消防用設備等の点検は、設置基準どおりに動くかを確かめるだけではありません。
報告書の提出期限や、他の設備と点検範囲が重なったときの連絡調整など、点検要領が定める細かい手順も少なくありません。
中には「今はもう設置されていない設備」が、今でも点検票の項目に残っていることもあります。
この記事では、点検実務の中でうっかり見落とされがちな意外なルールを5つ整理します。
点検は設備が正常に動くかどうかだけ確認すればいいと思っていました。
報告書の出し方にも決まりがあるんですか。
はい、提出の期限や相手にも点検要領で決まりがあります。
順番に見ていきましょう。
今はもう無い設備が点検票に残っているというのも気になります。
はい、点検票の様式が今も引き継いでいる項目があるんです。
今日はまとめてご説明します。
- 点検結果報告書は、特定防火対象物は1年に1回、それ以外は3年に1回、点検終了後おおむね15日以内に消防長又は消防署長へ報告する。
- 点検の対象範囲が他の消防用設備等と重複する場合は、機能維持を万全にするため、他の設備の点検実施者と連絡を取り合って点検を行う。
- ハロゲン化物消火器(ハロン消火器)の外形点検では、「注意書きシール」の貼付の有無を確認し、点検票の備考欄に記載する。
- 緩降機や避難ロープは、ロープと着用具の緊結部、調速機の連結部をそれぞれ独立した点検項目として確認する。
- 消防機関へ通報する火災報知設備には、火災通報装置のほかに発信機のみの旧式区分(通称M型)も点検票の項目に残っている。
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目次
点検結果報告書はいつまでに消防署へ出せばよいのか

結果は、防火対象物の区分ごとに決められた期間ごとに消防署へ報告する必要があります。
報告書には機器点検・総合点検の両方を記載した点検票を添付し、点検要領は点検終了後おおむね15日以内に報告することを目安としています。
報告を怠ると、消防法上は指導や罰則の対象になり得るため、期限が近づいたら早めに準備を始めることが大切です。
特殊消防用設備等の場合は、設備等設置維持計画に定める点検の期間ごとに報告する扱いになります。
うちの建物、1年ごとと3年ごとのどちらか毎回確認していませんでした。
用途区分によって決まっているので、まずは建物の区分を確認しましょう。
期限の管理も忘れずに。
点検の対象範囲が他の消防用設備等と重なったらどうするのか

ただし、ある設備の部品が別の設備としても機能している場合は、点検の進め方に注意が必要です。
スプリンクラー設備の感知装置に自動火災報知設備の感知器を共用している建物では、片方だけを見て終わりにすると、もう一方の設備の点検漏れにつながりかねません。
点検実施者が別々の会社・担当者であっても、どちらがいつ何を確認したかを共有しておくことが、設備全体の機能維持につながります。
根拠は平成14年6月11日消防予第173号「消防用設備等の点検に係る運用について」に示されています。
同じ感知器が2つの設備で使われていることがあるんですね。
そうなんです。
点検担当者どうしの連絡調整がポイントになります。
ハロゲン化物消火器の点検でなぜ「注意書きシール」を確認するのか

ハロン消火器は、消火薬剤そのものが特定の規制対象物質であることから、注意を促すシールが本体に貼られていることが前提になっています。
銘板がない消火器や型式失効の特例期間を過ぎた消火器は廃棄が原則ですが、注意書きシールの有無はそれとは別の確認項目として点検票に残します。
シールが見当たらない場合でも、直ちに交換が必要というわけではなく、所轄消防署や点検資格者に確認するのが実務上の進め方です。
消火器のシールまで点検票に書くなんて知りませんでした。
ハロン消火器特有の確認項目です。
見かけたら備考欄の記載も確認してみてください。
緩降機や避難ロープはなぜ「緊結部」まで個別に点検するのか

点検要領は、部品ごとの状態だけでなく「つなぎ目」も別の項目として確認するよう定めています。
ロープの損傷・腐食・著しい摩耗、着用具の状態を確認するのはもちろんですが、ロープと着用具をつなぐ緊結部が緩みなく堅固であるかどうかは別の判定項目です。
同様に、ロープと調速機をつなぐ連結部も独立して確認します。
降下時に身体を支える力が集中する部分だからこそ、部品単体の点検とつなぎ目の点検を分けている、と理解すると実務上の抜け漏れを防げます。
ロープと着用具は別々に見ていましたが、つなぎ目は見落としていたかもしれません。
緊結部と連結部は、部品とは別の判定項目です。
次の点検ではそこも確認してみてください。
消防機関へ通報する火災報知設備「M型」はなぜ今も点検票に残っているのか

一方は今も多くの建物で使われていますが、もう一方は実務上ほぼ姿を消しています。
前者の火災通報装置は防災センター等に設置され、現在も広く使われている設備です。
後者は発信機・標識を単独で備える旧式の区分で、点検実務の記載要領では「現在設置されている建物はない」と注記されています。
点検票の様式上は今も項目として残っているため、古い様式をそのまま使っていると「どちらの区分か」で迷うことがあります。実務上は、消防機関へ通報する火災報知設備はほぼ火災通報装置として整理して差し支えありません。
M型という設備、名前は聞いたことがありますが実物は見たことがありません。
はい、今は火災通報装置が実質的な標準です。
様式上の名残として覚えておくとよいでしょう。
よくある質問
まとめ
点検票には、意外と細かいルールが残っているんですね。
報告の期限や備考欄の記載、次の点検では気をつけてみます!
報告書の期限や備考欄も、今日の内容を参考に確認してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第17条の3の3
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第23条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第25条、第27条、第31条の6
- 消防用設備等の点検要領(消防庁通知) 第1 消火器具、第13 消防機関へ通報する火災報知設備、第15 避難器具
- 消防用設備等の点検に係る運用について(平成14年6月11日消防予第173号)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。点検要領や関連法令は改正されることがあります。個別の判断は所轄消防署または専門機関にご確認ください。





