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タンクを別の工場へ移設するとき検査は要るか|検査済証を引き継げる条件と工事の手続

クレーンで吊られたタンクをトラックに積み込む工場の写真とタンクを移設検査は要るの文字

使っているタンクを別の工場へ持っていきたい。
そのとき完成検査前検査をもう一度受け直さなければならないのか。
用途を廃止すればタンク検査済証は当然に効力を失いますが、移設の場合には別の道が示されています。
この記事ではタンクの移設と検査済証の扱いを消防庁の執務資料に沿って整理します。

タンクを別の工場に移した場合、検査はやり直しになるのでしょうか。

条件を満たせば不要です。
執務資料は既設のタンク検査済証を有効なものとして扱い改めて完成検査前検査を行わなくてもよいとしています。

廃止すると失効すると聞いたのですが、違うのでしょうか。

そちらは用途廃止の場合です。
今回は直接移設する場合で、維持管理の確認など条件が付いています。
この記事でまとめて解説します!

この記事の結論
  • 製造所の20号タンクを別の製造所に直接移設する場合は既設のタンク検査済証を有効なものとして扱える
  • 条件は定期点検の記録等により適正に維持管理されていることが確認できることである
  • もう一つの条件は移設先においてタンク本体の変更工事を伴わないことである
  • 放電加工機の加工液タンクは機器や設備等と一体とした構造または気密に造られていない構造なら20号タンクに該当しない
  • 負圧のタンクの水圧試験は最大常用圧力の絶対値の1.5倍の圧力で10分間行うことで差し支えない

別の製造所へ直接移設する場合は完成検査前検査を省略できる

トラックに載せたタンクが別の工場へ運ばれる様子のイラスト

平成10年10月13日付け消防危第90号は、各都道府県の消防主管部長あてに送付された執務資料です。
危険物の規制に関する政令第8条の2に関する項目として、次の問いが取り上げられました。

照会は製造所に設置されている20号タンク(完成検査前検査済)を別の製造所に直接移設する場合において、当該タンクが現在まで適正に維持管理されていることを定期点検の記録等により確認することができ、かつ、移設先の製造所においてタンク本体の変更工事を伴うことがない場合は、既設のタンク検査済証を有効なものとして扱い、改めて完成検査前検査を行わなくてもよいかというものです。
回答は差し支えないです。

ここで押さえておきたいのが直接移設する場合という限定です。
一度用途を廃止してから改めて設置するのではなく、タンクをそのまま別の製造所へ移す場合が想定されています。

用途が廃止された時点でタンク検査済証は当然にその効力を失うという回答が別にあります。
それと矛盾しないように、移設という場面が切り出されている形です。
移設と廃止は別扱いです

直接移設する場合は、省略できるのですね。

一度廃止する場合とは区別されます。
移設の手順を、先に決めてから動いてください。

条件は維持管理の確認と本体の変更工事がないことである

点検記録のファイルとチェックリストがタンクの脇に並ぶイラスト

省略が認められるためには、二つの条件がそろっている必要があります。
条文の形ではなく執務資料の問いの中に組み込まれている点に注意が要ります。

一つめは当該タンクが現在まで適正に維持管理されていることを定期点検の記録等により確認することができることです。
確認の手段として名指しされているのが定期点検の記録等である点が実務では重要になります。

日ごろの定期点検の記録が残っていなければ、この条件は満たせません。
移設を検討する段階になってから遡って作れるものでもありません。

二つめは移設先の製造所においてタンク本体の変更工事を伴うことがないことです。
配管の接続などではなくタンク本体に手を入れるかどうかが分かれ目になります。

本体を切ったり継いだりすれば、検査を受けたときの状態とは別のものになります。
そのままの状態で運んで据えるという場合に限って、検査済証がついてくるという整理です。
記録が残っているかです

点検の記録で確認できることが条件なのですね。

本体の工事がないことも要件です。
定期点検の記録は、必ず保管しておきましょう。

放電加工機の加工液タンクは条件により20号タンクに該当しない

放電加工機の下部に組み込まれた加工液槽の断面のイラスト

平成9年3月25日付け消防危第27号は、政令第9条第1項第20号に関する執務資料です。
工作機械の油タンクについての一連の判断に、新しい機種が加わりました。

照会は放電加工機の加工液タンクは、20号タンクに該当するかというものです。
回答は加工液タンクが、機器、設備等と一体とした構造である場合又は気密に造られていない構造である場合については、該当しないです。

示された条件は二つで、しかも又はでつながれています。
どちらか一方にあてはまれば該当しないということです。

一つめの機器、設備等と一体とした構造は、工作機械の切削油タンクや作動油タンクについての回答と同じ考え方です。
二つめの気密に造られていない構造は、上部を開放して使う槽についての回答と重なります。

