6階建て以上のビルに事務所や倉庫を入れるとき、避難はしごや救助袋などの避難器具が要るかどうかは、その階に何人いるかで決まります。
国の基準では、事務所の6階なら収容人員150人以上になってはじめて避難器具が要ります。
ところが八尾市では、八尾市火災予防条例第48条が、6階以上の階に30人以上で避難器具を求めています。
この記事では、八尾市の条例の上乗せを国の条文から順にたどり、器具の選び方を国の基準のどこから借りているかを番号つきで示します。あわせて、大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の条例と比べます。
八尾市で8階建てのビルの6階を借りて、40人の事務所を開く予定です。
管理会社から避難器具の話が出ました。
国の基準なら事務所の6階は150人からですが、八尾市には30人から求める条例があります。
順にたどってみましょう。
40人でも避難器具が要るのですか。
条例の対象になる階なら、30人以上で必要です。
まず国の線から見ます。
- 国の消防法施行令第25条では、事務所や工場の6階に避難器具が要るのは収容人員150人以上(無窓階は100人以上)のときです
- 八尾市火災予防条例第48条は、6階以上10階以下の階で収容人員30人以上なら避難器具を設けるとしています
- 器具は第2項で、用途ごとに国の令第25条第1項の区分を借り、令第25条第2項と規則第27条の例で設けます。倉庫・車庫は第3号の区分です
- 大阪市第44条・東大阪市第49条・堺市第69条も同じ30人の線で、豊中市と吹田市の条例には避難器具の上乗せが見当たりません
- 八尾市の第2項は、ほかの3市と違って規則第26条(個数の減免)を名指ししていないので、減免を見込む計画は八尾市消防本部に確認します
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目次
国の基準では6階の事務所や倉庫に避難器具は何人から必要なのか

三 別表第一(一)項から(四)項まで及び(七)項から(十一)項までに掲げる防火対象物の二階以上の階(特定主要構造部を耐火構造とした建築物の二階を除く。)又は地階で、収容人員が五十人以上のもの
四 別表第一(十二)項及び(十五)項に掲げる防火対象物の三階以上の階又は地階で、収容人員が、三階以上の無窓階又は地階にあつては百人以上、その他の階にあつては百五十人以上のもの
直通階段が2つある事務所ビルなら、国の基準では150人まで要らないのですね。
はい、国の基準は150人です。
次は、八尾市の条例を見ましょう。
八尾市の条例は6階以上のどの階に避難器具を求めているのか

| 用途(6階から10階の階) | 国の令第25条 | 八尾市条例第48条 |
|---|---|---|
| (1)項〜(4)項 劇場・飲食店・店舗など | 50人以上 | 30人以上 |
| (7)項〜(11)項 学校・図書館・浴場など | 50人以上 | 30人以上 |
| (12)項 工場など・(15)項 事務所など | 150人以上(無窓階は100人以上) | 30人以上 |
| (13)項 車庫など・(14)項 倉庫 | 第5号に当たる階だけ | 30人以上 |
| (5)項 共同住宅など・(6)項 福祉施設など | 30人以上・20人以上など(第1号・第2号) | 条例の対象外(国の基準による) |
6階から10階までが、ちょうど上乗せの対象なのですね。
はい、11階以上と第5号の階は外れます。
次は、どんな器具をどう設けるかです。
八尾市の条例の避難器具は国の基準の何を借りて設けるのか

(1) 令別表第1(13)項及び(14)項に掲げる防火対象物並びに小規模特定用途複合防火対象物(同表(13)項又は(14)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積が当該防火対象物の延面積の10分の9以上であるものに限る。)にあつては、令第25条第1項第3号の区分により適応するものとされる避難器具
(2) 前号に掲げる防火対象物以外の防火対象物にあつては、令第25条第1項各号の区分による当該用途に該当するものとして、当該各号に適応するものとされる避難器具
ただし、当該防火対象物の位置、構造又は設備の状況により避難上支障がないと認められるときは、総務省令で定めるところにより、その設置個数を減少し、又は避難器具を設置しないことができる。
- 条例第48条第1項が、6階から10階の階で30人以上なら避難器具を設けると上乗せします。
- 第2項第1号が、(13)項・(14)項と、それが延面積の10分の9以上を占める小規模特定用途複合防火対象物を、令第25条第1項第3号の区分に当てはめます。
- 第2項第2号が、それ以外の建物を、自分の用途が当たる令第25条第1項の号の区分に当てはめます。事務所や工場なら第4号です。
- 令第25条第2項第1号の表で、6階以上の階に適応する器具を選びます。(6)項の区分以外は、滑り台・避難はしご・救助袋・緩降機・避難橋の5種類です。
- 同じ第1号で個数を数えます。第3号の区分は200人まで、第4号の区分は300人までごとに1個です。
- 消防法施行規則第27条が、開口部の位置や設置の表示などの細目を決めています。
- 条例第51条が、消防長が認めるときに、この章の基準を適用しない特例を置いています。
この場合において、当該引いた数が一に満たないときは、当該階に避難器具を設置しないことができる。
倉庫の階は、第3号の区分の器具を使うのですね。
はい、第2項第1号が第3号の区分を指定しています。
次は、近くの市と比べます。
大阪府内5市で6階以上・30人の避難器具の条例はどう違うのか

