不活性ガス消火設備は、自動火災報知設備の感知器と連動して起動する仕組みを持っています。
そのため、感知器に試験器を当てるだけの点検でも、切替装置の位置や容器弁開放装置の取り外しを決めておかなければなりません。
この記事では、点検要領が求める事前の措置を点検基準と点検要領から整理します。
感知器を試験するだけなら、ガスは出ないのではないですか。
自動式の起動装置は、感知器の作動と連動して起動する決まりです。
点検要領は、そこを手動側に切り替えるよう定めています。
点検の前に、何をしておけばよいのでしょうか。
切替装置を手動にし、容器弁開放装置を取り外すのが基本です。
順番に見ていきましょう。
- 自動式の起動装置は、自動火災報知設備の感知器の作動と連動して起動するものです。
- 感知器の点検では、受信機又は専用の制御盤にある自動・手動切替装置を必ず「手動」側にすると点検要領は定めています。
- 切替装置の機能確認や手動式起動装置の操作では、容器弁開放装置を取り外して行います。
- 二酸化炭素を放射する設備は、点検前に制御回路の電源を「断」にし、操作導管、電気式容器弁開放装置の順に取り外します。
- 点検後は、取り外した機器の接続部の緩み・脱落・封印を再確認し、閉止弁を「開」にします。
▼
目次
不活性ガス消火設備の点検の前に何を決めておくのか

ここに、点検作業そのものの安全に関わる決まりがまとまっています。
(1) 全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)にあっては、点検の実施前に、点検時においてとるべき措置の具体的内容及び手順を定めた図書の内容を確認すること。
(2) 閉止弁が取り付けられているものにあっては、点検作業の実施前に「閉」とし、点検作業がすべて終了した後に「開」とすること。
(4) 点検時の誤放出事故防止のため、強い衝撃等を与えないこと。
二酸化炭素を放射する全域放出方式では、手順を書いた図書を先に確認することが求められています。
閉止弁の役割は、閉止弁と表示灯の記事と閉止弁の設置状況の記事でも扱っています。
手順書がない設備は、どうすればよいのですか。
点検要領は、図書の内容を確認することを求めています。
図書がなければ、設備業者や所轄消防署にご確認ください。
感知器の点検ではなぜ切替装置を手動にするのか

その仕組みは、消防法施行規則に書かれています。
自動式の起動装置は、次のイからニまでに定めるところによること。
イ (イ) 自動火災報知設備の感知器の作動と連動して起動するものであること。 (ロ) 全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射するものに限る。)に設ける起動装置は、二以上の火災信号により起動するものであること。
ロ 起動装置には、自動手動切替え装置を設けること。(容易に操作できる箇所に設ける、自動及び手動を表示する表示灯を設ける、切替えは鍵等によらなければ行えない構造とする)
判定方法:自動火災報知設備の機器点検の要領に準じて判定すること。
※受信機又は専用の制御盤にある自動・手動切替装置は、必ず「手動」側にすること。
点検要領の「自動」の確認項目には、警報装置・遅延装置・換気装置等の停止に続いて、容器弁開放装置の作動まで挙がっています。
自動側のまま感知器を作動させれば、その流れに乗るおそれがあると読めます。
(3) 全域放出方式の不活性ガス消火設備(二酸化炭素を放射する自動起動方式のものに限る。)にあっては、点検により防護区画内に人が立ち入る場合は、自動・手動切替え装置を手動状態に維持すること。
二酸化炭素を放射する自動起動方式では、手動状態のまま維持することが明記されています。
感知器の点検の内容は、この設備でも同じですか。
感知器の判定は、自動火災報知設備の要領に準じると書かれています。
加えて、この設備では手動側への切替えが求められます。
切替装置の機能確認でなぜ容器弁開放装置を取り外すのか

点検基準と点検要領を並べてみます。
(イ) 自動・手動切替装置:変形、損傷、脱落等がなく、切替位置及び切替機能が正常であること。
(2) 貯蔵容器又は起動用ガス容器用の容器弁開放装置を容器弁からすべて取り外し、次により確認する。
①「自動」の場合、切替装置を「自動」側に切り替えて、感知器又は受信機内の感知器回路の端子を短絡させる。
②「手動」の場合、切替装置を「手動」側に切り替えて、感知器又は受信機内の感知器回路の端子を短絡させる。
※(イ) 装置を作動させるときは、必ず容器弁開放装置を取り外して行うこと。
自動の場合の確認項目は、警報装置の作動から容器弁開放装置の作動までです。
開放装置が付いたままなら、容器弁を実際に開けてしまうため、取り外すのだと読めます。
※(ア) 手動式起動装置を操作するときは、必ずすべての電気式容器弁開放装置を取り外して行うこと。
※(イ) 作動後の復旧は、制御回路の復旧操作後に行うこと。
貯蔵容器等の電気式開放装置と連動しているものは、必ずその開放装置を容器弁から取り外しておくとされています。
取り外した後の考え方は、地震後の容器弁開放装置の記事でも触れています。
手動側の確認でも、取り外す必要はありますか。
手動側でも、必ず容器弁開放装置を取り外して行います。
点検要領の注意書きは、自動と手動の両方にかかっています。
二酸化炭素を放射する設備では取り外しの順序が決まっているのか

取り外す前に、まず電源を切る点が特徴です。
(6) 二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備にあっては、点検作業実施前に制御回路の電源を「断」にし、起動ガス導入部の操作導管(貯蔵容器側)を取り外した後、電気式容器弁開放装置を取り外すこと。
文言のとおりなら、電源、操作導管、電気式開放装置の順です。
電源を入れたまま開放装置を外す手順にはなっていません。
AND回路制御機能・緊急停止装置は、二酸化炭素を放射する不活性ガス消火設備に限る項目とされている。AND回路制御機能の判定は「二以上の火災信号により起動すること」。
感知器を一つだけ作動させても起動しない設計を、感知器を二つ以上作動させて確かめることになります。
実際の作業は、点検前に決めた手順のなかで進めます。
窒素やIG―55を使う設備は、電源を切らなくてよいのですか。
電源を「断」にする規定は、二酸化炭素を放射するものに限られています。
切替装置の手動化と開放装置の取り外しは、不活性ガス消火設備の要領に共通して書かれています。
点検が終わったら何を確かめてから設備を戻すのか

点検要領は、戻す作業の確認も定めています。
(5) 点検時、機器を取り外すものにあっては、点検終了後に接続部の緩み、脱落及び封印等の再確認を行うこと。
(2) 閉止弁が取り付けられているものにあっては、点検作業がすべて終了した後に「開」とすること。
閉止弁も、作業がすべて終わってから「開」にします。
作動後の復旧は、制御回路の復旧操作後に行うとされています。 点検要領のこの箇所には、切替装置を最後にどちらの位置へ戻すかは書かれていません。
戻す位置は、設備ごとの運用の取決めに従うことになります。
取り外した開放装置は、付け直せばそれで終わりですか。
付け直した後の緩み・脱落・封印の再確認が求められます。
閉止弁を開け忘れていないかも、あわせて確認します。
よくある質問
まとめ
点検の前に、切替装置と開放装置の手順を決めておきます!
誤放出は、事前の段取りで防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件(昭和50年消防庁告示第14号)別表第6
- 消防用設備等の点検要領の全部改正について(平成14年6月11日 消防予第172号)別添 第6 不活性ガス消火設備
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第19条
※本記事は公表されている法令および消防庁の点検基準・点検要領に基づく一般的な解説です。点検基準や点検要領は改正されることがあります。個別の判断は、消防設備士や所轄消防署にご確認ください。





