テナントのセキュリティで守られた部屋は、防災センターの勤務者でも鍵を開けられないことがあります。
そこから火が出たとき、誰がどうやって中へ入るのかを決めていない建物は少なくありません。
消防隊が到着するまでの間に動くのは建物の側なので、扉の前で止まってしまえば初期消火の機会を失います。
この記事では鍵で入れない部屋の入室手段を消防計画にどう書いておくかを条文から順に整理します。
うちのビルはテナントごとにカードキーで区切られていて、防災センターでも開けられない部屋があります。
その部屋で火が出たときの入室手段は、消防計画に書いておく事項です。
解錠できる人への連絡先まで決めておきましょう。
最悪の場合は扉を壊して入ることになるのでしょうか。
壊して開けることも想定に入れておきます。
大事なのは、誰の判断で壊すのかを平時に決めておくことです。
- 防災センターの勤務者にも解錠方法を伝えられない部屋は火災のときに入室手段が問題になる
- 受け皿は消防法施行規則第3条第1項第一号リが定める活動要領の欄である
- 消防庁のガイドラインは解錠方法の伝達と破壊による開錠の可否を明確化するよう求めている
- 消防隊が到着するまで消火や人命の救助を行うのは建物の側である
- 扉を壊す判断を誰が下すかまで決めて初めて活動要領になる
▼

目次
防災センターでも開けられない部屋があるのはなぜか

その絞り込みが、火災のときには逆に足かせになります。
消防法施行規則第3条第1項第一号リは、火災その他の災害が発生した場合における消火活動と通報連絡と避難誘導に関することを消防計画に定めさせています。
自衛消防組織を置く建物では、同規則第4条の2の10第1項第一号がさらに踏み込んで、火災の初期の段階における消火活動などに係る活動要領を定めるよう求めています。
活動要領とは誰がどう動くのかを書いた手順のことなので、扉が開かないという事情もそこに含めて書くことになります。
まずは自分の建物で、防災センターの勤務者が開けられない部屋がどこにあるのかを洗い出してください。
消防計画にそこまで細かく書くものだとは思っていませんでした。
活動要領は建物ごとに中身が変わる欄です。
自分の建物で止まりそうな場所を書いておくのが本来の使い方です。
入室手段を決めておくのはどんな部屋なのか

決めておくのは、鍵の管理がテナントの側にあって外から開けられない部屋です。
避難口や避難通路のような避難施設は、逃げるときに使えなければ意味がないので、維持管理と案内が消防計画の事項として別に立てられています。
これに対して、機密の書類を収めた室やサーバーを置いた室のように、テナントの都合で施錠されている部屋は避難施設ではありません。
消防庁のガイドラインは、テナント単位で導入されているセキュリティシステムを取り上げ、防災センターの勤務者にも解錠方法を教えることができないような場所を名指ししています。
自分の建物では、無人になる時間帯があるか、鍵を持つ人が常駐しているかまで合わせて見ていくと対象が絞り込めます。
倉庫や電気室も施錠していますが、これも同じ扱いになりますか。
建物の側に鍵があるなら手順は短くて済みます。
問題になるのは鍵がテナントの側にしかない部屋です。
消防計画には入室手段をどう書くのか

解錠方法をどう伝えるかと、壊して開けてよいかどうかです。
はじめが解錠方法の伝達で、鍵やカードを誰が持ち、夜間や休日には誰へ連絡するのかを部屋ごとに一覧にしておきます。
つぎが破壊による開錠の可否で、ガイドラインは最終的な手段としてセキュリティゲートを破壊して開錠することも想定されるとしたうえで、その可否を明確化するよう求めています。
火災に対応する活動要領は防火管理に係る消防計画へ、地震などに対応する活動要領は防災管理に係る消防計画へ書き分けます。
どちらの計画にも部屋の一覧と連絡先の一覧を別紙として付けておくと、テナントが入れ替わったときの更新が漏れません。
連絡先はテナントが入れ替わるたびに変わってしまいます。
だからこそ本文ではなく別紙にしておきます。
入居のときの手続きに一覧の更新を組み込むと止まりません。
壊して開けてよいかは誰が決めるのか

消防隊が来る前と来た後では、動く人も権限も変わります。
消防法第25条第1項は、火災が発生したとき、消防対象物の関係者などが消防隊の到着まで消火や延焼の防止や人命の救助を行わなければならないと定めています。
ここでいう総務省令で定める者は消防法施行規則第46条が定めていて、火災が発生した消防対象物の居住者または勤務者が含まれます。
一方、火災の現場で消防対象物を使用したり処分したりできるのは、消防法第29条第1項によって消防吏員または消防団員とされています。
扉を壊すかどうかで現場が迷わないように、消防隊が来るまでの間は誰の指示で行うのかを平時に決めておいてください。
つまり消防隊を待つのか自分たちで開けるのかを先に決めておく話ですね。
そのとおりです。
判断する人と連絡の順番まで書いてあれば、現場は迷わずに動けます。
明日からなにをすればよいのか

まずは部屋の洗い出しから始めます。
はじめに、防災センターの勤務者が開けられない部屋を建物の図面に落とし、部屋ごとに鍵を持つ人を書き出します。
つぎに、夜間と休日に連絡がつく相手を部屋ごとに決めて、その連絡先を消防計画の別紙に載せます。
最後に、扉が開かない想定を訓練のシナリオへ一度入れて、連絡がつくまでにどれだけ時間がかかるかを実際に測ります。
この三つが済めば、活動要領の欄に書き足す文章は自然に決まります。
訓練で時間を測るという発想がありませんでした。
測ってみると連絡だけで思ったより時間がかかります。
その実測が活動要領を現実に合わせてくれます。
よくある質問
まとめ
開けられない部屋の一覧を作るところから始めればよいのですね。
さっそく図面を出してみます!
入室手段まで書いてあれば扉の前で迷いません。
迷ったときは㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法(昭和23年法律第186号)第8条第1項・第8条の2の5第1項・第25条第1項・第29条第1項
- 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第3条の2・第4条の2の6・第49条
- 消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条第1項第一号ニ・リ・チ・ヲ・第4条の2の10第1項・第46条・第51条の10第1項
- 総務省消防庁「大規模地震等に対応した消防計画作成ガイドライン」(平成31年)別冊4 個別事項の解説 具体的な消防計画の構成 応急対策的事項 火災に特有の内容 火災発見時の措置
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





