気動車の車庫、アーケードでつながる商店街、一部だけ指定された重要文化財の建物。
昭和40年代の複数の通達が、それぞれ異なる建物の実態を防火対象物としてどう扱うかを示しています。
建物の見た目や名前は様々でも、問われているのは同じことです。
判定の決め手は権原の及ぶ範囲と実際の使われ方です。
気動車の車庫って、車庫としか思ってなかったんですけど防火対象物になるんですか。
実は使われ方を見ると答えが出ます。
アーケードでつながった商店街は1棟として扱われるんですか。
それも含めて5つの実例を順に見ていきます。
- 気動車の車庫や整備を行う建物は令別表第1(12)項イの作業場に該当します
- アーケードで接続された商店街は棟ごとに個別の防火対象物として規制されます
- 一部だけ重要文化財に指定された建物は指定部分以外も(17)項に含めて運用されます
- 穀物乾燥設備(カントリーエレベーター)は令別表第1(14)項に該当します
- 壁のない作業用の建物は(15)項に該当し自動火災報知設備の設置が必要です
▼
目次
気動車の車庫や整備を行う建物は防火対象物として何項になるか

車体の修繕や検査という作業実態が判断の決め手になります。
詰所や事務室を含む3階建ての本体建物と、車体の修繕・検査を行う車庫が一体の施設として計画されていますが、令別表第1(12)項イの作業場に該当すると整理されました。乗り物を保管するだけの車庫ではなく、修繕・検査という作業が行われる場所だという実態が判断の軸になっています。
車両や機械の修繕・検査を行う建物を管理しているなら、単なる保管施設と思い込まず、作業実態から令別表第1のどの項にあたるかを確認してください。
車庫という名前だけでは判断できないんですね。
作業の実態から確認してください。
アーケードでつながった商店街は1棟とみなされるか

では、屋根だけのアーケードでつながる商店街はどうなるのでしょうか。
渡り廊下で接続された建物は一棟とみなされる場合がありますが、商店街のアーケードは同じ扱いにはなりません。各店舗の所有権が分譲によって分かれている以上、見た目が一体の建築物のように連なっていても、棟の数はアーケードの接続を考慮せずに算定されます。
アーケードで連なる商店街に店舗を構えているなら、隣の店舗と一体の防火対象物として扱われるという思い込みを外し、自分の店舗単位で消防法第8条・第17条の義務を確認してください。
渡り廊下とアーケードで扱いが逆になるんですね。
自分の店舗単位で
義務を確認してください。
一部だけ重要文化財に指定された建物はどう扱われるか

指定されていない部分は(17)項の防火対象物から外れるのでしょうか。
文言どおりに読めば、重要文化財として指定された部分だけが(17)項の防火対象物ということになりそうですが、それでは規制の実効性が保てません。そこで規定の趣旨に立ち返り、住居や書院など指定されていない部分も含めて建物全体を(17)項として運用することが適当だと整理されました。
史跡・重要文化財の一部だけが指定されている建物を管理しているなら、指定範囲の外だからといって対象外にはならないことを前提に確認してください。
指定されていない部分は対象外だと思っていました。
建物全体を
(17)項に含めて確認してください。
穀物乾燥設備(カントリーエレベーター)は何項に該当するか

倉庫なのか、それとも前各項に該当しない事業所なのか、判断が分かれそうな設備です。
籾摺りという加工の工程を含んでいても、この施設の主目的は穀物の乾燥と貯蔵にあり、令別表第1(14)項の倉庫に整理されました。地上6階という規模の大きさや加工工程の有無ではなく、貯蔵という機能が判断の軸になっています。
穀物や資材の乾燥・貯蔵設備を計画しているなら、加工工程が一部含まれているという理由だけで事業所扱いになると考えず、施設全体の主目的から令別表第1の項を確認してください。
籾摺りもするから事業所かと思いました。
主目的から確認してください。
壁のない作業用の建物は何項に該当するか

壁がないことは、消防用設備等の設置義務を免除する理由になるのでしょうか。
下り壁を除けば壁のない開放的な建物ですが、令別表第1(15)項に該当し、自動火災報知設備の設置は必要と判断されました。ただし感知器をどこにでも設置してよいわけではなく、上屋や庇部分など外部の気流が流通する場所を避けて設置することが求められています。
壁のない荷捌き場や作業場を計画しているなら、壁がないことを理由に設置を省略できると考えず、感知器の設置場所まで含めて確認してください。
壁がないなら設置しなくていいと思っていました。
感知器の
設置場所まで確認してください。
よくある質問
まとめ
建物の名前じゃなくて、実際にどう使われているかを見るんですね。
勉強になりました。
権原の及ぶ範囲と実際の使われ方。
この2つを確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っています。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 気動車の車庫等の建物の用途について(昭和41年7月11日 自消丙予発第79号 予防課長から岐阜県総務部長あて回答)
- 防火対象物の棟の解釈及び消防用設備等の技術上の疑義について(昭和41年8月27日 自消丙予発第114号 消防庁予防課長から福岡県民生部長あて回答)
- 消防法施行令別表第1(17)項の防火対象物の解釈について(昭和42年8月3日 自消丙予発第61号 予防課長から京都市消防局長あて回答)
- 穀物乾燥設備(カントリーエレベーター)は消防法施行令別表第1に掲げる防火対象物のいずれに該当するか(昭和47年10月30日 消防予第152号 予防課長から香川県あて回答)
- 建築予定建物の防火対象物としての分類及び消防用設備に関する疑義について(昭和47年10月30日 消防予第153号 予防課長から長野県あて回答)
- 消防法施行令別表第1
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した回答はそれぞれの発出当時のもので、通知番号や機関の名称等は当時のものです。その後の改正により運用が変わっている場合があります。個別の事案についての適用は、所轄消防署にご確認ください。





