ホテルの客室や病院の病室の天井には、小さな部屋向けの小区画型ヘッドというスプリンクラーヘッドが付いていることがあります。
国の規則は、このヘッドを付けてよい部屋と、天井の各部分からの距離や受け持つ面積を定めています。
鈴鹿市消防本部の審査基準は、そこに「ヘッドどうしを3m以下に近づけない」「壁際まで物を置かない」という指導を重ねています。
鈴鹿市の決まりを国の規格と規則から順にたどり、埼玉県央広域・四日市市・津市・大阪市・堺市と比べます。
鈴鹿市でビジネスホテルの客室を改装する予定で、天井のスプリンクラーを動かす話が出ています。
ヘッドの位置は、空いている所に付け直せばよいのでしょうか。
客室のヘッドが小区画型なら、置き方に細かい決まりがあります。
同じ部屋に2つ付けるときの間隔もその1つです。
その決まりは、国の法令に全部書いてあるのですか。
間隔の3mは国の規則ではなく、消防本部の審査基準に書かれています。
国の規格と規則から順にたどっていきます。
- 小区画型ヘッドは、(5)項・(6)項の宿泊室等に付けられるヘッドで、国の規則は天井の各部分から2.6m以下・1つで13㎡以下と定めている
- 国の規格は小区画型ヘッドに、壁を床から天井面下0.5mまで有効に濡らす性能を求めている
- 鈴鹿市はそのため、デフレクターから下方0.45m以内は壁面まで何も置かないよう指導している(▲)
- 鈴鹿市は小区画型ヘッドどうしの間隔を3m以下にしないよう指導し、離せないときは散水パターンの確認か遮水の垂れ壁・専用板を求めている(▲)
- 3mは埼玉県央広域・四日市市・津市・大阪市・堺市にもあるが、大阪市・堺市・津市は「同じ宿泊室等に2つ以上付けるとき」と書いている
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目次
小区画型ヘッドはどんな建物のどの部屋に付けるのか

付けてよい建物と部屋は、国の規則が決めています。
(第1項)前条に定めるもののほか、令第12条第2項第2号イの表の上欄に掲げる防火対象物又はその部分のうち、令別表第一(5)項若しくは(6)項に掲げる防火対象物又は同表(16)項に掲げる防火対象物の同表(5)項若しくは(6)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分には、閉鎖型スプリンクラーヘッドのうち小区画型ヘッド(略)又は側壁型ヘッド(略)を設けることができる。
(第2項)前項に規定する小区画型ヘッドは、前条第4項第1号(イただし書及びトを除く。)の規定の例によるほか、次に定めるところにより、設けなければならない。
一 スプリンクラーヘッドは、(略)宿泊室、病室その他これらに類する部分(次項において「宿泊室等」という。)に設けること。
二 スプリンクラーヘッドは、天井の室内に面する部分に設けること。
三 スプリンクラーヘッドは、天井の各部分から一のスプリンクラーヘッドまでの水平距離が二・六メートル以下で、かつ、一のスプリンクラーヘッドにより防護される部分の面積が十三平方メートル以下となるように設けること。
ア 省令第13条の3第2項第1号に規定する「宿泊室等」とは、宿泊室、病室、談話室、娯楽室、居間、寝室、教養室、休憩室、面会室、休養室等をいう。
規則第13条の3は、(5)項(旅館・ホテル・共同住宅など)と(6)項(病院・福祉施設など)の用途の部分に限って、閉鎖型ヘッドの中の小区画型ヘッドを使えるとしています。
そのうえで、付ける場所を「宿泊室、病室その他これらに類する部分」に絞り、天井の各部分から2.6m以下、1つのヘッドが受け持つ面積を13㎡以下としています。
「これらに類する部分」の中身は規則に書かれていないので、鈴鹿市は談話室・娯楽室・面会室などを例として並べています(このアには▲が付いていません)。
同じ例示は埼玉県央広域・津市・大阪市・堺市の基準にもあり、ほぼ同じ言葉が並んでいます。
改装する部屋が客室や病室でなく、廊下やロビーであれば小区画型ヘッドの対象外になるので、まず図面で部屋の使い方を確かめます。
客室の隣にある談話室も、同じ小区画型ヘッドの扱いになるのですね。
鈴鹿市の例示では、談話室も宿泊室等に入っています。
次は、このヘッドの周りをどこまで空けるかです。
鈴鹿市ではヘッドの周りをどこまで空けておくのか

