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特定屋外貯蔵タンクの溶接条件はなぜ区分でまとめられるのか|鋼板と溶接棒の呼び方が変わった経緯を解説

屋外貯蔵タンクの鋼板と溶接痕を示す外観写真

特定屋外貯蔵タンクを新設・修理するとき、溶接部は溶接施工方法確認試験という試験を受けなければなりません。
工事のたびに一から試験をやり直すのは現場の負担が大きいため、告示は「同一とみなせる溶接条件」の区分を定めています。
令和3年3月19日、この区分は日本産業規格(JIS)の改正を踏まえて一部が改正されました(消防危第37号)。
呼び方が変わっただけの部分と、実際に区分が変わった部分を混同すると、試験のやり直しを見落とすことになります。

うちの屋外タンクを修理することになったんですが、業者から「溶接の試験区分」という言葉が出てきて意味が分かりません。

溶接の条件が同じとみなせる範囲を区分でまとめたもので、令和3年に呼び方が一部変わったんですよ。

呼び方が変わっただけなら、うちには関係なさそうですね。

実は区分そのものが変わった部分もあるので、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 令和3年3月19日の消防危第37号により、平成9年の消防危第89号通知が定める溶接条件の区分がJIS改正に合わせて一部改正されました。
  • 対象は特定屋外貯蔵タンクの新設・補修工事で行う溶接で、鋼板の厚さや種類など13項目の区分がすべて一致すれば試験を省略できます。
  • 鋼板の種類区分は「50キログラム級」等の旧呼称から「引張強さ490N/mm²級」等の新呼称に変わりました。
  • 被覆アーク溶接棒や溶接用ワイヤの区分は低水素系かどうかなどでより細かく再編されました。
  • 改正時点で試験を実施中の試験材は改正前の区分のままでも有効という経過措置があります。

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溶接施工方法確認試験の区分がJIS改正で見直された経緯を示す図解

溶接施工方法確認試験はなぜ区分でまとめられているのか

鋼板に溶接ビードを入れた試験材を確認する様子を示すイラスト
特定屋外貯蔵タンクの溶接部は、告示が定める溶接施工方法確認試験に合格しなければ工事を進められません。
ただしタンクや工事のたびに一から試験をやり直すのでは、現場の負担が大きくなってしまいます。
(令和3年3月19日 消防危第37号)屋外貯蔵タンクの溶接施工方法確認試験については、「特定屋外貯蔵タンクの溶接施工方法確認試験について」(平成9年9月1日付け消防危第89号。以下「89号通知」という。)において、特定屋外貯蔵タンクの鋼板、溶接材料、溶接方法等の組合せがほぼ同等となる溶接条件の区分を定めているところです。今般、日本産業規格における改正を踏まえ、89号通知を一部改正し、溶接条件の区分を変更しました。
区分の目的は、似た条件の工事なら試験をやり直さずに済ませることです。
平成9年の消防危第89号通知が、鋼板・溶接材料・溶接方法等の組合せがほぼ同等となる溶接条件の区分をあらかじめ定めています。
この区分に当てはまれば、新しい工事でも同一の溶接条件に準ずるとみなされ、試験成績書を使い回せます。
令和3年の消防危第37号は、日本産業規格(JIS)の改正を踏まえて、この89号通知の区分を一部改正したものです。
まずは、どんな組合せが区分の対象になるのかを見ていきます。

