号 消防庁予防救急課長から各都道府県消防主管部長あて回答)
  • 消防実務六法 質疑応答編

※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。

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