スプリンクラー設備は、基準どおりに設けるのが原則です。
ただ、既存の建物の増築、倉庫どうしの接続、配管の兼用、水源の水量、木造部分の扱いなど、原則だけでは決めにくい場面があります。
消防庁は昭和51年から52年にかけて、こうした場面について都道府県からの質疑に回答を示しました。当時の条番号や数値は改正で変わっていますが、特例を使える条件と使えない条件の考え方は、今の条文にも通じています。5つの質疑を現行の条文と照らして読みます。
スプリンクラー設備って、特例や兼用の話がややこしいですよね。
はい。
昭和51年と52年の質疑応答5問を、順に見ていきます。
昔の通知が、今も役に立つんでしょうか。
考え方は役に立ちます。
現行の条文で確かめながら読みます。
- 旅館に小さな増築をしたとき、政令の範囲に満たない増築なら、令第32条を適用して既存部分と同じ特例の基準で扱ってさしつかえないとされました
- ラック式倉庫に接続する普通倉庫は、区画の防火シャッターを有効に冷却する設備を設ければ、令第32条の適用でスプリンクラー設備を省略してさしつかえないとされました
- スプリンクラー設備と屋内消火栓設備の配管の兼用は、送水を遮断する装置を設けた設問の形では認められないとされました
- 水源の水量で令第32条を使えるのは、昭和49年12月31日時点の基準に適合していることが前提です
- 木造部分と耐火構造部分が混在する病院等は、現行基準の設備・2方向避難・接続部分の区画の3条件を満たせばスプリンクラー設備を免除してさしつかえないとされました
▼

目次
旅館に小さな増築をしたら増築部分にもスプリンクラー設備の特例は使えるのか

延べ面積が10,247平方メートルほどの旅館で、平家建て303.5平方メートルの増築計画が出たとき、増築部分に特例が使えるかが鳥取県から問われました。
なお、基準時以後の増築が法の定める規模に該当しない場合の当該部分は、令第32条を適用して特例基準の第2の基準を適用してさしつかえない。
(2) (1)により承知されたい。
(3) 現行の法第17条の技術上の基準が適用されるが、既存部分については令第32条の規定を適用してさしつかえない。
現行の消防法第17条の2の5は、第1項で、既存の防火対象物の消防用設備等が後の基準改正に適合しなくても、従前の規定を適用すると定めています。ただし第2項は例外を置き、第2号が政令で定める増築、改築または大規模の修繕もしくは模様替え、第4号が旅館などの特定防火対象物の消防用設備等を掲げています。
増築の範囲は、令第34条の2が定めています。基準時以後の増築などの床面積の合計が1,000平方メートル以上、または基準時の延べ面積の2分の1以上となるものです。今回の303.5平方メートルは、どちらにも遠く及びません。
令第32条は、消防長または消防署長が、火災の発生や延焼のおそれが著しく少なく、被害を最少限度に止められると認めるときの特例です。回答は、増築が政令の範囲に満たない間は、既存部分と同じ特例の基準で扱ってよいと整理しました。増築を重ねて合計が1,000平方メートルに達したら、現行の法第17条の基準が適用されます。
増築が小さいうちだけ、特例が使えるんですね。
そうです。
増築の合計面積を、常に数えておくことが大切です。
ラック式倉庫につながる普通倉庫のスプリンクラー設備は免除できるのか

荷さばき場のような普通倉庫がつながる建物で、普通倉庫側のスプリンクラー設備を免除できるかが、石川県から問われました。
現行の令第12条第1項第5号は、ラック式倉庫を、棚またはこれに類するものを設け、昇降機により収納物の搬送を行う装置を備えた倉庫と定義し、天井の高さが10メートルを超えで、かつ、延べ面積が700平方メートル以上のものにスプリンクラー設備を求めています。回答の括弧書きは、この定義とほぼ同じです。
普通倉庫側を省略できた理由は、令第32条の考え方にあります。ラック式倉庫と普通倉庫を耐火構造の壁で区画し、開口部の防火シャッターを冷却設備で守れば、延焼のおそれが著しく少ないと判断できるという考え方によるものと読めます。免除の判断は建物ごとに消防長または消防署長が行いますので、事前に消防機関へ相談してください。
区画のシャッターを守るのが条件なんですね。
はい。
冷却設備が、免除の前提になっています。
スプリンクラー設備と屋内消火栓設備は配管を兼用してよいのか