試験をやり直さずに済む場合があるとは知りませんでした。

次は、どの組合せが同一とみなされるのか、対象の条件を確認しましょう。

対象になるのはどんな溶接条件の組合せか

突合せ溶接とすみ肉溶接とT継手を並べて示すイラスト
告示は、溶接施工方法確認試験の対象になる溶接条件そのものを定めています。
89号通知は、その中の「これに準ずるもの」を具体的な区分に落とし込んだものです。
(危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第4条の21の2第1項第1号)溶接施工方法確認試験は、特定屋外貯蔵タンクに用いる鋼板、当該タンクの工事に用いる溶接材料、溶接方法等の組合せが同一となる溶接条件又はこれに準ずるものによつて行うこと。
(消防危第89号)溶接施工方法確認試験は、次に定める溶接条件の区分の組合せがすべて同一となる場合においては、同一の溶接条件に準ずるとみなすものとする。(鋼板の厚さ、鋼板の種類、被覆アーク溶接棒、フラックス、溶接用ワイヤ、溶接姿勢、溶接方法、予熱、溶接後熱処理、シールドガス、裏面からのガス保護、電極、層盛りの13項目。)
対象になるのは、突合せ溶接・重ねすみ肉溶接・T継手といった溶接方法の組合せです。
区分の項目は鋼板の厚さ・種類・溶接棒・ワイヤ・溶接姿勢・予熱・後熱処理など13項目に及びます。
このすべてが同一区分に収まって、初めて「同一の溶接条件に準ずる」とみなされます。
試験そのものは、従来どおり危険物保安技術協会(KHK)が実施しています。
次は、令和3年の改正で実際に何が変わったのかを見ていきます。

13項目も一致していないといけないんですね、かなり細かいです。

はい、だからこそ改正でどこが動いたかを正確に押さえる必要があります。

令和3年の改正で鋼板と溶接棒の区分は何が変わったのか

旧呼称の鋼板見本と新呼称の鋼板見本を並べて示すイラスト
改正の中身は大きく分けて二つです。
どちらもJIS(日本産業規格)の改正に合わせた見直しです。
(消防危第89号 改正後)2 鋼板の種類 鋼板の種類の区分は次表による。軟鋼(SS400,SM400,SMA400,SPV235)、高張力鋼で引張強さが490N/mm²級のもの(SM490,SM490Y,SMA490,SM520,SPV315,SPV355)、高張力鋼で引張強さが590N/mm²級のもの(SM570,SMA570,SPV450,SPV490等)、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304,SUS316)。(略)5 溶接用ワイヤ 軟鋼及び490N/mm²鋼に用いる溶接ワイヤ及びティグ溶加材、590N/mm²鋼に用いるもの、オーステナイト系ステンレス鋼の溶着金属が得られるものに区分する。
一つ目は鋼板の種類区分の呼び方の変更です。
旧区分の「50キログラム級高張力鋼」「60キログラム級高張力鋼」という呼び方が、「引張強さが490N/mm²級のもの」「引張強さが590N/mm²級のもの」という表記に変わりました。
対応する材料規格(SM490やSM570など)自体はほぼ従来どおりで、呼び方をJISの表記に合わせ直した改正です。
二つ目は被覆アーク溶接棒と溶接用ワイヤの区分です。旧区分はJIS規格番号(Z3211等)ごとの大まかな括りでしたが、改正後は低水素系かどうか・鋼種・ステンレス用かどうかで区分し直され、より細かくなりました。
呼び方だけが変わった部分と、区分の切り方自体が変わった部分は分けて理解しておく必要があります。

鋼板の呼び方が変わっただけなら、あまり心配しなくてよさそうですね。

溶接棒とワイヤの区分は実際に細分化されているので、そこは見落とし注意です。

実務で見落としやすいのはどこか

改正前の試験成績書と改正後の区分表を照合する様子を示すイラスト
改正があったからといって、すべての試験をやり直す必要があるわけではありません。
ただし判断を誤りやすいポイントがあります。
(消防危第37号)2 運用上の留意事項について 本通知発出時点において、現に溶接施工方法確認試験を実施している試験材については、改正前の89号通知に示す区分も引き続き有効として差し支えない。
見落としやすいのは、旧区分の試験成績書がいつまで使えるかの判断です。
令和3年3月19日の通知発出時点で現に試験を実施していた試験材は、改正前の区分のままでも有効という経過措置があります。
一方で、これから新しく着手する工事については改正後の区分表で照合し直す必要があります。
また13項目すべてが一致して初めて区分が同じとみなされるため、溶接棒やワイヤの区分だけ古いままという見落としも起こりがちです。
「前回の工事のときの成績書があるから大丈夫」と決めつけず、改正後の区分表と突き合わせることが大切です。

