平成29年12月、さいたま市で特殊浴場の火災が起き、消防庁は翌日に消防予第385号を出しました。
通知は、3階建て以上の特殊浴場を対象に、立入検査と防火対策の注意喚起を求めています。
出火原因は通知の時点で特定されておらず、通知は類似の火災を防ぐための当面の対応を示したものです。
この記事では、通知の対象と求めている内容、読むときに見落としやすい点を、消防庁の通知をもとに解説します。
特殊浴場の火災を受けて、消防庁から通知が出たと聞きました。
私の建物にも関係があるのでしょうか。
通知の対象になる建物には条件があります。
まず対象の条件と求めている内容を順に見ていきましょう。
条件に当てはまるかどうかが大事なのですね。
はい。
当てはまらない建物でも、避難の備えの点検には役立ちます。
- 消防庁は平成29年12月18日の消防予第385号で、風俗営業を営む特殊浴場の防火対策に係る注意喚起等の実施を求めました。
- 対象は、(9)項イ(個室付浴場業に限る)または(16)項イで、3階建て以上かつ、2階以上の無窓階に浴場の用途の部分がある建物です。
- 求めているのは、消防法令違反の是正の徹底と、避難施設の管理・訓練・出火防止と放火防止の注意喚起です。
- 防火管理の義務の対象でない建物には、管理的または監督的な地位にある者へ直接、注意喚起を図るとされています。
- 通知は当面の対応を示したもので、建築基準法令への適合が疑われる場合は建築部局と連携するとされています。
▼
目次
特殊浴場の火災を受けて消防庁はなぜ通知を出したのか

消防庁は翌18日に、全国の消防機関へ通知を出しました。
12月17日に埼玉県さいたま市で発生した特殊浴場の火災では、これまでのところ、死者4名、負傷者8名の被害が発生しています。(略)
現時点で出火原因等は特定されていませんが、3階建て建物の主に2階及び3階が大きく焼損し、煙等が充満すること等により、逃げ遅れて死傷した可能性が考えられます。
このような状況を踏まえ、類似の火災による被害の発生を防止するため、(略)防火対策に係る注意喚起を行い、その徹底を図られますようお願いします。
通知の別紙は、消防庁災害対策室がまとめた火災の第3報です。
これによると、火元は鉄骨造の3階建てで、延べ面積は約170平方メートルでした。
消防用設備等は、消火器、自動火災報知設備、誘導灯、避難器具(任意設置)が設置されていたと記されています。
同じ日には国土交通省住宅局建築指導課長も、建築物への指導を求める通知を出しました。
(九)
イ 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの
ロ イに掲げる公衆浴場以外の公衆浴場
通知の時点では出火原因は特定されていないため、通知は原因に触れず、被害を大きくした状況への備えを示しています。
通知は、火災の原因を示したものではないのですね。
はい。
類似の火災を防ぐための、当面の対応を示したものです。
通知の対象になる防火対象物はどんな建物なのか

1つでも欠けると、通知の対象にはなりません。
以下の条件を全て満たす防火対象物とする。
消防法施行令別表第1(9)項イ(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第6項第1号に該当するものに限る。以下同じ。)又は(16)項イに掲げる防火対象物(同表(16)項イに掲げる防火対象物にあっては、同表(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)であること。
3階建て以上の建築物であること。
2階以上の階であって、令第10条第1項第5号に規定する無窓階である階に令別表第1(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存すること。
1つ目は用途で、(9)項イ(個室付浴場業に限る)そのもの、または浴場の部分を含む(16)項イです。
(16)項イは、(9)項イなどが入っている複合用途防火対象物を指します。
2つ目は階数で、3階建て以上の建築物です。
3つ目は、2階以上の階にある無窓階に、浴場の用途の部分があることです。
前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物の地階(略)、無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの
| 条件 | 通知が示す内容 |
|---|---|
| 用途 | 令別表第一(9)項イ(風営法第2条第6項第1号に該当するものに限る)、または(9)項イの部分を含む(16)項イ |
| 階数 | 3階建て以上の建築物 |
| 無窓階 | 2階以上の階で、令第10条第1項第5号の無窓階に(9)項イの用途の部分がある |
未是正の違反を把握しているものや、長期間立入検査をしていないものを優先するなど、計画的に指導するよう求めています。
うちの建物が対象かどうかは、何を見れば分かりますか。
用途と階数と、無窓階の有無の3点です。
判断に迷うときは、所轄の消防署に確かめてください。
通知は消防機関と事業者に何を求めているのか

