BLOG

古民家を宿泊施設や飲食店にすると自動火災報知設備は免除されるのか|消防庁が集めた適用事例の条件を解説

古民家を宿泊施設に転用したとき自動火災報知設備は要るか

空き家になった古民家を宿泊施設や飲食店に活用したいという相談が増えています。
そこで必ずぶつかるのが、建物の使いみちが変わると消防用設備等の設置義務も一緒に付いてくるという問題です。
なかでも自動火災報知設備は工事費がかさむので、なんとか外せないかと考える方が多いところです。
消防庁は平成29年3月23日の事務連絡で、各地の消防本部が実際に消防法施行令第32条を適用して設備を免除した事例をまとめ、全国の消防本部へ配っています。

実家の古民家を直して民宿にしようと動いているんです。
消防設備の見積りを取ったら自動火災報知設備だけで驚く金額でした。

住宅のままなら要らなかった設備が、宿泊施設になると一気に付いてきます。
ただ消防法施行令第32条という規定があって、条件しだいで外れることもあります。

そんな逃げ道があるんですか。
うちみたいな小さい古民家でも使えるものなんでしょうか。

消防庁が全国から集めた事例が公表されているので、そこから条件の当たりが付けられます。
どんな建物のどんな設備が外れたのかを順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防庁は平成29年3月23日の事務連絡で、古民家等と文化財に消防法施行令第32条を適用して消防用設備等を免除した事例を全国へ配った
  • 別紙に載っているのは古民家等が6件と文化財が6件で、外れた設備は自動火災報知設備・非常警報設備・誘導灯・火災通報装置・避難器具である
  • 古民家等で自動火災報知設備が外れた事例は延べ面積と店舗部分の面積で線を引くものと、連動型で煙式の住宅用防災警報器がすでに付いているものの2通りである
  • 誘導灯と誘導標識には同じ日に出た消防予第71号という全国共通の特例基準があるので、そちらを先に当てる
  • 別紙の事例はよその消防本部が出した判断であって全国一律の基準ではなく、同じ条件でも自分の建物が通るとは限らない

古民家を宿泊施設や飲食店にしたときに消防用設備を外せる順番を示した図解

古民家の特例事例が誘導灯の通知と同じ日に配られたのはなぜか

全国の消防本部から集められた古民家の特例事例を消防庁が取りまとめる様子
事例集はいきなり出てきたものではなく、前の年に出された依頼への回答をまとめたものです。
まずは通知そのものの書き出しを読んでみます。
古民家等に係る消防法施行令第32条の適用事例の情報提供について(平成29年3月23日付け事務連絡・消防庁予防課)
古民家等に係る消防法施行令(昭和36年政令第37号。以下「令」という。)第32条の規定の適用による消防用設備等を免除した事例については、先般、「歴史的建築物に係る消防法施行令第32条の適用事例の情報提供等について」(平成28年12月19日付け事務連絡。以下「平成28年事務連絡」という。)により依頼したところです。今般、収集した令第32条の規定の適用事例のうち、古民家等及び文化財に係る主な事例について別紙のとおり取りまとめましたので、執務上の参考としてください。
また、平成28年事務連絡において、該当する事例が生じた場合は随時報告するようお願いしているところであり、引き続き事例収集にご協力いただきますようお願いします。
集めて配ることそのものが目的の文書です。
新しい基準を作った通知ではないので、ここに書かれた条件を満たせば必ず免除されるという読み方はできません。
面白いのは日付で、同じ平成29年3月23日に消防予第71号という通知も出ています。
そちらは一般住宅を宿泊施設や飲食店に活用するときの誘導灯と誘導標識について、全国共通の特例基準を定めたものです。
つまり消防庁は同じ日に、決められる部分は基準として示し、決めきれない部分は他所の判断例として配るという二段構えを取ったことになります。
自分の建物の相談に行くときは、この二つは性格が違うと分かったうえで持ち出すのが安全です。

