消火栓につながる水道管は、直径150ミリメートル以上にするのが原則です。
ただし管網の一辺が180メートル以下という条件を満たせば、75ミリメートルまで細くできる例外がずっと前からありました。
令和5年12月の告示改正で、この条件が無くても細くできる新しいルートが加わったことをご存知でしょうか。
解析と実測という2つの手続きさえ踏めば、管網の形に関係なく75ミリメートルの管に消火栓を設置できるようになりました。
この前、消火栓を新しく置く相談をしたら「管が細くて基準に合わない」と言われました。
もう工事は諦めるしかないんでしょうか。
実はその基準、令和5年12月の告示改正で変わったんです。
「解析と実測」という手続きを踏めば、細い管のままでも消火栓を認められるようになりました。
え、そうなんですか。
どんな手続きを踏めばいいんでしょうか。
順番に見ていきましょう。
まずはこの基準がなぜ変わったのかからです。
- 令和5年12月の告示改正で消防水利の基準第3条に第3項が新設されました
- 解析と実測の両方で取水可能水量が毎分1立方メートル以上と確認できれば、管網の形に関係なく75ミリメートルの管に消火栓を設置できます
- 解析は管網解析ソフトまたはヘーゼン・ウィリアムズ公式、実測は簡易流量計または消防車の流量計で行います
- 既設の75〜150ミリメートル未満の消火栓も、解析と実測で条件を満たせば改正後の基準を満たすものとして扱えます
- 施行日は令和6年4月1日で、減径には消防本部と水道事業者の綿密な協議が欠かせません
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目次
消防水利の配管基準はなぜ緩和されることになったのか

その中の管径の基準が、およそ半世紀ぶりに動きました。
水道事業者は使う人が減った地域でも太い管をそのまま維持しなければならず、更新費用がかさんでいました。
そこで令和4年の地方分権改革の提案募集を通じて、消火栓の管径基準を地域の実情に合わせて緩和してほしいという要望が上がりました。
消防庁は意見聴取会を設けて実地調査まで行い、火災時の給水能力を落とさずに緩和できるかを検証しています。
建物の防火管理者が直接手続きをする話ではありませんが、地域の消防水利が変わる制度改正として知っておくと役立ちます。
消火栓の話なんて、うちには関係ないと思ってました。
地域の水道管の事情も見ておいたほうがいいんですね。
そうですね。
次は具体的にどんな配管が対象になるのかを見ていきましょう。
どんな配管が新しい基準の対象になるのか

これまでの例外条件と、新しく加わった条件は別の入口として並んでいます。
管網の一辺が180メートル以下という面的な条件を満たしたときだけ、75ミリメートルへの緩和が認められていました。
新設された第3項は、この管網の形とは無関係に、解析と実測という個別の消火栓ごとの確認だけで75ミリメートルにできる別のルートです。
運用通知はさらに、既設の75〜150ミリメートル未満の消火栓、つまりこれまでは基準を満たしていなかった消火栓についても、解析と実測で条件を満たせば改正後の基準を満たすものとして位置付けられるとしています。
古い住宅地の消火栓を管理している側にとっては、この既設救済の扱いが特に気になるところです。
今まで違反状態だと思われていた古い消火栓も、救われる可能性があるんですね。
これは水道事業者に確認してみたくなります。
その解析と実測、具体的なやり方が通知に細かく示されています。
次でその中身を見てみましょう。
解析と実測は具体的に何を確認すればよいのか

どちらも欠かせない手続きです。
解析は管網解析ソフトに水道施設や標高などの情報を入力する方法か、ヘーゼン・ウィリアムズ公式という水理公式で摩擦損失水頭を計算する方法のどちらかで行います。
実測は消火栓の放口に簡易流量計を付けるか、消防車に搭載された流量計を使うかのどちらかで、毎分1立方メートルまで開栓したあと、数値が安定してからさらに1分間以上維持できるかを確かめます。
解析だけで机上の計算にとどめず、実際に水を流して確かめる実測までがセットになっているのがこの基準の特徴です。
既設管を布設替えする場合は、通水年数や水質の影響で数値が変わるため、解析のときに流速係数を求め直す必要があるとされています。
計算だけでなく、実際に水を出して確かめる作業まで必要なんですね。
思ったより手間がかかりそうです。
そのぶん、確認を怠ったときの落とし穴も大きいんです。
次で見ていきましょう。
配管を細くすると何に注意しなければならないのか

その影響が及ぶ範囲まで考えておく必要があります。
火災現場では複数の消火栓を同時に開けて放水する同時開栓が想定される地域があり、そこでは全ての消火栓が同時に基準を満たせるかまで解析しなければなりません。
木造密集地など延焼の危険が高い地域で、減径のせいで消火栓による水利確保が難しくなる場合は、防火水槽など消火栓以外の水利を新たに整備するよう消防本部に求められています。
近くで新しい開発行為があると、あとから取水可能水量が確保できなくなることもあるため、水道事業者と消防本部の情報共有が欠かせません。
管を細くする判断は水道事業者だけで完結せず、必ず消防本部との協議を経ることが前提になっています。
1本ずつは基準を満たしていても、まとめて使うと足りなくなることがあるんですね。
知らずにいたら怖いところでした。
ここまでを踏まえて、最後に明日からの動き方をまとめます。
配管を細くする前に何を確認すればよいのか

建物側でも知っておくと相談がスムーズになる点をまとめます。
所轄の消防本部に問い合わせれば、周辺の消火栓が管網の緩和条件と新しい第3項のどちらで扱われているかを確認できます。
新しく配管を敷設する開発行為に関わるときは、早い段階で水道事業者と消防本部の両方に相談しておくと、あとから水量不足を指摘される事態を避けられます。
解析と実測の検証結果は水利台帳に保存されるため、地域の消火栓の状況は今後この記録をたどれば確認できるようになります。
制度の詳しい適用状況が気になる場合は、㈱防災屋にご相談ください。
今度、所轄の消防本部に確認してみます。
知らないままでいたら気づけませんでした。
それが一番確実です。
最後によくある質問をまとめておきます。
よくある質問
まとめ
消火栓の管が細くなる理由、ようやく腑に落ちました。
地域の消防水利にも目を向けてみます。
制度の変わり目は見落としが起きやすいところです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「消防水利の基準の一部を改正する件の公布について」(令和5年12月25日付け消防消第426号)
- 「消防水利の基準の一部改正に係る運用について」(令和6年3月27日付け消防消第88号)
- 消防水利の基準(昭和39年12月10日消防庁告示第7号)第3条
- 消防法第20条第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





