洗車場や印刷所の片隅にある、小さな作業場。
一見ふつうの店舗や設備に見えても、建築基準法の目には「工場」として映ることがあります。
判断の決め手は業種の名前ではなく、原動機の出力やるつぼの容量といった数字です。
今回は意外な5つの実例から、この線引きの仕組みを解説します。
うちは洗車場なんですが、工場扱いされることなんてあるんですか。
業種の名前では決まりません。
原動機の出力や作業場の広さで判断されます。
印刷所やきのこ栽培みたいな、意外な仕事場も当てはまるんですか。
まさにそのとおりです。
5つの実例を順番に見ていきましょう。
- 洗車場のような業種でも、原動機を使い作業場が五十平方メートルを超えれば工場として規制される
- 虫ピンのような小さな部品づくりも、出力一・五キロワットを超える原動機を使えば規制の対象になる
- 金属を溶かす仕事はるつぼ等の容量が五十リットルを超えるかどうかで線引きされる
- るつぼ等の容量はメーカー表示の公称能力で認定してよいとされている
- 同じ活字鋳造でも、印刷所と一体性が無ければ規制の対象から外れない
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目次
洗車場も原動機を使えばなぜ工場として規制されるのか

実際に昭和48年、ある自治体からこんな照会がありました。
現在の建築基準法でも、この考え方はそのまま生きています。別表第二(へ)項第二号は、第二種住居地域内に建築してはならない建築物として「原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が五十平方メートルを超えるもの」を挙げており、この規定は第一種住居地域にも準用されます。
洗車場の作業場が200平方メートルもあれば、五十平方メートルという線を大きく超えます。
ブラシを回すモーターがある以上、業種の呼び名がどうであれ原動機を使う工場として扱われるということです。
自分の敷地が何地域かだけでなく、作業場の床面積も合わせて確認しておく必要があります。
洗車場だからって、安心はできないんですね。
床面積と原動機の出力、両方を確認してください。
小さな部品づくりもなぜ出力のワット数で規制が決まるのか

昭和47年、山口県からワイシャツ用の虫ピンをつくる作業場について照会がありました。
現在の建築基準法でも、別表第二(と)項は準住居地域内に建築してはならない事業として「製針又は石材の引割で出力の合計が一・五キロワットを超える原動機を使用するもの」を挙げています。
ここでいう出力は、機械一台ぶんではなく作業場にある原動機の合計で数えます。
0.75キロワットの小型モーターでも、19台そろえば合計14.25キロワットとなり、一・五キロワットの線を大きく超えてしまいます。
小型の機械を並べる仕事場ほど、台数を合計した出力を見落としやすいので注意してください。
虫ピンみたいな細かい部品でも、出力で見られるんですね。
はい。
台数分を合計した出力で計算される点に注意してください。
金属を溶かす仕事はなぜるつぼの大きさで線引きされるのか

昭和45年、川崎市からるつぼ等の容量の測り方について照会がありました。
現在の建築基準法でも、別表第二(ぬ)項は商業地域内に建築してはならない工場の一つとして「活字若しくは金属工芸品の鋳造又は金属の溶融で容量の合計が五十リットルを超えないるつぼ又は窯を使用するもの」を挙げています。
つまり五十リットルという数字一つで、規制の対象になるかどうかが決まる仕組みです。
その容量は、メーカーがるつぼや窯に表示している公称能力をそのまま使ってよいとされました。
複数のるつぼを使っているなら、容量の合計で五十リットルを超えないかを確かめておきましょう。
うちのるつぼ、何リットルか分かりません。
銘板やカタログの公称値を確認すれば足ります。
同じ活字鋳造でも印刷所の中かどうかでなぜ扱いが分かれるのか

ところが昭和45年、香川県からの照会は、この除外が使えない事例を扱っていました。
別表第二(ぬ)項のるつぼの規定には「印刷所における活字の鋳造を除く」というかっこ書きが置かれています。
ただし今回の照会にあったのは、印刷材料を販売する店舗の一画に鋳造機械を据えた建築物でした。
実際に新聞や書籍を印刷する印刷所と、鋳造設備を据えただけの販売店とでは、営業所と鋳造所との一体性の強さが違うと判断されたのです。
看板に「印刷所」と書いてあるかどうかではなく、実際に印刷業そのものを営んでいるかどうかが見られるということです。
同じ機械を置いても、場所によって扱いが変わるんですね。
営業の実態まで見られる、ということです。
きのこを育てる施設もなぜ農業でなく工場として扱われるのか

昭和47年、長野県からえのき茸の栽培施設について照会がありました。
えのき茸の栽培はもともと農家の冬の副業でしたが、温度調節の機械を使って生産量を増やすようになると、話が変わります。
冷凍機のような温度管理の原動機も、農産物の品質管理に欠かせない設備である以上、原動機を使用する工場の原動機として扱われるとされました。
ビン詰めや培養基の混合、殺菌を行なう部屋は作業場に数え、芽出し室や育成室のような品質管理だけの部屋は数えないという線引きも示されています。
機械化が進んだ栽培施設ほど、自分の施設がどちらに当たるのかを一度確認しておく価値があります。
きのこ栽培が工場だなんて、意外でした。
機械や薬品を使う集約的な栽培は、こう扱われます。
よくある質問
まとめ
うちの倉庫の奥の作業場も、一度確認してみます!
図面と一緒に確認すれば迷いません。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第5項・第6項・第7項・第10項、別表第二(ほ)項・(へ)項・(と)項・(ぬ)項
- 高速洗車場に関する照会(昭和48年8月31日 住街発第1031号 埼玉県住宅都市部長あて回答)
- 住居地域内の虫ピン製造工場に関する照会(昭和47年2月18日 住街発第14号 山口県土木建築部長あて回答)
- るつぼの容量に関する照会(昭和45年8月21日 住街発第881号 川崎市長あて回答)
- 商業地域内の活字鋳造機械に関する照会(昭和45年9月24日 住街発第972号 香川県計画課長あて回答)
- えのき茸の栽培施設に関する照会(昭和47年6月7日 住街発第590号 長野県住宅部長あて回答)
- 消防実務六法 質疑応答編
※本記事は公表されている法令および通達に基づく一般的な解説です。掲載した照会・回答は昭和45年から48年当時のもので、別表の項・号の記号や機関の名称等は当時のものです。現行の別表第二における条文上の位置づけは編集部で現行条文に当てはめて解説しています。個別の事案についての適用は、所轄の特定行政庁または建築主事にご確認ください。