基準ではなく事例集ということですか。
それだと持って行っても効き目は薄いのでしょうか。

効き目はあります。
消防庁が執務の参考にと配った文書なので、所轄も同じものを見ているからです。

どの建物のどの設備が事例に挙がっているのか

古民家を転用した宿泊施設と文化財の社寺という二つの系統に事例が分かれている様子
別紙は表になっていて、上下二つのかたまりに分かれています。
用途の欄は令別表第一の項番号ではなく、飲食店や宿泊施設といった呼び方で書かれています。
古民家等に係る消防法施行令第32条の適用事例の情報提供について(平成29年3月23日付け事務連絡)別紙「古民家等及び文化財に対して特例を適用した主な事例」の項目
●古民家等に関する事例 自動火災報知設備(飲食店、宿泊施設)/自動火災報知設備(宿泊施設)/非常警報設備(集会場)/誘導灯(飲食店)/誘導灯(宿泊施設)/火災通報装置(宿泊施設)
●文化財に関する事例 自動火災報知設備(寺)/自動火災報知設備(神社)/自動火災報知設備(神社)/非常警報設備(集会場)/避難器具(博物館)/誘導灯(飲食店)
古民家等が6件、文化財が6件です。
古民家等のほうは、もと住まいだった建物を店や宿にしたときに出てくる設備がそのまま並んでいます。
文化財のほうは寺社の建物そのものが対象で、外気が入る造りだから感知器が効かない、管理者が常駐していないから覚知できない、といった建物の造りに理由を求めたものが中心です。
どちらの系統でもいちばん多く外れているのは自動火災報知設備で、金額の大きい設備ほど相談が持ち込まれていることが分かります。
自分の建物がどちらの系統に近いかを先に決めておくと、読むべき行がすぐ絞れます。
系統外れた設備用途
古民家等自動火災報知設備飲食店、宿泊施設
自動火災報知設備宿泊施設
非常警報設備集会場
誘導灯飲食店
誘導灯宿泊施設
火災通報装置宿泊施設
文化財自動火災報知設備
自動火災報知設備神社
自動火災報知設備神社
非常警報設備集会場
避難器具博物館
誘導灯飲食店

うちは住まいを民宿にするので古民家等の側ですね。
そうすると読むのは上の6件だけでよさそうです。

そのとおりです。
文化財のほうは建物の造りが理由なので、住まいの転用には当てはまりません。

自動火災報知設備はどんな条件で免除されたのか

小さな平屋の古民家は認められ大きな二階建ての古民家は認められない対比
古民家等の側で自動火災報知設備が外れた事例は2件あり、着目している点がまるで違います。
どちらも条件を全部満たすことが前提で、一つでも欠けたら通りません。
同事務連絡・別紙「古民家等に関する事例」自動火災報知設備(飲食店、宿泊施設)
次の①から④までの条件をすべて満たすものについて自動火災報知設備の設置を免除した。
① 延べ面積が500平方メートル未満であること
② 飲食店及び宿泊施設が存する階は避難階であって、無窓階以外のものであること
③ 飲食店及び宿泊施設部分の床面積の合計が150平方メートル未満であること
④ 飲食店及び宿泊施設部分から主要な避難口に容易に避難できること
同事務連絡・別紙「古民家等に関する事例」自動火災報知設備(宿泊施設)
次の①から③までの条件をすべて満たすものについて自動火災報知設備の設置を免除した。
① 延べ面積が300平方メートル未満であること
② 現に住宅用防災警報器(連動型であり、かつ煙式であるもの)が設置されていること
③ 現に設置されている住宅用防災警報器は、交換期限(自動試験機能付きのものについては、機能の異常の表示がされるまでの期間と製造年から10年間のいずれか短い期間とする。)を超えていないこと
面積で守るか機器で守るかの違いです。
一つ目は建物全体を500平方メートル未満に、店と宿の部分を150平方メートル未満に抑えたうえで、その部分を避難階かつ無窓階以外に置き、外へ一息で出られる形にしています。
二つ目は面積の線を300平方メートル未満まで下げる代わりに、連動型で煙式の住宅用防災警報器がすでに建物に入っていることを求めています。
連動型を指定しているのは、一つの部屋で鳴った警報が家じゅうに伝わらないと自動火災報知設備の代わりにならないからです。
なお、宿泊施設が令別表第一(5)項イに当たると、消防法施行令第21条第1項第1号イによって延べ面積を問わず自動火災報知設備が必要になります。
飲食店だけであれば同条同項第3号イで300平方メートル以上が線なので、まず自分の建物がどちらの入口から義務を負うのかを押さえてください。
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条第1項
自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
一 次に掲げる防火対象物
イ 別表第一(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十三)項ロ並びに(十七)項に掲げる防火対象物
(略)
三 次に掲げる防火対象物で、延べ面積が三百平方メートル以上のもの
イ 別表第一(一)項、(二)項イからハまで、(三)項、(四)項、(六)項イ(4)及びニ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物

