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独立部分の増築でも竪穴区画だけはなぜ緩和されないのか|建築基準法施行令第137条の13が定める例外を解説

竪穴区画だけは増築しても緩和されないことを示すイメージ

複数の棟をつないだ建物や増改築を重ねてきた建物では、一部分だけを増築するとき他の部分まで最新基準に合わせなくてよいと聞くことがあります。
この「独立部分」の緩和は建築基準法第86条の7第2項が定めるものですが、防火区画についてはすべてが対象になるわけではありません。
実は上下階を貫く竪穴区画だけは、この緩和から特別に外されています。
竪穴区画は増築等をしない独立部分でも現行基準を満たす必要があり、直通階段を兼ねる場合だけは例外になります。

うちは2つの棟をつないだ建物で、片方だけ増築する予定です。
もう片方の棟は今の基準に合わせなくていいと聞いたんですが本当ですか。

その緩和は独立部分という考え方によるものです。
ただし防火区画の中には対象外のものがあります。

防火区画にも対象外があるんですか。
うちは階段や昇降路がいくつもあるので心配です。

はい、上下階を貫く竪穴区画だけは別扱いです。
この記事の結論から先にお伝えします。

この記事の結論
  • 建築基準法第86条の7第2項は、独立部分が2つ以上ある建物で一方だけ増築等をする場合、増築等をしない他の独立部分には第35条や第36条などの基準を適用しないと定めています
  • ただし第36条の技術的基準のうち政令で定める防火区画は、この緩和の対象から除かれます
  • 建築基準法施行令第137条の13は、その除外対象を第112条第11項から第13項までの竪穴区画と定めています
  • 竪穴部分が第120条又は第121条の直通階段に該当する場合は、この除外の対象から外れ通常どおり緩和を受けられます
  • 図面で竪穴部分の種類と直通階段への該当有無を確認することが実務の出発点になります

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独立部分の増築でも竪穴区画は緩和されない仕組み

独立部分の増築等ではなぜ他の部分まで基準を合わせなくてよいのか

つながった2つの棟のうち一方だけを増築する建物
複数の棟をつないだ建物や、増改築を重ねてきた建物は少なくありません。
その一部分だけを増築するたびに建物全体を今の基準に合わせるのは、現実的ではない場面があります。
建築基準法第八十六条の七第二項(抜粋) 第三条第二項の規定により第二十条、第二十一条、第二十三条、第二十六条、第二十七条、第三十五条(階段等に関する技術的基準に係る部分に限る。)、第三十六条(防火壁等に関する技術的基準(政令で定める防火区画に係る部分を除く。)に係る部分に限る。)又は第六十一条の規定の適用を受けない建築物であつて、これらの規定の適用上一の建築物であつても別の建築物とみなすことができる部分として政令で定める部分(独立部分)が二以上あるものについて増築等をする場合においては、当該増築等をする独立部分以外の独立部分に対しては、これらの規定は、適用しない。
建物を「独立部分」という単位に区切れる場合は、増築等をする部分以外の部分は基準の適用を受けません。
つまり片方の棟だけを増築しても、増築しないもう一方の棟の階段等や防火壁等の基準は、そのままでよいことになります。
ただし条文をよく読むと、第36条の対象に「政令で定める防火区画に係る部分を除く」という括弧書きが挟まれています。
この括弧書きが今回の主役で、防火区画のうちある一部分だけはこの緩和から外れることを意味しています。
その「政令で定める防火区画」の中身を次に確認します。

増築しない棟は基準の対象外になるんですね。
でも防火区画だけ例外があるのが気になります。

その例外が竪穴区画です。
次に理由を一緒に見ていきましょう。

竪穴区画だけはなぜこの緩和から外されるのか

上下階を貫く竪穴部分と火や煙の広がり
階段室や昇降路のように上下階を貫く部分は、火や煙をそのまま上や下へ運んでしまいます。
増築しない棟の壁や床が古い基準のままでも、竪穴の部分だけは別に考える必要があります。
建築基準法施行令第百三十七条の十三 法第八十六条の七第二項の政令で定める防火区画は、第百十二条第十一項から第十三項までの規定による竪穴部分の防火区画(当該竪穴部分が第百二十条又は第百二十一条の規定による直通階段に該当する場合のものを除く。)とする。
独立部分の緩和から除かれる「政令で定める防火区画」の正体は、竪穴区画です。
建築基準法施行令第112条第11項は、階段の部分・昇降機の昇降路の部分・ダクトスペースの部分・吹抜きとなつている部分などを「竪穴部分」と呼び、他の部分と準耐火構造の床若しくは壁又は防火設備で区画するよう求めています。
竪穴部分は建物のどの独立部分にまたがっていても、上下階を1本につないでいる通り道です。
片方の独立部分だけを増築して新しい基準に保っても、竪穴を通じてもう一方の独立部分まで火や煙が伝わってしまえば、区画を分けた意味が薄れます。
そのため竪穴区画だけは、増築等をしない独立部分であっても現行の基準を満たす必要があるのです。

竪穴は棟をまたいでつながっているから別扱いなんですね。
うちの階段や昇降路も見直しが必要そうです。

ただし条文にはもうひとつ括弧書きの例外があります。
そこが今日の一番のポイントです。

竪穴部分が直通階段を兼ねているときはなぜ話が変わるのか

直通階段を兼ねる竪穴部分と兼ねない昇降路の違い
竪穴部分といっても中身はさまざまです。
中でも避難のための階段として使われている部分は、扱いが変わってきます。
建築基準法施行令第百二十条第一項(抜粋) 建築物の避難階以外の階においては、避難階又は地上に通ずる直通階段を、居室の種類に応じた歩行距離以下となるように設けなければならない。
竪穴部分が直通階段に該当する場合は、竪穴区画としての除外対象から外れます。
137条の13のかっこ書きが「当該竪穴部分が直通階段に該当する場合のものを除く」としているのがこの部分です。
除外の対象から外れるということは、独立部分の一般的な緩和に戻り、増築しない独立部分では古い基準のままでよいことになります。
直通階段はもともと第35条の「階段等に関する技術的基準」として、独立部分ごとに扱う仕組みが別に用意されています。
同じ空間に竪穴区画の基準まで重ねて課すと過重になるため、直通階段を兼ねる竪穴部分はここで区別されているのです。

