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用途地域に合わない既存不適格建築物はなぜ増築しても用途規制を満たさずに済むのか|建築基準法施行令第137条の7が定める緩和の要件を解説

用途地域に合わない建物も要件を満たせば増築できることを示す解説画像

建築基準法第48条は、用途地域ごとに建てられる建築物の用途を制限しています。
古くからある建物の中には、建てた当時は適法でも、その後の用途地域の指定や規制の見直しでこの規定に適合しなくなったものが少なくありません。
こうした「既存不適格建築物」が増築や改築をしようとすると、原則としては建物全体を現行の用途規制に合わせる必要が生じます。
けれども一定の要件を満たせば、建築基準法施行令第137条の7により、この負担が大きく緩和されます。

うちの工場は準工業地域にあって、今の用途規制には合っていない古い建物なんです。
増築するなら、用途を今の規制どおりに変えないといけませんか。

いいえ、要件を満たせば用途を変えなくても増築できます。
建築基準法施行令第137条の7という緩和の規定があるんです。

緩和があるんですね、少し安心しました。
どんな建物のどんな増築が対象になるんでしょうか。

対象になるのは、用途地域の規制に適合していない建物の増築や改築です。
この記事で、対象と要件を順番に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 用途地域の規制に適合しない既存不適格建築物も、要件を満たせば増築や改築ができます(建築基準法第86条の7第1項)。
  • 対象となるのは、法第3条第2項により現行の第48条の規定の適用を受けない既存不適格の建築物です。
  • 要件には、容積率などへの適合に加え、増築部分の床面積を基準時の1.2倍以内に抑える条件があります(施行令第137条の7)。
  • 不適合の事由が用途・動力・容器などいずれであるかによって、1.2倍の判定対象が異なります。
  • 用途の変更を伴う増築や改築は、原則としてこの緩和の対象外です。

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用途地域の建物が要件を満たせば増築や改築ができることを示す図解

なぜ用途地域の建物は増築のたびに用途規制を問われるのか

用途地域の中に、周囲と異なる用途で使われている一棟だけ古い建物が混じって建っているイラスト
用途地域は、住居・商業・工業などの土地利用のバランスを保つために都市計画で指定される区域です。
建築基準法第48条は、この区域ごとに建てられる建築物の用途を制限しています。
建築基準法第三条第二項 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
用途地域内の建物も、建てた当時はほとんどが適法でした。
用途地域の指定や別表第二の規制内容が見直されると、建てたときは適合していた用途が、その後の規制に適合しなくなることがあります。
これが建築基準法第3条第2項が定める「既存不適格建築物」で、違反建築物ではなく、そのまま使い続けること自体は認められています。
問題になるのは増築や改築をするときで、原則としては工事にあわせて建物全体を現行の第48条の用途規制に適合させなければなりません。
この負担を一定の範囲で軽くするのが、建築基準法第86条の7と施行令第137条の7の緩和規定です。

なるほど、用途地域の規制が変わったせいで古い建物の用途が合わなくなることがあるんですね。
自分の建物がそうなのか、どうやって分かりますか。

建築確認を取った当時の図面と、今の第48条・別表第二の規制を照らし合わせれば分かります。
迷ったら特定行政庁や設計士に確認するのが確実です。

どんな建物のどんな増築が緩和の対象になるのか

建物に新しい増築部分が接続し、延べ面積と容積率を示すゲージが並んでいるイラスト
緩和の対象になるのは建物そのものではなく、増築や改築という工事の範囲です。
どんな増改築でも使える制度ではなく、対象になる部分が政令で決められています。
建築基準法第八十六条の七第一項(抜粋) 第三条第二項の規定により(略)第四十八条第一項から第十四項まで(略)の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替をする場合においては(略)、これらの規定は、適用しない。
対象になるのは、第48条の用途規制に適合しない建物の増築や改築だけです。
建築基準法第86条の7第1項は、第3条第2項により第48条など複数の規定の適用を受けない建築物について、政令で定める範囲内で増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替をする場合に、その規定を適用しないと定めています。
このうち増築・改築の範囲を具体的に定めているのが、次の章で見る施行令第137条の7です。
大規模の修繕や大規模の模様替は増築・改築とは別の考え方で範囲が決まるため、この記事では増築・改築に絞って説明します。

増築だけじゃなくて改築でも対象になるんですね。
具体的にはどんな要件を満たせばいいんでしょうか。

要件は大きく分けて、容積率などへの適合と床面積の上限の二つがあります。
次の章で順番に見ていきましょう。

緩和を受けるにはどんな要件を満たす必要があるのか

延べ面積のゲージと用途不適合部分の床面積のゲージが1.2倍のラインを示しているイラスト
前の章で見た対象について、具体的に満たすべき要件を確認します。
要件は複数あり、そのすべてを同時に満たす必要があります。
建築基準法施行令第百三十七条の七(用途地域等関係) 法第三条第二項の規定により法第四十八条第一項から第十四項までの規定(略)の適用を受けない建築物について法第八十六条の七第一項の規定により政令で定める範囲は、増築及び改築については、次に定めるところによる。二 増築後の床面積の合計は、基準時における床面積の合計の一・二倍を超えないこと。
要件は五つの号に分かれており、そのすべてに該当する必要があります。
一号は、増築・改築後の延べ面積や建築面積が、容積率や建蔽率など敷地に関する規定に適合することを求めています。
二号は増築後の床面積の合計が基準時の1.2倍を超えないこと、三号は用途規制に適合しない部分の床面積の合計が同じく基準時の1.2倍を超えないことを求めています。
四号は、不適合の事由が原動機の出力や機械の台数、容器等の容量による場合に、それらの合計を基準時の1.2倍以内に抑えることを求めています。
五号は、第137条の19第2項に定める範囲を除き、用途の変更を伴わないことを求めています。