うちは二階も客室にするつもりでした。
そうすると一つ目の避難階という条件で外れてしまいますね。

その場合は二つ目の形が残ります。
延べ面積を300平方メートル未満に抑えて、連動型の住宅用防災警報器を先に入れておく相談の仕方です。

実務で見落としやすいのはどこか

通報内容を掲示した電話と人数を制限したロープ仕切りという免除の引き換え条件
設備が消えても、その代わりに背負うものが残る事例があります。
とくに引っかかりやすいのが火災通報装置と、人数を絞ることで外した事例です。
同事務連絡・別紙「古民家等に関する事例」火災通報装置(宿泊施設)
次の①から⑤までの条件をすべて満たすものについて火災通報装置の設置を免除した。
(①から③は誘導灯の事例と同じ内容につき略)
④ 客室が10室以下であること
⑤ 消防機関へ常時通報することができる電話が設置されており、当該電話付近に通報内容が明示されていること
消防法施行令(昭和36年政令第37号)第23条第3項
第一項各号に掲げる防火対象物(同項第一号に掲げる防火対象物で別表第一(六)項イ(1)から(3)まで及びロに掲げるもの並びに第一項第二号に掲げる防火対象物で同表(五)項イ並びに(六)項イ(4)及びハに掲げるものを除く。)に消防機関へ常時通報することができる電話を設置したときは、第一項の規定にかかわらず、同項の火災報知設備を設置しないことができる。
宿泊施設は電話では代えられません。
消防法施行令第23条第3項は電話を置けば火災通報装置を省けると定めていますが、その括弧書きで別表第一(5)項イを除いているからです。
それでもこの事例が電話と掲示を条件に置いているのは、本来なら使えない電話代用の中身を令第32条の側で借りている形だからだと読めます。
だからこそ客室10室以下という規模の縛りと、避難のしやすさの条件が重ねて付いています。
文化財の側にある非常警報設備と避難器具の事例は、どちらも収容人員を義務が生じる人数以下に制限することで外したものです。
設備を買わずに済む代わりに、入れる人数の上限を守り続けるという運用の縛りがそのまま残ります。

設備が消えても宿題が残るということですね。
あとから客室を増やしたくなったらどうなるのでしょう。

前提が崩れるので免除の根拠も崩れます。
増やす前に必ず所轄へ相談してください。

明日からなにを確認すればよいのか

古民家の資料を持って所轄消防の窓口へ相談に行く順番
順番を間違えると、本来は要らない相談から始めてしまいます。
事例収集は今も続いていて、あとから出た調査結果が全体像を教えてくれます。
歴史的建築物等に係る消防法施行令第32条の適用事例の調査結果について(令和5年7月6日付け事務連絡・消防庁予防課)別添1
歴史的建築物等に令32条を適用し、設置を免除している消防用設備等は、自動火災報知設備が668対象物と最も多く、その約71%は令別表第一⑾項に該当する防火対象物でした。ついで誘導灯又は誘導標識が88対象物でした。
(報告があったのは全776対象物。参考とした通知の内訳は昭和44年の消防予第237号が489対象物で約63%、消防本部独自の基準等によるものが240対象物で約31%)
上から順に当てていくのが近道です。
はじめに消防法施行令第21条から第26条までで、自分の建物にそもそも設置義務があるのかを用途と面積から確かめます。
次に消防法施行規則が定める一般の免除に当たらないかを見ます。
そのうえで誘導灯と誘導標識だけは消防予第71号という全国共通の特例基準があるので、そこに乗るかを確かめます。
残った設備について初めて、今回の別紙を持って所轄消防令第32条の相談に行くという順番になります。
相談のときは延べ面積と店舗部分の床面積、階数と無窓階かどうか、住宅用防災警報器の型と設置年を紙にして持っていくと話が早く進みます。

