スプリンクラー設備や連結散水設備には、建物全体ではなく階の床面積で付けるかどうかが決まるものがあります。
では、1つの階の途中を開口部のない耐火構造の壁で仕切ったとき、その階の床面積は合計で見るのでしょうか、区画ごとに見るのでしょうか。
四日市市消防本部の審査基準は、区画された部分の床面積を一の階の床面積とみなして扱うと定めています。
この記事では四日市市の基準をたどり、鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市・津市と書きぶりを比べ、無窓階の判定で市ごとに分かれる点も確かめます。
四日市市で4階建てのビルを管理していて、4階を2つのテナントに分ける改修を考えています。
壁で仕切ると消防設備の判定は変わりますか。
壁の造りによっては、4階の床面積を区画ごとに見ることになります。
四日市市の審査基準にその扱いが書かれています。
合計で1,000㎡を超えていても、区画ごとに見れば下回ることがあるのですね。
そうです。
ただし、壁が令8区画と同じ造りであることが前提です。
- 施行令第11条第1項第6号・第12条第1項第11号・第28条の2第1項などは、階や地階の床面積で設置が決まる規定です
- 四日市市は、開口部のない耐火構造の壁で区画された階では、区画された部分の床面積を一の階の床面積とみなすとしています
- 区切る壁は令8区画と同じ造りで、2時間以上の耐火性能や外壁・屋根から50cm以上の突き出しが求められます
- 無窓階の判定では、四日市市は容易に破壊できない構造の壁でも区画ごとに判定し、鈴鹿市と堺市は令8区画に限っています
- 四日市市の基準の例は旧い号番号の第8号ロのままなので、現行の第11号ロと読み替えて確かめます
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目次
階単位の規制とはどの条文のことか

四日市市の基準が例に挙げている条文を、e-Govの現行の施行令で読みます。
六 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十二)項まで、(十四)項及び(十五)項に掲げる防火対象物の地階、無窓階又は四階以上の階で、床面積が、同表(一)項に掲げる防火対象物にあつては百平方メートル以上、同表(二)項から(十)項まで、(十二)項及び(十四)項に掲げる防火対象物にあつては百五十平方メートル以上、同表(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物にあつては二百平方メートル以上のもの
消防法施行令 第12条第1項
十一 前各号に掲げる防火対象物又はその部分以外の別表第一に掲げる防火対象物の地階、無窓階又は四階以上十階以下の階(総務省令で定める部分を除く。)で、次に掲げるもの
(略)
ロ 別表第一(二)項及び(四)項に掲げる防火対象物の階で、その床面積が千平方メートル以上のもの
消防法施行令 第28条の2第1項
連結散水設備は、別表第一(一)項から(十五)項まで、(十六の二)項及び(十七)項に掲げる防火対象物で、地階の床面積の合計(同表(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては、延べ面積)が七百平方メートル以上のものに設置するものとする。
屋内消火栓設備の第11条第1項第6号は、(4)項の物品販売店舗なら地階・無窓階・4階以上の階で150㎡以上が対象です。
スプリンクラー設備の第12条第1項第11号ロは、(2)項と(4)項の4階以上10階以下の階などで1,000㎡以上が対象です。
連結散水設備の第28条の2第1項は、建物の階ごとではなく地階の床面積の合計が700㎡以上かどうかで決まります。
無窓階かどうかも施行規則第5条の5で階ごとに判定するので、自分の建物でどの規定が効いているかを先に一覧にしておくと話が早くなります。
うちのビルは(4)項で、4階の床面積は合計1,500㎡です。
それなら4階はスプリンクラー設備の1,000㎡を超えています。
壁で区切ったときにどう数えるかを次で見ていきましょう。
四日市市の基準は壁で区切られた階をどう数えるのか

