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建蔽率は角地や耐火建築物ならなぜ上限より広く建てられるのか|建築基準法第五十三条の緩和を解説

街区の角にある建物の外観

建築基準法の建蔽率は、都市計画で決まった数値のまま常に上限になるとは限りません。
防火地域内の耐火建築物や、街区の角にある敷地では、この数値が引き上げられることがあるからです。
緩和の仕組みを知らずにいると、実際に建てられる規模を過小に見積もってしまうことがあります。
建蔽率の上限は、条件を満たせば引き上げられる仕組みがあります

うちの敷地、道が二つ交わる角にあるんです。
建蔽率って、こういう場所だと何か変わるんでしょうか。

実は変わってきますよ。
建蔽率には緩和の仕組みがあります。

都市計画で決まった数値がそのまま上限だと思っていました。

条件を満たせば、その数値より広く建てられることがあるんです。
順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 敷地面積に対する建築面積の割合である建蔽率は、都市計画で用途地域ごとに定められた数値が基本になります。
  • ただし防火地域内の耐火建築物等や、街区の角にある敷地では、この数値が引き上げられることがあります(建築基準法第五十三条第三項)。
  • いずれか一方に該当すれば十分の一、両方に該当すれば十分の二が上限に加算されます。
  • 防火地域のうち建蔽率の限度が十分の八とされている地域内の耐火建築物等は、制限そのものが適用されません
  • 敷地が二つの用途地域にまたがる場合は、各地域の限度を面積で按分した数値が上限になります。

建築基準法第五十三条が定める防火地域の耐火建築物と角地の建蔽率緩和の図解

建蔽率とはそもそも何を制限する数値なのか

敷地に対する建築面積が異なる三棟の建物模型と用途地域の看板

建蔽率は、容積率と並んで建物の規模を決める基本の数値です。
延べ面積ではなく、真上から見た建物の面積が敷地に対してどれだけの割合を占めるかを制限します。

第五十三条第一項 建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建蔽率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。

建蔽率は、建築面積を敷地面積で割った割合の上限です
第一種低層住居専用地域などでは十分の三から十分の六までの間で、商業地域では十分の八というように、用途地域ごとに数値が決まっています。
どの数値になるかは、その土地の都市計画で個別に指定されます。
容積率が建物の高さや延べ床の大きさに効くのに対し、建蔽率は敷地に対する建物の広がり方、つまり隣地とのゆとりや日照・通風に効いてきます。

容積率とは別に、建蔽率も見ておく必要があるんですね。

はい、両方とも同時に確認する数値です。
敷地が広がるとどうなるかも見てみましょう。

二つの用途地域にまたがる敷地はどう計算するのか

二つの用途地域の境界線をまたいで建つ建物模型と計算機

用途地域は敷地の途中で切り替わることがあります。
そのときに建蔽率をどう計算するかも、条文にはっきり定められています。

第五十三条第二項 建築物の敷地が前項の規定による建築物の建蔽率に関する制限を受ける地域又は区域の二以上にわたる場合においては、当該建築物の建蔽率は、同項の規定による当該各地域又は区域内の建築物の建蔽率の限度にその敷地の当該地域又は区域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものの合計以下でなければならない。

二つの地域にまたがる敷地は、面積で按分して合算します
それぞれの地域の建蔽率の限度に、敷地のうちその地域に含まれる部分の面積割合を掛け、両方を足し合わせた数値が上限になります。
一方の地域だけの数値をそのまま適用してしまうと、実際より緩い数値で計画してしまうことがあります。
敷地測量図で用途地域の境界線がどこを通るかを確認しておく必要があります。

境界線がどこを通っているか、自分で確かめる方法はありますか。

市区町村の都市計画情報で確認できます。
次は建蔽率が増える側の話をします。

防火地域の耐火建築物や角地はなぜ緩和されるのか

街区の角にある敷地の建物模型と耐火構造の壁の断面

ここまでは建蔽率が下がる方向の話でしたが、逆に上限が引き上げられる仕組みもあります。
条文では防火性能の高い建物と、角にある敷地の二つが挙げられています。

第五十三条第三項(抜粋) 第一号又は第二号のいずれかに該当する建築物にあつては第一項各号に定める数値に十分の一を加えたものをもつて当該各号に定める数値とし、第一号及び第二号に該当する建築物にあつては同項各号に定める数値に十分の二を加えたものをもつて当該各号に定める数値とする。
一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域を除く。)内にあるイに該当する建築物又は準防火地域内にあるイ若しくはロのいずれかに該当する建築物 イ 耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能(略)を有するものとして政令で定める建築物(以下この条及び第六十七条第一項において「耐火建築物等」という。) ロ 準耐火建築物又はこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(耐火建築物等を除く。第八項及び第六十七条第一項において「準耐火建築物等」という。)
二 街区の角にある敷地又はこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物

