地下の売場や駐車場など、消防法で排煙設備が要る階にも、浴室や機械室のような小さな部屋があります。
国の規則は排煙口を防煙区画ごとに置くよう定めていますが、どの部屋なら外してよいかを一つずつは挙げていません。
四日市市消防本部の審査基準は、建築基準法とのずれを整理したうえで、排煙設備を設けないことができる場所を6つ挙げています。
四日市市の6つの場所を国の条文から順にたどり、鈴鹿市・埼玉県央広域・津市の一覧と面積や条件を比べます。
四日市市で地下に売場がある店舗を借りていて、改装で事務室や倉庫を小さく仕切る予定です。
仕切った部屋ごとに排煙口を付け直さないといけないのでしょうか。
消防法の排煙設備は、防煙区画ごとに排煙口を置くのが基本です。
ただ、四日市市の審査基準には設けないことができる場所の一覧があります。
小さな部屋なら外せることもあるのですね。
はい、区画の造りや床面積の条件をそろえたときに限ります。
まず国の基準がどこまで決めているかから見ていきます。
- 排煙設備は消防法施行令第28条第1項の3つの号に当たる建物・部分に要り、施行規則第29条が外気に開放された部分などを設置を要しない部分としている
- 四日市市は、建築基準法で排煙設備が要らないとされても令第28条第1項に当たれば原則として設置が要るとし、設けないことができる場所をアからカの6つ挙げている
- 四日市市の区画した小さな部屋は、自動閉鎖式の防火戸や準不燃材料の仕上げなどをそろえて100㎡以下(廊下は50㎡以下)
- 鈴鹿市と埼玉県央広域は同じ型の一覧で、区画した室は50㎡以下(廊下は15㎡以下)とし、隣の室の排煙口まで30m以下の室も外せる
- 津市は令第32条を適用して区画した部分を50㎡以下(スプリンクラー設備があれば100㎡以下)とし、ガス系消火設備のある場所や一定の電気設備のある部分も挙げている
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目次
国の基準では排煙設備はどこに要りどこを外せるのか

外してよい部分は、同じ条の第3項から施行規則第29条に委ねられています。
排煙設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 別表第一(16の2)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
二 別表第一(1)項に掲げる防火対象物の舞台部で、床面積が五百平方メートル以上のもの
三 別表第一(2)項、(4)項、(10)項及び(13)項に掲げる防火対象物の地階又は無窓階で、床面積が千平方メートル以上のもの
3 第1項各号に掲げる防火対象物又はその部分のうち、排煙上有効な窓等の開口部が設けられている部分その他の消火活動上支障がないものとして総務省令で定める部分には、同項の規定にかかわらず、排煙設備を設置しないことができる。
令第28条第3項の総務省令で定める部分は、次の各号に掲げる部分とする。
一 次のイ及びロに定めるところにより直接外気に開放されている部分(略)
二 令別表第一に掲げる防火対象物又はその部分(主として当該防火対象物の関係者及び関係者に雇用されている者の使用に供する部分等に限る。)のうち、令第13条第1項の表の上欄に掲げる部分、室等の用途に応じ、当該下欄に掲げる消火設備(移動式のものを除く。)が設置されている部分
三 (略)
第28条第1項が対象にしているのは、地下街で延べ面積1,000㎡以上、劇場などの舞台部で500㎡以上、キャバレーや遊技場・百貨店や店舗・駅・駐車場などの地階又は無窓階で1,000㎡以上の部分です。
施行規則第29条が設置を要しないとしているのは、常時開いた外気に面する開口部で排煙できる部分(第1号)や、関係者だけが使う部分で用途に応じた固定式の消火設備がある部分(第2号)などです。
排煙口は施行規則第30条第1号イで、防煙壁で500㎡(地下街は300㎡)以下に区切った防煙区画ごとに1つ以上置くことになっています。
この防煙壁には間仕切壁も数えられているので、売場を壁で小部屋に仕切ると、仕切った部屋が別の防煙区画になります。
