屋外貯蔵タンクの工事や点検では、条文をそのまま読んでも結論が出ない場面が繰り返し出てきます。
この工事は本体の変更にあたるのか。この試験方法は規則がいう試験に含まれるのか。
腐食率はタンクの内側と外側のどちらで見るのか。
この記事では判断が分かれる論点を5つ並べ、消防庁が示した結論とその読み方を整理します。
ウインドガーダーを1本足すだけの工事でも、本体の変更として申請が要るのでしょうか。
判断の軸は工事の大きさではなく、重量が増えて側板の応力や保有水平耐力の確認が要るかどうかです。
通達が例示まで挙げています。
規則に書かれていない試験の方法は、使えないものだと思っていました。
規則の書きぶりに「等」が付いている箇所は、そこに何が入るかが通達で示されていることがあります。
今回もその一例です。
- 重量の増加等により側板に生じる応力や底部板の保有水平耐力等の確認を要する変更工事は、屋根の敷設やウインドガーダーの増設等を含めてタンク本体の変更に該当します
- 日本産業規格の漏れ試験は、規則第20条の9に規定する試験に含まれるとしてよいとされています
- コーティングを講じる場合の底部の腐食率は、底部の板の外面の腐食量に基づく腐食率として差し支えないとされています
- 浮き蓋付きの特別通気口は、規格が示す通気量を満たすことを解析等で確認できれば従前の通達によらないこととしてよいとされています
- 既設の準特定屋外タンク貯蔵所で杭が用いられている場合、スラブ部分の要件を図面等で確認できれば告示に適合すると判断できます
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目次
屋根の敷設やウインドガーダーの増設は本体の変更か

屋根を架ける、ウインドガーダーを足すといった工事は、板を張り替える工事に比べれば付加物の追加に見えます。
令和2年3月27日付けの消防危第89号は、この線引きを示しました。
答 差し支えない。
屋根の敷設やウインドガーダーも含まれます。
どちらもタンクに新たな重量を載せる工事です。載れば側板に応力が生じ、底部板の保有水平耐力にも影響します。
計画段階で重量の増減を押さえておけば、手続の見通しを誤りません。
工事の見た目ではなく、確認の要否で分かれるのですね。
重量の増加などで判断されます。
工事の内容を、確認項目に置き換えてください。
日本産業規格の漏れ試験は規則の試験に含まれるか

末尾の「等」に何が入るのかが読み取りにくく、規格に定められた方法を採ってよいのか迷う場面があります。
答 差し支えない。
規則が挙げている3つは例示であって限定列挙ではない、という読み方が確認されたことになります。
規格に沿った方法であれば、規則に名前が書かれていない試験でも選択できます。試験計画を組むときの幅が広がる回答です。
条文の例示は、限定ではないのですね。
規格の方法も含まれます。
採用する試験の方法を、根拠と一緒に記録してください。
コーティングを講じる場合の底部の腐食率はどちらで見るか

コーティングを講じれば、内面の腐食は抑えられます。
それでも腐食率を内面と外面の両方で見なければならないのか、が照会されました。
答 お見込みのとおり。
コーティングという別の要件で内面を手当てしているのだから、腐食率の算出では基礎に接する外面を見ればよい、という組み立てです。
2つの要件が重なって課されている条文では、一方の措置が他方の算出方法に影響することがあると分かる例です。
コーティングをしても、腐食率の見方が決まっているのですね。
要件が並んでいます。
点検の記録に、内面と外面を分けて残しましょう。
浮き蓋付きタンクの特別通気口を解析で確認できるか

これを排出する特別通気口の仕様について、従前は平成24年3月28日付けの消防危第88号第2の1によることとされていました。
平成29年5月18日付けの消防危第104号は、別の確認方法を認めています。
答 差し支えない。
解析で確認できれば通達によらなくてよいとされました。
仕様をそのまま満たす代わりに、性能を解析で示すという道が開かれた形です。設計の自由度は増えますが、そのぶん解析の妥当性を説明する資料が要ります。
解析で確認できる場合もあるのですね。
数値が示されています。
採用する方法を、事前に相談してください。
既設の準特定タンクで杭が用いられている場合の判断

平成20年7月8日付けの消防危第290号が、既設のタンクについて具体的な確認方法を示しました。
答3 さしつかえない。
なお、具体的には、基礎のスラブ部分が鉄筋コンクリート構造であること及び27号通知第1、2(2)ウ(ア)①の要件を満足することが図面等で確認できれば、当該基礎は告示第4条の22の7第1号の規定に適合するものと判断できる。
そこで確認の手段として図面等が挙げられている点が実務的です。
図面等で確認できれば適合と判断できます。
求められているのは、スラブ部分が鉄筋コンクリート構造であることと、27号通知が定める要件の1つを満たすことの2点です。
記録が残っていない既設のタンクにも、道があるのですね。
図面などで確認します。
古い資料は、探して整理しておいてください。
よくある質問
まとめ
- 変更工事による重量の増加等により側板に生じる応力や底部板の保有水平耐力等の確認を要するものは、タンク本体の変更に該当します
- その例として屋根の敷設やウインドガーダーの増設等が挙げられており、付加物の追加であっても対象になります
- 日本産業規格の漏れ試験方法は、規則第20条の9に規定する真空試験、加圧漏れ試験、浸透液漏れ試験等に含まれるとしてよいとされています
- 規則が挙げる3つの試験は例示であり、限定列挙ではないという読み方になります
- コーティングを講じる場合、底部の腐食率は底部の板の外面の腐食量に基づくものとして差し支えありません
- 浮き蓋付きの特別通気口は、規格が示す通気量を満たすことを数値流体力学による解析等で確認できれば、従前の通達によらないこととしてよいとされています
- その通気量は、内径25メートル以下で18時間以内、25メートル超で24時間以内に、元の量の25パーセント以下に換気し得る量です
- 既設の準特定屋外タンク貯蔵所で杭が用いられている場合、スラブ部分が鉄筋コンクリート構造であることと27号通知の要件を図面等で確認できれば、告示に適合すると判断できます
等の中身が通達で示されていることもあるのですね。
すっきりしました。
条文と通達はセットで読むものです。
迷ったら質疑応答まで当たると道が見つかります。
㈱防災屋でも根拠の洗い出しからお手伝いしています。
参考・出典
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について〔抄〕(令和2年3月27日 消防危第89号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別添 屋外貯蔵タンクの変更工事について 問3/屋外貯蔵タンクに係る漏れ試験について 問4
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について〔抄〕(平成23年12月1日 消防危第273号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙 屋外タンク貯蔵所関係 問1
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成29年5月18日 消防危第104号 危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙 屋外タンク貯蔵所関係
- 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成20年7月8日 消防危第290号 消防庁危険物保安室長から各都道府県消防防災主管部長・東京消防庁・各指定都市消防長あて)別紙 準特定屋外タンク貯蔵所の基礎及び地盤関係 問1・問2・問3
- 危険物の規制に関する規則第20条の9・第20条の3の2第2項第2号・第62条の2の2第1項第3号
- 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第4条の22の7第1号
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。個別の施設についての適用は、所轄の消防機関にご確認ください。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)




