BLOG

特例容積率適用地区では敷地ごとの容積率の限度をなぜ指定で定め直せるのか|建築基準法第57条の2が定める指定の仕組みを解説

赤れんがの駅舎の奥に高層のオフィスビルが立ち並ぶ街並みの写真

同じ地区の中で、低い建物と高い建物が隣り合っていると、容積率がどう決まっているのかが気になります。
建築基準法には、特例容積率適用地区内の二以上の敷地について、敷地ごとの容積率の限度を特定行政庁の指定で定め直す仕組みがあります。
ただし、誰でも指定を受けられるわけではなく、申請の手続と要件が決まっています。
今回は建築基準法第57条の2が定める特例容積率の指定について、申請できる人と要件と効力を、防火管理者が押さえておきたい点とあわせて解説します。

敷地ごとの容積率の限度を、あとから定め直せる仕組みがあると聞きました。
どんな条件があるのでしょうか。

建築基準法第57条の2に、特例容積率の指定が定められています。
申請と要件と効力を、順に見ていきましょう。

指定を受ければ、どの敷地でも自由に容積率を決められるのでしょうか。
防火の面で気にしておく点もありますか。

条文には、特定行政庁が指定するための要件が書かれています。
防火管理の面で確かめたい点もお伝えします。

この記事の結論
  • 第57条の2は、特例容積率適用地区内の二以上の敷地について、特定行政庁が敷地ごとの特例容積率の限度を指定できると定めています。
  • 申請できるのは、敷地の所有権か借地権を有する者などで、政令で定める利害関係者の同意も必要です。
  • 指定の要件は、容積率の合計が基準の合計以下であること、現に存する建築物の容積率以上であること、適正かつ合理的な利用形態であることです。
  • 指定は公告によって効力を生じ、公告された特例容積率の限度が第52条第1項各号の数値とみなされます。
  • この条文は建築基準法の容積率の話で、消防法令の基準を緩めるものではありません。

▼

特例容積率適用地区で敷地ごとの容積率の限度を指定で定め直す仕組みを示す図解

特例容積率適用地区の敷地は容積率の限度をどう定め直せるのか

低い建物の敷地と高い塔の敷地を矢印で結んだイラスト
第57条の2第1項が、この仕組みの入口です。
条文は、対象になる敷地と、申請できる人、申請先を書いています。
(建築基準法第五十七条の二第一項 抜粋)特例容積率適用地区内の二以上の敷地(略)に係る土地について所有権若しくは建築物の所有を目的とする地上権若しくは賃借権(略)を有する者又はこれらの者の同意を得た者は、一人で、又は数人が共同して、特定行政庁に対し、国土交通省令で定めるところにより、当該二以上の敷地(略)のそれぞれに適用される特別の容積率(略)の限度の指定を申請することができる。
第57条の2第1項は、特例容積率適用地区内の二以上の敷地について、敷地ごとの特別の容積率の限度の指定を特定行政庁に申請できると定めています。
この特別の容積率が、条文でいう特例容積率で、指定の対象になる敷地は特例敷地と呼ばれます。
申請できるのは、その土地について所有権、地上権、賃借権を有する者と、その者の同意を得た者です。
一人で申請することも、数人が共同して申請することもできます。
対象は二以上の敷地と定められていて、一つの敷地だけを対象にした規定はありません。

敷地ごとの限度を、指定で定め直すんですね。
申請するときに、ほかの人の同意は要らないのでしょうか。

第2項に、利害関係者の同意が定められています。
次に、その中身を見ましょう。

特例容積率の指定を申請するときは誰の同意が必要なのか

申請書と印鑑と書類の束のイラスト
第2項は、申請者以外の利害関係者の同意を求めています。
利害関係者の範囲は、施行令第135条の23が決めています。
(建築基準法第五十七条の二第二項)前項の規定による申請をしようとする者は、申請者及び同項の規定による同意をした者以外に当該申請に係る特例敷地について政令で定める利害関係を有する者があるときは、あらかじめ、これらの者の同意を得なければならない。
(建築基準法施行令第百三十五条の二十三)法第五十七条の二第二項の政令で定める利害関係を有する者は、所有権、対抗要件を備えた借地権(略)又は登記した先取特権、質権若しくは抵当権を有する者及びこれらの権利に関する仮登記、これらの権利に関する差押えの登記又はその土地に関する買戻しの特約の登記の登記名義人とする。
申請者と同意した人以外に、政令で定める利害関係を有する者がいるときは、あらかじめその者の同意を得なければなりません。
施行令第135条の23が挙げる利害関係者は、所有権、対抗要件を備えた借地権を有する者と、登記した先取特権、質権、抵当権を有する者です。
これらの権利に関する仮登記、差押えの登記、その土地に関する買戻しの特約の登記の登記名義人も含まれます。
同意を得るのは、申請よりあらかじめとされていて、申請したあとの手続ではありません。
同意の取り方や書類は、特定行政庁の窓口で確認する必要があります。