要件がいくつもあって、自分の増築計画がどれに当てはまるのか分かりにくいです。
特に気をつけるべき号はどれですか。

床面積に関わる二号・三号・四号は、それぞれ別々に1.2倍の上限を判定します。
この点は次の章でくわしく説明します。

実務で見落としやすいのはどこか

床面積全体・用途不適合部分・動力等を示す三本のゲージと、用途変更に対する赤い禁止マークのイラスト
要件を見てきましたが、五つの号のうち見落としやすいポイントが二つあります。
一つは1.2倍の判定単位、もう一つは用途変更の扱いです。
建築基準法施行令第百三十七条の七第一項第五号 用途の変更(第百三十七条の十九第二項に規定する範囲内のものを除く。)を伴わないこと。
見落としやすいのは、1.2倍の上限が三つの号でそれぞれ別枠に判定される点です。
二号は増築後の床面積全体の1.2倍、三号は用途規制に適合しない部分だけの1.2倍、四号は動力の出力や機械の台数などの1.2倍と、判定の対象がそれぞれ異なります。
どれか一つを満たしていても、他の号を満たしていなければ緩和は受けられません。
もう一つの見落としが五号で、この緩和は用途の変更を伴わない増築・改築が前提になっており、用途そのものを変える工事は、第137条の19が定める類似の用途間の変更など限られた範囲でしか認められません。

同じ1.2倍でも、床面積全体と不適合部分では別々に見ないといけないんですね。
用途を変えたい場合はどうなるんでしょうか。

用途そのものを変える増築は、原則としてこの緩和の対象外です。
最後に実務での確認手順をまとめます。

増築や改築を計画するときは何を確認すればよいか

チェックリストとメジャーのイラスト
増築や改築を計画する際は、次の点を順番に確認してください。
判断に迷う部分があれば、早めに専門家へ相談するのが安全です。
  • 自分の建物が用途地域の規制に適合しない既存不適格用途に当たるかを確認する
  • 増改築後の延べ面積・建築面積が容積率や建蔽率などの規定に適合するかを試算する
  • 増築後の床面積全体と、用途不適合部分の床面積を、それぞれ基準時の1.2倍以内に収まるか確認する
  • 不適合の事由が動力の出力や機械の台数・容器等の容量による場合は、その合計も1.2倍以内に収まるか確認する
  • 増築や改築にあわせて用途そのものを変更する計画がないかを確認する
計画の早い段階で確認しておくことが大切です。
設計が固まってから要件を満たさないと分かると、計画の手戻りが発生します。

要件を確認しながら計画すれば、無理に用途を変えなくても増築できそうです。
次はよくある質問も見てみます。

はい、あわせてご確認ください。
次によくある質問をまとめました。

よくある質問

Q用途地域の規制に合わない建物は、増築するとき必ず用途を今の規制どおりに変えないといけませんか?
Aいいえ。建築基準法施行令第137条の7などの要件を満たせば、増築・改築に係る部分について現行の第48条の用途規制を適用しないという緩和を受けられます。
Q緩和を受けるための要件にはどのようなものがありますか?
A容積率などの敷地に関する規定への適合に加え、床面積や動力の出力などを基準時の1.2倍以内に抑えることが必要です。
Q増築とあわせて用途を変更することはできますか?
A原則としてできません。この緩和は用途の変更を伴わない増築・改築が前提で、用途変更は施行令第137条の19が定める限られた範囲でのみ認められます。
Q1.2倍の上限は、建物全体の床面積で判定されますか?
Aいいえ。増築後の床面積全体、用途不適合部分、動力の出力等の三つが、それぞれ別に基準時の1.2倍以内かどうかで判定されます。

まとめ

✔用途地域の規制に適合しない既存不適格建築物も、要件を満たせば増築・改築ができます。
✔根拠は建築基準法第86条の7第1項と施行令第137条の7です。
✔対象になるのは、法第48条の用途規制に適合しない建物の増築・改築です。大規模の修繕・模様替は別の考え方によります。
✔要件は五つの号に分かれ、容積率等への適合と床面積等の1.2倍以内をすべて満たす必要があります。
✔床面積全体・用途不適合部分・動力の出力等の1.2倍は、それぞれ別枠で判定されます。
✔用途の変更を伴う増築・改築は、原則としてこの緩和の対象外です。
✔用途変更を伴う場合は、施行令第137条の19が定める限られた範囲でのみ認められます。

増築の計画を立てるときは、今日の内容を確認しながら進めます!

建築物の増築や改築をお考えの際は、いつでもご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第3条・第48条・第86条の7
  • 建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)第137条の7

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門家にご確認ください。

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