1つは違反の是正、もう1つは防火対策の注意喚起です。
上記1の防火対象物において、消防用設備等の設置状況や消防用設備等の点検等に係る消防法令違反がある場合は、火災発生時に大きく被害が拡大することが予想されることから、違反が認められる場合にあっては、重点的に改善指導を図るとともに、必要に応じ、違反処理基準に基づく所要の措置を講ずること。
対象は、消防用設備等の設置状況や、点検に係る違反です。
違反が認められれば、重点的に改善指導し、必要に応じて違反処理基準に基づく措置を講じるとされています。
第2の柱は、避難施設の自主点検や訓練を促す注意喚起で、次の表の3つの内容です。
階段等の避難施設や避難器具の避難空地及びその付近に避難の支障になる物が放置されないよう適切に管理すること。また、階段室の防火戸についてその閉鎖の支障になる物が放置されないよう適切に管理すること。
| 区分 | 通知が求める内容 |
|---|---|
| 避難施設の管理 | 階段や避難器具の付近に物を放置しない。階段室の防火戸の閉鎖の支障になる物も置かない |
| 使用方法の確認と訓練 | 消火器や避難器具の使い方を再確認し、必要に応じて従業員の訓練を行う。利用客への周知や避難誘導の方法も再確認する |
| 出火防止と放火防止 | たばこの吸い殻の適切な始末や火気使用設備・器具の管理を行う。建物周辺に燃えやすい物を放置しない |
違反の是正と、避難の備えの点検が中心なのですね。
はい。
通知は、従業員による訓練まで含めて求めています。
通知を読むときに見落としやすい点はどこか

特に、次の4つを押さえておきましょう。
法第8条に基づく防火管理の義務の対象となっていないものに対する上記2に掲げる当面の防火対策の更なる徹底に際しては、当該防火対策に係る必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある者に対し、直接、必要な注意喚起等を図られたいこと。
法第八条第一項の政令で定める防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする。(略)
別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物(略)で、収容人員が三十人以上のもの
第1に、通知の(9)項イは風営法に該当するものに限られ、一般の公衆浴場やサウナは通知の条件に含まれません。
第2に、収容人員が30人未満の建物は、防火管理者の選任義務の対象ではありません。
それでも通知の対象から外れるわけではなく、管理的または監督的な地位にある者へ直接、注意喚起を図るとされています。
第3に、設備の設置義務は延べ面積や収容人員で変わり、面積が小さくても義務が生じる場合があります。
第4に、通知は「当面の」対応を示したもので、建築基準法令に適合しない可能性があれば建築部局と連携するとされています。
(略)別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの
延べ面積が小さくても、直通階段が足りなければ自動火災報知設備が必要になります。
(9)項イの建物に関する主な設備の基準は、次の表のとおりです。
| 項目 | (9)項イの建物の基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 消火器具 | 延べ面積150平方メートル以上。無窓階や3階以上の階は床面積50平方メートル以上 | 令第10条第1項第2号イ・第5号 |
| 自動火災報知設備 | 延べ面積200平方メートル以上。避難階以外の階から直通階段が2以上ない場合は面積を問わない | 令第21条第1項第2号・第7号 |
| 非常警報設備 | 収容人員20人以上(非常ベル、自動式サイレン又は放送設備) | 令第24条第2項第1号 |
| 防火管理者 | 収容人員30人以上で選任が必要 | 令第1条の2第3項第1号ロ |
小さな建物でも、設備が必要になることがあるのですね。
はい。
面積だけで判断しないことが大切です。
明日から避難の備えをどう点検すればよいのか

対象に当てはまる建物でなくても、避難の備えを点検する手がかりになります。
消火器や避難器具等の消防用設備等の使用方法について再確認するとともに、必要に応じ、従業員による訓練を実施すること。また、火災発生時における利用客等への周知や避難誘導の方法について再確認するとともに、必要に応じ、従業員による訓練を実施すること。
通知は、避難施設や避難器具の付近と、階段室の防火戸の閉鎖の支障になる物を置かないよう求めています。
消防用設備等の使用方法や、利用客への周知・避難誘導の方法を従業員が知っているかも確かめます。
次の5点を、自分の建物に当てはめて確認してみてください。
- 階段や避難器具の付近、階段室の防火戸の前に、物が置かれていないか確かめる
- 消火器や避難器具の使い方を、従業員が説明できるか確かめる
- 火災のときの利用客への周知と避難誘導の方法を、従業員へ再確認する
- たばこの吸い殻の始末や火気使用設備・器具の管理、建物周辺の燃えやすい物を見直す
- 消防用設備等の設置と点検に違反がないか、点検結果報告書と現場を見比べる
まず階段まわりに物が置かれていないか、見に行ってみます。
お願いします。
無窓階や3階以上の階は、とくに念入りにご覧ください。
よくある質問
まとめ
階段まわりと、消火器の使い方を従業員と確かめてみます!
防火管理や避難の備えの点検も、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「風俗営業を営む特殊浴場の防火対策に係る注意喚起等の実施について」(平成29年12月18日 消防予第385号 消防庁予防課長通知)
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条・第17条、消防法施行令(昭和36年政令第37号)第1条の2・第10条・第21条・第24条・別表第一、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の3、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条 e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