申請の前に、利害関係のある人の同意が要るんですね。
指定は、どんな基準で決まるのでしょうか。

指定をするのは特定行政庁です。
第3項の要件を、次に見ましょう。

特定行政庁はどんな要件で特例容積率を指定するのか

天秤に載った二つの街区の模型とチェックシートのイラスト
第3項は、特定行政庁が指定をする要件を三つの号で定めています。
三つの号のいずれにも該当すると認めるときに、指定をするとされています。
(建築基準法第五十七条の二第三項 抜粋)特定行政庁は、第一項の規定による申請が次の各号に掲げる要件のいずれにも該当すると認めるときは、当該申請に基づき、特例敷地のそれぞれに適用される特例容積率の限度を指定するものとする。
(第一号)申請に係るそれぞれの特例敷地の敷地面積に申請に係るそれぞれの特例容積率の限度を乗じて得た数値の合計が、当該それぞれの特例敷地の敷地面積に第五十二条第一項各号(略)の規定によるそれぞれの建築物の容積率(略)の限度を乗じて得た数値の合計以下であること。
(第二号)申請に係るそれぞれの特例容積率の限度が、申請に係るそれぞれの特例敷地内に現に存する建築物の容積率又は現に建築の工事中の建築物の計画上の容積率以上であること。
(第三号)申請に係るそれぞれの特例容積率の限度が、申請に係るそれぞれの特例敷地における建築物の利用上の必要性、周囲の状況等を考慮して、当該それぞれの特例敷地にふさわしい容積を備えた建築物が建築されることにより当該それぞれの特例敷地の土地が適正かつ合理的な利用形態となるよう定められていること。この場合において、申請に係る特例容積率の限度のうち第五十二条第一項及び第三項から第八項までの規定による限度を超えるものにあつては、当該特例容積率の限度に適合して建築される建築物が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないものとなるよう定められていること。
第3項の要件は、容積率の合計が基準の合計以下であること、現に存する建築物の容積率以上であること、適正かつ合理的な利用形態であることの三つです。
第1号は、敷地面積に特例容積率の限度を乗じた数値の合計が、第52条第1項各号の容積率で計算した合計以下であることを求めています。
たとえば敷地面積が同じで基準の容積率も同じ二つの敷地なら、一方の限度を上げるぶん、もう一方の限度を下げて合計を収める形になります。
第2号は、特例容積率の限度が、現に存する建築物の容積率か、工事中の建築物の計画上の容積率以上であることを求めています。
第3号は、適正かつ合理的な利用形態になるよう定められていることを求め、第52条第1項及び第3項から第8項までの限度を超える部分は、交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないものとなるよう定められていることも求めています。

合計を守ったうえで、敷地ごとに数字を割り振るんですね。
指定されたら、いつから効力が出るのでしょうか。

指定は、公告によって効力を生じます。
第4項から第7項を、次に見ましょう。

指定はいつ効力を生じ指定後の建築物にはどう適用されるのか

公示板と敷地図を広げた書類のイラスト
指定をしたあとの手続と効力は、第4項から第7項が定めています。
公告と縦覧、効力の発生時期、第52条の適用の仕方が書かれています。
(建築基準法第五十七条の二第四項 抜粋)特定行政庁は、前項の規定による指定をしたときは、遅滞なく、特例容積率の限度、特例敷地の位置その他国土交通省令で定める事項を公告するとともに、国土交通省令で定める事項を表示した図書をその事務所に備えて、一般の縦覧に供さなければならない。
(第五項)第三項の規定による指定は、前項の規定による公告によつて、その効力を生ずる。
(第六項)第四項の規定により特例容積率の限度が公告されたときは、当該特例敷地内の建築物については、当該特例容積率の限度を第五十二条第一項各号に掲げる数値とみなして、同条の規定を適用する。
指定は公告によって効力を生じ、公告された特例容積率の限度が、第52条第1項各号に掲げる数値とみなされます。
特定行政庁は、指定をしたら遅滞なく、特例容積率の限度と特例敷地の位置などを公告し、図書を事務所に備えて一般の縦覧に供します。
第5項は、指定の効力が公告によって生じると定めていて、指定しただけでは効力が生じません。
第6項によって、特例敷地内の建築物には、公告された限度を第52条第1項各号の数値とみなして同条が適用されます。
第7項は、公告された特例敷地について新しい指定をしたときは、従前の指定は新しい指定の公告の日から将来に向かって効力を失うと定めています。

