建物の中にある階段の部分と昇降機の昇降路の部分は、それぞれが独立した竪穴部分として、原則ごとに防火区画をしなければなりません。
しかし階段室とエレベーターの乗り場が、間仕切りのないまま隣り合っていて、物理的に分けられないことがあります。
建築基準法施行令第112条第14項は、こうした隣接する竪穴部分を一定の条件のもとで一つの竪穴部分とみなす仕組みを定めています。
一体とみなされるのは、用途上どうしても区画できない竪穴部分に限られます。
うちのビルは階段室のすぐ横に、壁を隔てずにエレベーターの乗り場があります。
これは階段とエレベーター、それぞれ別々に竪穴区画をしないといけないんでしょうか。
建築基準法施行令第112条第14項に、用途上区画できない竪穴部分どうしを一つの竪穴部分とみなす規定があります。
ただし誰でも使える扱いではなく、条件があります。
条件があるんですね。
どんな竪穴部分が対象になって、何を満たせば一体として扱えるのか教えてください。
対象になる竪穴部分の範囲、一体とみなすための条件、そして見落としやすい注意点を順番に確認していきましょう。
- 建築基準法施行令第112条第14項は、隣接する二つの竪穴部分が一定の基準を満たす場合に、これらを一の竪穴部分とみなして区画できる規定です。
- 対象になるのは第1項第1号に該当する建築物の部分または階段室の部分等に限られます。
- 壁及び天井の仕上げを準不燃材料とし、下地も準不燃材料で造ることが一体とみなすための条件の一つです。
- もう一つの条件は、当該竪穴部分どうしが用途上区画することができないことです。
- 火災時に煙やガスの降下が生じない建築物として国土交通大臣が定めるものは、そもそも第12項・第13項自体の適用が除外されます。
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目次
階段と昇降路が隣り合っていると防火区画はどう変わるのか

階段の部分と昇降機の昇降路の部分は、通常それぞれが独立した竪穴部分として扱われます。
竪穴部分とは、吹抜きとなっている部分、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分を指します。
階段室と、エレベーターの乗り場を含む昇降路の部分は、条文上どちらも独立した竪穴部分に当たります。
ところが実際の建物では、階段室のすぐ隣にエレベーターの乗り場が壁を挟まずに配置され、両者が一体の空間になっていることがあります。
このような場合にどう区画すればよいかを定めているのが第14項です。
階段室とエレベーターの乗り場、実際には同じ空間に見えるのに、別々に区画しないといけないのは変な感じがします。
そう感じる建物のために、一定の条件を満たせば一体として扱える規定が用意されています。
次に対象の範囲を確認しましょう。
どんな竪穴部分ならまとめて一つとみなせるのか

条文は対象となる建築物の部分をかなり絞り込んでいます。
第1項第1号に該当する部分とは、劇場や映画館の客席、体育館、工場その他これらに類する用途に供する部分です。
階段室の部分等とは、階段室の部分または昇降機の昇降路の部分(乗降のための乗降ロビーの部分を含む)を指します。
つまり第14項が想定しているのは、階段室と昇降路の乗降ロビーのように、もともと同じ性質を持つ竪穴部分どうしが隣り合っている場面です。
用途がまったく異なる竪穴部分どうしを、無理に一体とみなすことはできません。
うちは階段室の隣に倉庫用のシャッター付き開口があるんですが、これも一体とみなせますか。
いいえ、対象になるのは第1項第1号に該当する部分か階段室の部分等どうしに限られ、倉庫の開口はこの対象に含まれません。
まずご自身の建物の部分がどちらに当たるかを確認しましょう。
一体とみなすにはどんな条件が必要なのか

条文は一体とみなすための条件を、号ごとに2つ定めています。
第一号は、両方の竪穴部分の壁と天井の室内に面する部分を準不燃材料で仕上げ、下地も準不燃材料とすることを求めています。
第二号は、当該竪穴部分と他の竪穴部分とが用途上区画することができないことを求めています。
この2つの条件がそろって初めて、両方の竪穴部分を一の竪穴部分とみなし、第11項から第13項までの規定をまとめて適用できます。
一体とみなされたあとの区画の考え方そのものは変わらず、竪穴部分全体とそれ以外の部分との境界を区画すればよいことになります。
仕上げを準不燃材料にすればそれだけで一体とみなせるということですか。
いいえ、仕上げの条件だけでは足りません。
用途上区画することができないという第二号の条件も、あわせて満たす必要があります。
実務で見落としやすいのはどこか

間仕切壁や戸を設けようとすれば物理的・機能的に設置できる竪穴部分は、たとえ仕上げを準不燃材料にしても第14項の対象にはなりません。
また第15項は、第14項とは別に、煙又はガスの降下を防ぐ建築物として国土交通大臣が定めるものについては、そもそも第12項・第13項の適用そのものを除外する規定です。
第14項の「一体とみなす」規定と、第15項の「適用を除外する」規定は根拠も効果も異なるため、混同しないようにする必要があります。
増築や用途変更で竪穴部分どうしの間に間仕切りを新たに設けられる状態になった場合は、第14項の前提が崩れていないか見直しが必要です。
うちの建物が第15項の適用除外に当てはまるかどうかは、どうやって確認すればいいんでしょうか。
壁や天井の仕上げ材料、消火設備や排煙設備の設置状況をふまえて国土交通大臣が定める基準に適合するかどうかの判断になるため、設計を担当した建築士や指定確認検査機関に確認することをおすすめします。
明日からなにを確認すればよいのか

- 階段の部分と昇降路の部分など、隣接する二つの竪穴部分が壁を挟まず接しているか確認する
- それぞれの竪穴部分が第1項第1号に該当する部分または階段室の部分等のいずれかに当たるか確認する
- 壁及び天井の室内に面する部分の仕上げと下地を準不燃材料にできているか確認する
- 間仕切壁や戸を設けようとした場合に、本当に用途上設置できないかを設計担当者と確認する
- 煙・ガスの降下を防ぐ建物として第15項の適用除外に当たらないかも、あわせて建築主事や指定確認検査機関に相談する
判断に迷う場合は、確認申請時の設計図書と合わせて専門家へ相談すると安全です。
一体とみなせるかどうかは、自分たちだけで判断せず専門家に確認したほうがよさそうですね。
はい、設計図書と現況を照らし合わせて確認することをおすすめします。
迷ったときは早めにご相談ください。
よくある質問
まとめ
階段とエレベーターが隣り合っていても、条件を満たさなければ勝手に一体とみなせないとよく分かりました。
用途上区画できるかどうかを確認してみます!
こちらこそご相談ありがとうございます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条第11項・第14項・第15項
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や特定行政庁・指定確認検査機関の運用は異なる場合があります。個別の判断は建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。





