屋内消火栓設備の代わりに置けるパッケージ型消火設備は、ポンプや水槽を使わず、ホースと消火薬剤を1つの格納箱に収めた消火設備です。
国の告示は「階ごとに、各部分からホース接続口まで一定の距離以内」に置くことを求めていますが、エレベーター機械室やポンプ室しかない階にも置くのか、格納箱に何を表示するのかは、各消防本部の基準が補っています。
この記事では、堺市消防局の審査基準がパッケージ型消火設備の設置場所と灯火・標識をどう決めているかを、国の基準と市の運用に分けてたどります。大阪市の運用基準が屋内消火栓の特例を借りて同じ結論に届く道筋も、番号つきの手順で比べます。
堺市で5階建ての事務所ビルにパッケージ型消火設備を置きます。
屋上の機械室だけの階にも必要ですか?
堺市は条件を満たせば置かないことができると書いています。
国の告示から順に見ていきましょう。
格納箱に付ける表示も、市で違うのですか?
赤いランプの物差しは同じですが、見取図や扉裏のシールに違いがあります。
大阪市とも比べます。
- 国の告示(平成16年消防庁告示第12号 第四)は、パッケージ型消火設備を階ごとに、各部分から1のホース接続口までの水平距離が一定以内になるよう置き、格納箱の近くに赤色の灯火と標識を設けるよう求めています
- 堺市は、設置場所を廊下・通路・階段付近など多数の者の目にふれやすい場所とし、ホースの長さを歩行距離の有効長さとして配置するよう定めています
- 堺市は、特定主要構造部が耐火構造の建物でエレベーター機械室・ポンプ室・受水槽室などだけの階は、直上階か直下階のパッケージ型消火設備で有効に注水できれば、その階に置かないことができるとしています
- 堺市の灯火・標識は、15度・10mで見分けられる赤色の灯火、発信機と表示灯を付けたときの灯火の省略、扉裏の操作手順のシール、防護範囲を示した階の見取図、屋内消火栓の常用電源の規定の準用です
- 大阪市は、機械室だけの階を屋内消火栓設備の特例基準を準用して扱い、見取図は屋内消火栓と混在する場合の防護範囲の表示にとどまります。最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認します
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目次
パッケージ型消火設備の置き方は国の告示で何が決まっているのか

一 防火対象物の階ごとに、その階の各部分から一のホース接続口までの水平距離がⅠ型にあっては二十メートル以下、Ⅱ型にあっては十五メートル以下となるように設けること。
二 防護する部分の面積は、Ⅰ型にあっては八百五十平方メートル以下、Ⅱ型にあっては五百平方メートル以下とすること。
三 四十度以下で温度変化が少ない場所に設けること。
四 直射日光及び雨水のかかるおそれの少ない場所に設けること。
五 消火薬剤貯蔵容器の直近の見やすい箇所に赤色の灯火及びパッケージ型消火設備である旨を表示した標識を設けること。
- 配置は階ごとに考え、その階のどこからでも1のホース接続口まで水平距離でⅠ型20m以下、Ⅱ型15m以下にする(第一号)
- 置く場所は温度や直射日光・雨水に注意する(第三号・第四号)
- 格納箱の近くに赤色の灯火と標識を設ける。ただし、どこから見えればよいかの物差しは書かれていない(第五号)
Ⅰ型とⅡ型の違いや置ける建物の規模はパッケージ型消火設備を置ける建物の記事で、40度以下の決まりは設置場所の温度の記事で解説しています。
告示は「階ごと」なので、機械室の階も原則は対象なのですね。
はい、そこで堺市は設置場所の項目に省ける場合を書いています。
まず置く場所から見ます。
堺市ではパッケージ型消火設備をどこに置けばよいのか

(1)廊下、通路又は階段付近等で多数の者の目にふれやすく、すみやかに操作ができる場所に設けること。
(2)パッケージ型消火設備の設置位置は、各階の区画の状況、什器・荷物のレイアウト計画及び規模等により歩行距離で有効に消火できるよう配置すること。この場合歩行距離の有効長さは、設置される格納箱に収容されているホースの長さとする。
- 置く場所は廊下・通路・階段付近など、多数の者の目にふれやすく、すぐ操作できる場所((1))
- 配置は、区画や什器・荷物のレイアウトを考えて歩行距離で有効に消火できるようにし、歩行距離の有効長さは格納箱に入っているホースの長さとする((2))
堺市でパッケージ型消火設備を置けない「煙が著しく充満するおそれのある場所」の線引きは、堺市のパッケージ型消火設備を置ける場所の記事で解説しています。
水平距離で足りていても、間仕切りがあるとホースが届かないことがあるのですね。
はい、ホースの長さで歩いて届くかまで確かめます。
次は機械室だけの階です。
堺市で機械室だけの階にパッケージ型消火設備はいらないのか

