地震のあとに在館者をどの順番で逃がすか決めてありますか。
避難誘導班の名簿はあるのに、誰から先に出すのかまで書いた消防計画はあまり見かけません。
消防庁のガイドラインは、多数の在館者が一斉に避難階段へ殺到することによるパニックを防ぐ工夫を挙げています。
この記事では一斉避難の抑止と率先避難者の活用を整理します。
地震のあとは全員をすぐ階段へ出すものだと思っていました。
順番をつけてよいのでしょうか。
出す順番を決めておくのはむしろ挙げられている工夫です。
ガイドラインは一斉避難の抑止という言葉で並べています。
待たせるほうの人はそのまま置いておけばよいのですか。
そこが一番の落とし穴です。
待たせた人へ次の合図を届けるところまでが一組になります。
- 条文が名指ししているのは避難誘導までで出す順番までは決めていません
- 動くのは自衛消防組織で誘導の業務にはおおむね2人以上の要員が要ります
- ガイドラインは一斉に避難階段へ殺到させない工夫を一覧にしています
- 地震のときは各階1か所の階段から出したほうが早いという例もあります
- 待たせた階へ解除の合図を届けるところまで書いて一組になります
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目次
地震のあと在館者を一度に階段へ流すとなにが起きるのか

防災管理に係る消防計画の記載事項は、消防法施行規則第51条の8第1項に並んでいます。
誰を先に出して誰を待たせるのかという順番は、この号のどこにも書かれていません。
高層階まで人がいる建物で全員をいっせいに階段へ入れれば、階段の中で人が詰まって流れが止まります。
下りきるまでの時間が延びるだけでなく、途中の階から入ろうとする人と上から下りてくる人がぶつかります。
だから条文の受け皿の中に、出す順番を自分の言葉で書き足す必要があります。
うちの計画は避難誘導と一行あるだけでした。
条文どおりではあります。
そこへ順番の決め方を足していくのが次の一手です。
避難の順番は誰が決めて誰が伝えるのか

作るのは防災管理者で、届け出る先は所轄の消防長または消防署長です。
消防計画を作るのは防災管理者で、管理権原者の指示を受けて所轄へ届け出るところまでが一続きになっています。
一方で地震のあとに実際に人を動かすのは、その建物に置かれた自衛消防組織です。
誘導の業務にはおおむね2人以上の要員を置くことが求められているので、順番を伝える人手はもともと計画の中にあります。
名簿の欄に人の名前を並べる前に、その人たちが何の順番で動くのかを先に決めてください。
隊の名簿はあるのに順番の文章がありませんでした。
よくある形です。
名簿より先に順番を書くほうが訓練で使えます。
一斉に流さないために現場ではなにをしているのか

消防庁のガイドラインは、超大規模な建物で使われている方法を一覧にしています。
一斉避難の抑止 多数在館者が一斉に避難階段へ殺到することによるパニック防止を図る。
各階地区隊の活用 発災場所周辺の地区隊を活用し、効果的な初期消火・避難誘導等を実施する。
多数在館者の迅速・円滑な避難誘導 シミュレーションを用いた効果的な避難誘導方法の確立
(参考)訓練シナリオ上の想定付与や想定される対応に反映した例 地震時の避難は、各階1か所の避難階段から避難させた方が早い。
一覧に並んでいるのは、避難をやめさせる方法ではなく人の流れを分ける方法になっています。
発災場所の周りにいる各階の地区隊を使えば、どの階から先に動かすかを現場で切り替えられます。
そのうえでガイドラインは、地震のときは各階1か所の避難階段から出したほうが早いという検証の例も挙げています。
複数の階段へ人を割り振るほうが常に早いとは限らない、と読める例になっています。
階段は多く使うほど早いと思い込んでいました。
そこは建物ごとに違います。
訓練で実際に時間を測ってみるのが一番はっきりします。
待たせるときに見落としやすいのはどこか

ガイドラインは待たせ方と合図の出し方まで例を示しています。
現在6階の避難誘導を実施中、他階の来館者は安全が確保されているので誘導員の指示があるまでそのまま待機
同 空港の例 多数在館者の迅速・円滑な避難誘導 「率先避難者」を活用する。
同 別冊6 超大規模防火対象物等における課題及び課題解決に向けた先進的な事例 表2
不要な混乱を生じさせるおそれがあることから、順次区分鳴動を行うことが必要。
想定付与の例は、待つ理由が安全の確保であることと、動いてよくなる合図が誘導員の指示であることを両方書いています。
待っている人に何も届かない時間が続けば、指示を待たずに階段へ向かう人が出ます。
放送の側も一斉ではなく順次区分鳴動を行うことが必要だとされており、鳴らす範囲と順番も同じ設計の一部です。
先頭に立って動く率先避難者をあらかじめ決めておくと、合図を出したあとの流れが作りやすくなります。
待てと伝えたあとの合図までは考えていませんでした。
そこが抜けると人は自分の判断で動きます。
合図を出す人と言葉を計画に書いておいてください。
明日からなにを確かめればよいのか

順番は訓練で通してはじめて確かめられます。
消防法施行規則第51条の8第3項 防災管理者は、令第48条第2項の避難訓練を年一回以上実施しなければならない。
はじめに消防計画の地震の欄を開き、どの階から先に出すのかという一行が文章として入っているかを見ます。
次に待たせる階へ出す合図を決め、誰がどの設備でその合図を出すのかを同じ欄に書き足します。
そのうえで年1回以上の避難訓練の中で、待たせた階を実際に待たせてから動かすところまで通します。
訓練の結果を踏まえた見直しは規則第51条の8第1項第1号トが求めているので、直した内容は変更の届出として出してください。
順番の一行を足して訓練で通してみます。
その順番で進めれば形になります。
合図の言葉まで決めておくと当日に迷いません。
よくある質問
まとめ
避難に順番をつけるという発想がありませんでした。
まずは地震の欄に一行足してみます。
その一行から始めれば十分です。
避難の順番の書き方でお困りでしたら㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第36条
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第45条・第48条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第4条の2の11・第51条の8
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊6・別冊7
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





