マンションの住戸の中にP型3級受信機を置く自動火災報知設備では、受信機そのものが鳴らすブザー(主音響装置)が、ほかの建物でいう廊下のベル(地区音響装置)の役目を担います。
国の基準は「P型3級受信機なら地区音響装置はいらない」と定めるだけで、住戸のどこまで音が届けばよいかの距離は書いていません。
吹田市消防本部の質疑応答集は、ここに「住戸ごとに10m以内の包含」という目安を置いています。
この記事では、吹田市の答えを国の条文から順にたどり、つながり方を番号つきで示します。あわせて、大阪市・堺市の150平方メートルの線と、豊中市・東大阪市・八尾市の資料も比べます。
吹田市で、住戸ごとに小さな受信機が付いたマンションを改修します。
奥の寝室まで音が届くか、設計の方に聞かれました。
国の基準には住戸の中の距離の決まりがありませんが、吹田市には10mの目安があります。
順にたどってみましょう。
受信機のブザーだけで足りる場合もあるのですか。
はい、10mの範囲に住戸が収まれば主音響で警戒できます。
まず国の基準から見ます。
- 国の消防法施行規則第24条第5号は、P型3級受信機を警戒区域に設ける場合を、地区音響装置の設置基準(25m・90デシベル)から外しています
- P型3級受信機は、延べ面積150平方メートルを超える建物には設けられず、主音響装置の音圧は1m離れて70デシベル以上です
- 吹田市の質疑応答集は、住戸内のP型3級受信機の主音響で地区音響を兼ねるなら、住戸ごとに10m以内の包含で警戒し、届かない部分には補助音響を設けるとしています
- 住戸内の間仕切りは問わないので、壁やドアがあっても10mの範囲で考えます
- 大阪市・堺市は、住戸用自動火災報知設備などで住戸等が150平方メートルを超えるときに音声警報を補う形で線を引いていて、吹田市の距離の目安とは物差しが違います
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目次
国の基準ではP型3級受信機に地区音響装置はいらないのか

ニ 各階ごとに、その階(前条第四項第一号ヘに掲げる部分を除く。)の各部分から一の地区音響装置までの水平距離が二十五メートル以下となるように設けること。
地区音響装置がいらない代わりに、距離の決まりもないのですね。
はい、国の条文には住戸の中の距離の数字がありません。
そこを吹田市が補っています。
吹田市の質疑応答集は住戸内のP型3級受信機の主音響をどう扱うのか

答19 各住戸ごとに10m以内の包含で警戒すること。(住戸内の間仕切りは不問。)
また、未警戒部分には補助音響を設けること。
- 住戸ごとに考えます。隣の住戸の受信機の音で、自分の住戸を警戒することは想定していません。
- 主音響から10m以内の範囲に住戸が収まれば、主音響で地区音響を兼ねられます。
- 住戸内の間仕切りは問いません。範囲から外れる部分(未警戒部分)には、補助音響を設けます。
ドアの向こうでも、10mに入っていればよいのですね。
はい、答19は間仕切りは不問としています。
次は、国の条文とのつながりを確かめます。
吹田市の10mの目安は国の基準のどこにつながっているのか

- 規則第24条第2号リが、P型3級受信機を延べ面積150平方メートル以下の建物(令第21条第1項第10号の階はその階の床面積)に限ります。
- 規則第24条第5号が、P型3級受信機を警戒区域に設ける場合を、地区音響装置の設置基準から外します。25mの水平距離も90デシベルの音圧も、ここではかかりません。
- 受信機の規格省令第4条第1号ロが、P型3級受信機の主音響装置を1m離れて70デシベル以上と決めます。
- 国の条文は、主音響がどこまで届けばよいかの距離を決めていません。
- 吹田市の答19が、主音響で地区音響を兼ねる範囲を住戸ごとに10m以内とし、届かない部分に補助音響を求めます。
| 項目 | 地区音響装置(国) | P型3級受信機の主音響(国) | 吹田市の答19 |
|---|---|---|---|
| 根拠 | 規則第24条第5号 | 規則第24条第2号リ・受信機の規格省令第4条 | 質疑応答集 第5節 答19 |
| 音の大きさ | 1m離れて90デシベル以上 | 1m離れて70デシベル以上 | 定めなし |
| 届く範囲 | 各部分から水平距離25m以下 | 定めなし | 住戸ごとに10m以内の包含 |
| 届かない部分 | 地区音響装置を増やす | 定めなし | 補助音響を設ける |
国の数字のない部分を、吹田市が10mで埋めているのですね。
はい、距離のすき間を埋める目安です。
次は、近くの市と比べます。
大阪市と堺市は広い住戸の音をどう補っているのか

