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天井設置型の屋内消火栓はなぜ長く施行令の特例扱いだったのか|降下装置の高さ基準を解説

天井の消火栓はなぜ特例扱いだったのか

ホテルや旅館の廊下を歩いていて、天井に小さなハッチがあるのに気づいたことはありませんか。
実はあれも屋内消火栓の一種で、床に降ろして使う「天井設置型」と呼ばれる仕組みです。
かつては建物ごとの特例扱いでしたが、平成25年の告示改正でようやく全国共通の基準ができました。
今回は天井設置型の屋内消火栓がなぜ特例扱いだったのか、告示は何を求めているのかを解説します

うちのホテル、廊下が狭くて壁に消火栓箱が置けへんのやけど。
天井についてる小さい扉、あれって消火栓なんかいな。

そうなんです。
あれは天井設置型の屋内消火栓で、ホースを下に降ろして使う仕組みです。

特例扱いやったって聞いたけど、うちの建物だけ特別な許可がいるってことなんかな。

平成25年に告示ができるまではそうでした。
今は全国共通の基準で堂々と設置できます。

この記事の結論
  • 天井設置型の屋内消火栓は、平成25年3月27日の消防庁告示第2号ができるまで消防法施行令第32条の特例扱いだった
  • 平成25年10月1日の施行で「簡易操作型放水用設備」として基準が本則に明記された
  • 天井に設置する場合、降下装置は床から1.8メートル以下の位置に取り付ける
  • 降下装置を操作すると、消防用ホースは床から1.5メートル以下の位置まで下りてくる
  • 表示には一人操作可・天井設置である旨・降下装置である旨の3点が欠かせない

天井に設置する消火栓は基準が変わった図解

天井設置型の屋内消火栓はなぜ長く施行令の特例扱いだったのか

狭い廊下と壁面に消火栓箱を置ける広い廊下の比較
ホテルや病院の廊下は、意外と壁面に余裕がありません。
消火栓箱を置くスペースが取れない建物のために生まれたのが、天井設置型の屋内消火栓です。
【消防予第167号(平成26年4月14日・消防庁予防課長)蓄電池設備の基準の一部を改正する件等の公布について・第六】消防法施行規則の一部を改正する省令(平成25年総務省令第21号)により、これまで消防法施行令第32条を適用して設置されていた天井設置型の屋内消火栓設備の屋内消火栓及びスプリンクラー設備の補助散水栓(以下「天井設置型の屋内消火栓設備の屋内消火栓等」という。)が本則化されたことに伴い、天井設置型の屋内消火栓設備の屋内消火栓等に用いられるボール弁についても、「屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準」(平成25年消防庁告示第2号)に規定を設けたこと。
【消防法施行令第三十二条】この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。
長らく特例任せの制度でした。
平成25年より前は、天井設置型の消火栓を置けるかどうかは建物ごとの個別判断でした。
消防長・消防署長が「この設置方法でも同等以上に安全」と認めた場合だけ、施行令第32条の特例として許可される仕組みだったのです。
全国共通の技術基準が無いため、求められる書類や審査の水準は消防本部ごとにばらつきがありました。
建物を建てるたびに個別協議が必要で、設計側にも審査側にも負担の大きい時代が続きました。

特例やったってことは、うちの建物の消火栓、実は珍しいやり方やったんかいな。

そうですね。
今の告示ができる前は、それぐらい建物ごとの判断に委ねられていました。

天井に設置できる消火栓とはどんな設備を指すのか

天井のハッチに格納された消火栓と閉じたハッチ
告示は天井設置の消火栓を「簡易操作型放水用設備」という枠組みでまとめています。
どんな設備がこの枠に入るのか、まず定義を確認しましょう。
【屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準(平成25年消防庁告示第2号)第二】放水用設備 屋内消火栓設備の屋内消火栓(スプリンクラー設備にあつては、スプリンクラー設備の補助散水栓)、消防用ホース、消防用ホース収納部及びノズルから構成される設備(放水用設備を天井に設置する場合にあつては、降下装置を含む。)であって、次に掲げるものをいう。
【消防法施行規則第十二条第一項第一号の二】屋内消火栓設備の屋内消火栓及び放水に必要な器具は、消防庁長官が定める基準に適合するものとすること
降下装置が付くかどうかが分かれ目です。
一人で操作できるタイプの消火栓のうち、ホースリールなどを天井に格納して使うものが「簡易操作型放水用設備」に含まれます。
スプリンクラー設備の補助散水栓も同じ枠組みで扱われ、天井に設置する場合はホースを下ろす降下装置が構成要素に加わります。
一方、床や壁に固定して使う通常の1号消火栓は、この天井設置のルールの対象にはなりません。
自分の建物のどの設備がこの枠に当てはまるかは、消火栓箱の位置と降下装置の有無で見分けられます。

うちの消火栓、降下装置みたいなんは付いてへんかったと思うけど。
それやったら普通の基準でええんかな。

はい。
降下装置が無ければ、この天井設置のルールは関係ありません。

降下装置には何が求められるのか

降下装置が下りる前と下りた後の様子
降下装置そのものにも、告示で細かい寸法が決められています。
実際の数値を見てみましょう。
【屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準(平成25年消防庁告示第2号)第三第六号】簡易操作型放水用設備を天井に設置する場合にあつては、次によること。(一)降下装置は、床面からの高さが1.8メートル以下の位置に設けるとともに、操作しやすい構造とし、簡易操作型放水用設備の機能に障害を与えないものであること。(二)降下装置を操作した場合に、消防用ホースを床面からの高さが1.5メートル以下の位置まで降下できる措置が講じられていること。(三)降下装置を操作した場合に、消防用ホースの延長及び放水の操作が安全に行える速度で降下するものであること。
数字は1.8メートルと1.5メートルです。
降下装置そのものは床から1.8メートル以下の高さに取り付け、誰でも手が届いて操作しやすい位置にする決まりです。
実際に操作すると、消防用ホースは床から1.5メートル以下の位置まで下りてくる仕組みが求められます。
降下の速度も安全に操作できる範囲に収める必要があり、勢いよく落ちてくる構造は認められません。
一人で15回連続の延長・放水・収納操作を行っても機能に異常が出ないことも合わせて基準になっています。