改装の図面ができたら、まず仕切る部屋ごとに天井の排煙口があるかないかを書き込んでもらいます。
壁で仕切ると、その部屋が別の防煙区画になってしまうのですね。
そうです、間仕切壁も防煙壁に数えられます。
だから各消防本部が、排煙口を設けなくてよい部屋を一覧にしています。
建築基準法で排煙が要らない部分でも消防法の排煙設備は要るのか

四日市市の審査基準は、第18 排煙設備の冒頭でこの二つの関係を整理しています。
(1)建基法に基づき設置される排煙設備は、政令第28条に基づく排煙設備として取り扱って支障ないものであること。
(2)建基法で排煙設備を要しないとされた場合で、政令第28条第1項に規定する防火対象物の部分に該当する場合には、原則として排煙設備を設置しなければならないものであるが、次のいずれかに該当する場所には排煙設備を設けないことができる。
ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物又は建築物の部分については、この限りでない。
二 学校(幼保連携型認定こども園を除く。)、体育館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場又はスポーツの練習場
三 階段の部分、昇降機の昇降路の部分(当該昇降機の乗降のための乗降ロビーの部分を含む。)その他これらに類する建築物の部分
四 機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたもの(略)
四日市市は、建築基準法に基づいて設けた排煙設備を、令第28条の排煙設備として扱って差し支えないとしています。
一方で建築基準法施行令第126条の2第1項ただし書は、体育館やボーリング場、階段や昇降路の部分、不燃性の物品の倉庫などを建築基準法の排煙設備の対象から外しています。
こうした建物や部分でも令第28条第1項に当たれば、消防法の排煙設備は原則として要るというのが四日市市の整理です。
この部分には四日市市が行政指導の印にしている下線がなく、欄外には昭和46年4月9日付けの消防予第54号が添えられています。
建築確認で排煙設備は不要と言われていても、地階や無窓階に1,000㎡以上の売場や駐車場があるなら、消防との協議で別に確かめます。
建築確認で不要と言われても、消防法では別に要ることがあるのですね。
はい、二つの法令は対象の決め方が違います。
そのうえで四日市市は、外してよい場所をアからカの6つにまとめています。
四日市市ではどんな部屋なら排煙設備を設けなくてよいのか

アとウは区画の条件が細かく、イとカは用途だけで決まります。
主要構造部を耐火構造又は準耐火構造とした防火対象物のうち、次のすべてに適合している場所
(ア)区画された部分の開口部は、自動閉鎖式の防火戸が設けられていること。
(イ)区画内の壁及び天井の室内に面する部分(略)は、仕上げを準不燃材料でしたものであること。
(ウ)(エ)(略)
(オ)区画された部分の床面積が100㎡以下のものであること。ただし、廊下にあっては、50㎡以下のものであること。
| 記号 | 場所 | 主な条件 |
|---|---|---|
| ア | 区画された部分 | 耐火構造又は準耐火構造の建物・自動閉鎖式の防火戸・壁と天井を準不燃材料で仕上げ・配管のすき間をモルタル等で埋める・風道に防火ダンパー・100㎡以下(廊下は50㎡以下) |
| イ | 浴室・便所など | 条件の記載なし |
| ウ | エレベーターの機械室・機械換気設備の機械室など | 耐火構造又は準耐火構造の建物・自動閉鎖式の防火戸・すき間埋め・防火ダンパー(面積と仕上げの記載なし) |
| エ | 冷蔵室・冷凍室・金庫室など | 耐火構造又は準耐火構造の建物・開口部に特定防火設備又は同等以上のもの |
| オ | 冷蔵室・冷凍室 | 不燃材料の壁・床・扉で区画・50㎡以下 |
| カ | 階段・エレベーターの昇降路・パイプダクトなど | 条件の記載なし |
アは、自動閉鎖式の防火戸と準不燃材料の仕上げに、配管のすき間埋めと防火ダンパーを加えた4つをそろえた区画で、床面積100㎡以下(廊下は50㎡以下)の部分です。