階段室なら緩和されて、エレベーターの昇降路だと緩和されないんですか。
見分け方が難しそうです。

その通りで、竪穴部分の中身によって扱いが分かれます。
実務で見落としやすいところを整理しましょう。

実務で見落としやすいのはどこか

図面で竪穴部分の種類を確認する場面
竪穴部分と一口にいっても、図面の上では見分けがつきにくいことがあります。
種類ごとに扱いが変わるからこそ、思い込みで判断しないことが大切です。
建築基準法施行令第百十二条第十一項(抜粋) 竪穴部分とは、階段の部分、昇降機の昇降路の部分、ダクトスペースの部分その他これらに類する部分をいう。
エレベーターの昇降路やダクトスペースは、直通階段には当たりません。
これらは竪穴区画としての現行基準を、増築しない独立部分でも満たす必要があります。
一方で階段室のうち直通階段として使われている部分は、竪穴部分であっても除外の対象から外れます。
同じ「竪穴部分」でも中身によって結論が反対になるため、図面で竪穴部分の種類と用途を1つずつ確認する作業を省略できません。
増築等の計画があるときほど、竪穴部分の洗い出しを設計者と一緒に行う必要があります。

思い込みで判断すると危ないんですね。
うちの建物ではどこから確認すればいいですか。

まずは確認申請の図書からです。
最後に明日からの確認手順をお伝えします。

明日からなにを確認すればよいのか

確認申請の図書とチェックリストで竪穴区画を確かめる手順
竪穴区画の扱いは、図面を確認しないと判断できません。
増築等を計画する前に、次の手順で竪穴部分を洗い出してください。
  • 確認申請の図書から建物が独立部分に区切れる建物かどうかを確認する
  • 建物内の階段室・昇降路・ダクトスペース・吹抜きなど竪穴部分をすべて洗い出す
  • 洗い出した竪穴部分が第120条又は第121条の直通階段に該当するかどうかを図面で確かめる
  • 直通階段に該当しない竪穴部分は、増築しない独立部分でも現行基準を満たしているか点検する
  • 竪穴部分の扱いに迷いがあれば、設計者や特定行政庁に増築計画の前段階で確認する
竪穴部分の種類を取り違えると、必要な防火区画の改修を見落とすおそれがあります。
古い図面しか手元に無い場合は、まず設計者や施工者に最新の状況を確認してもらいましょう。
図面と現地の突き合わせが、竪穴区画の実効性を保つ一番の近道です。

まずは竪穴部分の洗い出しからですね。
今日教えていただいた内容で図面を見直してみます。

はい、直通階段への該当有無から確かめてください。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q建物全体が1つの独立部分しかない場合、この話は関係ありますか?
A建築基準法施行令第137条の13が定める除外は、独立部分が2つ以上ある建物で増築等をする場合の緩和に関する規定です。独立部分が1つしかない建物では、この緩和自体が問題になりません。ただし増築等をする部分そのものには、通常どおり現行の防火区画の基準が適用されます。
Qエレベーターの昇降路は直通階段になり得ますか?
A直通階段は建築基準法施行令第120条・第121条が定める避難のための階段を指し、エレベーターの昇降路は該当しません。昇降路やダクトスペースは竪穴部分ではあっても直通階段には当たらないため、137条の13の除外対象から外れず、現行の竪穴区画の基準を満たす必要があります。
Q竪穴部分がどれに当たるかは誰が判断するのですか?
A竪穴部分の該当性や直通階段への該当有無は、確認申請の図書に基づいて設計者や特定行政庁が判断する事項です。防火管理者が自己判断で結論を出さず、増築等の計画段階で設計者に確認することが必要です。
Q吹抜きの部分も竪穴区画の対象になりますか?
Aはい、建築基準法施行令第112条第11項は吹抜きとなつている部分も竪穴部分に含めています。吹抜きも直通階段には該当しないため、137条の13の除外対象から外れず、増築しない独立部分でも現行の竪穴区画の基準を満たす必要があります。

まとめ

✔建築基準法第86条の7第2項は、独立部分が2つ以上ある建物で一方だけ増築等をする場合、他の独立部分に第35条・第36条などの基準を適用しないと定めている
✔ただし第36条の技術的基準のうち政令で定める防火区画はこの緩和の対象から除かれる
✔建築基準法施行令第137条の13は、その除外対象を第112条第11項から第13項までの竪穴区画と定めている
✔竪穴部分は階段の部分・昇降路の部分・ダクトスペースの部分・吹抜きなどをいう
✔竪穴部分が第120条又は第121条の直通階段に該当する場合は、除外の対象から外れ通常どおり緩和を受けられる
✔エレベーターの昇降路やダクトスペースは直通階段に該当しないため現行基準を満たす必要がある
✔増築等を計画するときは確認申請の図書で竪穴部分の種類と該当有無を洗い出す

竪穴区画だけ扱いが違う理由が、今日でよく分かりました!
図面を見直してみます。

竪穴部分の種類は図面でしっかり確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第86条の7
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第112条・第120条・第121条・第137条の13

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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