鈴鹿市の決まりは、このヘッドの性能から逆算されています。
小区画型ヘッドは、別図五に示す壁面散水分布試験装置を使用して測定した場合において、各壁面の採水量が毎分二・五リットル以上であること。この場合において、放水した水は、床面から天井面下〇・五メートルまでの壁面を有効に濡らすものであること。
イ 省令第12条第4項第1号ホの規定によるとされている同号ホに規定する「スプリンクラーヘッドのデフレクターから下方0.45m以内で、かつ、水平方向0.3m以内には、何も設けられ、又は置かれていてはならないこと。」とは、第3-14図の例による。すなわち、小区画型ヘッドは、天井面下0.5mまでの範囲を有効に濡らす必要があるため、当該ヘッドのデフレクターから下方0.45m以内で、かつ、水平方向の壁面までの範囲に散水障害があってはならない。▲
つながりは、次の順にたどれます。
- 国の規格(閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令)第2条第1号の2は、小区画型ヘッドを、第14条で決めた範囲と壁面に水を分散するヘッドと定義しています
- 同じ規格の第14条第1項第2号ロは、放水した水が床面から天井面下0.5mまでの壁面を有効に濡らすことを求めています
- 国の規則第13条の3第2項は、小区画型ヘッドにも第13条の2第4項第1号ホ(デフレクターから下方0.45m以内・水平方向0.3m以内には何も置かない)の例によるとしています
- 鈴鹿市はこのホの読み方として、水平方向の0.3mを壁面までに広げ、天井から下がった帯を壁際まで空けるよう求めています(第3-14図・▲)
なお、鈴鹿市の原文は根拠を「省令第12条第4項第1号ホ」と書いていますが、現行の規則で0.45m・0.3mを定めているのは第13条の2第4項第1号ホです(e-Govで確認)。
埼玉県央広域も第3 8⑸イで同じ内容を▲付きで書き、堺市も同じ帯を壁面まで空けるとしていますが、四日市市・津市・大阪市の基準には見当たりません。
改装で天井近くに吊り戸棚やカーテンボックスを付けるなら、ヘッドから壁までの帯にかからないかを断面図で確かめます。
壁際の高い所に収納を付けると、それだけで水の通り道をふさぐことがあるのですね。
鈴鹿市の基準では、その帯を壁面まで空けるよう求めています。
続いて、ヘッドどうしの間隔を見ます。
小区画型ヘッドどうしはなぜ3mを超えて離すのか

鈴鹿市は、そのときの間隔を決めています。
ウ 小区画型ヘッド相互の設置間隔は、3m以下とならないように設置する。▲
なお、3mを超えて設置できない場合は、次の(ア)又は(イ)の措置を講じること。(略)
「3m以下とならないように」と書かれているので、ヘッドどうしは3mを超えて離すのが原則です。
国の規則第13条の3には間隔の定めがなく、この3mは鈴鹿市の行政指導を示す▲付きの項目です(原本の画像で確認)。
鈴鹿市の基準は理由を書いていませんが、堺市の基準は「隣接するヘッドからの放水による感知機能の低下を防ぐため」と目的を書いています。
大阪市の基準も「隣接するヘッドの感熱部を濡らすおそれ」という言葉で、先に開いたヘッドの水が隣のヘッドにかかることを問題にしています。
改装でヘッドを付け直すときは、図面上のヘッド間の寸法を拾い、3mちょうど以下になっている所がないかを先に確かめます。
つまり近づけすぎると、隣のヘッドを濡らしてしまうということですね。
堺市の基準は、まさに感知機能の低下を防ぐためと書いています。
では、部屋が狭くて3mを取れないときを見ます。
3mを超えて離せない部屋ではどうすればよいのか

鈴鹿市は、そのときの代わりの方法を2つ示しています。
なお、3mを超えて設置できない場合は、次の(ア)又は(イ)の措置を講じること。
(ア) 個々の小区画型ヘッドの放水圧力、散水パターン等を確認のうえ隣接する小区画型ヘッドが濡れない距離を確保する。
(イ) 相互の小区画型ヘッド間に遮水のための垂れ壁、専用板等を設けるなど隣接する小区画型ヘッドが濡れないための措置を講じる。
(ア)は、使うヘッドの散水パターンや放水圧力をメーカーの資料で確かめ、隣のヘッドに水がかからない距離にする方法です。
(イ)は、2つのヘッドの間に垂れ壁や専用の板を下げて、水を物理的に遮る方法です。
どちらも、3mという数字そのものより「隣接するヘッドが濡れないか」を見ている点で共通しています。
大阪市は、散水形状から判断する方法・被水防止措置を講じたヘッドを使う方法・遮水のたれ壁を設ける方法の3通りを並べ、津市は「被水防止板を設置する等」と書いています。
離せない部屋があるなら、ヘッドの仕様書と散水パターンの資料を先に取り寄せ、(ア)と(イ)のどちらで説明するかを決めてから消防本部と協議します。
板を下げるなら、さっきの壁際まで空ける帯とぶつかりませんか。
板の位置と大きさの扱いは基準に書かれていないので、消防本部との協議で決めます。
最後に、6つの消防本部の書き方を並べます。
鈴鹿市とほかの消防本部では書き方がどう違うのか

