電気室やボイラー室、厨房のある建物では、建物全体の消火器とは別に消火器を足す決まりがあります。
これを審査基準では付加設置と呼び、国の規則は「変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備」「多量の火気を使用する場所」と書くだけです。
どの設備から当てはまるかは、各消防本部の審査基準が出力や容量で線を引いています。
四日市市の線引きを軸に、津市・鈴鹿市・埼玉県央広域の違いを比べます。
四日市市の店舗ビルで、地下にキュービクルと蓄電池、1階に飲食店の厨房があります。
建物の消火器は足りているはずですが、電気室や厨房にも別に要るのでしょうか。
設備の出力や容量しだいで、別に足す対象になります。
まず国の規則が何を求めているかから確かめましょう。
津市や鈴鹿市にも同じような店舗がありますが、線は同じですか。
変電設備や厨房の線は、本部によってかなり違います。
順に比べていきます。
- 消防法施行規則第6条第4項は電気設備のある場所に床面積100㎡以下ごとに1個、第5項は多量の火気を使用する場所に床面積を25㎡で除した能力単位を求めるが、対象設備の中身は定めていない
- 四日市市は電気設備を変電設備(全出力50kW超)・燃料電池発電設備・固定の発電設備・蓄電池設備の4つとし、急速充電設備は挙げていない
- 変電設備と急速充電設備の線を、津市は20kW、鈴鹿市と埼玉県央広域は50kWに置き、蓄電池は3本部とも20kWh以下を除く(四日市市は10kWh以下などを除く)
- 厨房は四日市市と県央広域が個人の住居以外の厨房設備をすべて挙げ、津市は同一室内で入力合計117kW以上、鈴鹿市は条例の350kWに小規模ガスコンロの飲食店などを足している
- 建物用の消火器が適応性・能力単位・歩行距離を満たせば付加設置分を兼ねて1個以上でよいとする書き方が、鈴鹿市と県央広域にある
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目次
国の規則は電気設備や火気の場所にどんな消火器を足させているのか

そのうえで消防法施行規則第6条第4項と第5項が、電気設備と火気の場所に別の消火器を足させています。
4 第一項の防火対象物又はその部分に変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備があるときは、前三項の規定によるほか、令別表第二において電気設備の消火に適応するものとされる消火器を、当該電気設備がある場所の床面積百平方メートル以下ごとに一個設けなければならない。
5 第一項の防火対象物又はその部分に鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する場所があるときは、前各項の規定によるほか、令別表第二において建築物その他の工作物の消火に適応するものとされる消火器具を、その能力単位の数値の合計数が、当該場所の床面積を二十五平方メートルで除して得た数以上の数値となるように設けなければならない。ただし、(略)小規模特定飲食店等にあつては、(略)この限りでない。
電気設備のある場所は床面積100㎡以下ごとに1個、多量の火気を使用する場所は床面積を25㎡で除した能力単位が要ります。
第6項は、電気設備用の消火器を階ごとに、電気設備のある場所の各部分から歩行距離20m以下に置くとしています。
ただし「その他これらに類する電気設備」「その他多量の火気を使用する場所」に何が入るかは、条文に書かれていません。
そこで各消防本部が、対象になる設備を審査基準で一つずつ挙げています。
明日やることは、建物の電気室・ボイラー室・厨房などの床面積を図面から拾い、消火器の計算表に別の行として足すことです。
建物全体の本数とは別に数えるのですね。
はい、規則は「前三項の規定によるほか」と書いています。
次に四日市市がどの設備を対象にしているかを見ます。
四日市市は変圧器や配電盤に類する電気設備をどこまで含めているのか

その(1)が、規則第6条第4項の電気設備の中身を挙げています。
(1)省令第6条第4項に規定する「変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備」とは、次に掲げるものをいう。
ア 高圧又は特別高圧の変電設備(全出力50kW以下のものを除く。)
イ 燃料電池発電設備
ウ 内燃機関を原動力とする発電設備のうち、固定して用いるもの
エ 蓄電池設備(蓄電池容量が10キロワット時以下のもの及び蓄電池容量が10キロワット時を超え20キロワット時以下のものであって蓄電池設備の出火防止措置及び延焼防止措置に関する基準(令和5年消防長告示第7号)第2に定めるものを除く)
変電設備は全出力50kWを超えるもの、燃料電池発電設備と固定の発電設備は出力の線なし、蓄電池設備は容量で線を引いています。
蓄電池は10kWh以下に加え、10kWhを超え20kWh以下で告示の第2に当たるものも外しています。
審査基準は「消防長告示」と書いていますが、同じ名前の基準は国が令和5年消防庁告示第7号として定め、出火防止措置を講じた10kWh超20kWh以下の蓄電池設備を示しています。
津市・鈴鹿市・県央広域が挙げている急速充電設備は、四日市市の(1)には入っていません。
この3は全文に下線が引かれ、四日市市の基準では行政指導として示された部分です(原本の画像で確かめました)。
明日やることは、キュービクルの銘板で全出力を、蓄電池の銘板で容量(kWh)を控えることです。
うちの蓄電池が15kWhなら、措置しだいで外れることもあるのですね。
四日市市の書き方ではそうなります。
措置を講じた製品かどうかはメーカーの資料で確かめてください。
変電設備や蓄電池の線は津市・鈴鹿市・県央広域でどう違うのか