つまり事例集はいちばん最後に出す札なんですね。
先に義務の有無と省令の免除を片づけておきます。

その順番なら所轄も判断しやすくなります。
図面と面積表を先に整えておくと一回の相談で済むことが多いです。

よくある質問

Q別紙の条件をそのまま満たせば自動火災報知設備は免除されますか?
A免除されるとは限りません。別紙はよその消防本部が出した判断の紹介であって全国共通の基準ではなく、消防法施行令第32条を適用するかどうかは所轄の消防長又は消防署長が建物ごとに判断します。
Q住宅用防災警報器を付ければ自動火災報知設備の代わりになりますか?
Aそのままでは代わりになりません。別紙の事例は延べ面積300平方メートル未満であること、連動型でかつ煙式であること、交換期限を超えていないことという条件をすべて満たしたものについて免除したと書かれています。
Q誘導灯についてもこの事例集を持って相談すればよいですか?
A誘導灯と誘導標識には同じ日に出た消防予第71号という全国共通の特例基準があるので、まずそちらに当てはまるかを確かめてください。事例集を出すのはそこから外れたときです。
Q免除された後に客室を増やしたら届け出が必要ですか?
A免除の前提が変わるので所轄への相談が必要です。客室数や収容人員を条件にして外した事例では、その数を超えた時点で判断の土台が崩れます

まとめ

消防庁は平成29年3月23日の事務連絡で、古民家等と文化財に令第32条を適用した主な事例を別紙にまとめて全国へ配った
別紙は古民家等の事例が6件と文化財の事例が6件で、自動火災報知設備が最も多く挙がっている
自動火災報知設備の一つ目の事例は延べ面積500平方メートル未満と店舗部分150平方メートル未満に加え、避難階かつ無窓階以外であることを求めている
二つ目の事例は延べ面積300平方メートル未満に加え、連動型で煙式の住宅用防災警報器が交換期限内であることを求めている
火災通報装置の事例は客室10室以下と電話の設置および通報内容の明示を重ねて求めている
収容人員を制限して外した事例は、設備を買わずに済む代わりに人数の上限を守り続ける縛りが残る
設置義務の確認から省令の免除、誘導灯の特例基準を経て、最後に令第32条の相談へ進むのが正しい順番である

設備を外す話ではなく順番の話だと分かってすっきりしました。
まずは面積表を作って所轄に持って行きます。

その面積表があるだけで相談の質が変わります。
作り方が分からないときは㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
主な活動

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

参考・出典

  • 古民家等に係る消防法施行令第32条の適用事例の情報提供について(平成29年3月23日付け事務連絡・消防庁予防課)および別紙「古民家等及び文化財に対して特例を適用した主な事例」
  • 歴史的建築物に係る消防法施行令第32条の適用事例の情報提供等について(平成28年12月19日付け事務連絡・消防庁予防課)
  • 一般住宅を宿泊施設や飲食店等に活用する場合における消防用設備等に係る消防法令の技術上の基準の特例の適用について(平成29年3月23日付け消防予第71号・消防庁予防課長)
  • 歴史的建築物等に係る消防法施行令第32条の適用事例の調査結果について(令和5年7月6日付け事務連絡・消防庁予防課)別添1
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)第21条・第23条・第24条・第25条・第26条・第32条
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第17条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
古民家を宿泊施設に転用したとき自動火災報知設備は要るか
空き家になった古民家を宿泊施設や飲食店に活用したいという相談が増えています。 そこで必ずぶつかるのが、建物の使いみちが変わると消防用設備等の設置義務も一緒に付いてくるという問題です。 なかでも自動火災報知設備は工事費がか...