19 号告示第3 第7 号(2)に規定する「有効に音声警報又は音響警報が伝わらないおそれのある部分」とは、メゾネット型住戸又は住戸、共用室及び管理人室で床面積が150 ㎡を超えるものであること。
| 市 | 対象 | 線の引き方 | 届かないとき |
|---|---|---|---|
| 吹田市 | 住戸内のP型3級受信機の主音響 | 距離:住戸ごとに10m以内 | 補助音響を設ける |
| 大阪市 | 住戸用受信機・共同住宅用受信機(特定共同住宅等) | 面積:住戸等150平方メートル超 | 補助音響装置で音声警報を補完する等 |
| 大阪市 | 特定小規模施設用自動火災報知設備で地区音響装置を設けない場合 | 音圧:任意の場所で65デシベル以上 | 主音響装置等で確保 |
| 堺市 | 住戸用受信機(特定共同住宅等) | 面積:住戸等150平方メートル超・メゾネット型 | 地区音響装置で音声警報を補完 |
| 豊中市・東大阪市 | ― | 公開の基準に該当する記述は見当たらない | ― |
| 八尾市 | ― | 審査基準が公開されていない | ― |
吹田市は距離、大阪市と堺市は広さで見ているのですね。
はい、物差しが違います。
最後に、確認の順番を整理します。
吹田市で住戸にP型3級受信機を置くときの確認手順

- 受信機の種類を確かめます。P型3級受信機(GP型3級受信機)か、特定共同住宅等の住戸用受信機かで、見る基準が変わります。
- 平面図に主音響の位置を書き込み、10mの範囲を描きます。水平距離か歩行距離かは、吹田市消防本部に確認します。
- 範囲から外れる部屋を拾います。広い住戸の奥の寝室や、メゾネット型住戸の上の階は外れやすい部分です。
- 外れる部分には補助音響を計画します。
- 間取りを変える改修では、受信機の位置が変わらなくても範囲を描き直します。
- 図面を持って、着工前に吹田市消防本部へ相談します。
受信機の種類、10mの範囲、届かない部屋の順に確かめればよいのですね。
はい、その順で整理しておけば消防本部との相談が早くまとまります。
よくある質問も見ておきましょう。
よくある質問
まとめ
図面に10mの範囲を描いて、届かない部屋があれば補助音響を吹田市消防本部に相談します!
受信機の種類と範囲の図がそろっていれば、補助音響の数と位置の相談もすぐにまとまります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 吹田市消防本部「消防用設備等設置指導等に関する質疑応答集」第5節 自動火災報知設備 問19・答19(PDF6ページ目) https://www.city.suita.osaka.jp/anzen/1017917/1017954/1044807.html
- 大阪市消防局「消防用設備等の設置に係る運用基準」第7節 特定共同住宅等 第6 6・第7 6、第4節 特定小規模施設用自動火災報知設備 第7 https://www.city.osaka.lg.jp/shobo/page/0000350878.html
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」第1 特定共同住宅等に係る審査基準 Ⅶ 住戸用自動火災報知設備及び共同住宅用非常警報設備 2・6・8(PDF72・73ページ目)、第12 自動火災報知設備 Ⅰ概要 1 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 豊中市消防局「消防用設備等の設置に関する運用基準」 https://www.city.toyonaka.osaka.jp/kurashi/bosai/toyonakafiredept/todokede/setubiunnyoukijun.html
- 東大阪市消防局 消防用設備等の技術基準 自動火災報知設備 https://www.city.higashiosaka.lg.jp/0000041303.html
- 消防法施行規則 第24条第2号・第5号(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006
- 受信機に係る技術上の規格を定める省令 第4条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/356M50000008019
※本記事は公表されている法令および吹田市・大阪市・堺市・豊中市・東大阪市の公開資料に基づく一般的な解説です。表は要旨を自分の言葉でまとめたものです。吹田市の10mの目安と国の音圧の関係は、条文を並べて読んだ整理であり、吹田市が理由として明記しているものではありません。「見当たらない」とした項目は、各市の公開資料を検索した範囲でのものです。運用基準や質疑応答集は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。主音響や補助音響の配置の個別の判断は、所轄の消防署にご確認ください。