- 建物の特定主要構造部が耐火構造である
- その階にあるのがエレベーター機械室・ポンプ室・受水槽室その他これらに類する用途だけである
- 直上階か直下階のパッケージ型消火設備から、その階に有効に注水できる(ホースを階段で伸ばして届く)
- 国の告示第四第一号が、パッケージ型消火設備を階ごとに水平距離で配置するよう求める
- 堺市の屋内消火栓設備の節(7(2)ウ★)は、機械室だけの階の屋内消火栓を、政令第32条又は条例第72条を適用して設置しないことができるとする
- 堺市のパッケージ型消火設備の節(3(3)★)は、同じ条件の階にパッケージ型消火設備を設置しないことができるとする。ただし、こちらには根拠の条文が書かれていない
大阪市の屋内消火栓の機械室だけの階の特例は大阪市の屋内消火栓の特例の記事で、堺市の塔屋(PH階)や地下機械室の階の扱いは堺市のb階・PH階の記事で解説しています。
下の階から階段でホースを伸ばして届けば、機械室の階には置かなくてよいのですね。
はい、耐火構造・機械室等だけ・有効に注水の3つがそろうことが前提です。
次は灯火と見取図です。
堺市はパッケージ型消火設備の灯火と見取図に何を求めているのか

(1)赤色の灯火は、取付け面と15度以上の角度となる方向に沿って10m離れたところから容易に識別できるように設けること。
(2)パッケージ型消火設備の格納箱に、自動火災報知設備の発信機及び表示灯を設ける場合は、赤色の灯火を設けないことができる。
(3)パッケージ型消火設備の格納箱の扉面の裏面には、操作の各手順を図示するとともに、簡略な説明文等示す表示シールを貼付すること。
(4)パッケージ型消火設備の格納箱には、当該パッケージ型消火設備が防護する範囲を明示した階の見取図を設けること。この場合、パッケージ型消火設備が防護する範囲とは、設置される格納箱に収容されているホースの長さにより、有効に消火できる範囲をいうものであること。
(5)電源は、第3章第1節第2屋内消火栓設備Ⅱ.5.(2)を準用すること。
- 堺市の4(5)★が、電源は第3章 第1節 第2 屋内消火栓設備 Ⅱ.5.(2)を準用するとする
- 準用先の屋内消火栓設備 Ⅱ 5(2)は、常用電源回路の配線の決まりで、次の内容になっている
ア 低圧のものにあっては、引き込み開閉器の直後から分岐し、専用配線とすること。
イ 特別高圧又は高圧による受電のものにあっては、変圧器二次側に設けた配電盤から分岐し、専用配線とすること。
- 15度・10mで見分けられる赤色の灯火(自火報の発信機と表示灯を格納箱に付けるなら省略できる)
- 扉の裏に、操作の各手順の図と簡略な説明文のシール
- ホースの長さで有効に消火できる範囲を明示した階の見取図
- 電源をとるときは、引き込み開閉器の直後や変圧器二次側の配電盤から分岐した専用配線
見取図に描く範囲も、ホースの長さで決まるのですね。
はい、配置の確認と見取図が同じ物差しです。
最後に大阪市と比べます。
大阪市と比べるとパッケージ型消火設備の置き方は何が違うのか

