危険物を貯蔵する屋内貯蔵所には、消防法施行令が周囲に空地を保有するよう定めています。
ただし指定数量の倍数が50以下の小規模な屋内貯蔵所については、総務省令で基準の特例を定められると政令が規定しています。
この特例を使うと、空地の幅だけでなく床面積や窓の有無まで基準が変わります。
この記事では規則第16条の2の3が定める特例の中身を条文から整理します。
倉庫の隣にも空地を広く取らないといけないと聞いていたんですが、うちみたいな小さい倉庫でも同じなんでしょうか。
取扱量が少ない屋内貯蔵所には専用の特例基準があります。
まずは特例の入口から確認していきましょう。
指定数量の倍数によって扱いが変わるということですか。
はい、50以下かどうかが最初の分かれ目です。
条文の対象要件から見ていきましょう。
- 指定数量の倍数が50以下の屋内貯蔵所には、令第10条第4項に基づき総務省令で基準の特例を定めることができます。
- 対象になるのは、規則第16条の2の3が定める複数の要件を全て満たす屋内貯蔵所です。
- 空地の幅は、指定数量の倍数に応じて0メートル・1メートル・2メートルまで小さくできます。
- 引き換えに床面積150平方メートル以下・窓なし・屋根まで含めた耐火構造という条件が付きます。
- 標識掲示板や避雷設備など、空地以外の基準はこの特例でも外れません。
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目次
指定数量50以下の屋内貯蔵所にはなぜ専用の基準があるのか

ただし取扱量が少ない屋内貯蔵所には、この基準を超える特例が別途用意されています。
この委任を受けて具体的な特例の中身を定めているのが、危険物の規制に関する規則第16条の2の3です。
条文上の呼び名ではありませんが、この記事では便宜上、特例の対象になる屋内貯蔵所を特定屋内貯蔵所と呼びます。
次の項目で、どんな屋内貯蔵所がこの特例を使えるのかを確認します。
特例といっても、勝手に緩めていいわけではないんですね。
はい、条文が定める要件を満たしてはじめて使えます。
次で対象範囲を見ていきましょう。
どの屋内貯蔵所がこの特例を使えるのか

ここで全ての要件を確認します。
どれか1つでも満たさなければ、屋内貯蔵所は政令第10条第1項の本来の基準に戻って審査されます。
注目したいのは屋根まで耐火構造にするという第三号です。
本来の基準では屋根は不燃材料でもよいとされているので、この特例を使う代わりに屋根の仕様が上がる関係になっています。
次の項目で、肝心の空地の幅がどこまで小さくなるのかを見ていきます。
窓をなくすだけでも意外と対応が大変そうです。
5つの号を同時に満たす設計が前提になります。
次は空地の幅の中身です。
空地の幅は基準本則とどう変わるのか

規則第16条の2の3第2項第一号は、これとは別のもっと小さい表を用意しています。
つまり最小規模の屋内貯蔵所は、この特例のもとでは空地を保有しなくてもよいと読めます。
倍数が5を超え20以下なら1メートル以上、20を超え50以下なら2メートル以上と、本則の表よりも大きく圧縮されています。
本則の表で同じ倍数の区分を見ると、耐火構造でも0.5メートルから3メートルの幅が必要だったので、差は明らかです。
ただしこの縮小は、前の項目で見た他の4つの号とセットで初めて認められる点を忘れてはいけません。
空地なしでいい区分まであるとは思っていませんでした。
ただし他の号を満たすことが前提です。
次はこの特例でも外れない基準を見ましょう。
特例を使っても外れない基準はどこか

除外されない号は、特例のもとでもそのまま生きています。
標識・掲示板を定めた第三号、独立した専用の建築物とする第三号の二、軒高6メートル未満の平家建てとする第四号、避雷設備を定めた第十四号などは、この特例を使っても引き続き適用されます。
貯蔵倉庫に架台を設けるときは、架台の構造と設備を定めた規則第16条の2の2にも別途適合しなければなりません。
「特例を使えば全ての基準が緩くなる」と考えると、標識や架台の基準を見落とすことになります。
空地さえ減らせば他は自由になると思い込むところでした。
除外されない号が何かを条文で確認してください。
最後に確認の手順をまとめます。
明日からなにをすればよいのか

新設のときも、既存の屋内貯蔵所を見直すときも同じ視点で使えます。
- 自社の屋内貯蔵所の指定数量の倍数が50以下かをまず計算する
- 貯蔵倉庫の床面積が150平方メートルを超えていないかを図面で確認する
- 壁・柱・床・はり・屋根まで耐火構造になっているかを確認する
- 出入口が随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備かを確認し、窓が無いことも確かめる
- 5つの号を全て満たしたうえで、倍数に応じた空地の幅の表に当てはめて空地を確認する
床面積や窓の有無は建物の設計段階から関わるため、着工前の確認が欠かせません。
既存の屋内貯蔵所を増改築するときも、同じ5つの号に立ち返って確認します。
図面と条文を並べて確認しておくと、許可申請の際の手戻りも減らせます。
うちの倉庫が5つの号を満たしているか、図面から確認してみます。
図面と条文の突き合わせから始めてみてください。
次のよくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
5つの号の確認を、この機会にしてみます。
早めのご相談がおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第10条第1項・第4項(屋内貯蔵所の基準・基準の特例)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の3(特定屋内貯蔵所の特例)
- 危険物の規制に関する規則第16条の2の2(屋内貯蔵所の架台の基準)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