この項目には本市の行政指導を示す下線は引かれていません。
開口部のない耐火構造の壁で区画されている階に階単位の規制(例えば政令第11条第1項第6号、政令第12条第1項第8号等)を適用する場合は、区画された部分の床面積を一の階の床面積とみなして取扱うこと。
基準の1つ目の例は、(4)項の建物の4階を700㎡と800㎡に壁で区切ったもので、4階には第12条第1項の第8号ロを適用しないとしています。
4階の合計は1,500㎡でも、どちらの区画も1,000㎡未満だからです。
2つ目の例は地階が2層あり、壁で区切った片側が300㎡と300㎡、もう片側が200㎡と200㎡のもので、それぞれ600㎡と400㎡なので第28条の2第1項を適用しないとしています。
なお、同じ4階でも屋内消火栓設備の(4)項の150㎡は700㎡と800㎡のどちらの区画も超えるので、区切っても結果は変わりません。 四日市市の例をたどると、次の順番になります。
- その階の用途と床面積から、効いている階単位の規制を一覧にする
- 階を区切る壁が開口部のない耐火構造の壁かどうかを確かめる
- 当たるなら、区画された部分の床面積をそれぞれ一の階の床面積とみなす
- みなした床面積で、規定ごとの数値(150㎡・1,000㎡・700㎡など)と比べ直す
つまり、仕切り方しだいで4階のスプリンクラー設備が要らなくなることもあるのですね。
例のとおりならそうなります。
ただし壁の造りの条件があるので、次の項目も必ず見てください。
区切る壁はどんな構造でなければならないのか

2の壁も同じ節の中の言葉なので、3に書かれた令8区画の構造を満たす壁を指すと読めます。
(1)鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造又はこれらと同等に堅牢かつ容易に変更できない耐火構造であること。(壁式鉄筋コンクリート造(壁式プレキャスト鉄筋コンクリート造を含む。)及びプレキャストコンクリートカーテンウォールは該当する。ALC等は認められない。)
(2)建基政令第107条第1号に定める通常の火災時の加熱に2時間以上耐える性能を有すること。
(3)令8区画の耐火構造の床又は壁の両端又は上端は、当該防火対象物の外壁面又は屋根面から50cm以上突き出していること。
欄外には出典として平成7年3月31日の消防予第53号が示されています。
続きには、壁を含む幅3.6m以上の外壁や屋根を耐火構造にし、そこに開口部を設けないか、開口部に防火設備を付けて90cm以上離せば突き出しを要しないというただし書もあります。
鈴鹿市と埼玉県央広域は、同じ扱いをはっきり「令8区画されている階」と書いています。
堺市は同じ節の図の注で、開口部のない2時間以上の耐火性能を有する耐火構造の壁を「以下同じ」としています。
改修で壁を立てるときは、軽量鉄骨やALCの間仕切ではこの扱いにならないことを前提に、設計者と壁の仕様を詰めます。
テナントの間仕切を少し厚くするだけでは駄目なのですね。
はい、2時間以上の耐火性能と突き出しまで要ります。
図面の段階で消防本部に壁の仕様を見てもらいましょう。
無窓階の判定も区画ごとに行うのか

ここは四日市市と他の市で書きぶりがはっきり分かれます。
開口部のない耐火構造又は容易に破壊できない構造の壁で区画されている場合は、区画された部分ごとに無窓の判定をすること。
四日市市は令8区画の構造に限らず、容易に破壊できない構造の壁で区画された場合も区画ごとに判定するとしていて、欄外には昭和50年6月11日の消防安第62号が示されています。
鈴鹿市は、壁が令8区画に当たる場合に限って区画ごとの扱いをし、当たらない間仕切壁は往来が直接できなくても合わせて判定するとしています。
堺市も、令8条の区画は区画ごとに判定し、それ以外の開口部のない間仕切壁は階全体の面積で判定するとしています。
窓の無い側を倉庫やサーバー室にする改修では、四日市市と鈴鹿市・堺市で結論が分かれることがあるので、壁の種類を先に確かめます。
| 消防本部 | 区画ごとに判定する壁 | 令8区画に当たらない壁 |
|---|---|---|
| 四日市市 | 開口部のない耐火構造又は容易に破壊できない構造の壁(第1章 第4 5(2)・下線なし) | 容易に破壊できない構造なら区画ごと |
| 鈴鹿市 | 令8区画に当たる間仕切壁(第2章 第4 2⑸ア・印なし) | 合わせて判定し、区画ごとに平均して開口部を設ける(同イ▲) |
| 堺市 | 政令第8条の区画(第5 4(3)・印なし) | 階全体の面積で判定し、区画ごとに平均して開口部を設ける |
| 埼玉県央広域・津市 | 無窓階の章に区画ごとの判定の記載なし | 記載なし |
窓の無い区画を作ると、そこだけ無窓階になることもあるのですか。
鈴鹿市では令8区画の場合に限ってそう扱うと書いています。
どの壁で区切るかで判定が変わるので、計画の前に確かめましょう。
他の市の基準と比べて何を確かめればよいのか