(1) 令別表第1(13)項及び(14)項に掲げる防火対象物にあつては、令第25条第1項第3号に定める階
(2) 前号に掲げる防火対象物以外の防火対象物にあつては、令第25条第1項各号に定める階
| 項目 | 八尾市 | 大阪市 | 東大阪市 | 堺市 | 豊中市・吹田市 |
|---|---|---|---|---|---|
| 条文 | 第48条 | 第44条 | 第49条 | 第69条 | 避難器具の規定なし |
| 6階以上・30人以上 | あり | あり(同じ) | あり(同じ) | あり(同じ) | なし(国の基準のみ) |
| 例による国の規定 | 令第25条第2項・規則第27条 | 令第25条第2項・規則第26条・第27条 | 令第25条第2項・規則第26条・第27条 | 令第25条・規則第26条・第27条 | ― |
| 器具の区分 | (13)(14)項と、それが9割以上の小規模特定用途複合は第3号、ほかは用途の号 | (13)(14)項は第3号に定める階、ほかは各号に定める階 | (13)(14)項などは第3号、(12)(15)項は第4号、(16)項は当該階の用途 | 書き分けなし(解説4で(13)(14)項は5種類) | ― |
| 複合用途と令第9条 | 第5章に準用規定なし | 第5章の通則に準用規定なし | 通則に準用規定は見当たらない | 第62条第2項で準用し、第69条第1項は除く | ― |
| 基準の特例 | 第51条 | 第47条 | 第52条 | 第72条 | ― |
- 規則第26条:大阪市・東大阪市・堺市は規則第26条と第27条の例によるとしていますが、八尾市は規則第27条だけを挙げています。
- 小規模特定用途複合:(13)項・(14)項が延面積の9割以上を占める小規模特定用途複合防火対象物を第3号の区分に入れているのは、4市の中で八尾市だけです。
- 複合用途の数え方:堺市は第62条第2項で、令第9条のみなしから第69条第1項を外し、階全体の人数で見る書き方にしています。八尾市・大阪市・東大阪市の付加基準の章には、令第9条の準用規定が見当たりません。
30人の線は同じでも、器具の区分や減免の書き方が違うのですね。
はい、線は同じで、借り方が少しずつ違います。
最後に、確認の順番を整理します。
八尾市で6階以上に事務所や倉庫を入れるときの確認手順

- 入る階が6階から10階までかを確かめます。11階以上の階は、国の令第25条も八尾市の条例も対象外です。
- その階から避難階や地上に直通する階段が2以上あるかを見ます。2以上なければ、国の第5号で10人以上から避難器具が要ります。
- 階の収容人員を規則第1条の3の表で数え、30人以上かを確かめます。
- 建物の用途から第48条第2項の区分を決め、令第25条第2項第1号の表で器具の種類と個数を出します。
- 避難階段による個数の減免を見込むなら、規則第26条を使えるかを八尾市消防本部に確認します。
- テナントの入れ替えやレイアウトの変更を決める前に、図面を持って所轄の消防署に相談します。
階、階段、人数、区分の順に確かめればよいのですね。
はい、その順で整理しておけば消防署との相談が早くまとまります。
よくある質問も見ておきましょう。
よくある質問
まとめ
6階の人数を数えて、30人を超えるなら八尾市消防本部に避難器具の相談をします!
階と人数と階段の数がそろっていれば、器具の種類と個数の相談もすぐにまとまります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 八尾市火災予防条例 第42条・第48条・第51条(八尾市例規集) https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrJbF01/init?jctcd=8A85C0D651&houcd=H348901010040&no=1&totalCount=17&fromJsp=SrMj
- 大阪市火災予防条例 第37条・第44条・第47条(大阪市例規データベース) https://www1.g-reiki.net/reiki37e/reiki.html
- 東大阪市火災予防条例 第42条・第49条・第52条(東大阪市例規集) https://ops-jg.d1-law.com/opensearch/SrJbF01/init?jctcd=8A85C0D6B1&houcd=H348901010038&no=1&totalCount=71&fromJsp=SrMj
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第5章 火災予防条例審査基準 堺市火災予防条例 第62条・第69条・第72条(解説及び運用を含む) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 豊中市火災予防条例(豊中市例規集) https://www1.g-reiki.net/toyonaka/reiki_honbun/k205RG00000714.html
- 吹田市火災予防条例(吹田市例規集) https://www2.city.suita.osaka.jp/reiki/d1w_reiki/H337901010407/H337901010407_j.html
- 消防法施行令 第25条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336CO0000000037
- 消防法施行規則 第1条の3・第26条・第27条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
※本記事は公表されている法令および八尾市・大阪市・東大阪市・堺市・豊中市・吹田市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。器具の区分と個数の関係や、八尾市の第2項と規則第26条の関係は、条文を並べて読んだ整理であり、八尾市が明記しているものではありません。「見当たらない」とした項目は、各市の条例を全文検索した範囲でのものです。条例や運用は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。避難器具が必要かどうかの個別の判断は、所轄の消防署にご確認ください。






