廊下や階段の床は毎日踏まれる場所なので、めくれや欠けが少しずつ増えていきます。
避難施設の管理というと物を置かないことばかりが話題になりますが、床そのものの状態にも決まりがあります。
しかもその決まりは消防法の条文をいくら探しても出てこず、市町村の火災予防条例のほうに置かれています。
立入検査でも実際に歩いて見られるところなので、条例が床になにを求めているのかを条文から確かめておきます。
階段の床材が一部めくれてきたのですが、物を置いているわけではないので大丈夫でしょうか。
火災予防条例には床面そのものを維持しなさいという号があります。
物の話とは別に見られるところです。
床の状態まで条文に書いてあるものなのですか。
はい、つまづきとすべりという言葉で書かれています。
どこに置かれた決まりなのかから順に見ていきましょう。
- 避難施設の管理は消防法ではなく市町村の火災予防条例に置かれています
- 避難施設とは避難口と廊下と階段と避難通路その他避難のために使用する施設のことです
- 床面は避難に際しつまづきやすべりを生じないように維持することが求められます
- 東京都火災予防条例は階段に敷物の類を敷かないという号を別に置いています
- 立入検査では消防法第4条第1項により管理の状況が検査されます
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目次
避難施設の床面という決まりはどこにあるのか

それでも建物の側にはこの維持を求められます。
一 避難のために使用する施設の床面は、避難に際し、つまづき、すべり等を生じないように常に維持すること。
消防庁が示している火災予防条例(例)は昭和36年11月22日付けの自消甲予発第73号として通知されたひな型で、各市町村はこれを踏まえて自分の条例を作っています。
そのひな型の第40条が避難施設の管理という条で、第一号にいま見た床面の話が書かれています。
東京都火災予防条例では第54条がこの条にあたり、第二号が同じ内容を受け持っています。
まず自分の建物がある市町村の条例を開いて、避難施設の管理という見出しの条を探すところが出発点になります。
消防法だけ見ていても出てこないわけですね。
お住まいの市町村の条例をまず開いてみてください。
どの建物のどこが対象になるのか

ところが条文はそういう作りになっていません。
令別表第一は劇場や百貨店から工場、共同住宅、事務所までを広く並べた表なので、そこに掲げる防火対象物であれば用途を問わず主語に入ります。
どこが対象かのほうは条例の中に定義が置かれていて、避難口と廊下と階段と避難通路のほか、避難のために使用する施設が広く含まれます。
つまり事務所のエントランスから非常口までのルート全体が、そのまま条文の言う避難施設になります。
自分の建物のどこが避難施設なのかを図面に線で引いてみると、見るべき床の範囲がはっきりします。
非常階段だけの話ではないのですね。
逃げるときに通る床は全部が対象と考えてください。
まずは図面に避難のルートを引いてみましょう。
床と階段には具体的になにが求められるのか

そのぶん言葉を正確に読む必要があります。
同条第五号 階段には、敷物の類を敷かないこと。ただし、消防総監が定める基準に適合する場合は、この限りでない。
一つめは床面の状態で、避難に際してつまづきやすべりを生じないように維持することです。
めくれた床材や欠けた段鼻、はがれかけた滑り止めは、この号が正面から見ている対象になります。
二つめは階段に敷物の類を敷かないことで、こちらは条例(例)には無く東京都が置いている号です。
ただし書きはありますが消防総監が定める基準に適合する場合に限られるので、自分で判断せず所轄消防署に確かめてください。
階段の踊り場に置いているマットも敷物にあたるのでしょうか。
そこはただし書きの当てはまり方で変わるところです。
敷いているものを写真に撮って所轄消防署に見てもらってください。
実務で見落としやすいのはどこか

条文の作りはそうなっていません。
消防法第8条の2の4が言っているのは置かれた物件の話で、床材そのものの状態には触れていません。
段ボールをどけても、その下でめくれていた床材はめくれたままだということです。
もう一つ落としやすいのが主語で、条例の主語である関係者には消防法第2条第4項により占有者も入ります。
借りているテナントの側も無関係ではないので、原状回復の範囲と合わせて貸主と話をしておくと後が早くなります。
片づけの話だとばかり思っていました。
片づけたあとの床を見るところまでが管理です。
床材の傷みは修繕の話になるので早めに動いてください。
明日からなにを確認すればよいのか

実際に歩いて見るところまでが仕事です。
まず自分の市町村の火災予防条例を開き、避難施設の管理という見出しの条と、そこにぶら下がる号を印刷しておきます。
次に避難口から地上まで実際に歩いて、めくれ、欠け、段差、濡れ、はがれかけた滑り止めを写真に撮って拾い出します。
そのうえで階段に敷いているマットや敷物を一覧にして、所轄消防署にただし書きの当てはまりを確かめます。
最後に直した箇所と日付を記録に残しておくと、立入検査で管理の状況を聞かれたときにそのまま答えられます。
歩いて写真を撮るところからならすぐ始められますね。
写真に日付が残るので記録としても使えます。
今週のうちに一往復してみてください。
よくある質問
まとめ
今週じゅうに避難口から地上まで歩いて床の写真を撮ってきます。
階段の敷物も一覧にしてみます。
その一覧が次の立入検査の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第2条第4項・第4条第1項・第8条の2の4
- 東京都火災予防条例(昭和37年東京都条例第65号)第50条の3第6項・第54条
- 消防庁「火災予防条例(例)」(昭和36年11月22日自消甲予発第73号)第40条
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
- 東京都例規集データベース
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