1.8メートルとか1.5メートルとか、意外と細かい数字が決まってるんやな。

手が届く高さと、無理なく引き出せる高さを両方確保するための数字なんです。

実務で見落としやすい表示はどこか

表示ラベルの有無を比較したハッチ
設置基準を満たしていても、表示が抜けていると告示違反になります。
点検のときに見落としがちな表示を確認しましょう。
【屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準(平成25年消防庁告示第2号)第十三】簡易操作型放水用設備には、次に掲げる事項を当該簡易操作型放水用設備又はその周囲の見やすい箇所に容易に消えないように表示するとともに、当該簡易操作型放水用設備の性能、点検方法及び注意事項を記載した説明書を備え付けること。(一)操作手順を示す絵表示(二)一人で放水操作が可能である旨(三)天井に設置するものである場合にはその旨 (略)天井に設置する簡易操作型放水用設備の降下装置には、降下装置である旨を、当該降下装置又はその周囲の見やすい箇所に容易に消えないように表示すること。
表示は3か所セットで確認します。
「一人で放水操作が可能である旨」「天井に設置するものである旨」「操作手順を示す絵表示」の3点は、機器本体か周囲の見やすい箇所に表示する決まりです。
これとは別に、降下装置本体にも「降下装置である旨」の表示が必要で、消火栓本体の表示と混同して省略されがちです。
説明書の備え付けも義務なので、点検時に説明書が見当たらない場合は指摘の対象になります。
経過措置の対象になった古い設備では、当時の基準のまま扱われているものも残っている点にも注意が必要です。

降下装置の表示まではさすがに見たことなかったな。

本体の表示だけ見て安心してしまう建物が多いので。
次の点検でぜひ確認してみてください。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員が天井の消火栓を点検する様子
最後に、実際の点検で確認したい手順を整理します。
特別な工具は要りません。
【屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準(平成25年消防庁告示第2号)附則第3項(経過措置)】この告示の施行の際現に存する防火対象物…における屋内消火栓設備の屋内消火栓及び放水に必要な器具、スプリンクラー設備の補助散水栓及び放水に必要な器具…のうち、改正後の屋内消火栓等の基準第三、第四…、第十一、第十二及び第十三…の規定に適合しないものに係る技術上の基準については、これらの規定にかかわらず、なお従前の例による
3つのポイントで見て回れます。
まず降下装置の取付け高さを実測し、床から1.8メートル以下に収まっているかを確認します。
次に実際に操作して、ホースが床から1.5メートル以下まで下りてくるか、速度は安全な範囲かを見ます。
最後に「一人操作可」「天井設置である旨」「降下装置である旨」の3つの表示と説明書の備え付けを確認します。
新しい建物か経過措置の対象かで基準の細部が変わることもあるため、疑問があれば所轄消防署に確認するのが確実です。

今度の点検、天井の消火栓も一通りチェックしてみるわ。

高さと表示さえ押さえれば難しくありません。
気になる点があればいつでもご相談ください。

よくある質問

Q天井設置型の屋内消火栓はどんな建物に多いのか?
Aホテルや旅館など、廊下の壁に消火栓箱を置くスペースが取りにくい建物でよく選ばれています。
Q昔からある壁面の消火栓と法律上の扱いは同じか?
Aいいえ。平成25年の告示改正までは消防法施行令第32条の特例基準として個別に認められる扱いでした。
Q降下装置の高さはどうやって確認すればよいか?
A取付け高さが床から1.8メートル以下か、操作後にホースが1.5メートル以下まで下りるかを実測して確認します。
Q表示が見当たらない天井設置型の消火栓を見つけたらどうすればよいか?
A一人操作可・天井設置である旨・降下装置である旨の3点表示と説明書の有無を確認し、欠けていれば所轄消防署に相談してください。

まとめ

天井設置型の屋内消火栓は最初からあった設備ではなく、特例扱いから始まった仕組みである
消防法施行令第32条は、同等以上の効果があれば個別に認める特例基準である
平成25年3月27日の消防庁告示第2号で全国共通の要件が明文化された
施行は平成25年10月1日で、天井設置の消火栓は簡易操作型放水用設備に分類される
降下装置は床から1.8メートル以下に設け、操作後は1.5メートル以下まで下りる構造とする
表示には一人操作可・天井設置である旨・降下装置である旨を必ず掲示する
経過措置の対象になっている古い設備は、なお従前の例によることがある

特例やった歴史があるって知ると、うちの天井の消火栓も見る目が変わるわ。

高さと表示の2点を確認するだけでも安心感が変わります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第167号(平成26年4月14日・消防庁予防課長)「蓄電池設備の基準の一部を改正する件等の公布について」第六
  • 屋内消火栓設備の屋内消火栓等の基準(平成25年3月27日消防庁告示第2号、最終改正 令和元年6月28日消防庁告示第2号)第二・第三・第十三・附則
  • 消防法施行令第32条・消防法施行規則第12条第1項第1号の2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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