公告と縦覧があって、そこで確かめられるんですね。
指定が取り消されることや、高さの決まりもあるのでしょうか。

第57条の3に取消し、第57条の4に高さの限度が定められています。
あわせて、確かめておきたい点も見ましょう。

指定の取消しや高さの限度を踏まえて防火管理者はなにを確かめておくとよいのか

高さの限度を示す横棒つきの塔の模型と書類のイラスト
指定は、あとから取り消されることがあり、高さの限度も別に定められます。
条文が決めているのは建築基準法の容積率と高さの話で、消防法令の基準の話ではありません。
(建築基準法第五十七条の三第一項)前条第四項の規定により公告された特例敷地である土地について所有権又は借地権を有する者は、その全員の合意により、同条第三項の指定の取消しを特定行政庁に申請することができる。
(建築基準法第五十七条の四第一項)特例容積率適用地区内においては、建築物の高さは、特例容積率適用地区に関する都市計画において建築物の高さの最高限度が定められたときは、当該最高限度以下でなければならない。ただし、特定行政庁が用途上又は構造上やむを得ないと認めて許可したものについては、この限りでない。
指定の取消しは、所有権又は借地権を有する者の全員の合意による申請で行われ、特例容積率適用地区内の建築物の高さは、都市計画で最高限度が定められたときはその限度以下でなければなりません。
第57条の3第2項は、特定行政庁が、現に存する建築物などの容積率が第52条第1項から第9項までの限度以下であるときなどに、取消しをするものとしています。
取消しの効力は、公告によって生じます。
第57条の4のただし書では、特定行政庁が用途上又は構造上やむを得ないと認めて許可したものは、高さの最高限度の対象外とされています。
指定も取消しも高さの限度も、どれも建築基準法の話なので、消防法令の判断は別に確かめる必要があります。
明日から次の点を確認してください。
  • 建物の敷地が特例容積率適用地区内か、そして特例容積率の指定が公告されているかを、特定行政庁の窓口で確認する。
  • 公告された特例容積率の限度と特例敷地の位置を、縦覧に供された図書などで確認して記録する。
  • 増築や用途変更で延べ面積が変わるときは、限度に収まるかを建築士や特定行政庁に相談する。
  • 指定の取消しや新しい指定があると限度が変わるので、公告の変更に注意する。
  • 消防用設備等の判断は、所轄消防署へ相談する。
建築基準法と消防法は別々の法律です。
容積率の話と消防の話を混同しないように、それぞれの窓口へ確かめておきましょう。

容積率の話と消防の話は、分けて確かめるんですね。
まず、公告された限度と敷地の位置を確認します。

限度と敷地の位置が分かれば、増築のときの相談も早くなります。
相談は、特定行政庁と消防の両方の窓口にしておくと安心です。

よくある質問

Q特例容積率適用地区内の敷地なら、申請すれば必ず指定されますか?
Aいいえ、第3項は、要件のいずれにも該当すると特定行政庁が認めるときに指定をするものと定めています。
Q敷地が一つだけでも、特例容積率の指定を申請できますか?
A第1項が対象にしているのは、特例容積率適用地区内の二以上の敷地を単位に定められていて、一つの敷地だけを対象にした規定はありません。
Q指定を受けると、容積率の限度は元の数値から変わりますか?
A公告されると、第6項によって、特例容積率の限度が第52条第1項各号に掲げる数値とみなされ、同条が適用されます。
Q特例容積率の指定を受けた建物は、消防法令の基準も変わりますか?
A第6項が読み替えるのは、第52条の数値です。消防法令の判断は、消防法令の条文で確かめます。

まとめ

✔建築基準法第57条の2は、特例容積率適用地区内の二以上の敷地について、特定行政庁が特例容積率の限度を指定できると定める条文です。
✔申請できるのは、敷地の所有権や借地権を有する者などで、政令で定める利害関係者の同意をあらかじめ得る必要があります。
✔指定の要件は、容積率の合計が基準の合計以下であること、現に存する建築物の容積率以上であること、適正かつ合理的な利用形態であることです。
✔指定は公告によって効力を生じ、公告された限度が第52条第1項各号の数値とみなされます。
✔指定の取消しは、所有権又は借地権を有する者の全員の合意による申請で行われます。
✔この条文が定めるのは建築基準法の容積率の話であって、消防法令の基準を緩めるものではありません。
✔防火管理者は、公告された限度と敷地の位置を確認して記録し、消防法令の判断は所轄消防署に相談します。

容積率の限度を指定で定め直すという仕組みなんですね。
この記事の内容を管理者にも共有します!

公告された限度が分かれば、増築の相談も進めやすくなります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第五十七条の二・第五十七条の三・第五十七条の四(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百三十五条の二十三(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。指定の手続や運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
赤れんがの駅舎の奥に高層のオフィスビルが立ち並ぶ街並みの写真
同じ地区の中で、低い建物と高い建物が隣り合っていると、容積率がどう決まっているのかが気になります。 建築基準法には、特例容積率適用地区内の二以上の敷地について、敷地ごとの容積率の限度を特定行政庁の指定で定め直す仕組みがあ...
リクルート 採用情報はこちら →
採用ページ 一緒に働く仲間を募集中 → フランチャイズ (株)防災屋と一緒に開業する → 協力業者 協力業者さん募集中 →