古い成績書をそのまま使い回してしまいそうで怖いです。

工事を頼むときに、施工業者へ区分表との照合を依頼しておくと安心ですよ。

明日からなにを確認すればよいのか

溶接条件の区分表とチェックリストを確認する様子を示すイラスト
最後に、明日から確認しておきたいことを整理します。
根拠になるのは今回の通知が示す考え方です。
(消防危第89号)溶接施工方法確認試験については、従前から危険物保安技術協会で実施してきたところであるが、引き続き、改正内容に即して実施することとしていることを申し添える。
明日からできることは四つあります。
まず、これから着手する新設・補修工事があれば、施工業者に改正後の区分表で試験区分が一致しているかを確認してもらうことです。
次に、手元にある試験成績書が令和3年3月19日より前のものであれば、発出時点で試験を実施中だったかを確認し、経過措置の対象かどうかを整理します。
さらに、鋼板の呼び方だけでなく溶接棒やワイヤの区分も改正後の内容に合っているかをあわせて確認します。
最後に、試験の実施先は危険物保安技術協会(KHK)であることを把握し、疑わしい点は所轄消防署に確認します。

まずは手元の成績書がいつのものか、確認するところから始めます。

工事の見積りを取るタイミングであわせて確認するのがおすすめです。

よくある質問

Q溶接施工方法確認試験は誰が実施していますか?
A従前から危険物保安技術協会(KHK)が実施しており、令和3年の改正後も引き続き同協会が改正内容に即して試験を行っています。
Q改正前に取得した試験成績書は使えなくなりますか?
Aいいえ。通知発出時点で現に試験を実施していた試験材は、改正前の89号通知に示す区分のままでも有効という経過措置があります。
Q鋼板の種類区分は実質的に何が変わったのですか?
A材料規格自体はほぼ従来どおりで、「50キログラム級」等の呼び方が「引張強さ490N/mm²級」等のJIS準拠の表記に変わったのが中心です。
Q13項目のうち一つでも区分が違うとどうなりますか?
A同一の溶接条件に準ずるとはみなされません。鋼板の厚さから層盛りまで13項目すべてが同一区分でそろって初めて、試験を省略できます。

まとめ

✔令和3年3月19日の消防危第37号により、平成9年の消防危第89号通知が定める溶接条件の区分がJIS改正に合わせて一部改正されました。
✔対象は特定屋外貯蔵タンクの新設・補修工事で行う溶接で、鋼板の厚さや種類など13項目の区分がすべて一致すれば試験を省略できます。
✔鋼板の種類区分は「50キログラム級」等の旧呼称から「引張強さ490N/mm²級」等の新呼称に変わりました。
✔被覆アーク溶接棒や溶接用ワイヤの区分は低水素系かどうかなどでより細かく再編されました。
✔通知発出時点で現に試験を実施していた試験材は、改正前の区分のままでも有効という経過措置があります。
✔試験の実施先は危険物保安技術協会(KHK)で、改正後も従来どおり実施されています。
✔工事の見積り時に、施工業者へ改正後の区分表との照合を依頼しておくと見落としを防げます。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「特定屋外貯蔵タンクの溶接施工方法確認試験について」の一部改正について(令和3年3月19日 消防危第37号 消防庁危険物保安室長)
  • 特定屋外貯蔵タンクの溶接施工方法確認試験について(通知)(平成9年9月1日付け消防危第89号 消防庁危険物保安室長、令和3年3月19日消防危第37号改正)
  • 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第4条の21の2
  • 消防組織法第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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