大阪市の書き方を例に見ます。
小区画型ヘッドを同一の宿泊室等に2以上設置する場合は、ヘッド相互の設置間隔が3メートル以下とならないように設けること。ただし、当該ヘッドの放水圧力における散水形状から判断し、隣接するヘッドの感熱部を濡らすおそれがないと認められる場合、被水防止措置を講じたヘッドを用いる場合又は遮水のためのたれ壁などを設けた場合は、この限りでない。◆
| 消防本部 | 3mの対象の書き方 | 離せないとき | 壁面まで空ける帯 | 宿泊室等の例示 | 記号 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鈴鹿市 | 小区画型ヘッド相互 | 散水パターン確認か垂れ壁・専用板 | あり(第3-14図) | あり | 間隔・帯とも▲(行政指導) |
| 埼玉県央広域 | 小区画型ヘッド相互 | 散水パターン確認か垂れ壁・専用板 | あり(第3-14図) | あり | 間隔・帯とも▲ |
| 四日市市 | 小区画型ヘッド相互 | 散水パターン確認か垂れ壁・専用板 | 記載なし | 記載なし | 全文に下線(行政指導) |
| 津市 | 一の宿泊室等に二以上 | 被水防止板を設置する等 | 記載なし | あり | 記号なし |
| 大阪市 | 同一の宿泊室等に2以上 | 散水形状の判断・被水防止措置のヘッド・たれ壁 | 記載なし | あり | ◆(市の行政指導) |
| 堺市 | 同一の宿泊室等に2以上 | 散水パターン確認か垂れ壁・専用板 | あり(第4-13図) | あり | 項目全体が◆④・離せないときの部分は★ |
大阪市・堺市・津市は「同一の宿泊室等に2以上」と書き、同じ部屋の中のヘッドどうしの話だとはっきりさせています。
鈴鹿市・埼玉県央広域・四日市市は「小区画型ヘッド相互」とだけ書いていて、壁を挟んだ隣の部屋のヘッドをどう扱うかは基準から読み取れません。
記号の意味も本部ごとに違い、堺市の◆は国の通知等を参考にした指導、★は堺市独自の指導で、大阪市の◆は市の行政指導です(四日市市の下線と各記号は原本の画像で確認)。
東大阪市は今回取得した基準にスプリンクラー設備の章がなく、行田市・羽生市は審査基準を公開していないため、表から外しました。
壁を挟む位置関係で3mを切りそうなときは、鈴鹿市・埼玉県央広域・四日市市の管内では特に、図面を持って管轄の消防本部に扱いを確かめます。
同じ3mでも、どこまでの範囲の話かは消防本部で書き方が違うのですね。
はい、迷う配置は図面で先に相談しておくと手戻りがありません。
改装の前に、ヘッド間の寸法と天井近くの収納を一緒に確かめておきます。
よくある質問
まとめ
改装の図面で、ヘッド間の寸法と天井近くの収納を確かめてみます!
ヘッドの散水パターンの資料も一緒にそろえておくと、協議が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第13条の2第4項第1号ホ・第13条の3(e-Gov法令検索)
- 閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令 第2条第1号の2・第14条第1項第2号(e-Gov法令検索)
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第3 スプリンクラー設備 7⑷・第3-14図 掲載ページ
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第3 スプリンクラー設備 8⑸ 掲載ページ
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」第3 スプリンクラー設備 8(2)ク 掲載ページ
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-3 スプリンクラー設備 5⑵ 掲載ページ
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第9 ヘッドの設置方法 1(3)(9) 掲載ページ
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」スプリンクラー設備(4)閉鎖型ヘッドの設置 ウ・第4-13図 掲載ページ
※本記事は鈴鹿市消防本部・埼玉県央広域消防本部・四日市市消防本部・津市消防本部・大阪市消防局・堺市消防局が公表している審査基準等と、消防法施行規則・閉鎖型スプリンクラーヘッドの技術上の規格を定める省令に基づく一般的な解説です。各基準の文章と記号は原本の画像で確かめ、長い部分は(略)で省きました。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





