建物の消防用設備等や避難施設の設置基準は、延べ面積・高さ・階数という数字を基準に定められているものが少なくありません。
ところがこの延べ面積や高さは、実際の建物の外形をそのまま測った数字とは限りません。
軒の出や屋上の小さな設備、地面の高低差の扱いひとつで、算定される数字が変わることがあります。
この面積と高さの算定ルールがどこまで実際の建物の外形と食い違うのかを解説します
延べ面積や高さって、建物の外形をそのまま測ればいい話じゃないんですか。
建築基準法施行令第二条が細かい算定方法を定めています。
まず条文の全体像から見ていきましょう。
軒が出ていたり屋上に設備があったりすると、数え方が変わるということですか。
はい、建築面積や高さには除外される部分があります。
条文の中身を順番に確認しましょう。
- 建築基準法第九十二条は、面積・高さ・階数の算定方法を政令(施行令第二条)に丸ごと委任しています。
- 建築面積は、軒等が中心線から水平距離一メートル以上突き出ると、先端から一メートル後退した線で測り直します(施行令第二条第一項第二号)。
- 工場や倉庫の荷物積みおろし用の軒等(特例軒等)は、水平距離五メートル未満まで後退の扱いが緩和されます(同号)。
- 屋上の階段室や昇降機塔等は、水平投影面積の合計が建築面積の八分の一以内なら十二メートルまで高さに算入されません(同項第六号ロ)。
- 地盤面は接地位置の高低差が三メートルを超えると、三メートルごとに区切って平均の高さを求め直します(同条第二項)。
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目次
建築基準法第九十二条はなぜ算定方法を政令に丸ごと委任しているのか

ところがこれらの数字の測り方そのものは、建築基準法の本文には書かれていません。
条文が本法ではなく政令にあるため、見落とされやすいところです。
委任先は建築基準法施行令第二条で、敷地面積から階数まで八つの項目の算定方法が号ごとに定められています。
このうち特に見落としやすいのが、建築面積の軒の扱いと、建築物の高さから除かれる屋上部分です。
次は建築面積の算定から確認しましょう。
延べ面積とか高さの測り方って、条文のどこに書いてあるのか気になっていました。
施行令第二条にまとめて定められています。
まずは建築面積から見ていきましょう。
軒やひさしはどこまで建築面積に含まれるのか

軒やひさしが壁より外に張り出している建物では、どこまでを面積に含めるかが問題になります。
一メートル以上突き出た軒がある場合は、外壁の中心線ではなく軒の先端から一メートル後退した線で建築面積を測り直します。
工場や倉庫で荷物の積みおろしのために設ける軒等は特例軒等として扱われ、五メートル未満までなら後退の距離が緩和されます。
この違いは建蔽率の計算に直結するため、軒の大きな建物では設計段階から意識しておく必要があります。
次は建築物の高さの算定を確認しましょう。
うちの建物は軒が結構出ているんですが、それだけで建築面積が変わるんですか。
一メートルを超える軒があれば、後退した線で測り直します。
次は建物の高さの算定を見ていきましょう。
屋上の昇降機塔はなぜ建物の高さに含まれないことがあるのか

屋上に設けられる小さな設備室や塔屋には、独自の除外ルールがあります。
これは階数の算定で同じ屋上部分が八分の一以内なら数えないルールとは別の、高さについての独立した規定です。
低層住居専用地域の高さ制限(第五十五条)など一部の規定では、除外できる高さの上限が五メートルまでに縮まります。
棟飾や防火壁の屋上突出部のような小さな突出物は、この面積要件を問わず高さに算入されません。
次は、高さや建築面積を測るときの基準面である地盤面を確認しましょう。
屋上に機械室があるうちの建物も、高さの計算から外れているかもしれませんね。
水平投影面積が建築面積の八分の一以内かがポイントです。
次は地盤面の測り方を見ていきましょう。
地盤面はどこを基準に測ればよいのか

平らな敷地なら迷いませんが、傾斜地では扱いが変わります。
敷地の高低差が三メートルを超える斜面地では、地盤面がひとつではなく複数に分かれることになります。
この地盤面は建築面積・建築物の高さ・軒の高さすべての基準になるため、区切り方を誤ると面積や高さの算定結果全体がずれてしまいます。
軒の高さ(第七号)は、地盤面から小屋組を支持する壁や柱の上端までの高さで、建築物の高さ(第六号)とは別の基準として使われます。
次は、これらの算定結果が実務でどう影響するのかを確認しましょう。
傾斜地の建物は、地盤面がひとつじゃないこともあるんですね。
高低差三メートルを超えると区切りが必要です。
次は実務での確認ポイントを整理しましょう。
面積や高さの算定結果は実務でなにに影響するのか

算定の前提を誤ると、設置義務の有無そのものを見誤ることになりかねません。
- 建物に軒やひさしがあれば、中心線からの突き出し距離が一メートル以上かどうかを確認する
- 屋上に設備室や塔屋があれば、水平投影面積が建築面積の八分の一以内かを確認し、高さの算定に含めるかを判断する
- 敷地に高低差があれば、三メートルごとの区切りで地盤面を測り直す
- 延べ面積や階数についても、消防用設備等の基準となる数字がどの号で算定されたものかを施行令第二条に照らして確認する
延べ面積や階数の不算入部分(自動車車庫や備蓄倉庫等)は容積率の算定に限られた特例で、消防法令が使う延べ面積には影響しない点にも注意が必要です。
建物の管理者が独自に判断するのは難しいため、算定に疑問がある場合は特定行政庁や設計者に確認するのが確実です。
図面上の数字と現地の実測が食い違う場合は、まず地盤面の区切り方から見直すと原因が見つかりやすくなります。
次はよくある質問を確認しましょう。
図面の数字と現地の実測がずれていたら、まず地盤面から確認してみます。
地盤面の区切り方を最初に見直すのがおすすめです。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
図面の数字と法令の算定方法が一致しているか、確認してみます!
面積や高さの算定を含む確認も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第九十二条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令第二条第一項・第二項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における算定方法や適用の可否は、設計内容や敷地の状況によって異なります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