鈴鹿市は設備を自分で挙げず、火災予防条例の届出の号を借りています。
⑵ 電気設備
省令第6条第4項に規定する「変圧器、配電盤その他これらに類する電気設備」とは、条例第44条第9号から第13号に掲げるものをいう。
(参考)鈴鹿市火災予防条例 第44条(抜粋)
(9) 高圧又は特別高圧の変電設備(全出力50キロワット以下のものを除く。)
(10) 急速充電設備(全出力50キロワット以下のものを除く。)
(11) 燃料電池発電設備(第8条の3第2項又は第4項に定めるものを除く。)
(12) 内燃機関を原動力とする発電設備のうち、固定して用いるもの(第12条第4項に定めるものを除く。)
(13) 蓄電池設備(蓄電池容量が20キロワット時以下のものを除く。)
鈴鹿市は、審査基準から条例第44条の第9号〜第13号へたどると、変電設備と急速充電設備は50kW超、蓄電池は20kWh超になります(条例は鈴鹿市の例規集で現行の条文を確かめました)。
県央広域(鴻巣市・桶川市・北本市)は、同じ5種類を審査基準の中に直接書き、数字も鈴鹿市と同じです。
津市は変電設備と急速充電設備を全出力20kW超から対象にし、蓄電池は20kWh超としています。
つまり30kWの変電設備は、津市では電気設備用の消火器を足す対象になり、四日市市・鈴鹿市・県央広域では対象外です。
明日やることは、電気設備ごとに出力と容量を一覧にし、管轄の本部の線と並べて印を付けることです。
| 設備 | 四日市市 | 津市 | 鈴鹿市(条例第44条) | 埼玉県央広域 |
|---|---|---|---|---|
| 高圧・特別高圧の変電設備 | 全出力50kW超 | 全出力20kW超 | 全出力50kW超 | 全出力50kW超 |
| 蓄電池設備 | 10kWh超(10kWh超20kWh以下で告示に当たるものを除く) | 20kWh超 | 20kWh超 | 20kWh超 |
| 急速充電設備 | 挙げていない | 全出力20kW超 | 全出力50kW超 | 全出力50kW超 |
| 燃料電池発電設備 | 対象(除外の記載なし) | 対象(除外の記載なし) | 条例で定める小型のものを除く | 条例で定める小型のものを除く |
| 固定の発電設備(内燃機関) | 対象(除外の記載なし) | 対象(除外の記載なし) | 条例で定めるものを除く | 条例で定めるものを除く |
同じ設備でも、市が変わると消火器が要ったり要らなかったりするのですね。
そうなります。
複数の市に店舗がある会社は、管轄ごとの線で計算表を分けておくと安心です。
厨房は何キロワットから多量の火気を使用する場所になるのか