ウの機械室にはアのような面積と仕上げの条件が書かれていませんが、自動閉鎖式の防火戸・すき間埋め・防火ダンパーは同じく求められます。
冷蔵室や冷凍室は、開口部を特定防火設備にするか(エ)、不燃材料で区画した50㎡以下にするか(オ)の2通りで外せます。
四日市市の一覧には、エレベーターホールや風除室、隣の室の排煙口を借りる扱いは入っていません。
仕切る部屋が100㎡を超えそうなら、防火戸の種類と天井の仕上げ材を図面で確かめ、排煙口を足すか区画を見直すかを決めます。
つまり小さく仕切る部屋は、防火戸と仕上げをそろえて100㎡以下にすれば外せるのですね。
そのとおりです、ただし廊下だけは50㎡以下になります。
ほかの消防本部では、この面積がもっと小さくなります。
鈴鹿市と埼玉県央広域では小さな部屋をどこまで外せるのか

違いは、鈴鹿市が令第32条の適用と明記していることと、埼玉県央広域に金庫室の項目があることです。
次のいずれかに該当する場所については、政令第32条の規定を適用して、排煙口を設けないことができる。
キ 準耐火構造の壁及び床で区画された室で、次の(ア)から(オ)までに該当するもの
(ア)〜(エ)(略)
(オ)床面積が50㎡(廊下にあっては15㎡)以下のもの
各部分から隣接する一の室(以下この⑽において「排煙室」という。)に設置された一の排煙口までの水平距離が30m以下である室で、次のアからオまでに該当するもの
なお、この場合、排煙室及び排煙口を設けない部分の床面積の合計が500㎡(政令第28条第1項第1号に掲げる防火対象物にあっては、300㎡)以下であること。
両本部とも、準耐火構造の壁と床で区画し準不燃材料で仕上げた室は床面積50㎡以下(廊下は15㎡以下)とし、四日市市の100㎡の半分になります。
エレベーターホールと風除室は用途だけで外せる一方、冷蔵庫や冷凍庫は火災を早く感知する装置を付けて防災センター等へ移報することが条件です。
さらに、隣の室(排煙室)の一つの排煙口まで各部分から30m以下で、床面積50㎡以下の室も外せます(排煙室と合わせて500㎡以下、地下街は300㎡以下)。
天井の高い排煙室に面し、壁と天井を不燃材料で仕上げて下地も不燃材料で造った50㎡以下の室も同じ扱いです。
鈴鹿市や鴻巣市・桶川市・北本市で小部屋を仕切るときは、隣の室の排煙口からの距離を図面に書き込んでもらうと協議が早く進みます。
四日市市なら外せる80㎡の区画室も、鈴鹿市の一覧では区画室として外せないのですね。
はい、その場合は排煙口を設けるか、協議で扱いを相談することになります。
津市はさらに違う切り口で一覧を作っています。
津市は機械室や電気室をどう扱いほかの本部と何が違うのか

四日市市・鈴鹿市・埼玉県央広域の一覧にない場所が入っているのが特徴です。
次のいずれかに該当する場合は、政令第32条を適用し、排煙口を設けないことができるものであること。
ア 特定主要構造部を耐火構造とした防火対象物のうち、耐火構造の壁又は床で区画され、かつ、開口部については、自動閉鎖装置付きの防火戸で区画され、さらに区画内の壁及び天井の室内に面する部分(略)を準不燃材料で仕上げたもので、次に掲げる部分
a 非常電源を附置した換気設備の設けられている変電室、発電室その他これらに類する場所
b 機械換気設備の機械室、ポンプ室、冷凍機械室、エレベーター機械室その他これらに類する室の用途に供されるもので、床面積が100㎡以下のもの
c 床面積が50㎡以下(スプリンクラー設備が技術上の基準に適合して設置されているものにあっては100㎡以下)のもの
オ ガス系消火設備(全域放出方式で固定式のものに限る。)が技術上の基準に適合して設置されている場所
アは耐火構造の壁と床で区画し、自動閉鎖装置付きの防火戸と準不燃材料の仕上げをそろえた部分で、変電室等・100㎡以下の機械室等・50㎡以下(スプリンクラー設備があれば100㎡以下)の部分が当たります。
オは全域放出方式で固定式のガス系消火設備が基準どおり付いている場所で、キは容量15,000kVA未満の密閉方式の電気設備や1,000kVA未満の電気設備などを置いた部分です。
