高層のマンションやオフィスビルには、各階からごみを投げ入れるダストシュートや、空調のための風道が設けられていることがあります。
これらは建物を上下に貫通する縦穴で、火災のときには煙や熱を一気に運ぶ通り道にもなりかねません。
建築基準法施行令は、一定規模以上の建物に設けるこれらの設備を不燃材料で造ることを義務づけています。
条文をたどると対象になる建物は延べ面積や階数によって線引きされていることが見えてきます。
うちのマンション、各階にごみ投入口がある古いダストシュートがあります。
これも法律の基準がかかっているんですか。
建物の規模によっては対象になります。
ダストシュートや風道は建築基準法施行令で不燃材料での施工が義務づけられています。
どんな建物でも対象になるんでしょうか。
いいえ、決まった規模の要件があります。
条文を3つの要件から順に見ていきましょう。
- 対象になる建物に設ける風道やダストシュートは、不燃材料で造らなければなりません
- 対象になるのは階数3以上・地階に居室・延べ面積3,000平方メートル超のいずれかに該当する建築物です
- ダストシュートのような縦穴は煙突効果で火災を急速に上階へ伝える経路になりやすいことが規制の背景です
- 屋外に面する部分など防火上支障がない部分は適用が除外されます
- 後からのリフォームや設備更新で新設した風道やシュートも同じ規制の対象です
▼

目次
風道やダストシュートはなぜ不燃材料で造らなければならないのか

建築基準法施行令はこの穴の材質そのものに基準を置いています。
風道もダストシュートも、上下階や部屋どうしをつなぐ穴という点で共通しています。木材や可燃性の樹脂でこの穴を造ると、火災が起きたときにその穴自体が燃え広がる経路になってしまいます。
条文が求めているのは、この穴そのものを不燃材料で囲い、延焼の経路にしないことです。
古い建物の改修計画を立てるときは、既存のシュートや風道がどんな材質で造られているかをまず確認してください。
ダクトの中の空気だけでなく、ダクトそのものの材質が問われるんですね。
そのとおりです。
穴そのものが延焼の経路にならないようにする基準です。
どんな建物のどんな設備がこの規制の対象になるのか

条文は建物の規模を3つの要件で線引きしています。
地階を除く階数3以上、地階に居室がある、延べ面積3,000平方メートル超のどれか一つで足り、3つすべてを満たす必要はありません。
対象になる設備は、換気・暖房・冷房の設備が使う風道と、ダストシュート・メールシュート・リネンシュートといった建物を上下に貫通するシュート類です。「その他これらに類するもの」とあるので、名称が違っても同じ役割を持つ縦穴設備は同様に扱われます。
自分の建物がこの3要件のどれかに当てはまるかを、まず竣工図や登記簿の床面積で確かめてください。
3つのうちどれか一つで対象になるんですね。
はい。
延べ3,000平方メートルを超えるだけでも対象になります。
なぜこの3つの建物要件が線引きになっているのか

理由はシュートや風道が持つ構造上の性質にあります。
このような縦穴区画は、火災で発生した熱い煙が中で温められて上昇し続ける、いわゆる煙突効果によって、下の階の火災を短時間で最上階まで運んでしまう性質があります。
階数が多い建物ほど縦穴の長さが伸び、地階があれば下からの延焼経路が加わり、延べ面積が大きい建物ほど一つの火災が波及する範囲も広がります。避難にかかる時間も規模が大きいほど長くなるため、その間に延焼が進む縦穴を不燃材料で止めておく必要が高くなります。
逆に小規模で低層の建物は縦穴が短く、この基準の対象からは外れます。自分の建物の規模がどの要件に当てはまるかで、必要な備えの重さも変わってきます。
煙突効果というのは、煙が縦穴を上っていく現象のことですか。
そうです。
規模が大きい建物ほど縦穴が長く延焼の経路になりやすいのです。
適用が除外されるのはどんな部分か

すべての部分が一律に不燃材料を求められるわけではありません。
建物の外壁から外に露出している部分は、周囲を燃え広がる可燃物で囲まれておらず、延焼の経路になりにくいため対象から外れます。
それ以外にも「その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分」という規定があり、具体的な範囲は国が個別に定める基準によります。自分の建物のどの部分が除外の対象になるかは条文だけでは判断できないため、設計を担当した建築士に確認するのが確実です。
除外規定があるからといって、屋内を通る部分まで自己判断で可燃材料に置き換えてよいわけではありません。
屋外の部分は不燃材料でなくてもよいということですか。
屋外に露出した部分は除外されます。
ただし屋内を通る部分は対象のままです。
実務で確認すべきことは何か

維持管理として日常的に確認できることがあります。
- 自分の建物が階数3以上・地階に居室・延べ面積3,000平方メートル超のいずれかに当てはまるか
- 既存のダストシュートや風道が図面上どんな材質で施工されているか
- 最近のリフォームや設備更新で新しく風道やシュートを増設していないか
- 屋内を通る部分と屋外に露出する部分の境目がどこにあるか
古いマンションではダストシュートそのものが後年に使用停止となっている例もありますが、使用停止後も撤去されずに残っている場合は、その材質を確認しておいてください。
リフォーム業者に空調ダクトの増設を依頼するときは、対象建物に当てはまるかどうかを先に伝えておくと、材質の選定で手戻りが起きにくくなります。
判断に迷う場合は、建築士や施工業者に相談し、必要な確認や是正を行ってください。
まずは竣工図を引っ張り出して、うちの建物が対象かどうかを確かめてみます。
それが確実です。
竣工図の確認から始めてみてください。
よくある質問
まとめ
まずは自分の建物が対象かどうか、竣工図で確かめてみます。
規模の要件と材質、この2つを見れば大枠はつかめます。
気になる箇所があれば早めの確認が安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第1条
- 建築基準法施行令第129条の2の4
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