設置場所は、告示第12号第4第1号から第4号までの規定によるほか、次によること
(1) 屋内消火栓設備の基準(第7.1.(3)及び(4))を準用する。
(2) 容易に操作でき、かつ、障害となるものがない場所で、その階の各部分から1のホース接続口までの歩行距離がホース長さ以下となるように設けること。ただし、ホース長さを超える部分が10メートル以下で、かつ、ホース長さを超える部分を有効に放射できる場合はこの限りでない。
2 灯火及び標識等
灯火及び標識等は、告示第12号第4第5号の規定によるほか、次によること
(1) 赤色の灯火は、取付け面と15度以上の角度となる方向に沿って10メートル離れたところから容易に識別できること
(2) パッケージ型消火設備の格納箱の扉面の裏面には、操作手順を示す簡略な絵を表示すること
3 屋内消火栓設備とパッケージ型消火設備を混在して設置する場合は、告示第12号第9に規定する表示のほか、貯蔵容器の直近の見やすい箇所に、当該パッケージ型消火設備の防護範囲を表示すること
(4) 各階に設ける消火栓は、使用する者の避難経路を考慮した配置とし、廊下、通路その他多数の者の目にふれやすい場所に設置すること。なお、少なくとも1箇所は直通階段の付近に設けること◆
1 屋内消火栓設備の基準(第12(8から11までを除く。))を準用する。
- パッケージ型消火設備の第4 特例基準の柱書が、令第32条又は条例第47条を適用するとする
- 第4 1が、屋内消火栓設備の基準の第12 特例基準(8から11までを除く)を準用する。あわせて第12 3(2)の令第11条の規定を告示第12号第4第1号に読み替える
- 準用先の第12 6が、機械室等だけの階で、直上階か直下階の屋内消火栓から有効に注水できれば屋内消火栓設備を設置しないことができるとする。これをパッケージ型消火設備に当てはめて読む
| 項目 | 堺市 | 大阪市 |
|---|---|---|
| 置く場所 | 廊下・通路・階段付近等の多数の者の目にふれやすい場所(★) | 屋内消火栓の第7 1(3)(4)を準用し、少なくとも1箇所は直通階段の付近(◆) |
| 歩行距離 | 有効長さはホースの長さ | ホース長さ以下、ただし超える部分が10m以下で有効に放射できれば可 |
| 機械室だけの階 | 設置場所の項目で直接設置しないことができる(★・根拠条文の記載なし) | 特例基準で屋内消火栓の第12 6を準用(令第32条又は条例第47条) |
| 赤色の灯火 | 15度・10mで容易に識別 | 同じ |
| 発信機・表示灯を付けた場合 | 赤色の灯火を設けないことができる | 第8章第1節に記載は見当たらない |
| 扉の裏面 | 操作の各手順の図示+簡略な説明文のシール | 操作手順を示す簡略な絵 |
| 防護範囲の表示 | すべての格納箱に階の見取図 | 屋内消火栓と混在する場合に貯蔵容器の直近に表示 |
| 電源 | 屋内消火栓の常用電源回路(専用配線)を準用 | 第8章第1節に記載は見当たらない |
他の消防本部の比較は、津市のパッケージ型消火設備の特例の記事でも扱っています。 堺市でパッケージ型消火設備を計画するときは、次の順に確かめると抜けが出ません。
- 格納箱を廊下・通路・階段付近に置き、告示の水平距離(Ⅰ型20m・Ⅱ型15m)に収まるかを確かめる
- 区画や什器の配置を入れた図面で、ホースの長さで歩いて届くかを確かめる
- 屋上の機械室だけの階などは、耐火構造・機械室等だけ・直上階か直下階から有効に注水の3つを確かめ、扱いを消防局と協議する
- 赤色の灯火(発信機と表示灯を付けるなら省略の可否)、扉裏のシール、防護範囲を描いた階の見取図を用意する
- 電源をとるときは、専用配線になっているかを設備業者と確かめる
同じ結論でも、借りている規定が市ごとに違うのですね。
はい、堺市は直接書き、大阪市は屋内消火栓の特例を準用しています。
計画する市の基準で確かめましょう。
よくある質問
まとめ
まず屋上の機械室の階に下の階からホースが届くかを図面で確かめます。
見取図の用意も設備業者と詰めます!
堺市は見取図までホースの長さで考えるのが要点です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1章 総則 4 凡例/第2 パッケージ型消火設備 Ⅱ 細目 3 設置場所★(1)〜(3)、4 灯火及び標識等★(1)〜(5)/第2 屋内消火栓設備 Ⅱ 細目 5(2)、7(2)ウ https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」凡例/第8章 第1節 パッケージ型消火設備 第3 設置維持の基準 1〜3、第4 特例基準 柱書・1/第1章 第1節 屋内消火栓設備 第7 1(3)(4)、第12 特例基準 6 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令 第1条、消防法施行令 第32条、消防法施行規則 第12条第1項第3号(e-Gov法令検索)
- パッケージ型消火設備の設置及び維持に関する技術上の基準を定める件(平成16年消防庁告示第12号)第四、同告示の一部を改正する件(平成28年消防庁告示第2号) https://www.fdma.go.jp/laws/tutatsu/assets/280129_yo25.pdf
※本記事は公表されている法令および堺市・大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。運用基準や審査基準は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防局で確認してください。各資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。堺市のパッケージ型消火設備の節3(3)がどの手続を根拠にするかと、大阪市火災予防条例第47条の原文は、この記事では断定していません。