並べると、言葉と例に挙げる号番号に違いがあります。
令8区画されている階に、階単位の規制(例えば、政令第11条第1項第6号、第12条第1項第11号等)を適用する場合は、区画された部分の床面積を一の階の床面積とみなして取り扱う。(第2-14図参照)
違いは、四日市市だけが例を第12条第1項の第8号ロと書いている点です。
e-Govの現行の施行令で(2)項と(4)項の階の1,000㎡を定めているのは第11号ロで、鈴鹿市・埼玉県央広域・堺市は第11号ロと書いています。
津市の「消防法施行令第8条の解説」は、区画された部分ごとに階又は階数に応じて設置するとまでは書いていますが、階の途中を区切った場合の項目はありません。
どの規定が「階単位の規制」に入るかはどの本部も「例えば」で示すだけなので、使いたい規定ごとに所轄の消防本部へ確かめます。
| 消防本部 | 書きぶり | 例に挙げる条文 | 記号 |
|---|---|---|---|
| 四日市市 | 開口部のない耐火構造の壁で区画されている階 | 令11条1項6号・令12条1項8号(例は8号ロ) | 下線なし |
| 鈴鹿市 | 令8区画されている階 | 令11条1項6号・令12条1項11号(例は11号ロ) | 印なし |
| 埼玉県央広域 | 令8区画されている階 | 令11条1項6号・令12条1項11号(例は11号ロ) | 印なし |
| 堺市 | 開口部のない耐火構造の壁で区画されている階 | 令11条1項6号・令12条1項11号(例は11号ロ) | 印なし |
| 津市 | 階の途中を区切った場合の項目なし | ― | ― |
- 区画ごとの床面積と、効いている階単位の規制の一覧
- 壁の構造(2時間以上の耐火性能・突き出し又はただし書の措置・開口部が無いこと)
- 無窓階の判定を区画ごとにするのか階全体でするのか
号番号のずれは、読む側が気づかないと混乱しそうです。
現行の条文で第11号ロと読み替えて相談すれば通じます。
図面と一覧をそろえて事前相談に行きましょう。
よくある質問
まとめ
区画ごとの床面積と壁の仕様をまとめて、予防課に相談してみます!
先に確かめておけば改修の手戻りを防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令 第8条・第10条第1項第5号・第11条第1項第6号・第12条第1項第11号・第28条の2第1項、消防法施行規則 第5条の5(e-Gov法令検索)
- 四日市市消防本部「四日市市消防同意事務審査基準」総則 1、第1章 第4 5(2)・第6 1〜3 第1章のPDF
- 鈴鹿市消防本部「鈴鹿市消防用設備等に関する審査基準」第2章 第4 2⑸・第3章 第2 4⑶⑷ 第3章 第2のPDF 第2章 第4のPDF
- 埼玉県央広域消防本部「消防用設備等に関する審査基準」第3章 第2 1・4⑵ 第2のPDF
- 堺市消防局「堺市消防同意・消防用設備等審査基準」(第二十二版)第5 無窓階の取扱い 4(3)、第6 政令第8条等に規定する区画等の取扱い 1(5)(6) https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/bosai/shobo/shokai/reiki/kijyun/index.html
- 津市消防本部「津市予防事務審査検査基準」(令和8年3月1日現在)1-4 消防法施行令第8条の解説 1-4のPDF
※本記事は各消防本部が公開している審査基準と国の法令に基づく一般的な解説です。運用基準・条例は改正されることがあるため、最新の内容は管轄の消防署・消防本部で確認してください。各本部の資料は2026年10月時点の公開版で確認しています。個々の建物で壁による区画をどう扱うかは、所轄の消防本部にご確認ください。





