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避難器具の取付具はなぜ実際に荷重をかけて確かめるのか|300キログラムの荷重試験と引抜強度の計算式を解説

避難器具の取付具に荷重試験のトルクレンチを当てている様子を示すアイキャッチ画像

避難器具はバルコニーの手すりや壁に、金具ひとつで取り付けられています。
その金具が本当に人の体重を支えられるのか、目で見ただけでは分かりません。
工事が終わったあとには、実際に重さをかけて確かめる試験が用意されています。
今回は避難器具の取付具に課される荷重試験と引抜強度試験を解説します。

うちのバルコニーの避難はしごの金具、本当に大丈夫なのか気になります。

実は工事が終わったあとに、実際に重さをかけて確かめる試験があるんですよ。

目で見て変形してなければ大丈夫だと思っていました。

目視だけでなく、決まった重さをかけて確認する項目が別にあります。
まずは何を試験するのかから見ていきましょう。

この記事の結論
  • 避難器具の取付具は、工事完了後の機能試験実際に重さをかけて確かめられます
  • 荷重は取付具と避難器具の連結部分に対して鉛直方向に加え、斜降式の救助袋だけは降下方向に加えます
  • 荷重の大きさは救助袋が300キログラム以上、緩降機(多人数用以外のもの)が195キログラム以上です
  • アンカーボルトを使うものは引抜強度試験も行われ、締付トルクから引抜力を確かめます
  • 認定表示が付いた救助袋は、荷重試験を省略できる場合があります

避難器具の取付具に課される荷重試験と引抜強度試験の流れを示す図解

避難器具の取付具はなぜ工事のあとに試験されるのか

避難器具の取付具とチェックリストを並べた図
避難器具は設置基準どおりに作られていても、それだけでは安心できません。
工事が終わったところで、決められた試験を通して初めて設置完了になります。
避難器具の設置に係る工事が完了した場合における試験は、次表に掲げる試験区分及び項目に応じた試験方法及び合否の判定基準によること。取付具の腕(片持状となっている部分)の長さが2メートル以上(その他特殊な方法で取付けるものにあっては、2メートル未満のものを含む。)のものについて、次の方法により荷重を加えて、取付具及び取付部分の状況について確認する。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第16 避難器具)
試験区分は外観・取付部・取付具・固定部材など複数に分かれます。
このうち荷重試験は、取付具の腕の長さが2メートル以上のものが対象です。
腕が短いものや特殊な取付け方のものも、対象に含まれることがあります。
避難はしごや緩降機の器具本体は事前の型式検定で強度が確認済みですが、現場に取り付けた状態まではこの試験で確かめます。

器具そのものが検定品なら、金具まで試験しなくていいと思っていました。

器具の検定と取付具の試験は別物です。
現場ごとに確かめる必要があります。

荷重はどの向きにどれだけかけるのか

取付具に鉛直方向の荷重をかけている図
荷重をかける向きは器具によって決まっています。
向きを間違えると、実際の使用時とは違う力のかかり方になってしまいます。
取付具に加える荷重は、取付具と避難器具との連結部分に対して鉛直方向に加えるものとする。ただし、斜降式の救助袋にあっては降下方向に荷重を加えるものとする。荷重の大きさは、救助袋にあっては300キログラム以上、緩降機(多人数用以外のもの)にあっては195キログラム以上、その他のものにあってはそれぞれに対応する大きさとする。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第16 避難器具)
荷重の向きと大きさは器具ごとに決まっています。
原則は鉛直方向ですが、斜降式の救助袋だけは降下方向に荷重を加えます。
大きさは救助袋が300キログラム以上、緩降機(多人数用以外のもの)が195キログラム以上と定められています。
これ以外の器具にも、それぞれに対応する大きさが別に決められています。

うちのバルコニーには斜降式の救助袋があります。
向きも下向きでいいんでしょうか。

斜降式は降下方向、つまり斜め下に荷重をかけて確認します。
器具の種類を確認しておきましょう。

荷重試験で何を確認すればよいのか

取付具のボルトの緩みや亀裂を確認している図
荷重をかけたあと、目視で確かめる項目も決まっています。
どこか一つでも当てはまれば、取付具はやり直しになります。
取付具の取付部分に亀裂、取付ボルトの損傷、引き抜け等が生じないこと。取付具に破断、亀裂、耐力上支障のあるたわみ等が生じないこと。取付具の構造上重要な部分に使用されているロープ、ワイヤーロープ等に耐力上支障のあるたわみが生じないこと。(消防庁「消防用設備等の試験基準」第16 避難器具)
確認する項目は三つに分かれています。
一つ目は取付部分で、亀裂・ボルトの損傷・引き抜けがないかを見ます。
二つ目は取付具そのもので、破断や亀裂、たわみがないかを見ます。
三つ目はロープやワイヤーロープなど構造上重要な部分で、たわみが生じていないかを確認します。

