マンションやアパートには、採光や通風のために壁で囲まれた吹抜け空間が設けられることがあります。
この吹抜けは「光庭」と呼ばれ、実は消防法令上の独立した区分として扱われています。
光庭のうち一定の条件に当てはまるものは特定光庭に区分され、開口部や設備に追加の基準が及びます。
ただし開放性のある廊下に面した吹抜けなら、その判定そのものが不要になります。
うちのマンションにも建物の真ん中に吹抜けがあるんですが、これも光庭というものになるんでしょうか。
壁で囲まれ上部が吹抜けになった空間なら光庭に当たります。
消防庁が平成17年に運用の通知を出しています。
吹抜けというだけで、何か特別な基準があるとは知りませんでした。
条件によっては特定光庭という区分になります。
順番に見ていきましょう。
- マンション等の吹抜けは光庭と呼ばれ、周囲を壁で囲まれ上部が吹抜けになった採光・通風目的の空間を指します
- 光庭のうち他の住戸へ延焼する危険性が高いと確かめられたものは特定光庭に区分されます
- 特定光庭に該当すると、開口部へのはめごろし戸の設置や住戸間の水平距離の確保が必要になります
- 開放性のある廊下や階段室に面した吹抜けは、手すり上端から梁下端までの高さが1メートル以上あれば特定光庭に該当しません
- この運用は平成17年8月12日付け消防予第188号で消防庁が示したものです
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目次
共同住宅の吹抜けはなぜ光庭として区分されるのか

しかし共同住宅の技術基準では、この吹抜けが火災時の延焼経路になりうるとして、独立した区分が設けられています。
共同住宅等は平成17年に技術基準へ性能規定が導入され、構造と設備の組み合わせで防火安全性を確認する仕組みに変わりました。
このとき、住戸どうしを隔てる壁や床だけでなく、複数の住戸が面する吹抜け(光庭)も延焼経路として検証の対象に加えられています。
光庭のうち、他の住戸へ延焼する危険性が高いと確かめられたものは特定光庭と呼ばれ、追加の基準が課されます。
自分の建物に吹抜けがあるなら、まずそれが光庭の定義に当てはまるかどうかを確認することが出発点です。
吹抜けなら全部が特定光庭になってしまうんですか。
いいえ、そこは計算で判定します。
次はその判定の中身を見ていきましょう。
どんな吹抜けが特定光庭の判定対象になるのか

特定光庭に該当するかどうかは、住戸から噴き出す熱がどれだけ届くかで判定されます。
火災が起きた住戸のすべての開口部から噴き出す炎の輻射熱を計算し、他の住戸の開口部が受ける熱量が10キロワット毎平方メートル未満であれば、その光庭は特定光庭に該当しません。
避難光庭に該当する場合はさらに条件が加わり、避難する人が受ける熱量や、高さと幅の比率、煙層の温度上昇まで確かめる必要があります。
この計算は建築設計の段階で行うもので、既存の建物でも増改築や用途変更のたびに再確認が必要になることがあります。
自分の建物の吹抜けがこの判定を受けたことがあるか、設計図書や確認申請の記録から探してみてください。
熱量の計算なんて、自分たちではとても確認できそうにありません。
そこは設計段階の記録を確認すれば足ります。
該当した場合の基準も見ておきましょう。
特定光庭に該当するとなにが変わるのか

特定光庭に面する開口部には、原則としてはめごろし戸(開閉できない防火設備)を設けなければなりません。
異なる住戸の開口部どうしは、同一の壁面なら0.9メートル以上、異なる壁面なら2.4メートル以上(防火設備を設ければ2メートル以上)の水平距離を確保することが求められます。
さらに特定光庭に面する住戸に給湯湯沸設備等を設ける場合も、ガスの消費量や密閉式であることなど、別途の基準に適合させる必要があります。
新築時だけでなく、給湯設備を後から交換するときにもこの基準が及ぶことを見落とさないようにしましょう。
窓が開けられなくなるのは、住んでいる人からすると少し不便に感じそうです。
そのぶん延焼を防ぐ効果があります。
実はこの基準を丸ごと避けられる形もあるんです。
開放廊下に面した吹抜けはなぜ特定光庭を免れるのか

それが、開放性のある廊下や階段室に面した吹抜けです。
吹抜けの下に面しているのが、住戸に完全に囲まれた廊下ではなく、外気に開放された廊下や階段室であれば、輻射熱や避難光庭の計算をするまでもなく特定光庭には該当しないとされています。
ただし条件があり、廊下の手すりの上端から梁やたれ壁の下端までの高さが1メートル以上確保されていることが必要です。
この高さが足りないと、開放廊下のつもりでも「開放性を有する」とは認められず、特定光庭の判定計算を求められることがあります。
図面上は開放廊下に見えても、梁やたれ壁の位置によっては見落としやすい数値なので、断面図で実際の高さを確認しておきましょう。
うちの廊下も外に開いていますが、それだけで大丈夫と思ってよいのでしょうか。
手すりから梁までの高さまで確認してください。
最後に確認の手順をまとめます。
明日から吹抜けのなにを確認すればよいのか

難しい計算式を覚える必要はありません。
吹抜けが住戸の壁だけに囲まれているのか、それとも外気に開けた廊下や階段室に面しているのかを、平面図と断面図で確認します。
完全に囲まれた光庭であれば、特定光庭の判定(輻射熱や避難光庭の計算)を受けたことがあるか設計図書をたどってください。
開放廊下に面している場合は、手すり上端から梁やたれ壁下端までの高さが1メートル以上あるかを実測します。
特定光庭に該当する場合は、開口部のはめごろし戸や住戸間の水平距離、給湯設備の仕様まで、判断に迷ったら所轄消防署や設計者に確認しましょう。
まずは図面を引っ張り出して、うちの吹抜けの形を確かめてみます。
それが一番の近道です。
迷ったら所轄消防署にも相談してみてください。
よくある質問
まとめ
光庭と特定光庭の違いがよく分かりました。
まずは図面を確かめてみます!
その調子です。
基準の当てはめに迷ったときは、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令等の運用について」(平成17年8月12日 消防予第188号 消防庁予防課長)
- 特定共同住宅等の位置、構造及び設備を定める件(平成17年消防庁告示第2号)第二(用語の意義)・第四(特定光庭の基準等)
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第29条の4第1項
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