ポンプと配管を共用できれば費用は減りますが、水の取り合いが心配です。
2 添付された資料から判断して、規則第12条第6号イのただし書および第6号トの規定に適合するものとして認めてさしつかえない。
現行の規則第12条第1項第6号イは、屋内消火栓設備の配管を専用とすることと定め、ただし書で、「起動装置を操作することにより直ちに他の消火設備の用途に供する配管への送水を遮断することができる等、当該屋内消火栓設備の性能に支障を生じない場合」を例外としています。スプリンクラー設備の配管は、規則第14条第1項第10号が、この第12条第1項第6号の規定に準じて設けると定めています。
回答は結論だけで、理由は示していません。ただ、現行のただし書は、屋内消火栓設備の起動装置を操作して、ほかの消火設備の配管への送水を遮断する形を例に挙げています。設問のように、どちらが先に起動しても相手側を遮断する構成は、この例と同じとは言い切れません。これは条文からの読み方で、回答が理由を示したわけではありません。兼用を考えるときは、設計の段階で消防機関に確認してください。
一方で、遮断に使う機器そのものは、バルブ類の基準(同号ト)に適合すると認められました。機器が基準に適合することと、兼用の仕組みが認められることは、別の問題です。
配管は専用が原則なんですね。
そうです。
ただし書の例外は、性能に支障がない場合に限られます。
スプリンクラー設備の水源の水量で令第32条の特例は使えるのか

当時の基準にしか合っていない百貨店が、送水口の設置を代わりの措置として、水量の特例を受けられるかが三重県から問われました。
答えは、昭和49年12月31日時点の水量基準に適合していることを、令第32条を使う前提にしています。旧基準にも届いていない水量を、送水口の追加で埋め合わせることは認めないという趣旨と読めます。
現行の水量は、令第12条第2項第4号を受けた規則第13条の6第1項第1号が定めます。標準型ヘッドでは、百貨店は15個、多くの建物は地階を除く階数が10以下なら10個、11以上なら15個を基準とし、これに1.6立方メートルを乗じます。百貨店なら24立方メートルです。当時の「10個」より多くなっています。
なお、現行の令第12条第2項第7号は、スプリンクラー設備に非常電源と双口形の送水口を付置することを求めています(特定施設水道連結型を除く)。送水口はいまや、代替措置ではなく基本の装置です。
旧基準を満たしているのが前提なんですね。
はい。
いま求められる水量は、条文で確かめます。
木造部分と耐火構造部分が混在する病院等はスプリンクラー設備を免除できるのか

木造部分と耐火構造部分が混在する既存の病院等が、数年かけて耐火構造へ建て替える計画のとき、免除できるかが長野県から問われました。
1 設問の1に該当すること。
2 木造部分の居室の各部分から、2以上の異なった経路により有効に避難できると認められること。
3 接続部分の構造が次の(1)から(3)までのいずれかに該当すること。(1) 開口部のない耐火構造の壁または床で区画されているもの。(2) 昭和50年3月5日消防安第26号通達「消防用設備等の設置単位について」第2の1から3までのいずれかに該当する構造となっているもの。(3) 耐火構造の壁または床の、面積が4平方メートル以下の開口部により接続され、かつ、その開口部に、随時開けることができる自動閉鎖装置つき、もしくは煙感知器の作動と連動して閉鎖することができる甲種防火戸が設けられているもの。
令第32条の特例は、消防用設備等の基準によらなくても、火災の発生や延焼のおそれが著しく少ないと認められるときに使えます。回答は、木造部分の免除を無条件には認めず、他の消防用設備の現行基準への適合、避難、区画の3点で補うことを求めました。
避難の点では、居室から2以上の異なった経路で避難できることが条件です。区画の点では、開口部のない壁や床で区切るか、開口を小さくして防火戸で閉じる構造が求められました。
対象は令別表第1(6)項イの病院・診療所などです。特例が認められるかは個々の建物の状況で判断されるので、消防機関と早めに協議します。
免除には3つの条件がそろわないといけないんですね。
そうです。
避難と区画と他の設備の3点を確かめます。
よくある質問
まとめ
スプリンクラー設備の特例の考え方が、条文とつながりました。
うちの建物も確かめてみます!
昔の回答も、今の条文の意味を理解するために読めます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条の2の5
- 消防法施行令第12条・第32条・第34条の2
- 消防法施行規則第12条・第13条の6・第14条
- 既存防火対象物に係るスプリンクラー設備の設置基準について(昭和51年3月9日 消防予第32号 消防庁予防救急課長から鳥取県総務部長あて回答)
- ラック式倉庫に接続する普通倉庫に対するスプリンクラー設備の消防法施行令第32条の特例適用の可否について(昭和51年3月27日 消防安第51号 消防庁安全救急課長から石川県総務部長あて回答)
- スプリンクラー設備と屋内消火栓設備の配管の兼用について(昭和52年6月14日 消防予第118号 消防庁予防救急課長から福岡県民生部長あて回答)
- スプリンクラー設備の水源水量について(昭和52年8月10日 消防予第150号 消防庁予防救急課長から三重県総務部長あて回答)
- 既存防火対象物に対するスプリンクラー設備の技術上の特例基準を適用する場合の疑義について(昭和52年8月23日 消防予第159号 消防庁予防救急課長から長野県生活環境部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、条番号や機関の名称、単位等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