四日市市が準耐火構造の建物でも区画を認めているのに対し、津市のアは耐火構造の壁と床での区画を求めている点も違います。
4本部の一覧を並べると、外せる部屋の範囲と条件は次のように分かれます。
| 項目 | 四日市市 | 鈴鹿市 | 埼玉県央広域 | 津市 |
|---|---|---|---|---|
| 根拠の書き方 | 記載なし(欄外に昭和46年消防予第54号) | 令第32条を適用 | 記載なし | 令第32条を適用 |
| 区画した小さな室 | 100㎡以下(廊下50㎡以下) | 50㎡以下(廊下15㎡以下) | 50㎡以下(廊下15㎡以下) | 50㎡以下(スプリンクラー設備で100㎡以下) |
| 区画の壁と床 | 耐火構造又は準耐火構造の建物 | 準耐火構造 | 準耐火構造 | 耐火構造 |
| 機械室 | 面積の記載なし | 面積の記載なし | 面積の記載なし | 100㎡以下 |
| 冷蔵室・冷凍室 | 特定防火設備又は不燃区画で50㎡以下 | 早期感知の装置+移報 | 早期感知の自動温度調節装置+移報 | 室内を不燃材料で仕上げ |
| 金庫室 | あり | なし | あり | なし |
| エレベーターホール・風除室 | なし | あり | あり | 風除室のみ |
| 隣の室の排煙口を借りる | なし | 30m以下・50㎡以下 | 30m以下・50㎡以下 | なし |
| ガス系消火設備・電気設備 | なし | なし | なし | あり |
同じ三重県でも、四日市市と鈴鹿市と津市で外せる部屋がこんなに違うのですね。
そうなんです、管轄が変われば一覧も変わります。
計画の早い段階で、どの項目で外すつもりかを消防本部に伝えておくと安心です。
よくある質問
まとめ
仕切る部屋の面積と防火戸の種類を図面に書き込んで、四日市市消防本部に相談してみます!
天井の排煙口の位置まで描いた図があれば、どの項目に当たるかの話が早く進みます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第28条・第32条(e-Gov法令検索)
- 消防法施行規則 第29条・第30条(e-Gov法令検索)
- 建築基準法施行令 第126条の2(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」(令和6年4月1日改訂)第2章 第18 排煙設備 1 https://yokkaichisyoubou.jp/sys/wp-content/uploads/2024/04/009.pdf
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第4章 第18 排煙設備 2 https://www.city.suzuka.lg.jp/shobo/1012943/1016101/index.html
- 埼玉県央広域消防本部「埼玉県央広域消防本部消防用設備等に関する審査基準」第4章 第18 排煙設備 5 ⑽ https://www.ken-o.or.jp/notifiappli/equipment-style/page-9867/
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」5-19 排煙設備 2(6) https://www.info.city.tsu.mie.jp/kurashi/bousai_kyuukyuu_shoubou/1003213/1003292/index.html
※本記事は四日市市消防本部・鈴鹿市消防本部・埼玉県央広域消防本部・津市消防本部が公表している審査基準と、消防法施行令・施行規則・建築基準法施行令に基づく一般的な解説です。各基準の文章は原本の画像で確かめ、長い部分は(略)で省きました。四日市市の基準に根拠条文の記載がない点は、欄外の通知名の表示を含めて原本どおりに記しています。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新は管轄の消防署・消防本部で確認してください。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