耐火建築物等か角地のどちらかに該当すれば、建蔽率の限度に十分の一が加算されます
防火地域内の耐火建築物等、または準防火地域内の耐火建築物等・準耐火建築物等であれば対象になります。
街区の角にある敷地や、特定行政庁がこれに準ずると指定した敷地も同じく対象です。
両方に該当する場合は、十分の一ずつではなく合わせて十分の二が加算されます。

うちは角地で、建物も耐火構造だと聞いています。
それなら両方の緩和が使えるということですね。

その組み合わせなら十分の二の加算が見込めます。
実はさらに緩和が進む場合もあります。

緩和が重なると建蔽率の制限自体が無くなることがあるのか

敷地いっぱいに建つ商業ビルと隙間のある建物の比較

防火地域の中には、都市計画で建蔽率の限度そのものが十分の八と定められている地域があります。
この地域で耐火建築物等を建てる場合、条文はさらに踏み込んだ扱いを定めています。

第五十三条第六項(抜粋) 前各項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物については、適用しない。
一 防火地域(第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域に限る。)内にある耐火建築物等

建蔽率の限度が十分の八の防火地域内にある耐火建築物等は、建蔽率の制限そのものが適用されません
前項までの「加算」ではなく、制限そのものを外すという扱いになる点が異なります。
結果として、敷地いっぱいに建物を建てることが可能になります。
これは繁華街や商業地の防火地域で耐火建築物への建て替えを進める上での大きな誘因にもなっています。

制限が外れるなら、敷地いっぱいに建てても違反にならないんですね。

条件を満たす限りはそのとおりです。
最後に確認の手順を見ていきましょう。

増改築の前に何を確認すればよいのか

敷地の境界を測る担当者と都市計画図

ここまでの緩和は、条件を満たしていることが確認できて初めて使えます。
増改築を計画する前に、次の点を確認しておくと安心です。

  • 敷地が指定されている用途地域と、建蔽率の限度の数値を確認する
  • 敷地が防火地域・準防火地域のどちらに指定されているかを確認する
  • 建物が耐火建築物等・準耐火建築物等に該当するかを設計者や施工者に確認する
  • 敷地が街区の角にあるか、特定行政庁の角地指定を受けているかを確認する

この四つを確認しておくと、計画段階での見積もり違いを防げます
用途地域と建蔽率の限度は、都市計画情報で調べられます。
角地の指定は自治体ごとに要件や指定範囲が異なるため、窓口での確認が確実です。
不安があるときは、設計を始める前に特定行政庁の窓口に相談するのが近道です。

次の計画の前に、うちの敷地の指定を一度確認してみます。

それが一番確実な確認方法です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q建蔽率は都市計画で決まった数値がそのまま上限になりますか?
Aいいえ。防火地域内の耐火建築物等や街区の角にある敷地では、十分の一または十分の二が上限に加算されます。
Q耐火建築物であることと角地であることの両方に該当したらどうなりますか?
A十分の一ずつではなく、合わせて十分の二が上限に加算されます(建築基準法第五十三条第三項)。
Q建蔽率の制限自体が無くなることもあると聞きましたが本当ですか?
A本当です。建蔽率の限度が十分の八とされている防火地域内の耐火建築物等は、制限そのものが適用されません。
Q敷地が二つの用途地域にまたがる場合はどう計算しますか?
A各地域の限度にその敷地の当該地域内の面積割合を掛け、合計した数値が上限になります(建築基準法第五十三条第二項)。

まとめ

建蔽率(敷地面積に対する建築面積の割合)の上限は、都市計画で用途地域ごとに定められた数値が基本です。
ただし防火地域内の耐火建築物等や、街区の角にある敷地では、この数値が引き上げられることがあります
いずれか一方に該当すれば十分の一、両方に該当すれば十分の二が上限に加算されます。
敷地が二つの用途地域にまたがる場合は、各地域の限度を面積で按分した数値が上限になります。
建蔽率の限度が十分の八の防火地域内にある耐火建築物等は、制限そのものが適用されません
増改築の前には、用途地域・防火地域の指定・角地の指定・耐火性能を確認しておく必要があります。
不明な点があれば、計画を始める前に特定行政庁の窓口に相談するのが近道です。

うちも一度、敷地の指定と建物の耐火性能を確認してみます!

早めの確認も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第五十三条(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。角地の指定や防火地域の運用は自治体ごとに異なる場合があります。具体的な数値は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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