いちばん差が出るのが厨房です。
⑵ 規則第6条第5項に規定する「鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する場所」とは、次に掲げる火気を使用する設備が設けられた場所をいう。(平成30年5月7日付け、津市消防本部予防課長通知)
エ 同一室内に設ける入力合計が117kW以上の厨房設備(個人の住居に設けるものを除く。)
ただし、小規模特定飲食店等については、防火上有効な措置として総務省令で定める措置が講じられたものを除き、厨房設備の入力に関係なく消火器の設置は必要である。
四日市市と県央広域は、個人の住居に設けるものを除く厨房設備を、入力の線を付けずに挙げています(県央広域は昭和55年10月6日の消防予第207号を根拠に示しています)。
津市は、同じ室内の厨房設備の入力合計が117kW以上のものとし、平成30年の予防課長通知を根拠にしています。
鈴鹿市は、条例第44条第1号〜第8号の2の設備を使う場所とし、厨房は条例の号で同一厨房室の入力合計350kW以上になりますが、飲食店の小規模ガスコンロ設置場所・社員食堂の厨房・学校の家庭科実習教室を別に足しています。
温風暖房機と内燃機関のヒートポンプ冷暖房機は4本部とも入力70kW以上が線で、ボイラーに入力70kW以上の線を付けているのは津市だけです。
明日やることは、厨房機器の銘板で入力(kW)を足し上げ、同じ室内の合計を出しておくことです。
| 消防本部 | 多量の火気を使用する場所としての厨房 | ほかに目立つ点 |
|---|---|---|
| 四日市市 | 厨房設備(個人の住居を除く)に入力の線なし | 乾燥設備・サウナ設備・火花を生ずる設備・放電加工機も挙げる |
| 埼玉県央広域 | 四日市市と同じ | ア〜サの11項目は四日市市と同じ並び |
| 津市 | 同一室内の入力合計117kW以上(小規模特定飲食店等は入力に関係なく消火器が必要と注記) | 乾燥設備は入力17kW以上など、条例第44条の設備も別に挙げる |
| 鈴鹿市 | 条例第44条の号(同一厨房室350kW以上)+小規模ガスコンロの飲食店・社員食堂・家庭科実習教室 | 乾燥設備は届出の要らないものを除く |
四日市市なら、小さな厨房でも付加設置の対象になりそうですね。
審査基準の書き方ではそう読めます。
ただし国の規則の小規模特定飲食店等のただし書もあるので、延べ面積と階も合わせて所轄に確かめてください。
建物用の消火器で付加設置の分を兼ねてよいのか

鈴鹿市と県央広域は、建物用の消火器で兼ねられる場合を書いています。
⑷ 付加設置する部分には、電気室等にガス系消火器を設置するなど、当該部分にその消火に適応するものとされる消火器を設置すること。
ただし、政令第10条第1項の規定に基づき設置される消火器が、付加設置する部分に設置された消火器と同一の適応性を有し、かつ、能力単位の数値及び消火器に至る歩行距離を満足する場合にあっては、1個以上とすることができる。
県央広域の第1-6図は、延べ2,100㎡の(6)項ロで36㎡の厨房(能力単位2以上)に強化液消火器を1個置き、食堂の粉末消火器と合わせて足りるなら厨房に2個は要らないという例です。
ただし、置いた消火器の能力単位の合計が、建物分と付加設置分の両方を満たす場合に限るとしています。
鈴鹿市も同じただし書を持ち、「1個以上として差し支えない」と書いています。
屋上や屋外の変電設備・炉などには、鈴鹿市と県央広域(▲)が設備の各部分から歩行距離20m以下で消火器を置くとしています。
四日市市と津市の付加設置の項には、兼ねる場合と屋上・屋外の書き方は見当たりませんでした。
明日やることは、電気室や厨房の近くにある既存の消火器の種類と能力単位を確かめ、兼ねられるかを所轄に聞くことです。
近くの消火器の種類が合っていれば、数を増やさずに済むこともあるのですね。
電気設備には電気火災に適応する消火器が要るので、ラベルの表示も見ておいてください。
よくある質問
まとめ
キュービクルと蓄電池の銘板、厨房機器の入力を見て回ります!
各室の床面積も一緒に控えておくと、本数の計算まで一度に済みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行規則 第6条第4項〜第6項(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防同意事務審査基準 第2章 第1 消火器具 3 付加設置(四日市市消防本部)
- 津市予防事務審査検査基準 5-1 消火器具 3 付加設置(津市消防本部)
- 鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準 第4章 第1 消火器具 4 付加設置(鈴鹿市消防本部)
- 鈴鹿市火災予防条例 第44条(鈴鹿市例規集)
- 埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準 第3章 第1 消火器具 5 付加設置(埼玉県央広域消防本部)
- 蓄電池設備の出火防止措置及び延焼防止措置に関する基準(令和5年消防庁告示第7号)制定時の報道資料(総務省消防庁)
※本記事は四日市市消防本部などが公表している審査基準・火災予防条例と、消防法施行規則に基づく一般的な解説です。四日市市の付加設置の項は全文に下線(同基準で行政指導を示す印)があり、津市・鈴鹿市の項と県央広域の⑵〜⑷には記号がなく、県央広域の屋上・屋外の⑸には▲が付いていました。表は要旨を自分の言葉でまとめたもので、「見当たらない」としたものは各本部の付加設置の項を確認した範囲の結果です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