昭和58年から積み重ねられてきた判断が、平成に入って一つの文にまとめられた形です。
一体か気密かで見ます

機器と一体なら、該当しない場合があるのですね。

条件のどちらかに当たれば外れます。
設備の構造を、写真と図で残しておいてください。

負圧のタンクの水圧試験は絶対値の1.5倍の圧力で10分間行う

真空計の針が負の側を指す密閉タンクと外から押す圧力を示したイラスト

平成9年10月22日付け消防危第104号には、減圧して使うタンクについての項目があります。
圧力をかけて使うタンクとは逆に、内部が負圧になる設備です。

照会は屋内に設置される減圧して使用する危険物取り扱いタンクの水圧試験は最大常用圧力(マイナス760ミリメートル水柱)の絶対値の1.5倍の圧力で10分間行うこととして差し支えないかというものです。
回答は差し支えないです。

最大常用圧力が負の値であるため、そのまま1.5倍しても試験の圧力にはなりません。
そこで絶対値をとってから1.5倍するという方法が示されました。

時間についても10分間と明示されています。
負圧で使う設備であっても、試験そのものは正圧をかけて行うという整理です。

負圧のタンクにも、試験の方法があるのですね。

絶対値をとって計算します。
試験の条件を、記録に明記してください。

危険場所の範囲内に電動機を設置する工事には変更許可が必要になる

危険場所の範囲を示す網かけの中に電動機が置かれ許可の書面が添えられたイラスト

同じ執務資料には、工事の手続についての項目もあります。
製造所にエアコンプレッサー用の電動機を新設したいという申し出があった事例です。

照会は危険場所の範囲内に電動機を設置する工事であったため、保安上影響を及ぼすおそれがあるものと判断し、変更許可の手続きをとらせることとしてよいかとし、あわせて工事の内容が、危険場所の範囲外の火災予防上支障ない位置に電動機を設置する工事である場合には、変更許可の手続きを要しないものとして取り扱うこととしてよいかと尋ねています。
回答は前段及び後段ともに差し支えないです。

同じ電動機の新設でも、置く場所によって手続の要否が分かれます。
判断の軸は危険場所の範囲内かどうか保安上影響を及ぼすおそれがあるかです。

設備を一つ足すだけだから届出も不要だろう、とは限りません。
置く場所で変わります

設備を1つ足すだけでも、手続きが要る場合があるのですね。

置く場所で分かれます。
増設の計画は、位置から相談してください。

よくある質問

Q. タンクを別の工場に移したら完成検査前検査は受け直しですか?
条件を満たせば不要です。別の製造所に直接移設する場合で、定期点検の記録等により適正に維持管理されていることが確認でき、かつ移設先でタンク本体の変更工事を伴わない場合は、既設のタンク検査済証を有効なものとして扱い改めて完成検査前検査を行わなくてもよいとされています。
Q. 用途を廃止した場合と何が違うのですか?
タンク検査済証は用途が廃止された時点で当然にその効力を失うとされています。今回の執務資料が示しているのは別の製造所に直接移設する場合の扱いです。
Q. 放電加工機の加工液タンクは20号タンクですか?
加工液タンクが機器や設備等と一体とした構造である場合、または気密に造られていない構造である場合については該当しないとされています。
Q. 配管の支柱はすべて耐火性能が必要ですか?
平成4年2月6日付け消防危第13号は、4本の支柱のうち2本が耐火被覆され、配管がその2本だけで十分に支持される場合について、残りの支柱は耐火性能を有しなくともよいかという問いに差し支えないと回答しています。

まとめ

  • 製造所の20号タンクを別の製造所に直接移設する場合は既設のタンク検査済証を有効なものとして扱える
  • その場合は改めて完成検査前検査を行わなくてもよいとされている
  • 条件の一つは定期点検の記録等により適正に維持管理されていることを確認できることである
  • もう一つの条件は移設先の製造所においてタンク本体の変更工事を伴わないことである
  • 放電加工機の加工液タンクは機器や設備等と一体とした構造である場合は20号タンクに該当しない
  • 気密に造られていない構造である場合も同様に該当しない
  • 減圧して使用するタンクの水圧試験は最大常用圧力の絶対値の1.5倍の圧力で10分間行うことで差し支えない
  • 危険場所の範囲内に電動機を設置する工事は変更許可の手続きをとらせることとしてよい
  • 危険場所の範囲外の火災予防上支障ない位置であれば変更許可の手続きを要しないものとして取り扱える

点検の記録がものを言うのですね。
すっきりしました。

そのとおりです。
設備の移設や増設にともなう手続の要否も、所轄消防署との事前協議からお手伝いします。

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)第11条・第11条の2 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第8条の2・第9条 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第13条の5 e-Gov法令検索
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成4年2月6日付け消防危第13号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成9年3月25日付け消防危第27号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成9年10月22日付け消防危第104号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
  • 危険物規制事務に関する執務資料の送付について(平成10年10月13日付け消防危第90号 危険物規制課長から各都道府県消防主管部長あて)
  • 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)の危険物の規制に関する政令の質疑応答を参考に、独自に解説を作成

※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

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