太陽光発電の設置を検討している危険物施設の担当者から、㈱防災屋には「パネルさえ載せれば終わりだと思っていた」という相談がよく届きます。
しかし消防庁のガイドラインは、設置時の安全対策だけでなく、動かし始めてからの運用や、事故が起きたときの対応まで求めています。
停電したときに危険物施設へどう電力を回すか、事故が起きたら何を遮断するか、不具合が出たらどう補修するか。
これらは設置後に忘れられがちですが、備えを怠ると危険物施設そのものの安全にかかわります。
太陽光パネルって、屋根に載せて終わりじゃないんですか。
いいえ、動かし始めてからの対策もガイドラインで求められています。
順番に見ていきましょう。
停電したら、うちの危険物施設はどうなるんですか。
太陽光発電設備から電力を回す仕組みが必要になります。
まず背景から確認しましょう。
- 危険物施設に設置する太陽光発電設備は、平常時だけでなく災害時(停電時)にも施設へ電力を供給する措置を講じることが必要とされました。
- 停電時の電力供給には、切替ボタンを備えたパワーコンディショナーやUPS等にAC電源を備える例が示されています。
- 事故が発生した場合は、太陽光発電設備からの電力供給を確実に遮断できる措置を講じ、消防隊員の感電を防ぐ表示も設けることとされました。
- 設備に危険物施設へ影響する不具合が生じた場合は、速やかに補修できる体制をあらかじめ構築しておく必要があります。
- 太陽光発電設備は電気設備として、1年に1回以上の定期点検を行うことが求められます。
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目次
危険物施設の太陽光発電設備はなぜ設置後の運用対策まで求められるのか

消防庁は検討会を設け、実態調査と事故の発生状況を踏まえてガイドラインを取りまとめています。
検討会は設置状況の実態調査に加えて、国内で実際に起きた事故の発生状況を踏まえてリスクを洗い出しました。
その結果、屋根の強度や配線ルートといった設置時の対策(第2)だけでなく、停電時の電力確保・事故対応・不具合対応(第4)、そして経年劣化を見据えた維持管理(第3)までがひとつのガイドラインにまとめられています。
「設置したら終わり」ではなく、動かし続ける間の対策までが最初から想定されているということです。
うちはもう設置工事が終わっているんですが、いまさら関係ありますか。
はい、運用段階の対策は設置済みの施設にもそのまま関わってきます。
停電時に危険物施設へ電力を供給する仕組みとは何か

ガイドラインは、平常時と停電時の両方で電力を使える仕組みを備えることを求めています。
示されている例は2通りで、ひとつは切替ボタンを備えたパワーコンディショナーやUPSを設置する方法、もうひとつはパワーコンディショナーやUPSにAC電源を備えておく方法です。
どちらも太陽光発電設備の発電した電気を、危険物施設の照明等として停電時にも使えるようにするための備えです。
機種選定の段階で、平常時用の系統だけでなく停電時の切替に対応した製品かどうかを確認しておくと後戻りがありません。
普通のパワーコンディショナーなら何でもいいわけじゃないんですね。
停電時に切替ができる仕様かどうかを、導入前に確認しておきましょう。
事故が起きたとき電力供給をどう遮断するか

ガイドラインは遮断の措置と、消防隊員を感電から守る表示の両方を求めています。
太陽電池モジュールは光が当たる限り発電を止められないため、パワーコンディショナー等の側で確実に電力供給を遮断できるようにしておく必要があります。
あわせて、太陽電池モジュールからパワーコンディショナー等の確実に遮断できる箇所までの機器・配線には、消防隊員が誤って触れないよう感電防止の表示を設けます。
どこまでが感電の危険がある範囲かを、平常時から掲示や図面で共有しておくことが実務の要になります。
ブレーカーを落とせば太陽光パネルの発電も止まるんですよね。
いいえ、モジュール自体は光がある限り発電を続けます。
遮断できる箇所を確認しておきましょう。
太陽光発電設備に不具合が生じたとき何が求められるか

ガイドラインは、こうした不具合への備えも運用段階の対策として位置づけています。
条文が示すのは特定の補修方法ではなく、不具合を速やかに補修できる体制をあらかじめ構築しておくことです。
施工業者や保守点検の委託先への連絡先を平常時から明確にしておき、異常を見つけたら誰がどこへ連絡するのかを決めておく必要があります。
体制が整っていないと、危険物施設に影響が及ぶ前の初期段階で不具合を止められません。
不具合が出たときの連絡先まで決めておく必要があるんですね。
はい、補修の体制を先に決めておくことが求められています。
維持管理の段階で何を点検すればよいか

点検の根拠は、危険物施設の電気設備に関する政令の規定にあります。
太陽光発電設備は危険物施設に関連する電気設備として扱われるため、政令第9条第1項第17号にもとづき、平成3年の消防危48号が定める定期点検の行動指針に従って点検する必要があります。
とくに可燃性蒸気が滞留するおそれのある箇所や、屋根に設置したモジュールは、経年劣化の影響が出やすい場所として点検を徹底することが求められています。
具体的な点検方法は、一般社団法人太陽光発電協会の保守点検ガイドライン等を参考に、事業者が自主的に取り組むことが望ましいとされています。
点検の方法まで細かく決まっているんですか。
頻度は年1回以上と決まっていますが、方法は業界団体の指針が目安です。
よくある質問
まとめ
設置のことしか考えていませんでしたが、運用段階の備えも早めに確認しておきます。
まずは停電時の電力確保から見直すとよいでしょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物施設に太陽光発電設備を設置する場合の安全対策等に関するガイドラインについて(平成27年6月8日 消防危第135号 消防庁危険物保安室長)
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条第1項第17号
- 製造所等の定期点検に関する行動指針の整備について(平成3年5月29日付け消防危第48号)
- 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