荷重をかけたあと、どこを見ればいいのか分かっていませんでした。

取付部分と取付具本体とロープ、三か所をひととおり見れば大丈夫です。

アンカーボルトの引抜強度はどう確認するのか

トルクレンチでアンカーボルトを締め付けている図
金具をコンクリートに固定する場合、ボルトの効き方まで確かめる試験が別にあります。
ここでは工具で測った数字から、実際の引き抜く力を確認します。
固定部材にアンカーボルト等を使用するものにあっては、当該アンカーボルト等の引き抜きに対する耐力をアンカーボルト等の引抜力を測定することのできる器具等を用いて、当該アンカーボルト等に、設計引抜荷重に相当する試験荷重(アンカーボルト等1本当りの荷重)を加えて確認する。なお、引抜力を測定することのできる器具等として、トルクレンチを用いる場合における締付けトルクと引抜力(試験荷重)の関係は、次のとおりである。T=0.24DN(T:締付トルク N(kgf)・センチメートル、D:ボルト径 センチメートル、N:引抜力(試験荷重)N(kgf))(消防庁「消防用設備等の試験基準」第16 避難器具)
トルクレンチ一つで引抜力まで確かめられます。
アンカーボルトを直接引っ張る器具が無くても、締付トルクを測れば式から引抜力を求められます。
式はボルトの径が太いほど、同じ引抜力でも必要なトルクが大きくなる関係を示しています。
判定基準は取付部分に亀裂・ボルト等の損傷・引き抜けが生じないことです。

アンカーボルトを実際に引っ張る機械なんて、現場に無いんですが。

トルクレンチだけで計算できる仕組みになっています。
式に数字を当てはめれば確認できます。

明日からなにを確認すればよいのか

現場でのチェックリストと建物の外壁を並べた図
試験の仕組みが分かれば、現場で見る順番もはっきりします。
器具の種類から確認を始めてください。
  • 取付具の腕の長さが2メートル以上かどうかを確認する
  • 器具の種類が救助袋か緩降機かを確認し、300キログラム以上か195キログラム以上かの基準を当てはめる
  • 斜降式の救助袋は荷重の向きが降下方向になることを確認する
  • アンカーボルトを使う場合はトルクレンチで締付トルクを測り、式で引抜力を確認する
  • 救助袋に認定表示が付いていれば、荷重試験を省略できないか業者に確認する
五つの確認がひととおり終われば設置完了です。
器具の種類を取り違えると荷重の基準そのものを間違えてしまいます。
アンカーボルトの計算はボルト径を測り違えると結果も変わるので、現物を確認しながら進めてください。

荷重の基準は器具の種類でこんなに違うんですね。

はい、まず器具の種類を確認することから始めましょう。
次は点検のときにも役立ちます。

よくある質問

Q荷重試験はすべての避難器具が対象になりますか?
Aいいえ、対象になるのは取付具の腕の長さが2メートル以上のものです。ただし特殊な取付け方をするものは2メートル未満でも対象に含まれることがあります。
Q認定表示が付いていれば荷重試験は必ず省略できますか?
A「避難器具の基準」(昭和53年消防庁告示第1号)に適合する認定を受けた表示が貼付されている救助袋に限り、省略できる場合があります。その他の器具まで一律に省略できるわけではありません。
Q荷重試験と引抜強度試験はどちらも必ず行いますか?
A荷重試験は取付具の腕が2メートル以上のものが対象で、引抜強度試験はアンカーボルト等を使用するものが対象です。取付け方によってはどちらか一方だけになることもあります。
Qトルクレンチが無い場合はどう確認しますか?
A通知はトルクレンチを用いる場合の換算式を示していますが、引抜力を測定することのできる器具等であればほかの方法でも確認できます。現場で使う器具に応じて業者に確認してください。

まとめ

避難器具の取付具は工事完了後の機能試験で実際に重さをかけて確かめられる
荷重試験の対象は取付具の腕の長さが2メートル以上のもの
荷重は原則鉛直方向、斜降式の救助袋だけ降下方向に加える
大きさは救助袋が300キログラム以上、緩降機(多人数用以外のもの)が195キログラム以上
確認項目は取付部分・取付具本体・ロープ等の三か所
アンカーボルトを使うものは引抜強度試験も行い、T=0.24DNの式で確認する
認定表示が付いた救助袋は荷重試験を省略できる場合がある

取付具まで試験されているとは知りませんでした!

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防庁「消防用設備等の試験基準」第16 避難器具 機能試験(荷重試験・引抜強度試験)
  • 避難器具の設置及び維持に関する技術上の基準の細目(平成8年消防庁告示第2号)
  • 避難器具の基準(昭和53年消防庁告示第1号)
  • 消防法施行規則第27条(避難器具に関する基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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